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第4章 アイシャの章
第6話 お喋りな雀
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わたくしは、子どものころのわたくしを貴女、よく考えてと言いたかった。過去に戻って過去のわたくしに言いたいことはいっぱいある。でもその時その時、わたくしなりに生きていたので、もう何も言えない。
わたくしは唯、オーデイン家の正妻として学ぶことで精一杯だった。
オーデイン家には不思議と体のどこかが損傷している者が使用人として仕えていた。なにかの呪いだろうか?
隻眼の人も居れば、片足がない人も居る、松葉杖ついている。
わたくしの侍女として、二人ジルから配置された。監視?守護?
わたくしはどうでもよかった。
わたくしごときの反抗など些細なものだ。わたくしは溜息をついて名前は?と命じた。
マリとミアと申します。 年長の肩まである濃厚な蜂蜜色をしたマリが白いシャツと黒いスカートの侍女姿で礼儀正しくお辞儀した。綺麗な緑色の瞳をしていた。年少のミアも同様の姿をしているが、とても小柄で丸い黒ぶちの眼鏡をつけていて愛らしかった。マリは美しかったが、ミアは愛らしく雀のようにお喋りだった。
マリとミアは姉妹だ。
わたくしは微笑んで、「これからよろしくね。マリさん。ミアさん。」とカーテシーをした。
彼女たちも有力者の娘だろう。品位を感じる。
わたくしは彼女たちと仲良くすることにした。
ミアは快活だが、少々、頭が抜けていて、興奮するとお喋りになる性質で、よくマリに諫められていた。
お喋りな雀さん。わたくしは不謹慎にもミアをそう思わずにはいられなかった。
「アイシャ様。奥様がいらっしゃって嬉しいです。ここには女性が少ないんですよ。ジル様は女嫌いで、なかなか女を寄せ付けないんです。私たちは縁戚で力もあったから、有用な価値があると思って奥様のお付きとして配置されました。」
「奥様も気づいていらっしゃいましたか。ジル様は女嫌いで小姓ばかりつけていたんです。それも美しい少年や青年ばかりです。あの方は男のほうが好みでいらっしゃいましたから。」
「ジル様の思い人はおそらく幼馴染のアルベルト・サイラスという男爵の次男ですよ。いつも共に遊んだり、親しくしていましたから。あまりにも仲が良いのでみんな薄々きづいていましたよ。」
「奥様はどうなさいますか・・ジル様は・・」
わたくしはわたくしに有益な情報を与えてくれた雀に感謝した。
わたくしはいつかジルに離縁されるまでここオーデイン家に居ようと決めた。
これは或る意味、わたくしに与えられた試練なのかもしれない。世の中はお前の見ている夢ばかりではないと・・
神様がわたくしに現実を突きつけたのかもしれない・・
わたくしはそう思い、正妻として修行をすることにした。
ジルはわたくしを気に入らないと忌みながらも正妻として置いている。
おかしな精神を持っている。わたくしだったら嫌な人とはすぐに別れるのだが・・
後に、ジル・オーデインと言う方は、わたくしが処女だと分かり、傷物として貴族の世界に嘲笑されるよりはこのままオーデイン家の正妻として置いた方が、わたくしの名誉を守ることにもなるだろうと思ったそうだ。
わたくしは相当阿婆擦れと思われていたのだろうか?
不思議に思って夫になったジルに問いかけると、「嫌。そうではない・・唯、結婚前に遊んでいる貴婦人は俺の周囲には多かったから、てっきりお前もそうだと思って・・。」
彼はすまなそうに言った。
わたくしは呆れた。相当、貴族社会は乱れていたらしい。お父様の守護は強かったわけね・・
「わたくしが処女で驚きましたか?ジル様は男のほうがお好きと聞きましたか・・」
ジルはああ・・と溜息をついてわたくしに呟いた。
「俺は女を愛せないんだよ。男のほうが好きなんだ。恋人も居る。でも子どもはやはりほしい。
お前にはすまないと思っているが、子作りだけはさせてくれ・・。」
わたくしはしばらく考えさせてくださいと夫に言った。
「子どもですか・・わたくし以外の人でもできるのでは・・。」
「いいや。お前の子どもでいい。お前の処女を奪ったのは俺だ。もう今更他の女となんかやりたくない。女はお前がはじめてだ。」
わたくしは呆然となった。つまり処女と童貞でやったということになるのか・・
わたくしは「分かりました。少し時をお待ち下さい。痛かったのですから・・。」
少し罪悪感を催させるように恨みを込めた声音で応えた。
「閨の手ほどき。もう少し子作りについて柔らかく指導してくれる方をお姉様に相談します。」
「そうすれば早く子作りの儀式は終わるでしょう。お互いに解放されます。」
わたくしは柔らかく懇願した。
ジルはためらいの表情を見せた。だが了承した。その方が良いだろうと彼も思ったのだ。
やはりあの悪夢の初夜はお互い痛かったらしい・・わたくしは精神的にも肉体的にもダメージを受けたが、ジルは精神的に嫌悪している女に触れたから辛かっただろう。
お父様もとんでもないお方をわたくしの結婚相手にしたものだ。いや、確かに性癖を除けば、わたくしの理想の相手だった。まさか女がダメだったとは・・
人生は何かあるかわからない・・わたくしは驚愕するようなことばかりであった。
わたくしは唯、オーデイン家の正妻として学ぶことで精一杯だった。
オーデイン家には不思議と体のどこかが損傷している者が使用人として仕えていた。なにかの呪いだろうか?
