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第2話 苦痛
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最下層の売春窟は、汚泥と人々が捨てる塵で溢れている。 安酒に溺れた男たちは、世界を見放し、小便や糞を所かまわずする獣のように退化した。
恥や、周囲の目がもはやはいらず、目先の欲しか考えられなくなっている。
ほんとうに搾取されたものは、自分がなにをされているか全く把握していない 何も知らないものたち。
驚くほど世界に鈍感で物欲しかない。脳はすでに酒や薬や毒などで侵されていてまともな考えはできない人がほとんどだ。
売春宿で生まれた女はありきたりの道を歩んだ。やはり やり手のババアに仕込まれて売春婦になるのだ。
時折骨が折れるぐらいの折檻もされたが、お陰で女は従順で良い女になった。
女は運が良いと思っている。 だって逆らった罰として目や鼻や手を潰された奴らは多いのだ。
女は凡庸であったが、何故かしてはならないことが分かっていた。 一線がくっきりとみえることがある。
媚薬で慣らされた母親は、どうやら生まれながらの娼婦を生んだらしい。
ほおと女は溜息をついた。 凡庸で冴えない顔をしている女は特定の客に寵愛されていていた。
特徴もない顔立ちと、生気のない陰をまとった女は亡霊みたいだった。
時折、女は、己を慕う物好きな男の望みを無意識に叶えた。
男を邪魔と思っている下賤な奴。 馬鹿な人。 確実にこの男のほうが人間として上だった。
奴隷にもなぜか視えない階級はあるのだ。 有象無象をまとめる力量のある人間や、器量の大きい人間
愛情深い人間 、懐深い人間 引き換え浅ましい人間、 己の子さえも欲の犠牲にして満たされようとする親
醜悪な人間もたくさんたくさんあった。
母親はいつも寝台で真っ白な足を大きく拡げてお客を受け入れていた。
酒と媚薬で慣らされていた母親は、ほとんどを夢の中で生きていた。
弱者にはその方がいいのかもしれないと女はかすかに悟った。
でも時折狂った嬌声から、かすかな苦痛に満ちた悲鳴が出る。嗚呼 正気に戻ったんだ。
「タスケテ タスケテ コワイ」
ささやかな声を女は聞くのが嫌だった。 大きく顔が歪んてしまうから。この異常ないびつなところで慣らされた
親子が生き延びるために狂っているのに、正気に戻ってしまうから、あとは地獄だ。
無意識に女は、男の邪魔になる下劣な男に、弱いから盗みはいい。生きるためとか、高貴な者への反発とか少しずつ
ぼやきで囁いた。
暗示で下劣な男は、なぜか 自分は特別な使命をもっている誇大妄想を持つようになった。
ある日、 清廉潔白で有名な貴族の家に忍び込んた彼は、金の杯とか、仲間を連れ奪おうとした。
愚かだ。 あとで必ず殺される。貴族がそう甘いわけはない。
しかし狂った獣は、貴族を数人殺害して、子どもたちも犯し屠ったらしい。
女は間接的にその下劣な男の破滅を誘導したことになる・・。 いやだれも女の罪を暴く人はいない。
そんなに女は価値はないからだ。
女はどこかでそう甘く認識していたが、 なぜか紅潮している男は、嬉し気に女を見ていた。
嗚呼この物好きな男は、私をずっと見ていたんだ。 私が男が、苦しんでいたのを見て、なにか考えて、下劣な男に
近寄って何かを話している瞬間をずっと見ていたんだ。
女は恐怖を覚えていたが、すぐに諦念にかられた。
『見たの。私があいつに何を囁いたのか・・』
「ああ・・ありがとう。僕のためだろう。僕はあいつのお陰で苦しんでいた。あいつより僕の方が優秀だから嫌がらせや逆恨みを受けて居た・・。 あんたが何故あんなやつに近寄ったのかと不審に思って後を追ったんだ。
あんたは上手くあいつを乗せて破滅へ向かわせた・・。」
「私を捕縛するかい・・。貴族様を殺してしまった理由にもなるし・・。」
女には生きる気力が無かった。母親がいるから仕方かなく生きているだけだった。
