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第3章 運命の輪
第12話 朽ちた愛
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水底へ海底に沈んた愛は蘇ることは或るのだろうか?
だとしたらそれこそが奇跡だ。
わたしは過去の私の記憶の影響を受けて妙に醒めきった意識を持つようになってしまった。
運命は再びわたしと彼を結び付けていこうとする。
これは何かの因果だろうか?
わたしに過去の復讐を成せといっているのだろうか?いいえ。もう私はそんな思いはない。唯、確かめたいだけだ。
私を殺した恋人にどんな思いを抱くのか?
わたしも随分狂っているのだろうか?
わたしにはわからない。
朽ちた愛・・白骨こそがその象徴だ。
わたしは、王都の公爵の大広間で彼が来るのを待っている。
わたしは貴族とはいえ、末端である。やはりここでも身分階級社会は激しい。
わたしは彼の興を損ねないよう注意しなければならない。唯でさえ女の扱いは軽い。
わたしは表向き、楚々としたどこにでもいる貴族の娘の風情をした。
少し心もとなさそうに俯く。
なかなかいい感じだ。誰かがわたしを操るようにわたしは息をするように演技をする。
わたしを敵視する貴族や。好奇の目で見る人達。 軽蔑の感情もある。嗚、擬視感を感じる。
かつての私と同じではないか・・もうわたしは慣れてしまった。
わたしは全てを知らぬふりをする。
使用人が、「公爵がいらっしゃいました。」と伝えた。
ああ・・あの男がやって来るのだ。 荒々しい靴音が聞こえる。
わたしは夢見るように彼を待ちうけた。
今生でのわたしの男。情人となる男を待っている。
扉が開いた。 精悍な荒々しい灰色の髪と赤い瞳。獰猛な残虐な性質を持った人。
息子らしき人も控えていた。
彼は爛々とわたしを見た。わたしは唯、夢見るように彼を見た。
嗚呼・・前世とはやはり少し違うわね。 前世はもっと優雅でその性質を隠し持っていたけど・・
その本性。魂は変わらない。
わたしは微笑んで淑女の礼儀をした。優雅なカーテシーをした。
貴族たるもの。感情をあまりみせてはならない。
にやりと彼は歪んた笑顔をして、乱暴にわたしに近寄った。 わたしは淑女の微笑で感情を隠した。
少し怖かった。 彼はわたしの頤をあげた。なかなか美しいな。
わたしは嬉しかった。誰だって容姿を褒められるのは嬉しいものだ。
ほんの少しわたしは頬を赤らめた。
彼は当然のようにわたしを抱きしめ、わたしを所有物とした。そういう傲慢なところは変わっていない。
わたしは内心苦笑した。
息子や、使用人も控えている前で、彼は堂々とわたしを寵妃と言う愛人にした。
わたしはそれを受け入れた。少し震えているのを彼はわかっていただろう。
獲物の怯えを彼は楽しんでいるように見えた。
わたしにはわからない。唯、彼と会ってどんな思いを抱くのか知りたかった。
かすかな恐怖と思慕が混然とわたしの中に渦巻く。
わたしは身を硬くしながら彼の抱擁を受け入れた。
これから彼と閨を共にするのだろう。わたしは処女だ。でも意識は娼婦の知識が或る。
怪しまれないだろうか?彼は私を覚えているだろうか?
わたしはわからない。彼が性急に荒々しくわたしの髪を掴みわたしの唇に口づけた。舌までわたしの中へ侵入しようとしている。この男はわたしが舌を噛み切ることは考えないのだろうか?
わたしは不思議と受け入れた。娼婦の時、下手に抗うと暴力的な男は女を痛めつけることを学んだ。
わたしは恐る恐るぎこちなく彼の舌をわたしの舌で絡み合わせた。
わたしの腕は彼の背中へ回った。
無垢で愚かな娼婦のような娘に見えただろうか? なんだか口づけは苦くて甘かった。
わたしは少し涙を浮かべた。
初めての強烈な口づけにわたしは動揺していたのだろうか?
