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第3章 運命の輪
第4話 婚約者
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ここ、舞踏会では3回同じ相手と踊ったら、その者と婚約者候補になると暗黙の了解がある。
知らないのは、デピュタントする貴族の娘だけだ。
勿論、どうしても気に要らぬ相手は親が阻止する。
いわば出来レースみたいなもだ。親の思惑と娘や息子の意志が合ったら幸福な婚約となる。
しかし不一致になったら不幸な婚約となり、破棄される。
ネリアは、父の勧められたカイト・ジーフ男爵家の長男カイトと中央の大広間にいる。
他の踊っている人たちのように、教わったワルツを音楽に沿って、踊っている。
カイトは実直で誠実な人柄だ。容姿も端正で女性を傷つけないように見えた。
前世の事でネリアは内心男に対して警戒していたが、お父様も信頼できる男の様でネリアは安堵した。
この人なら安心して恋ができるかもしれない。
ぎこちなくも徐々にネリアとカイトの舞踏は上手くなっていった。
1回目はぎこちなく、2回目は慣れてきた。
これが3回目の舞踏だ。
ネリアはその前に、小休止をすることにした。疲れたのだ。
他の人たちも慣れない舞踏をして疲れている。
彼らも最後の踊りを前に一休みしている。
ネリアは少しお腹が痛くなったので、トイレへ行くと両親に行った。
トイレで用を済ませて、水で火照った顔と手を清めた。
しばらく外気に当たりたいとバルコニーへ歩いた。
彼が私の婚約者になるのだろうか・・なんだか実感がわかなかった。生きるのに精いっぱいでネリアは新しい恋ができるとは思っても居なかった。
想像がつかない・・
不意に視線を感じた。不思議に思って振り向くと、父親ぐらいの年代の風格のある男が居た。
精悍な美しいというには荒々しい雰囲気の男がじっとネリアを見つめていた。
どきりとネリアの中の微睡む魂が‥嗚呼まさか・・と呟いた。
彼?彼だわ‥嗚呼何でことなの。まだあってしまうなんて・・神様。何の悪戯なの。
恐怖と僅かな恋慕、愛。何この感情・・これは彼女の・・いけない彼女に引きずり込まれる。
ネリアは頬を紅潮して、わずかに瞳を潤ませた。 怯えと恋慕。その妖艶な表情に男は目を見開いた。
少し男は笑った。嗚呼その軽侮するような顔も変わっていない。馬鹿ね。容姿も何もかも違うのに微笑だけは同じだなんで・・
ネリアは踵を返して速足で男から逃げるように去った。
お父様が心配そうに探していたのでネリアはほっとした。
男の目が忘れられなかった。 無機質な目が、ネリアが恋慕の感情を滲ませた顔をすると、驚愕するように色を変えた。
神様。これは運命なのだろうか・・
ネリアは、いや彼女は思った。間違いなく彼は私を殺した恋人だ。彼も転生していたんだ。
彼は記憶はあるのだろうか・・
もう関わりたくない。あんなつらい恋はしたくない。
ネリアは、にこやかにごまかして、カイトと3回目の舞踏をした。
アレフ男爵は頬を緩ませた。これでネリアはつづかなくカイト・ジーフの婚約者になった。
カイト・ジーフ家は仕事でも濃密に関わっている。
お互いに同盟しているから、ネリアは丁重にアレフ家から嫁いだ正式な花嫁になる。
カイトも、ネリアの事を存外気にいっていたようだ。
少々、昔の愛人や恋人関係が気になるが・・
アレフはカイトの経歴を調査していた。向こうも調査しているだろう。どこから見てもネリアは深窓の令嬢だ。
傷一つない。
しかし、アレフはまあ年ごろの男だから浮名も流しただろう。
やはり、相当恋愛関係にあった相手はいた。しかしどの人も長く続かなかった。
彼は熱しやすく冷めやすいのだろう。そういうタイプは恋愛に向いていなくても結婚相手に向いている。
本来貴族の結婚は政略と信頼の延長だからだ。現実的でもあり、共に利益をお互いに与えあうシビアな関係だ。
そこに愛や情が入るのは稀だ。
まあ、俺と妻は例外だが・・ネリアなら大丈夫だろう。あの娘は意外としっかりしている。
知らないのは、デピュタントする貴族の娘だけだ。
勿論、どうしても気に要らぬ相手は親が阻止する。
いわば出来レースみたいなもだ。親の思惑と娘や息子の意志が合ったら幸福な婚約となる。
しかし不一致になったら不幸な婚約となり、破棄される。
ネリアは、父の勧められたカイト・ジーフ男爵家の長男カイトと中央の大広間にいる。
他の踊っている人たちのように、教わったワルツを音楽に沿って、踊っている。
カイトは実直で誠実な人柄だ。容姿も端正で女性を傷つけないように見えた。
前世の事でネリアは内心男に対して警戒していたが、お父様も信頼できる男の様でネリアは安堵した。
この人なら安心して恋ができるかもしれない。
ぎこちなくも徐々にネリアとカイトの舞踏は上手くなっていった。
1回目はぎこちなく、2回目は慣れてきた。
これが3回目の舞踏だ。
ネリアはその前に、小休止をすることにした。疲れたのだ。
他の人たちも慣れない舞踏をして疲れている。
彼らも最後の踊りを前に一休みしている。
ネリアは少しお腹が痛くなったので、トイレへ行くと両親に行った。
トイレで用を済ませて、水で火照った顔と手を清めた。
しばらく外気に当たりたいとバルコニーへ歩いた。
彼が私の婚約者になるのだろうか・・なんだか実感がわかなかった。生きるのに精いっぱいでネリアは新しい恋ができるとは思っても居なかった。
想像がつかない・・
不意に視線を感じた。不思議に思って振り向くと、父親ぐらいの年代の風格のある男が居た。
精悍な美しいというには荒々しい雰囲気の男がじっとネリアを見つめていた。
どきりとネリアの中の微睡む魂が‥嗚呼まさか・・と呟いた。
彼?彼だわ‥嗚呼何でことなの。まだあってしまうなんて・・神様。何の悪戯なの。
恐怖と僅かな恋慕、愛。何この感情・・これは彼女の・・いけない彼女に引きずり込まれる。
ネリアは頬を紅潮して、わずかに瞳を潤ませた。 怯えと恋慕。その妖艶な表情に男は目を見開いた。
少し男は笑った。嗚呼その軽侮するような顔も変わっていない。馬鹿ね。容姿も何もかも違うのに微笑だけは同じだなんで・・
ネリアは踵を返して速足で男から逃げるように去った。
お父様が心配そうに探していたのでネリアはほっとした。
男の目が忘れられなかった。 無機質な目が、ネリアが恋慕の感情を滲ませた顔をすると、驚愕するように色を変えた。
神様。これは運命なのだろうか・・
ネリアは、いや彼女は思った。間違いなく彼は私を殺した恋人だ。彼も転生していたんだ。
彼は記憶はあるのだろうか・・
もう関わりたくない。あんなつらい恋はしたくない。
ネリアは、にこやかにごまかして、カイトと3回目の舞踏をした。
アレフ男爵は頬を緩ませた。これでネリアはつづかなくカイト・ジーフの婚約者になった。
カイト・ジーフ家は仕事でも濃密に関わっている。
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