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第6章 デイエル 統治者
第6話 醜い争い
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デイエルは、俺に執着し始めた。ジル・オーデインは鋭敏な感覚でそれを悟った。
デイエルめ。自ら捨てた俺との恋や幸福を惜しみ未練を残したな。
あれほど女々しい男だったとは・・
かつては弟にも思えた恋人の変質を苦々しく思った。
デイエルの野望は、変質するほど大きく身の器には合わなかったらしい。
デイエルは従者のままが良かったのかもしれない。そうすれば俺の恋人として安楽な人生を送ったかも・・
埒もない未来を考えるのはやめた。ジルは獣特有の酷薄さで敵になりつつある恋人を排除しにかかった。
このままではオーデイン家。父親にも迷惑をかけるかもしれない。恋人如き制御できぬ男と侮られても屈辱だ。
久しくあっていなかった彼は悪く変容した。昏く濁った瞳。荒廃しきった容貌。
醜い。 彼は思わずかつての恋人を嫌悪した。
身勝手と言おうが、ジルは自分の感情、本能に忠実な獣の血が入っている。
ジルはありのままに嫌悪をあらわしながらデイエルを牽制した。
「醜くなったな。デイエル。これがかつて愛したものかと思うと情けないぞ。」
冷たくジルはデイエルを見据えた。
デイエルはジルの甘さを期待したが、かつての恋人は容赦なくデイエルの醜さを弾劾するようになった。
デイエルは屈辱に唇をかみしめた。
ジルは精悍に雄々しくなった。かつての幼げな危うい魅力はなくなった代わりに、男性としての雄々しい魅力が増していった。アイシャと言う女とも良好な関係を築いているらしい。
デイエルは統治者として地位を得たのに、心は休まらず、地獄だった。
反対に恋人のジルは雄々しく成長した。
それにデイエルは深く嫉妬した。この運命の差は何だ?
デイエルはどす黒い思いが迸るのを感じた。
「かつての恋人に酷い言葉をいうんだね。ジル。あんたは優しかったのに。」
「俺は優しい男だとも。可愛い恋人ならな。しかしお前は俺の恋人であることをやめた。
そして領主として男として生き始めた。それはお前が望んた道だろう。」
正論だ。ぐうの音も出ない。それでもデイエルはこの黒い思いを制御できなかった。
「そんなに今の妻が良いの。よほどあっちの方も良かったの。あんたは女が嫌いだったじゃないか。
なのに、なぜあんな美しいだけの女を厚遇するの?」
醜いドロリとした嫉妬がジルに向けられる。ああ。嫌なにおいだ。気持ちが悪い匂いだ。
アイシャのような甘い花の匂いとは違う。
アイシャは気丈で懸命に正妻としての務めを果たそうとしている。そこに偽りの匂いはない。
アイシャは正妻としての地位に甘んじず、努力して懸命に義務を果たそうとしている。
勉強も、領地についての問題もアイシャは学んでいる。オーデイン家の役に立つために貢献している。
アイシャは砂糖菓子の姫ではなく、心の芯が強く果敢に戦う女だった。
夫が女嫌い、男色家と知っても驚きこそすれ、忌避はしなかった。それなら仕方がないと受け入れた。
彼女は思っていたより人間の器が大きかった。
彼女も彼女なりにオーデイン家やジルになにか思うことがあるらしいが黙っている。
それは、いつかジルがオーデイン家について話してくれることを待っているのだ。
その時、アイシャはオーデイン家の一員になったと思うかもしれない。
ジルはアイシャの気持ちが解っていた。その健気な気持ちに花のような気持ちに絆された。
この女なら、ずっと正妻の地位にいてもいいと思わせるぐらいアイシャが愛おしかった。
もはや、かつての恋人は汚点に過ぎなかった。
ジルは己の醜い心を恥じながらも、恋人に対する落胆と蔑視を隠せずにはいられなかった。
ジルは深い溜息をついた。
「お前は醜くなった。アイシャは前から美しかったが、己の努力でさらに心も体も美しくなった。
それは運命に対する姿勢の現れだ。お前は自分からその運命を選んだにも関わらず醜くなり、こんなはずではないと自分の醜さに目を背け、堕落したな。」
「今わかった。俺は美しいモノ。愛らしいモノが好きなんだ。でもお前は醜くなってしまった。もう会いたくない。
俺とアイシャに関わるな。」
ジルは恫喝した。デイエルはジルの痛烈な批判に泣いた。
「なんでなんでなんでなんで・・」