深い溜息をついて屠殺される豚の気分を味わった。
「いいや。あんたは見事だよ。」
男の顔は太陽の影に隠れて三日月に歪んた笑いだけが印象的だった。
「あんたは、生き残る能力に長けているよ。 それになんか後を引く魅力もある。あんたは世間知らずの男をその気になったら虜にできる。」
くすりと女を笑いそうになった。こんな卑しい女誰か所望するものか。 もう年増なのに、愛らしさもないのにと男に反論した。
私より艶麗で頭が良い女たちは数多といるのだ。 そんなお世辞にのるものかと女は男に叫んだ。
男は三日月の笑いをして、いつになく酷薄な顔と口調をした。
「くくく くく 大丈夫ですよ。珍しい者が好きな男は結構いるのです。 それにあなたは恐らく体質が媚薬そのものに近いですよ。貴方も分かっていたでしょう。 母親は媚薬つけだったから子どもはどうなるのかと思ったでしょう。 そうですよ。大抵奇形や異常出産が多いけど、あなたみたいに五体満足で体に執着する客が多い人は恐らく匂いですよ。」
嗚呼・・・・ 不意に女は自分でも薄々と気づいていた事実に直面された。
やはり変だったのだ。女に夢中になった男はどこか目が血走り、女の体そのものを舐めつくし、とろんとしていた。
無知な女でもなにか変だと違和感があった。
なんということ。男のほうがはるかに女を知っている。
「 僕・・いや俺のためにこいよ。そうすればお前の母親もお前も少しはましな待遇を受ける。仕事をしてくれたならな・・。あのささやきみたいな仕事だよ。」
嗚呼・・更なる地獄が待っている。 でももう女も母親も限界を超えて壊れている。
もういいのかもしれない。 悩みながらも、女は男に従った。
「自分と母親を少しだけましなところに連れて行ってくれるのならあなたに従う。逆らわない。」
それは奴隷誓約と同じ約束だった。 もういいのだ。十分に生きたからここで朽ち果てるのはごめんだ。
くすりと男は酷薄な笑みをした。
「いいよ。約束だよ。裏切らないように。」
女は何度も頷いた。
女は微かな怯えを感じながらも男に従った。これが大きな女の運命の転機だった。
恥や、周囲の目がもはやはいらず、目先の欲しか考えられなくなっている。
ほんとうに搾取されたものは、自分がなにをされているか全く把握していない 何も知らないものたち。
驚くほど世界に鈍感で物欲しかない。脳はすでに酒や薬や毒などで侵されていてまともな考えはできない人がほとんどだ。
売春宿で生まれた女はありきたりの道を歩んだ。やはり やり手のババアに仕込まれて売春婦になるのだ。
時折骨が折れるぐらいの折檻もされたが、お陰で女は従順で良い女になった。
女は運が良いと思っている。 だって逆らった罰として目や鼻や手を潰された奴らは多いのだ。
女は凡庸であったが、何故かしてはならないことが分かっていた。 一線がくっきりとみえることがある。
媚薬で慣らされた母親は、どうやら生まれながらの娼婦を生んだらしい。
ほおと女は溜息をついた。 凡庸で冴えない顔をしている女は特定の客に寵愛されていていた。
特徴もない顔立ちと、生気のない陰をまとった女は亡霊みたいだった。
時折、女は、己を慕う物好きな男の望みを無意識に叶えた。
男を邪魔と思っている下賤な奴。 馬鹿な人。 確実にこの男のほうが人間として上だった。
奴隷にもなぜか視えない階級はあるのだ。 有象無象をまとめる力量のある人間や、器量の大きい人間
愛情深い人間 、懐深い人間 引き換え浅ましい人間、 己の子さえも欲の犠牲にして満たされようとする親
醜悪な人間もたくさんたくさんあった。
母親はいつも寝台で真っ白な足を大きく拡げてお客を受け入れていた。
酒と媚薬で慣らされていた母親は、ほとんどを夢の中で生きていた。
弱者にはその方がいいのかもしれないと女はかすかに悟った。
でも時折狂った嬌声から、かすかな苦痛に満ちた悲鳴が出る。嗚呼 正気に戻ったんだ。
「タスケテ タスケテ コワイ」