「真珠姫の娘よ。 海の女神と名付けられた娘よ。ネリア。怖いか? だがお前は俺の女になることを受け入れた。
今更怖気つくまいな?」
わたしはかすかに首を振った。
「わたしは受け入れました。貴方のものです。公爵様。」
淡々と感情を交えずわたしは彼を見た。
これからどうなるのかわたしにはわからなかった。
だとしたらそれこそが奇跡だ。
わたしは過去の私の記憶の影響を受けて妙に醒めきった意識を持つようになってしまった。
運命は再びわたしと彼を結び付けていこうとする。
これは何かの因果だろうか?
わたしに過去の復讐を成せといっているのだろうか?いいえ。もう私はそんな思いはない。唯、確かめたいだけだ。
私を殺した恋人にどんな思いを抱くのか?
わたしも随分狂っているのだろうか?
わたしにはわからない。
朽ちた愛・・白骨こそがその象徴だ。
わたしは、王都の公爵の大広間で彼が来るのを待っている。
わたしは貴族とはいえ、末端である。やはりここでも身分階級社会は激しい。
わたしは彼の興を損ねないよう注意しなければならない。唯でさえ女の扱いは軽い。
わたしは表向き、楚々としたどこにでもいる貴族の娘の風情をした。
少し心もとなさそうに俯く。
なかなかいい感じだ。誰かがわたしを操るようにわたしは息をするように演技をする。
わたしを敵視する貴族や。好奇の目で見る人達。 軽蔑の感情もある。嗚、擬視感を感じる。
かつての私と同じではないか・・もうわたしは慣れてしまった。
わたしは全てを知らぬふりをする。
使用人が、「公爵がいらっしゃいました。」と伝えた。
ああ・・あの男がやって来るのだ。 荒々しい靴音が聞こえる。
わたしは夢見るように彼を待ちうけた。
今生でのわたしの男。情人となる男を待っている。
扉が開いた。 精悍な荒々しい灰色の髪と赤い瞳。獰猛な残虐な性質を持った人。
息子らしき人も控えていた。
彼は爛々とわたしを見た。わたしは唯、夢見るように彼を見た。
嗚呼・・前世とはやはり少し違うわね。 前世はもっと優雅でその性質を隠し持っていたけど・・
その本性。魂は変わらない。
わたしは微笑んで淑女の礼儀をした。優雅なカーテシーをした。
貴族たるもの。感情をあまりみせてはならない。
にやりと彼は歪んた笑顔をして、乱暴にわたしに近寄った。 わたしは淑女の微笑で感情を隠した。
少し怖かった。 彼はわたしの頤をあげた。なかなか美しいな。
わたしは嬉しかった。誰だって容姿を褒められるのは嬉しいものだ。
ほんの少しわたしは頬を赤らめた。
彼は当然のようにわたしを抱きしめ、わたしを所有物とした。そういう傲慢なところは変わっていない。
わたしは内心苦笑した。
息子や、使用人も控えている前で、彼は堂々とわたしを寵妃と言う愛人にした。
わたしはそれを受け入れた。少し震えているのを彼はわかっていただろう。
獲物の怯えを彼は楽しんでいるように見えた。
わたしにはわからない。唯、彼と会ってどんな思いを抱くのか知りたかった。
かすかな恐怖と思慕が混然とわたしの中に渦巻く。
わたしは身を硬くしながら彼の抱擁を受け入れた。
これから彼と閨を共にするのだろう。わたしは処女だ。でも意識は娼婦の知識が或る。
怪しまれないだろうか?彼は私を覚えているだろうか?
わたしはわからない。彼が性急に荒々しくわたしの髪を掴みわたしの唇に口づけた。舌までわたしの中へ侵入しようとしている。この男はわたしが舌を噛み切ることは考えないのだろうか?
わたしは不思議と受け入れた。娼婦の時、下手に抗うと暴力的な男は女を痛めつけることを学んだ。
わたしは恐る恐るぎこちなく彼の舌をわたしの舌で絡み合わせた。
わたしの腕は彼の背中へ回った。
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わたしは少し涙を浮かべた。
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「真珠姫の娘よ。 海の女神と名付けられた娘よ。ネリア。怖いか? だがお前は俺の女になることを受け入れた。
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わたしはかすかに首を振った。
「わたしは受け入れました。貴方のものです。公爵様。」
淡々と感情を交えずわたしは彼を見た。
これからどうなるのかわたしにはわからなかった。
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