「あんただけがなんでそんなに幸福になるの。そんなの許せない。」
デイエルは隠し持った剣を泣きながら醜い心を吐露しながら、ジルを殺しにかかった。
だが、荒淫と醜い所業を行った体は、鍛錬を怠らないジルの逞しい身体には叶わない。
子どものように突き飛ばされて彼は泣き崩れた。
ジルはうんざりと冷ややかにデイエルを見下した。
「もう無理だ。」
彼は冷ややかにデイエルを見限った。それがジルとデイエルの醜い愁嘆場だった。
彼はデイエルとの記憶を捨てることにした。
デイエルめ。自ら捨てた俺との恋や幸福を惜しみ未練を残したな。
あれほど女々しい男だったとは・・
かつては弟にも思えた恋人の変質を苦々しく思った。
デイエルの野望は、変質するほど大きく身の器には合わなかったらしい。
デイエルは従者のままが良かったのかもしれない。そうすれば俺の恋人として安楽な人生を送ったかも・・
埒もない未来を考えるのはやめた。ジルは獣特有の酷薄さで敵になりつつある恋人を排除しにかかった。
このままではオーデイン家。父親にも迷惑をかけるかもしれない。恋人如き制御できぬ男と侮られても屈辱だ。
久しくあっていなかった彼は悪く変容した。昏く濁った瞳。荒廃しきった容貌。
醜い。 彼は思わずかつての恋人を嫌悪した。
身勝手と言おうが、ジルは自分の感情、本能に忠実な獣の血が入っている。
ジルはありのままに嫌悪をあらわしながらデイエルを牽制した。
「醜くなったな。デイエル。これがかつて愛したものかと思うと情けないぞ。」
冷たくジルはデイエルを見据えた。
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デイエルは屈辱に唇をかみしめた。
ジルは精悍に雄々しくなった。かつての幼げな危うい魅力はなくなった代わりに、男性としての雄々しい魅力が増していった。アイシャと言う女とも良好な関係を築いているらしい。
デイエルは統治者として地位を得たのに、心は休まらず、地獄だった。
反対に恋人のジルは雄々しく成長した。
それにデイエルは深く嫉妬した。この運命の差は何だ?
デイエルはどす黒い思いが迸るのを感じた。
「かつての恋人に酷い言葉をいうんだね。ジル。あんたは優しかったのに。」
「俺は優しい男だとも。可愛い恋人ならな。しかしお前は俺の恋人であることをやめた。
そして領主として男として生き始めた。それはお前が望んた道だろう。」
正論だ。ぐうの音も出ない。それでもデイエルはこの黒い思いを制御できなかった。
「そんなに今の妻が良いの。よほどあっちの方も良かったの。あんたは女が嫌いだったじゃないか。
なのに、なぜあんな美しいだけの女を厚遇するの?」
醜いドロリとした嫉妬がジルに向けられる。ああ。嫌なにおいだ。気持ちが悪い匂いだ。
アイシャのような甘い花の匂いとは違う。
アイシャは気丈で懸命に正妻としての務めを果たそうとしている。そこに偽りの匂いはない。
アイシャは正妻としての地位に甘んじず、努力して懸命に義務を果たそうとしている。
勉強も、領地についての問題もアイシャは学んでいる。オーデイン家の役に立つために貢献している。
アイシャは砂糖菓子の姫ではなく、心の芯が強く果敢に戦う女だった。
夫が女嫌い、男色家と知っても驚きこそすれ、忌避はしなかった。それなら仕方がないと受け入れた。
彼女は思っていたより人間の器が大きかった。
彼女も彼女なりにオーデイン家やジルになにか思うことがあるらしいが黙っている。
それは、いつかジルがオーデイン家について話してくれることを待っているのだ。
その時、アイシャはオーデイン家の一員になったと思うかもしれない。
ジルはアイシャの気持ちが解っていた。その健気な気持ちに花のような気持ちに絆された。
この女なら、ずっと正妻の地位にいてもいいと思わせるぐらいアイシャが愛おしかった。
もはや、かつての恋人は汚点に過ぎなかった。
ジルは己の醜い心を恥じながらも、恋人に対する落胆と蔑視を隠せずにはいられなかった。
ジルは深い溜息をついた。
「お前は醜くなった。アイシャは前から美しかったが、己の努力でさらに心も体も美しくなった。
それは運命に対する姿勢の現れだ。お前は自分からその運命を選んだにも関わらず醜くなり、こんなはずではないと自分の醜さに目を背け、堕落したな。」
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