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第34話 風の街
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サラが遠視した通り、火で焼けた瓦礫や、城壁みたいな街を守るアーチ型の防壁があり、中央に、門番は二人いて、
商人や、旅人が街へ入る時、確認とかをしていた。
「お兄ちゃん。どうしよう。通行証とかあるのかな?だとしたら入れないよ。」
サラは少し動揺した。ルオーは冷めた目つきで、大丈夫だろうと言った。確認のみで何かを出している模様は無い。
この時代だ。生き延びるだけで精一杯で、監視もゆるくなっている。
それに赤子を連れた母親や、疲れ切った家族も、並んで早く街へ入りたがっている。難民が押し寄せているように見えた。
長い列に並んで、何時間も待って、ようやくサラとルオーはなんか簡単な確認だけで、すんなり入れた。
すると、サラは敏感にこの街の特色に気づいた。
気のせいか、気温が外と違って低い気がする。気持ちいい温度だ。風がよく吹くせいだろうか。
ここだけ気温の低い風が吹いている?
「街の奥に、鍾乳洞があって、そこはつららや氷があるの。時折、その洞窟から、とても強い冷気が街まで届くのよ。そのおかげで、住みやすい街になったけどね。食べ物もあまり腐らないし。」
街で様々な食物を売っている元気なおばさんがお喋り好きで、サラはそのおばさんから、見たこともない果物や、パンらしき薄い白いものを買った。あわせて20エルぐらいでとても安い。
その鍾乳洞から、つららや氷をもらっては、果物や食べ物を冷やしているから、美味しいのだとおばさんはガハハウフフと豪快に笑った。なんだか晴天が良く似合う女だ。
サラは少し好ましく思いながら、ありがとうといって、お兄ちゃんにこの情報と、食べ物を渡した。
「ふうん。風の街なのか。どうりで気持ちいいと思った。」
なるほどとルオーは呟いて、果物を齧った。甘い味だ。潤いがあって、水分も豊富だ。これはいい。
ここは良い街だ。あまりならず者が居ないといいが、そういうわけにもいくまい。こんな住みよい場所。悪人も狙うだろう。
ルオーはそう予測して、警戒した。サラは無防備で美味しそうに果物を食べていた。
みたところ、この街は、人間が生きていくために、必要な食物と、生活用品がそろって売られている。
宿もあるようだ。とても安い宿には、なにか薬をやっているような身持ちが崩れた感じがする人たちがたむろをしている。生きる気力を失っている人も見かけた。
危ないな。普通に生きる人が多い宿を探さなければいけない。でないと野宿するかもしれない。外では慣れているが、こんな街でも夜になると悪人や魑魅魍魎が跋扈するだろう。
ルオーは急いで安全な宿を探した。幸いにも、親切な人たちがあそこなら比較的大丈夫だと教えた。
嘘ではない。ルオーは嘘と真実を見抜く耳を持っていた。
宿は、古びていたが、太った女将が懸命に綺麗に掃除していて、小奇麗になっている。寝台も良い匂いがする。
なるべくいい匂いがする香油を買っているようだ。
なかなか女将の善良な性質が垣間見られてルオーはこの宿が気に入った。さて食べ物はどうだろうか?
