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第3章 運命の輪
第11話 婚約破棄
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わたし、ネリアの人生は時折、不安になるぐらい幸福で順調そのもだった。
カイトには、激しい熱情がないものの、淡い恋愛感情は抱いて穏やかな結婚関係は築けそうだと思った。
カイトも同じように思っていたらしい。勿論、貴族には正妻のほかにも愛人は居る。
それが男の甲斐性だと言う者もいる。それを許せない嫉妬深い妻も居るらしいが、私はそこまでカイトには執着がない。
友人以上の思いを抱いているだけだ。
わたしにも秘密は或る。前世のわたしは娼婦で恋人に殺された事だ。
あの男がどこかに心に棲みついている。恐怖と恋慕。愛。
私は何と未練深いのだろう。でも男も転生していた。あのデピュタントのバルコニーではっきりと男の魂がわかった。容姿は違えともどこか性質がよく似ていた。残虐性があるが魅力的な獣。
許せないという気持ちもあるが、どこかでまた会いたいとも思っていた。
わたしは不安を抱えながら、カイトとの交際を続けていた。こどものような交際。
彼といると安らぎを得た。彼には感謝している。
でもわたしには忘れられない人がいた。
だからだろうか?運命の神はいきなりわたしに試練を与える。
「カイト男爵と婚約破棄をしてくれ。カイト家が何か上の人の不興をかったらしい。カイト家は今追い詰められている。余計な助けをすれば、我が家も危うい。」
お父様が蒼白な顔でわたしにすまないといいながら、婚約破棄を命じた。
お父様が恐れるということは相当上の権力がある人なのだろうか?元々激しい恋愛ではなかったためわたしに異存はなかったが、カイト様は大丈夫だろうか・・。薄情だが貴族にはこういうことがよく或る。
家に不利益が出るような事態になったらいつでも婚約は破棄されるのだ。
わたしはお父様に大丈夫ですわと言って、カイト様に別れの手紙を書きたいとお願いした。
お父様もそれは許してくれた。
なんだが寂しいがわたしとカイト様の縁はその程度だったのだ。
わたしはカイト様に、一時は婚約した相手。貴方と一緒にいるときは楽しかったです。でもわたしはお父様の娘。
我が家が不利になるようなことは避けたい。本当に申し訳ありませんが、婚約破棄を申し立てます。
カイト様が新しい幸福をつかむようにお祈り申し上げます。との旨を書いて、伝令に手紙をカイト家に渡した。
カイト様。さようなら。負けずに幸福を掴んでください。
わたしはそう祈った。
数日後、王都からの手紙がお父様あてに来た。
お父様は蒼白になって震えながらわたしに手紙の内容を伝えた。
わたしは不思議と予期していた。ああ・・彼か。
王都でも有数の大権力者 ハリアン・クリス・クリステル公爵がわたしを見初めて私を寵妃にしたいそうだ。
あの男も私の魂に気づいたのだろうか・・彼には前世の記憶はあるのだろうか?
わたしはそれをどうしても確かめたかった。過去の運命と対峙したかった。
わたしはお父様に微笑んで、了承した。わたしを寵妃にするような殿方の顔を見てみたいと面白そうにわたしは笑ってお父様に大丈夫と言いながら、公爵の命令を受け入れた。
「お前は彼と会ったことがあるのか?なんだかこの事を予期していたみたいだな・・」
お父様は娘の言動に敏感なところがある。
「ええ・・デピュタントで或る殿方と目が合ったことがあるの。なんだか気になって・・多分その方が公爵だわ。」
「わたしをお気に召したみたいね。」
ふうと、わたしは溜息をついた。
「何とかうまくやってみるわ。安心して。お父様。」
わたしはお父様を上手く宥めて、公爵の寵妃となることにした。
未来はどうなるかわからない。でもこの未来は過去と対面することにもなる。
わたしは逃げたくなかった。
お父様はお前がそういうなら・・と渋々と了承した。
アイシャは呆然と王都へ・・?公爵の寵妃へとなるの。お姉様が・・カイト様はどうなるの・・?と呟いた。
急激な私の運命の変化についていけなかったらしい。
シンは複雑そうにわたしを見た。
「これで良かったのか?カイトは好きではなかったのか?もしいやだったら・・」
わたしは嫌ではないと答えた。
「カイト様は好ましいお方だったけど淡々とした関係だった。そんなことよりわたしを気に入ったお方が気になるの
しかも公爵ですって。わたしには雲上の人よ。驚いたわね。行ってみたいわ。」
わたしはなるべく気軽にだが真剣に弟に答えた。
「ネリアがそういうのならば・・何があったらいつでも我が家に状況を伝えろ。」
「ハインツ公爵は偉大なお方だが、その反面嫌な噂も多い。噂の中には真実も秘められていることが多い。」
「そうでしょうね。権力があるお方には、決して綺麗事では言えない何かがあるのでしょう。お父様もそうだったもの。」
わたしは頷いた。でもわたしは既に行くことを決心していた。わたしは一度殺されたことがあるのだ。
もう恐れるものか。わたしのかつての恋人。愛した人。裏切り裏切られた人。彼に殺された哀れな娼婦。
決着をつけるのだ。これが神様の計らいなのだ。
数週間後、わたしはお父様とお母様が用意した品物を馬車に乗せてわたしというネリア妃を乗せて、馬車は王都へ向った。
お父様とお母様はさよならとお互いに手を振りあった。わたしも馬車の窓から手を振りあった。
