あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

栗菓子

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第36話 ラテル 視点

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ラテル皇子は、ガリア王国の奥の宮で、享楽と房事や麻薬、ありとあらゆる退廃と悪徳にふけっていた。

ガリア王家は、長命種でもあり、何千年もいきる者もいる。どうやらガリア王家の血を引く者は、寿命を自分で決められる力を有しているらしい。

生き飽きたらすぐに、死への意志へ向って息絶える一族を見た時、ラテルはふうんと無感動に思うだけだった。

こんなに世界は面白いのに勿体な事よと思ったものだ。

ガリア王家の異常性はラテルにもあり、他人が玩具としか見なさない己しかいない世界に彼らは生きていた。


そんな折、ラテルの血を引くゼーンと言う男が、ナラと言う奇妙な女の虜になって、駆け落ちしたと聞いて、ラテルは思わず大笑いした。まさか、ラテルの息子が女ごときに狂わされるとは思わなかったのだ。

大した女だ。やはり、その女は、ガリア王家の狂気を御しえる力を持っていたのかもしれない。

面白い。面白い。僕にもそんな奴があらわれたら余興なのになあ。

ラテルはほんの少し、息子のゼーンを羨望した。


本来なら裏切り者は処罰対象だが、ラテルはあえて見逃した。他に従順な子らは創っている。

子の一人ぐらい見逃してもいいだろう。


それにラテルは、いつかその息子と女の子孫に出会うかもしれないなと予感していた。

ガリア王家も、獣特有の直感と予感を持っていた。

同族は引き寄せあう。ラテルの血を引く者ならいつか会うはずだ。


そいつらと殺しあうのもまた一興だ。ラテルは舌なめずりをして、殺戮の瞬間を待ちわびた。

傍らには、飽きた遊び女の遺体たちが転がっていた。脆弱な奴らだ。ラテルの暴力と、暴行に耐えられず、数日もたたずに息絶えた。情けない女たちだなあ。どうしてこんなに弱いんだろう。

性処理には都合がいいが、ラテルの狂気の圧倒的な暴力にはすぐ壊れる。

他の男の子を宿した女も、無理矢理ここへ連れられたが、残念なことに、その妊婦は運がなかった。

悪い女だ。可哀相に。そんな女の子として宿した赤子は気の毒にとラテルは笑いながら、泣き喚く女を引き裂いた。

腹から赤子を取り出した。こんなに小さいのに生きている。ふうーんとラテルはへえと少し興味深く思った。

僕らもこんなふうに小さかったんだろうか?想像もつかない。

奇妙な愛着と共に、ラテルは天使の微笑みを浮かべて、赤子の首を絞めて、その女を発狂死させた。


ラテルや、ガリア王家の血を引く者の下には常に、生け贄の悲鳴と苦痛、絶望、死が横たわっていた。

嗚呼・・ゼーンの子達もそうなるんだろうか?

幾万の命の頂点に座すことになる強き種族だろうか?


ラテルはそれを愉快に楽し気に予想を馳せた。


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