期待はしていないが・・。
サラはすっかりここが気に入ったらしく、旅の汚れを落とすために、女用の温めた水を入れた大きな桶があるところへ行って、髪や、身体を洗い流している。洋服も洗っている。石鹸らしきものは、バザーで買ったらしい。よく汚れが落ちる。他の女たちも同様に同じことをしている。
ルオーも、男用の桶があるところに行った。なるほど気持ちがいい温度だ。疲れが取れる。
どうも、桶の下には、火で焼けた石を何回もいれて温かくしているらしい。
考えたな。女将。このほうが衛生的にも清潔だ。殺菌消毒もできる。
兄と妹は、汚れを落として、清潔になった。さっぱりと旅の疲れがとれたようだ。
※1エルは日本円で10円ぐらいである。
商人や、旅人が街へ入る時、確認とかをしていた。
「お兄ちゃん。どうしよう。通行証とかあるのかな?だとしたら入れないよ。」
サラは少し動揺した。ルオーは冷めた目つきで、大丈夫だろうと言った。確認のみで何かを出している模様は無い。
この時代だ。生き延びるだけで精一杯で、監視もゆるくなっている。
それに赤子を連れた母親や、疲れ切った家族も、並んで早く街へ入りたがっている。難民が押し寄せているように見えた。
長い列に並んで、何時間も待って、ようやくサラとルオーはなんか簡単な確認だけで、すんなり入れた。
すると、サラは敏感にこの街の特色に気づいた。
気のせいか、気温が外と違って低い気がする。気持ちいい温度だ。風がよく吹くせいだろうか。
ここだけ気温の低い風が吹いている?
「街の奥に、鍾乳洞があって、そこはつららや氷があるの。時折、その洞窟から、とても強い冷気が街まで届くのよ。そのおかげで、住みやすい街になったけどね。食べ物もあまり腐らないし。」
街で様々な食物を売っている元気なおばさんがお喋り好きで、サラはそのおばさんから、見たこともない果物や、パンらしき薄い白いものを買った。あわせて20エルぐらいでとても安い。
その鍾乳洞から、つららや氷をもらっては、果物や食べ物を冷やしているから、美味しいのだとおばさんはガハハウフフと豪快に笑った。なんだか晴天が良く似合う女だ。
サラは少し好ましく思いながら、ありがとうといって、お兄ちゃんにこの情報と、食べ物を渡した。
「ふうん。風の街なのか。どうりで気持ちいいと思った。」
なるほどとルオーは呟いて、果物を齧った。甘い味だ。潤いがあって、水分も豊富だ。これはいい。
ここは良い街だ。あまりならず者が居ないといいが、そういうわけにもいくまい。こんな住みよい場所。悪人も狙うだろう。
ルオーはそう予測して、警戒した。サラは無防備で美味しそうに果物を食べていた。
みたところ、この街は、人間が生きていくために、必要な食物と、生活用品がそろって売られている。
宿もあるようだ。とても安い宿には、なにか薬をやっているような身持ちが崩れた感じがする人たちがたむろをしている。生きる気力を失っている人も見かけた。
危ないな。普通に生きる人が多い宿を探さなければいけない。でないと野宿するかもしれない。外では慣れているが、こんな街でも夜になると悪人や魑魅魍魎が跋扈するだろう。
ルオーは急いで安全な宿を探した。幸いにも、親切な人たちがあそこなら比較的大丈夫だと教えた。
嘘ではない。ルオーは嘘と真実を見抜く耳を持っていた。
宿は、古びていたが、太った女将が懸命に綺麗に掃除していて、小奇麗になっている。寝台も良い匂いがする。
なるべくいい匂いがする香油を買っているようだ。
なかなか女将の善良な性質が垣間見られてルオーはこの宿が気に入った。さて食べ物はどうだろうか?
期待はしていないが・・。
サラはすっかりここが気に入ったらしく、旅の汚れを落とすために、女用の温めた水を入れた大きな桶があるところへ行って、髪や、身体を洗い流している。洋服も洗っている。石鹸らしきものは、バザーで買ったらしい。よく汚れが落ちる。他の女たちも同様に同じことをしている。
ルオーも、男用の桶があるところに行った。なるほど気持ちがいい温度だ。疲れが取れる。
どうも、桶の下には、火で焼けた石を何回もいれて温かくしているらしい。
考えたな。女将。このほうが衛生的にも清潔だ。殺菌消毒もできる。
兄と妹は、汚れを落として、清潔になった。さっぱりと旅の疲れがとれたようだ。
※1エルは日本円で10円ぐらいである。
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