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第2章 新しい家族
妹 アイシャの視点
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お姉様ったら!私が絵本を見てお姫様を自分と重ねて夢想したところを見て、くすりと笑ったのね!
駄目よ。私が子どもだからって侮らないでね。
でも不思議だわ。お姉様もここ以外知らないはずのお姫様なのにね。
お母様も不思議だった。歌姫って貴族ではないんでしょ。平民だったはずよ。なのにお父様に見初められてあれよあれよと貴族になったって。そんなことってある?
お父様は笑って、世の中には裏話や、抜け道があるんだよと貴族の養子縁組を多額のお金でお母様を貴族の養女にしたっていったわ。そうまでしてお父様はお母様を正妻にしたかったのね。
よほど大好きだったんだわ。お母様もお父様が好きで良かった。
「でもずるくないかしら。汚くないかしら。」と私は素朴な疑問を抱いた。
お父様は笑い転げた。なんだかお父様は私といると笑ってばかりだわ。
「 あのな。世の中にはどうしても好きな人と正式に添い遂げたいと思ったら汚くないんだよ。
お父様より汚い奴らはいっぱいいるよ。狡猾で人を人とも思わない奴らをお父様はいっぱい見てきたんだ。
お父様はお母様のような美しく優しい女に出会えてよかったと思える。お母様のお陰で、世界は嗚呼綺麗だと思えるようになったんだ。それを愛というんだよ。まだ子どものお前には分らないだろうね。
でも、汚いことをやったから、お母様は正式に妻になった。お前もこの家では正式な次女 アイシャ 貴族の娘なんだよ。誰にも恥じぬことはない。お父様以上に恥ずべき事をやっている人は上位貴族にはたくさんいるのだから。」
私はびっくりした。そんなことってあるだろうか?
お父様は上位貴族の裏話や汚い仕事を請け負っているから、たくさん汚い面を見ているんだ・・と寂しげに呟いた。
なんだか私はお父様が可哀相になった。
お父様は嫌にならなかったんだろうか?そんな仕事ばかりして・・
世の中はそんなに綺麗じゃないみたいだ。お父様の話を聞くと少し怖くなる。
お姉様は既に知り尽くしたり、どこか人を見透かすところがある。
何だろう。お姉様はお父様とお母様に愛されて誰にも傷つけられないで生きていたはずなのに・・
お姉様は無邪気な貴族の娘として幸福に生きてきたのに、どこか深淵をのぞきこんでいるような雰囲気もあった。
とても怖い光が届かないところへお姉様は時折生きていたような気がする。
凡庸な貴族の娘の陰に何かが潜んでいるみたいだった。
私は思い切ってお姉様に尋ねたことがある。
「お姉様は魔女なの?」
お姉様は目をばちくりとしてぷっとお父様のように笑った。嗚呼。こういうところお父様そっくり。
お姉様は手を振って、「唯の貴族の娘よ。唯、貴女も知らない夢を見るだけよ。とてもとても怖い夢をね。
とても怖くて恐ろしい夢だったわ。嗚呼二度とあんな悪夢はみたくない。」
お姉様は虚ろな目で呟いた。なんだか妖艶で私はときめいた。
お姉様は地味で凡庸なのに時折花開くように妖艶な顔を見せる。
お姉様の名前は海の女神だそうよ。神秘的じゃない。
私もあんな風に大人になれたら王子様を射止めて見せるのに。嗚呼私も早く運命の人が欲しいわ。
彼女は夢見がちで、恋に恋する乙女だった。
それでも家族のことは愛していたから、家族のことは良く知っていた。
不可解な面もあることをアイシャは既に知っていた。
アイシャは幸福な子ども時代を無知なまま、この愛する家族で暮らそうと誓った。
多分大人になると嫌な事。辛いこともたくさんあるのだろう。
その時までアイシャは無邪気に愛らしい妹であり続けるのだ。
駄目よ。私が子どもだからって侮らないでね。
でも不思議だわ。お姉様もここ以外知らないはずのお姫様なのにね。
お母様も不思議だった。歌姫って貴族ではないんでしょ。平民だったはずよ。なのにお父様に見初められてあれよあれよと貴族になったって。そんなことってある?
お父様は笑って、世の中には裏話や、抜け道があるんだよと貴族の養子縁組を多額のお金でお母様を貴族の養女にしたっていったわ。そうまでしてお父様はお母様を正妻にしたかったのね。
よほど大好きだったんだわ。お母様もお父様が好きで良かった。
「でもずるくないかしら。汚くないかしら。」と私は素朴な疑問を抱いた。
お父様は笑い転げた。なんだかお父様は私といると笑ってばかりだわ。
「 あのな。世の中にはどうしても好きな人と正式に添い遂げたいと思ったら汚くないんだよ。
お父様より汚い奴らはいっぱいいるよ。狡猾で人を人とも思わない奴らをお父様はいっぱい見てきたんだ。
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でも、汚いことをやったから、お母様は正式に妻になった。お前もこの家では正式な次女 アイシャ 貴族の娘なんだよ。誰にも恥じぬことはない。お父様以上に恥ずべき事をやっている人は上位貴族にはたくさんいるのだから。」
私はびっくりした。そんなことってあるだろうか?
お父様は上位貴族の裏話や汚い仕事を請け負っているから、たくさん汚い面を見ているんだ・・と寂しげに呟いた。
なんだか私はお父様が可哀相になった。
お父様は嫌にならなかったんだろうか?そんな仕事ばかりして・・
世の中はそんなに綺麗じゃないみたいだ。お父様の話を聞くと少し怖くなる。
お姉様は既に知り尽くしたり、どこか人を見透かすところがある。
何だろう。お姉様はお父様とお母様に愛されて誰にも傷つけられないで生きていたはずなのに・・
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とても怖い光が届かないところへお姉様は時折生きていたような気がする。
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「お姉様は魔女なの?」
お姉様は目をばちくりとしてぷっとお父様のように笑った。嗚呼。こういうところお父様そっくり。
お姉様は手を振って、「唯の貴族の娘よ。唯、貴女も知らない夢を見るだけよ。とてもとても怖い夢をね。
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