水底の恋 天上の花

栗菓子

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第3章 運命の輪

第2話 ハリアン公爵視点

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ハリアン・クリス・クリステル公爵は、世襲制で代々同じ名である。
特殊な家系で、先祖代々名前を先代が死んだら名を継ぐようになっている。
貴族は、大抵良い血筋を保つために、優秀な者をかけあわせて嫡子を創ったり、美貌の愛人や側室も持つため、容姿や能力や頭脳に優れた人は多い。

ここシリウス王国は、かつては海賊であった貴族もいる。大昔、大戦があり、海賊の領土と、大陸の侵攻があり、戦は混然となった。多くの犠牲者を出す戦は100年以上続いた。
疲弊しきった民や、貴族は余力のある内に、和平を申し出た。
海賊の長 シリウスは、神代のころ、夫神リーンを亡くした天空の女神ソラは嘆き悲しみ、彼女の涙は、多くの島々を生み出したというその島々を統べるスメラギという異邦の女王と婚姻をし、僅かに天空の女神の力が宿る神力で民を守った。
大陸は全てを掌握しようとしたが、島々の女王スメラギとシリウスの婚姻により同盟は固く結ばれ、大陸の力を退却させた。
シリウス王国は、海賊と島々の国なのだ。
王都シリウスでは年に1回 デビュタントのため舞踏会が催される。それは貴族同士の婚姻の約束が結ばれる時でもある。彼らはより良い生活と優秀な子孫を求め競い合う。

シリウスは狼の名でもある。獰猛な獣の血を引いた一族だ。蛮族と言われてもハリアンは己の一族を気にいっていた。 

時折、婚約相手を気に入らず殺してしまう若者もいるがそれは運命だと彼は超然としていた。

さて運の良いやつと運の悪いやつはどんなふうにわかれるのか?

彼は高みの見物をすることにした。


後に、彼はシリウス王国の滅亡をみずから招いた愚者として伝承に残ることになった。
その話はまだ後の事である。


ハリアン公爵は気だるげに舞踏会へと赴いた。息子ハーデイと弟シリンも退屈な貴族との交流をするだろう。
つまらぬ・・彼は全てに飽きていた。
戦で数えきれないぐらい人を殺した。時には容赦なく泣き喚く赤子も子どもも殺した。
必要なら焼き滅ぼしたりもした。
女も数えきれないぐらい戦場で嬲ったりした。妻は息子を出産した後、あと腐れなく殺害した。
遺体は本物の森の狼に喰わせた。
女は煩い。肉体は好きだが彼は戦にしか興味がなかった。
妻の両親は嘆き喚いて、夫ハリアンに憎悪の目を向けたが何がいけないのだ。妻がいけないのだ。
夫の心を射止めぬ事が出来ぬつまらない女だったからだ。政略結婚とはいえ煩わしかった。


さて息子ハーデイや弟シリンはどのような嫁を迎えるのか?
妻と同様の運命を辿るのかな・・彼は嗜虐的な笑みを浮かべた。


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