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第5章 女神ネリア
第2話 愚かな恋人
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かつてのわたしは愚かな無知な娼婦と無意識に恐れ反発しながらも、わたしは彼に出会った途端、過去の私の心が嫌と言うほど知らされた。過去の影響でわたしは、ハリアン公爵の魂に惹かれた。彼の存在そのものに恐怖しながらも魅力的だと思ったのだ。わたしは彼に毒されたのだろうか?
わたしも狂っているのだろうか?
わたしは否定しながらも彼と逢瀬を重ねるうちに、過去の恋と、愛、今のわたしの愛。恋が重なってどんどん彼に傾倒していった。
彼はわたしにあんな暴力を働いた人なのに・・わたしはそんなに愚かな愚かな女だったの?わたしは自分が解らなくなっていった。嗚呼でも魂が彼を愛していると慕っていると語っている。
今生のわたしには恋する人はいなかった。強いて言えばカイト様だったが、彼はわたしを愛していなかった。彼の望みはアレフ・ノーラン家の力だった。カイト様は自分の家を守るのにわたしへの偽りの恋を囁いた。
わたしは真実と嘘がいつのまにか分かるようになっていた。
これはとても無惨な目にあった過去のわたしへの神様の贈り物だろうか?
わたしは思い切って、過去との決着をつけるため、ハリアン公爵と寝た。
とても夢のような時間だった。彼も私のなにかに惹かれた様だ。嗚呼・・過去の恋人だと無意識に気付いているのかもしれない。でも彼は過去の娼婦の名を呼ばなかった。
わたしも彼の過去の名をまだ思い出せない。
或るのは唯、懐かしさと慕わしさ。夢のような快楽に満ちた性交だった。残虐で狂った男なのに、こんなに惹かれるなんてわたしも頭がおかしかったのね・・
嗚呼・・アイシャ。わたしの愛する妹や弟シンにはこの関係を知られたくない。
唯の貴族の娘が見初められたありふれた恋愛と思ってほしい。
わたしもこの狂った関係に惑っているのだから・・わたしは必死で普通の貴族の娘を演じる。
高位の男に惚れた無知な貴族の娘としてわたしは彼と居たかった。
過去は忘れたかった。でも時折恐怖と共に彼を拒絶しそうになる。そんな時娼婦時代の女将の言葉が蘇る。
女が別れを言ってはいけない。男が飽きるまで待てと。
彼女の言葉は正しかった。
わたしは唯、彼との愛に溺れた。従順で彼を満たす女として居たかった。
恐怖、嫌悪と共に思慕、愛、悲しみが時折わたしの心を乱すが、わたしは彼に知られたくなかった。
時々体調が悪くなると彼に言った。
彼は大事にせよとそっけなくわたしに言った。僅かな心配と甘い情がわたしの心に流れ込む。
嗚呼・・こんな心も彼にはあるのね。彼は僅かだがわたしを思っている。
かれの心の真実がわたしに伝わってくる。かれは異形の者だ。
わたしもおかしいけど、かれは多分かつての妻を殺している。わたしと同様に不興をかったのだろうか?
ハリアン公爵の息子ハーデイは、かつてなく寵愛されるわたしを見て僅かに複雑な顔をした。
偉大なる親。崇拝もしている彼がわたしを気に入ったのか気に入らないらしい。
彼は殺された母親をどう思っているのだろう・・
ハリアン公爵の弟シリンもなかなか残忍だ。
わたしを誘惑しようとした。これは嘘だ。わたしに彼を裏切らせて残虐な罰を与えようとしている。わたしは彼の邪悪な意図が見えた。
わたしはぴしゃりと断った。「わたしは公爵様のものです。公爵の意向にしか従いません。」
大人しいわたしがはっきりと拒絶の言葉を吐くなど思いもよらなかっただろう。
シリンは顔を醜悪に歪めた。これが彼の本性だ。
わたしは淡々と彼を見た。
「飽きられるぜ・・お前如き女はいくらでもいる・・。」
彼は娼婦だった私だったら動揺するような言葉を囁いた。しかし今のわたしは貴族の娘でもある。
こんなバカげたそそのかしに負けるものか。
「確かにわたしは唯の貴族の娘です。でもわたしの主は貴方ではありません。貴方に言われる筋合いはありません。」
わたしはシリンを見据えていった。
「わたしの主人はハリアン公爵です。」
凛とわたしはシリンから離れた。 この毒のような男から離れたかった。
わたしは清めたかった。侍女に命じてわたしは温かいお風呂に入る。
なにもかも洗い流してしまいたい・・わたしはゆっくりと入った。
ハリアン公爵は家の中ならどこでもみれる水晶玉を持っていた。
彼は自分の部屋でわたしとシリンの会話。シリンを退けた事。わたしが嫌悪のあまり、お風呂で体を清めていることもなにもかも一部始終、見ていた。
ハリアンは子どものように笑いながら見ていたが、わたしが体を清めているのを見ると、だんだん無表情になっていった。彼の心境はわからない。
わたしは唯の愚かな愚かな女だ。彼に恋する愚かな女だ。
わたしはお風呂で目を瞑った。 彼は今もわたしを監視しているのだろうか?
