9 / 66
第3章 運命の輪
第1話 デビュタント
しおりを挟む
ゆっくりと時は流れ、いつしか子どもは成長し、年ごろの息子や娘となる。
貴族の結婚は早い。特に娘は初潮がきて14才になったらいつでもお嫁に行けると言われている。
しかし精神はどうなのかしら。すんなり受け入れる人も居れば、泣きながら嫌がる人も居るわ。
個人差と言えばそれまでかもしれないけど・・
ネリアは香油で丁寧に梳き、艶のある髪を丁寧に結い上げ、淡い色のチュニックドレスを着た。
身だしなみは大事だ。前世の影響もあって、ネリアは爪も綺麗に磨き上げている。
爪は人に見せる先端のものだ。体調がわかる。
ネリアの爪は桃色で健康だ。
既にネリアの元には求婚の手紙が多く来ている。
若くそれなりに美しく、階級は低い男爵家だが、大金持ちだ。
アレフ・ノーラン家は貴族の影を背負う一家でもある。
ネリアの元に来るのは、大商人の正妻や、同じ階級の男爵家の長男との婚姻などだ。
アレフの愛娘であるネリアに懸想する人は決して少なくない。
柔らかな茶色の髪、青い瞳、地味だがどこか妖艶な顔 愛らしいが謎めいた貴族の娘。
お父様は、溜息をついて「厄介だな。娘の結婚相手を選ぶのがこんなに難しいとは・・」
求婚の手紙の束を見て、悩んでいた。
くすりとネリアは笑った。お父様の愛が嬉しかった。
「お父様。お茶にいたしましょう。お母様も待っているわ。」
アレフ・ノーラン家は小さな温室がある。そこには異国の花や植物を咲かしていて一種の楽園みたいな状態になっている。 鳥や蝶も放し飼いにしている。
その中に白い奇妙な文様をしたテープルと椅子が置かれている。
お母様はそこでお茶とお菓子を召し上がるのがお好きだ。勿論、ネリアもなかなか気に入っている。
「おお。そうだな・・」
お母様はお父様に寵愛されて益々美しくなっていた。
アレフの歌姫。真珠の涙姫とお母様は言われている。
お父様は決してお母様を傷つけるような奴らを許さなかった。ここはお父様が作ったお母様だけの楽園だわ。
小麦粉と砂糖と卵を混ぜて作ったお菓子。甘い蜂蜜。 体に良い薬草のハーブティー。幸福の食卓。
ネリアとお母様とお父様は団欒をした。
「このお菓子。美味しいわね。これは新しく雇った料理人が作ったのかしら。」
「ええ・・お母様。この地方では有名な料理人みたい。お父様が雇ったのよ。」
「まあ、どんな方かしら。貴方・・一度会ってみたいわ。」
「そうだな・・冴えない奴だが、腕は一流だ。でなければ雇わんよ。」
お父様は料理人を呼び寄せた。
確かに冴えない人だが、清潔で目が綺麗だった。
「アルと申します。如何でしたか。お気に召しましたか?」
「ええ・・とても美味しかったわ。有難う。これからもよろしくお願いしますね。」
お母様は満面の笑顔で言った。
「かしこまりました。」
アルは礼儀正しくお辞儀した。マナーも礼儀も行き届いているらしい。
「お父様。良い料理人を見つけたわね。」
「ああ・・良いだろう。」
お父様は嬉しそうに笑った。
「それはそうと、お前 王宮の舞踏会にデビュタントしてみないか?
