あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

栗菓子

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第37話 ソールの楽園

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タネコとイチハの子孫である男の子は、前代ソールを倒して、新しいソールとなった。

新しいソールは、水のあるところを探し当て、そこから泉をみるみると創り出した。

その水を糧に、複数の種もすくすくと育ち、灼熱の太陽にも負けぬ強い頑丈で強い植物が多く繫栄した。
密林のようになり、その辺りは、灼熱の太陽さえも遮り、気持ち良い風が漂い、人間や獣に心地よい楽園になった。
何故か、植物の木に実る大きな硬い実は、割ると、甘い汁が出て、これを飲むと体が健康になっていった。
青紫の小さな実も食べると、酸っぱいが、紫外線に痛めつけられた視力が上がったりして、ソールの創り出した楽園は、全てが健康になるモノばかりだった。


ソールの創った楽園は、小動物も子どもを産み、生き物に住みやすい楽園となった。

毒蟲や、害虫も出てくるはずだが、ソールはそれを避ける匂いを生み出す花を創った。
ソールが住む界隈は花だらけで満開であった。
美しい原色の花達に囲まれた一つの家は、幻想的で、ソールの住み家に相応しかった。


ソールは、基本的に共存ということで、先住民と穏やかに生きていたが、どうしても排除しようとする戦闘的な人たちとは戦った。結果はソールの楽勝だった。

ソールには、上位生命体の力が濃厚にあった。ソールは水も探し当てたり、楽園も創れる。ならば、人体の水分を蒸発することもできる。

ソールはやむを得ず、敵の体内の水分と空気を奪った。その敵はたちまち干からびてミイラのようになった。

彼らはその無惨な死体に恐れをなして、恭順の態勢をとった。

なかには暗殺しようとする蛮勇の者もいた。ソールは彼らを呆気なく捕え、奴隷紋をつけて、一生逆らわないようにした。

仕方がないのだ。あまりにも攻撃する敵は、いっそ殺すよりは奴隷と言う屈辱的な立場に置いて、精神的に屈服させるしかない。

ソールにはもう弱肉強食の世界にいて、その方がより効果的だと最適の行動をとった。


ソールはここらへんの新しい支配者となった。

基本的に動物や、原住民は放置にしていた。それを彼らも察して、大人しい支配者をそっとしておこうと距離を置いた。


ソールが創った植物はソールの分身でもある。ソールも植物の一部であるから・・。
植物が外敵を教えてくれる。 始祖のタネコとイチハや、他の同胞隊の行方もその気になれば、念話や夢見で見ることができる。会うこともできる。

だからソールは一人でも寂しくなかった。 ソールは年を取らなかった。ソールはだんだん非人間的になっていった。


ソールは、長い間、この界隈の民や動物などに恵みも与えたが、恐怖も与えた。

時折、思いあがった奴らが何を勘違いしたのが、より良いものを創れと傲慢にも命じたのだ。

これには流石にソールも怒りの気配を見せた。


そんな馬鹿なことを言った奴らには相応の報いを受けさせた。毒蟲が多い穴に拘束して突き落としたのだ。

彼らはギャアアと喚きながら、悪かった。許してくれと汚い言葉で泣き喚きながら叫んだ。

『お前たちは俺が何でも与える者と思って要るのか?とんだ間違いよ。』

ソールは非人間的に目を光らせて、冷酷無情に呟いた。

これがソールの厳しい掟だった。 己を軽んじる者は容赦なく処罰する。

それは正しい事だった。

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