アイシャは涙が出そうだから別れにはいかないと家に引きこもった。
シンは両親の背後で苦々しい複雑な顔で手を小さく振っていた。
それが最初の家族との別れだった。呆気ないが仕方がない。親と子は一度は必ず離れていくのだ。
もうわたしは子どもではない。
カイトには、激しい熱情がないものの、淡い恋愛感情は抱いて穏やかな結婚関係は築けそうだと思った。
カイトも同じように思っていたらしい。勿論、貴族には正妻のほかにも愛人は居る。
それが男の甲斐性だと言う者もいる。それを許せない嫉妬深い妻も居るらしいが、私はそこまでカイトには執着がない。
友人以上の思いを抱いているだけだ。
わたしにも秘密は或る。前世のわたしは娼婦で恋人に殺された事だ。
あの男がどこかに心に棲みついている。恐怖と恋慕。愛。
私は何と未練深いのだろう。でも男も転生していた。あのデピュタントのバルコニーではっきりと男の魂がわかった。容姿は違えともどこか性質がよく似ていた。残虐性があるが魅力的な獣。
許せないという気持ちもあるが、どこかでまた会いたいとも思っていた。
わたしは不安を抱えながら、カイトとの交際を続けていた。こどものような交際。
彼といると安らぎを得た。彼には感謝している。
でもわたしには忘れられない人がいた。
だからだろうか?運命の神はいきなりわたしに試練を与える。
「カイト男爵と婚約破棄をしてくれ。カイト家が何か上の人の不興をかったらしい。カイト家は今追い詰められている。余計な助けをすれば、我が家も危うい。」
お父様が蒼白な顔でわたしにすまないといいながら、婚約破棄を命じた。
お父様が恐れるということは相当上の権力がある人なのだろうか?元々激しい恋愛ではなかったためわたしに異存はなかったが、カイト様は大丈夫だろうか・・。薄情だが貴族にはこういうことがよく或る。
家に不利益が出るような事態になったらいつでも婚約は破棄されるのだ。
わたしはお父様に大丈夫ですわと言って、カイト様に別れの手紙を書きたいとお願いした。
お父様もそれは許してくれた。
なんだが寂しいがわたしとカイト様の縁はその程度だったのだ。
わたしはカイト様に、一時は婚約した相手。貴方と一緒にいるときは楽しかったです。でもわたしはお父様の娘。
我が家が不利になるようなことは避けたい。本当に申し訳ありませんが、婚約破棄を申し立てます。
カイト様が新しい幸福をつかむようにお祈り申し上げます。との旨を書いて、伝令に手紙をカイト家に渡した。
カイト様。さようなら。負けずに幸福を掴んでください。
わたしはそう祈った。
数日後、王都からの手紙がお父様あてに来た。
お父様は蒼白になって震えながらわたしに手紙の内容を伝えた。
わたしは不思議と予期していた。ああ・・彼か。
王都でも有数の大権力者 ハリアン・クリス・クリステル公爵がわたしを見初めて私を寵妃にしたいそうだ。
あの男も私の魂に気づいたのだろうか・・彼には前世の記憶はあるのだろうか?
わたしはそれをどうしても確かめたかった。過去の運命と対峙したかった。
わたしはお父様に微笑んで、了承した。わたしを寵妃にするような殿方の顔を見てみたいと面白そうにわたしは笑ってお父様に大丈夫と言いながら、公爵の命令を受け入れた。
「お前は彼と会ったことがあるのか?なんだかこの事を予期していたみたいだな・・」
お父様は娘の言動に敏感なところがある。
「ええ・・デピュタントで或る殿方と目が合ったことがあるの。なんだか気になって・・多分その方が公爵だわ。」
「わたしをお気に召したみたいね。」
ふうと、わたしは溜息をついた。
「何とかうまくやってみるわ。安心して。お父様。」
わたしはお父様を上手く宥めて、公爵の寵妃となることにした。
未来はどうなるかわからない。でもこの未来は過去と対面することにもなる。
わたしは逃げたくなかった。
お父様はお前がそういうなら・・と渋々と了承した。
アイシャは呆然と王都へ・・?公爵の寵妃へとなるの。お姉様が・・カイト様はどうなるの・・?と呟いた。
急激な私の運命の変化についていけなかったらしい。
シンは複雑そうにわたしを見た。
「これで良かったのか?カイトは好きではなかったのか?もしいやだったら・・」
わたしは嫌ではないと答えた。
「カイト様は好ましいお方だったけど淡々とした関係だった。そんなことよりわたしを気に入ったお方が気になるの
しかも公爵ですって。わたしには雲上の人よ。驚いたわね。行ってみたいわ。」
わたしはなるべく気軽にだが真剣に弟に答えた。
「ネリアがそういうのならば・・何があったらいつでも我が家に状況を伝えろ。」
「ハインツ公爵は偉大なお方だが、その反面嫌な噂も多い。噂の中には真実も秘められていることが多い。」
「そうでしょうね。権力があるお方には、決して綺麗事では言えない何かがあるのでしょう。お父様もそうだったもの。」
わたしは頷いた。でもわたしは既に行くことを決心していた。わたしは一度殺されたことがあるのだ。
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シンは両親の背後で苦々しい複雑な顔で手を小さく振っていた。
それが最初の家族との別れだった。呆気ないが仕方がない。親と子は一度は必ず離れていくのだ。
もうわたしは子どもではない。
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