一度は、王都を見るのもいいだろう・・お前も適齢期だから、交際する相手に会えるかも知れない。」
「ええ、そうかもしれないけど私のような田舎者が出ても大丈夫かしら。だって王都は最先端の流行や
洗練した人達が多いのでしょう・・。」
「大丈夫だ・・お前は淑女教育も受けている。」
「ほんのひと時だ。不愉快な目にはあうまい。」
ネリアはお父様をエスコートとして、王宮の舞踏会へデビュタントすることになった。
顧問の衣装仕立て屋に頼んでデビュタント用の衣装を注文した。
髪飾りや、他の飾りも宝石屋に見繕ってもらうことにした。
これからわたしの新たな運命がはじまるらしい。わたしはどんな人と出会うのだろう。
不安だが未知の旅に出る高揚感もまたある。
ネリアは微笑んだ。
数か月後、ネリアは王宮の舞踏会の日時に合わせて、馬車に乗ってお父様とお母様と一緒に同行することになる。
弟や妹は、まだ幼いからと家に留守ということになった。
妹は頬を膨らませたが、妹もあと数年で適齢期だ。貴女もあと少しでデビュタントだから・・と宥めながら
弟シンに妹をお願いねと頼んだ。
シンは嫌そうな顔をしたが、しぶしぶと頷いた。
兄弟仲はそんなに悪くないから大丈夫だろうとネリアは思った。
貴族の結婚は早い。特に娘は初潮がきて14才になったらいつでもお嫁に行けると言われている。
しかし精神はどうなのかしら。すんなり受け入れる人も居れば、泣きながら嫌がる人も居るわ。
個人差と言えばそれまでかもしれないけど・・
ネリアは香油で丁寧に梳き、艶のある髪を丁寧に結い上げ、淡い色のチュニックドレスを着た。
身だしなみは大事だ。前世の影響もあって、ネリアは爪も綺麗に磨き上げている。
爪は人に見せる先端のものだ。体調がわかる。
ネリアの爪は桃色で健康だ。
既にネリアの元には求婚の手紙が多く来ている。
若くそれなりに美しく、階級は低い男爵家だが、大金持ちだ。
アレフ・ノーラン家は貴族の影を背負う一家でもある。
ネリアの元に来るのは、大商人の正妻や、同じ階級の男爵家の長男との婚姻などだ。
アレフの愛娘であるネリアに懸想する人は決して少なくない。
柔らかな茶色の髪、青い瞳、地味だがどこか妖艶な顔 愛らしいが謎めいた貴族の娘。
お父様は、溜息をついて「厄介だな。娘の結婚相手を選ぶのがこんなに難しいとは・・」
求婚の手紙の束を見て、悩んでいた。
くすりとネリアは笑った。お父様の愛が嬉しかった。
「お父様。お茶にいたしましょう。お母様も待っているわ。」
アレフ・ノーラン家は小さな温室がある。そこには異国の花や植物を咲かしていて一種の楽園みたいな状態になっている。 鳥や蝶も放し飼いにしている。
その中に白い奇妙な文様をしたテープルと椅子が置かれている。
お母様はそこでお茶とお菓子を召し上がるのがお好きだ。勿論、ネリアもなかなか気に入っている。
「おお。そうだな・・」
お母様はお父様に寵愛されて益々美しくなっていた。
アレフの歌姫。真珠の涙姫とお母様は言われている。
お父様は決してお母様を傷つけるような奴らを許さなかった。ここはお父様が作ったお母様だけの楽園だわ。
小麦粉と砂糖と卵を混ぜて作ったお菓子。甘い蜂蜜。 体に良い薬草のハーブティー。幸福の食卓。
ネリアとお母様とお父様は団欒をした。
「このお菓子。美味しいわね。これは新しく雇った料理人が作ったのかしら。」
「ええ・・お母様。この地方では有名な料理人みたい。お父様が雇ったのよ。」
「まあ、どんな方かしら。貴方・・一度会ってみたいわ。」
「そうだな・・冴えない奴だが、腕は一流だ。でなければ雇わんよ。」
お父様は料理人を呼び寄せた。
確かに冴えない人だが、清潔で目が綺麗だった。
「アルと申します。如何でしたか。お気に召しましたか?」
「ええ・・とても美味しかったわ。有難う。これからもよろしくお願いしますね。」
お母様は満面の笑顔で言った。
「かしこまりました。」
アルは礼儀正しくお辞儀した。マナーも礼儀も行き届いているらしい。
「お父様。良い料理人を見つけたわね。」
「ああ・・良いだろう。」
お父様は嬉しそうに笑った。
「それはそうと、お前 王宮の舞踏会にデビュタントしてみないか?
一度は、王都を見るのもいいだろう・・お前も適齢期だから、交際する相手に会えるかも知れない。」
「ええ、そうかもしれないけど私のような田舎者が出ても大丈夫かしら。だって王都は最先端の流行や
洗練した人達が多いのでしょう・・。」
「大丈夫だ・・お前は淑女教育も受けている。」
「ほんのひと時だ。不愉快な目にはあうまい。」
ネリアはお父様をエスコートとして、王宮の舞踏会へデビュタントすることになった。
顧問の衣装仕立て屋に頼んでデビュタント用の衣装を注文した。
髪飾りや、他の飾りも宝石屋に見繕ってもらうことにした。
これからわたしの新たな運命がはじまるらしい。わたしはどんな人と出会うのだろう。
不安だが未知の旅に出る高揚感もまたある。
ネリアは微笑んだ。
数か月後、ネリアは王宮の舞踏会の日時に合わせて、馬車に乗ってお父様とお母様と一緒に同行することになる。
弟や妹は、まだ幼いからと家に留守ということになった。
妹は頬を膨らませたが、妹もあと数年で適齢期だ。貴女もあと少しでデビュタントだから・・と宥めながら
弟シンに妹をお願いねと頼んだ。
シンは嫌そうな顔をしたが、しぶしぶと頷いた。
兄弟仲はそんなに悪くないから大丈夫だろうとネリアは思った。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる