水底の恋 天上の花

栗菓子

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第6章 デイエル 統治者

第9話 シン・ノーラン視点

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シン・ノーランも、年ごろの少年は任期付きで軍に入って、何かの成績をあげなげれば、脱落者として、ノーラン家の後継者としても失格と見なされる。女は、政略結婚の駒として早めに結婚させられるが、男は苛烈である。
家の後継者として条件を見なさなければ、平民落ちや、見下していた男の元へ働く従者になるかもしれない。
それは自尊心が高い男としては最大の屈辱であった。
故に、男は苛烈な気性が多い。名誉や地位の執着はそれによるものであった。
故に、男は女の裏切りを許さない性質があった。
幸いにも、ノーラン家は母親は父を愛し裏切らない性質であった。
アイシャも姉も男には従順で、健気に夫に貢献しようとする性質であった。

シン・ノーランは、男と女が、父と母がお互いを深くおもいやって愛しあっていた。
幼少の頃からみているためそれほど、女には警戒は抱かなかった。

自分もいつかは、あんな風に相応しい妻を得るのだと疑わなかった。


だが、最近、義理の兄であるジル・オーデインがかつての従者であったデイエルの様子がおかしい。
縁はきっているが、念のためそなたには話しておく。とばつのわるそうに話した。

その時、デイエルと言う男はジルのかつての情人だなと薄々察した。
その時は何も言わずに頷いたが、すぐに密偵にデイエルと言う男の評判を調査してもらった。
結果は最悪であった。

デイエルは領主であった老人の養子縁組をし、後継者としても教育を受けた。だが性玩具としての調教も受けたらしい。悪趣味な貴族の遊びだ。
きまぐれに領主にさせるという餌をあげ、代償に鞭をつかって教育する残酷な遊びだ。
だがデイエルはその餌さえももらえないはずだったらしい。新しい養子ができたのだ。その後の養子の変死。老人の老衰死。デイエルの領主としての地位を得た。あまりにも変な経緯だった。不信と疑惑をもった者は多いだろう。だが、デイエルの残虐性と身勝手さは暴走した。既にそのごろ、壊れていたのだろう。

デイエルにとって都合の悪い人達はいつのまにか消えていた。証拠はないが、デイエルがやったなと察している者は察している。デイエルは今は表向き良き領主を演じているが、黒い噂はあった。

義理の兄の情事に巻き込まれるアイシャと俺には迷惑だと舌打ちしながらも、デイエルと言う男と言う名前を警戒すべき名前と脳裏に刻んだ。

でもまさかデイエルがどうしようもなく壊れている悪鬼とはこの時はジルも想像していなかった。
後にジルは深く後悔することになる。あの時もっとデイエルと言う男を警戒していたら・・と嘆いたがもう後の祭りであった。


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