隻眼の人も居れば、片足がない人も居る、松葉杖ついている。
わたくしの侍女として、二人ジルから配置された。監視?守護?
わたくしはどうでもよかった。
わたくしごときの反抗など些細なものだ。わたくしは溜息をついて名前は?と命じた。
マリとミアと申します。 年長の肩まである濃厚な蜂蜜色をしたマリが白いシャツと黒いスカートの侍女姿で礼儀正しくお辞儀した。綺麗な緑色の瞳をしていた。年少のミアも同様の姿をしているが、とても小柄で丸い黒ぶちの眼鏡をつけていて愛らしかった。マリは美しかったが、ミアは愛らしく雀のようにお喋りだった。
マリとミアは姉妹だ。
わたくしは微笑んで、「これからよろしくね。マリさん。ミアさん。」とカーテシーをした。
彼女たちも有力者の娘だろう。品位を感じる。
わたくしは彼女たちと仲良くすることにした。
ミアは快活だが、少々、頭が抜けていて、興奮するとお喋りになる性質で、よくマリに諫められていた。
お喋りな雀さん。わたくしは不謹慎にもミアをそう思わずにはいられなかった。
「アイシャ様。奥様がいらっしゃって嬉しいです。ここには女性が少ないんですよ。ジル様は女嫌いで、なかなか女を寄せ付けないんです。私たちは縁戚で力もあったから、有用な価値があると思って奥様のお付きとして配置されました。」
「奥様も気づいていらっしゃいましたか。ジル様は女嫌いで小姓ばかりつけていたんです。それも美しい少年や青年ばかりです。あの方は男のほうが好みでいらっしゃいましたから。」
「ジル様の思い人はおそらく幼馴染のアルベルト・サイラスという男爵の次男ですよ。いつも共に遊んだり、親しくしていましたから。あまりにも仲が良いのでみんな薄々きづいていましたよ。」
「奥様はどうなさいますか・・ジル様は・・」
わたくしはわたくしに有益な情報を与えてくれた雀に感謝した。
わたくしはいつかジルに離縁されるまでここオーデイン家に居ようと決めた。
これは或る意味、わたくしに与えられた試練なのかもしれない。世の中はお前の見ている夢ばかりではないと・・
神様がわたくしに現実を突きつけたのかもしれない・・
わたくしはそう思い、正妻として修行をすることにした。
ジルはわたくしを気に入らないと忌みながらも正妻として置いている。
おかしな精神を持っている。わたくしだったら嫌な人とはすぐに別れるのだが・・
後に、ジル・オーデインと言う方は、わたくしが処女だと分かり、傷物として貴族の世界に嘲笑されるよりはこのままオーデイン家の正妻として置いた方が、わたくしの名誉を守ることにもなるだろうと思ったそうだ。
わたくしは相当阿婆擦れと思われていたのだろうか?
不思議に思って夫になったジルに問いかけると、「嫌。そうではない・・唯、結婚前に遊んでいる貴婦人は俺の周囲には多かったから、てっきりお前もそうだと思って・・。」
彼はすまなそうに言った。
わたくしは呆れた。相当、貴族社会は乱れていたらしい。お父様の守護は強かったわけね・・
「わたくしが処女で驚きましたか?ジル様は男のほうがお好きと聞きましたか・・」
ジルはああ・・と溜息をついてわたくしに呟いた。
「俺は女を愛せないんだよ。男のほうが好きなんだ。恋人も居る。でも子どもはやはりほしい。
お前にはすまないと思っているが、子作りだけはさせてくれ・・。」
わたくしはしばらく考えさせてくださいと夫に言った。
「子どもですか・・わたくし以外の人でもできるのでは・・。」
「いいや。お前の子どもでいい。お前の処女を奪ったのは俺だ。もう今更他の女となんかやりたくない。女はお前がはじめてだ。」
わたくしは呆然となった。つまり処女と童貞でやったということになるのか・・
わたくしは「分かりました。少し時をお待ち下さい。痛かったのですから・・。」
少し罪悪感を催させるように恨みを込めた声音で応えた。
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「そうすれば早く子作りの儀式は終わるでしょう。お互いに解放されます。」
わたくしは柔らかく懇願した。
ジルはためらいの表情を見せた。だが了承した。その方が良いだろうと彼も思ったのだ。
やはりあの悪夢の初夜はお互い痛かったらしい・・わたくしは精神的にも肉体的にもダメージを受けたが、ジルは精神的に嫌悪している女に触れたから辛かっただろう。
お父様もとんでもないお方をわたくしの結婚相手にしたものだ。いや、確かに性癖を除けば、わたくしの理想の相手だった。まさか女がダメだったとは・・
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