わたしにはわからない。 わたしはとても広い大浴場で体を浮かした。
嗚呼。このまま沈んたら気持ちいかしら。私は潜った。
過去の冷たい冷たい海とは違う。温かい水だわ・・私を温めてくれる。
わたしは唯の愚かな恋人だ。
わたしも狂っているのだろうか?
わたしは否定しながらも彼と逢瀬を重ねるうちに、過去の恋と、愛、今のわたしの愛。恋が重なってどんどん彼に傾倒していった。
彼はわたしにあんな暴力を働いた人なのに・・わたしはそんなに愚かな愚かな女だったの?わたしは自分が解らなくなっていった。嗚呼でも魂が彼を愛していると慕っていると語っている。
今生のわたしには恋する人はいなかった。強いて言えばカイト様だったが、彼はわたしを愛していなかった。彼の望みはアレフ・ノーラン家の力だった。カイト様は自分の家を守るのにわたしへの偽りの恋を囁いた。
わたしは真実と嘘がいつのまにか分かるようになっていた。
これはとても無惨な目にあった過去のわたしへの神様の贈り物だろうか?
わたしは思い切って、過去との決着をつけるため、ハリアン公爵と寝た。
とても夢のような時間だった。彼も私のなにかに惹かれた様だ。嗚呼・・過去の恋人だと無意識に気付いているのかもしれない。でも彼は過去の娼婦の名を呼ばなかった。
わたしも彼の過去の名をまだ思い出せない。
或るのは唯、懐かしさと慕わしさ。夢のような快楽に満ちた性交だった。残虐で狂った男なのに、こんなに惹かれるなんてわたしも頭がおかしかったのね・・
嗚呼・・アイシャ。わたしの愛する妹や弟シンにはこの関係を知られたくない。
唯の貴族の娘が見初められたありふれた恋愛と思ってほしい。
わたしもこの狂った関係に惑っているのだから・・わたしは必死で普通の貴族の娘を演じる。
高位の男に惚れた無知な貴族の娘としてわたしは彼と居たかった。
過去は忘れたかった。でも時折恐怖と共に彼を拒絶しそうになる。そんな時娼婦時代の女将の言葉が蘇る。
女が別れを言ってはいけない。男が飽きるまで待てと。
彼女の言葉は正しかった。
わたしは唯、彼との愛に溺れた。従順で彼を満たす女として居たかった。
恐怖、嫌悪と共に思慕、愛、悲しみが時折わたしの心を乱すが、わたしは彼に知られたくなかった。
時々体調が悪くなると彼に言った。
彼は大事にせよとそっけなくわたしに言った。僅かな心配と甘い情がわたしの心に流れ込む。
嗚呼・・こんな心も彼にはあるのね。彼は僅かだがわたしを思っている。
かれの心の真実がわたしに伝わってくる。かれは異形の者だ。
わたしもおかしいけど、かれは多分かつての妻を殺している。わたしと同様に不興をかったのだろうか?
ハリアン公爵の息子ハーデイは、かつてなく寵愛されるわたしを見て僅かに複雑な顔をした。
偉大なる親。崇拝もしている彼がわたしを気に入ったのか気に入らないらしい。
彼は殺された母親をどう思っているのだろう・・
ハリアン公爵の弟シリンもなかなか残忍だ。
わたしを誘惑しようとした。これは嘘だ。わたしに彼を裏切らせて残虐な罰を与えようとしている。わたしは彼の邪悪な意図が見えた。
わたしはぴしゃりと断った。「わたしは公爵様のものです。公爵の意向にしか従いません。」
大人しいわたしがはっきりと拒絶の言葉を吐くなど思いもよらなかっただろう。
シリンは顔を醜悪に歪めた。これが彼の本性だ。
わたしは淡々と彼を見た。
「飽きられるぜ・・お前如き女はいくらでもいる・・。」
彼は娼婦だった私だったら動揺するような言葉を囁いた。しかし今のわたしは貴族の娘でもある。
こんなバカげたそそのかしに負けるものか。
「確かにわたしは唯の貴族の娘です。でもわたしの主は貴方ではありません。貴方に言われる筋合いはありません。」
わたしはシリンを見据えていった。
「わたしの主人はハリアン公爵です。」
凛とわたしはシリンから離れた。 この毒のような男から離れたかった。
わたしは清めたかった。侍女に命じてわたしは温かいお風呂に入る。
なにもかも洗い流してしまいたい・・わたしはゆっくりと入った。
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彼は自分の部屋でわたしとシリンの会話。シリンを退けた事。わたしが嫌悪のあまり、お風呂で体を清めていることもなにもかも一部始終、見ていた。
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わたしは唯の愚かな愚かな女だ。彼に恋する愚かな女だ。
わたしはお風呂で目を瞑った。 彼は今もわたしを監視しているのだろうか?
わたしにはわからない。 わたしはとても広い大浴場で体を浮かした。
嗚呼。このまま沈んたら気持ちいかしら。私は潜った。
過去の冷たい冷たい海とは違う。温かい水だわ・・私を温めてくれる。
わたしは唯の愚かな恋人だ。
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