ささやかな声を女は聞くのが嫌だった。 大きく顔が歪んてしまうから。この異常ないびつなところで慣らされた
親子が生き延びるために狂っているのに、正気に戻ってしまうから、あとは地獄だ。
無意識に女は、男の邪魔になる下劣な男に、弱いから盗みはいい。生きるためとか、高貴な者への反発とか少しずつ
ぼやきで囁いた。
暗示で下劣な男は、なぜか 自分は特別な使命をもっている誇大妄想を持つようになった。
ある日、 清廉潔白で有名な貴族の家に忍び込んた彼は、金の杯とか、仲間を連れ奪おうとした。
愚かだ。 あとで必ず殺される。貴族がそう甘いわけはない。
しかし狂った獣は、貴族を数人殺害して、子どもたちも犯し屠ったらしい。
女は間接的にその下劣な男の破滅を誘導したことになる・・。 いやだれも女の罪を暴く人はいない。
そんなに女は価値はないからだ。
女はどこかでそう甘く認識していたが、 なぜか紅潮している男は、嬉し気に女を見ていた。
嗚呼この物好きな男は、私をずっと見ていたんだ。 私が男が、苦しんでいたのを見て、なにか考えて、下劣な男に
近寄って何かを話している瞬間をずっと見ていたんだ。
女は恐怖を覚えていたが、すぐに諦念にかられた。
『見たの。私があいつに何を囁いたのか・・』
「ああ・・ありがとう。僕のためだろう。僕はあいつのお陰で苦しんでいた。あいつより僕の方が優秀だから嫌がらせや逆恨みを受けて居た・・。 あんたが何故あんなやつに近寄ったのかと不審に思って後を追ったんだ。
あんたは上手くあいつを乗せて破滅へ向かわせた・・。」
「私を捕縛するかい・・。貴族様を殺してしまった理由にもなるし・・。」
女には生きる気力が無かった。母親がいるから仕方かなく生きているだけだった。
深い溜息をついて屠殺される豚の気分を味わった。
「いいや。あんたは見事だよ。」
男の顔は太陽の影に隠れて三日月に歪んた笑いだけが印象的だった。
「あんたは、生き残る能力に長けているよ。 それになんか後を引く魅力もある。あんたは世間知らずの男をその気になったら虜にできる。」
くすりと女を笑いそうになった。こんな卑しい女誰か所望するものか。 もう年増なのに、愛らしさもないのにと男に反論した。
私より艶麗で頭が良い女たちは数多といるのだ。 そんなお世辞にのるものかと女は男に叫んだ。
男は三日月の笑いをして、いつになく酷薄な顔と口調をした。
「くくく くく 大丈夫ですよ。珍しい者が好きな男は結構いるのです。 それにあなたは恐らく体質が媚薬そのものに近いですよ。貴方も分かっていたでしょう。 母親は媚薬つけだったから子どもはどうなるのかと思ったでしょう。 そうですよ。大抵奇形や異常出産が多いけど、あなたみたいに五体満足で体に執着する客が多い人は恐らく匂いですよ。」
嗚呼・・・・ 不意に女は自分でも薄々と気づいていた事実に直面された。
やはり変だったのだ。女に夢中になった男はどこか目が血走り、女の体そのものを舐めつくし、とろんとしていた。
無知な女でもなにか変だと違和感があった。
なんということ。男のほうがはるかに女を知っている。
「 僕・・いや俺のためにこいよ。そうすればお前の母親もお前も少しはましな待遇を受ける。仕事をしてくれたならな・・。あのささやきみたいな仕事だよ。」
嗚呼・・更なる地獄が待っている。 でももう女も母親も限界を超えて壊れている。
もういいのかもしれない。 悩みながらも、女は男に従った。
「自分と母親を少しだけましなところに連れて行ってくれるのならあなたに従う。逆らわない。」
それは奴隷誓約と同じ約束だった。 もういいのだ。十分に生きたからここで朽ち果てるのはごめんだ。
くすりと男は酷薄な笑みをした。
「いいよ。約束だよ。裏切らないように。」
女は何度も頷いた。
女は微かな怯えを感じながらも男に従った。これが大きな女の運命の転機だった。
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