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第31話 ゼーン 視点
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ゼーンは正直言って、ラテルという実の父親が嫌いだった。狂った色情狂のくせに、戦には長けている才能がある男なんで最低じゃねえか。顔だけは並外れて美貌だった。
ゼーンもどうやらその血を受けづいたらしい。母親はラテルが戯れに遊んだ数多の女だろう。もう顔も覚えて居まい。
それでもゼーンは母親の優しい手や、育ててもらった記憶が漠然とある。母親はよく狂った男から生き延びられたものだ。殺されずに済んだだけでも奇跡だ。
その母親もゼーンが幼少の頃亡くなった記憶がある。
ナラと交わった時、何故かその母を思い出した。懐かしさと慕わしさ。 狂った本能を宥める中和力。
ナラといると安堵できた。やっと息ができるような感じだ。
今までは人を殺した瞬間だけ喜びだけをかんじたのにな。そんなナラが子作りの儀式をすると聞いた。
その瞬間、何故かゼーンは裏切られたという思いを感じた。
確かに、戦が起きると、村の男たちは戦へ強制的に駆り立てられるだろう。その前に子孫を残そうとするのは生物として正常な反応だ。
しかし、ゼーンはナラは自分だけの女だと思っていた。あれは俺だけの女なのに。ゼーンは独占欲を持った子どものように暴れたかった。
監視していた村から、ゼーンは監視を止めて、直接ナラが一人でいる時会いにいった。
柔らかな穏やかな顔をした女。美しい肢体。ゼーンはなんだか胸が熱くなった。
「ナラ・・俺がだれがわかるか?・・」
ゼーンは誰が分からなかったらナラを殺そうと決めていた。記憶にも残らない程度の男だなんてゼーンの自尊心が赦さなかった。
ナラは目を見開いて、「あれは夢かなと思っていました・・。初めての人を忘れられるわけがありませんよ。」
ナラは頬を染めてゼーンを見た。ああ可愛いな。こんなに愛しいと思ったのははじめてだ。
「お前は、俺の女だろう。なのに他の男と子作りをするのか・・?」
ナラは少し顔をふせた。
「でも、村長に従わなければならないし・・みんなやっているから私だけ逃げることはできないです・・。」
ゼーンは不意に全てをナラに暴露したくなった。かまうものか。何も知らない女に世界を知らせたい。
「俺は、ゼーンだ。ここら辺の夜盗を率いている。ガリア王家の庶子でもある。ここらへんはガリア王家の監視する地域になっていたんだよ。
ナラ・・お前の住む村も監視するところだったんだ。今でもだ。お前のことはそんな時、見初めて一夜を共にした。」
「それにも理由があった。ナラ・・お前と村にはなにか変な力が纏っているように見えるんだよ。王家の血をひいているものは分かる。お前らは特殊な力を持っている一族だよ。
だから今までこの村は無事だったんだ・・。
お前もこの素朴だが穏やかで平和な村に違和感を感じたことはあったろう。
だって外の世界とこんなに違うもんな。」
ナラは不思議と冷静だった。ゼーンという男がナラの気づいた違和感や疑問に答えるように話してくれた。
嗚呼・・やはり、全ては意味と理由があったのか・・。なんとなくこれは偶然ではないと感じていたが・・。
「・・そうだったのですね。なんだかこの小さな村を貴方と交わってから違和感を感じました。それはやはり、なにか変化を得てしまったのでしょうか?貴方と出会って私は変わってしまった。」
「悪かったな。だか俺もだ。お前といると安堵する。お前が可愛いと思ってしまう。愛しいとも。昔の俺にとってはありえない事態だ。お前に魅了されたのかと疑っているぐらいだ。」
ナラは呆然とゼーンを見つめていた。この美しい残虐な男が私を・・?信じられなかった。
「貴方も私もおかしいですね。何かが変わってしまって怖いです。貴方は本当は敵でしょう。村を滅ぼそうとするつもりだったこともあるでしょう・・。ガリア王家の悪名は有名です。こんな僻地にまで流れてくるほどです。」
ゼーンはナラには嘘をつきたくなかった。これもナラの力だろうか。悪くない。ゼーンはナラに変わらせられるのを楽しんだ。
「そうだ。王が命令したら滅ぼすつもりだった。でも止めた。お前が居るから。俺はやらない。
ナラのいるところは奪わない。」
「ナラ。選べ。俺と一緒に来るか?それとも村に留まるか?どうする?」
ゼーンはナラに手を伸ばした。
ナラは思った。この男は敵だ。ずっと騙して監視していた。わたしの身体も奪った・・。
断ろうと思ったが、何故か無意識にナラは、ゼーンの手を取った。黙ってゼーンがナラを抱擁するのを黙認した。
私は一体・・?私の中の何かがこれは正解だと言っている・・?
表面意識のナラの自我は当惑していたが、深淵の意識のナラは、ゼーンを求めていた。
ゼーンとナラの子が出来たらその子は運命の子だ。
お互いに惹かれあっているのは偽りではない。何かが引き寄せあっているのだ。
「村を滅ぼさないで・・友人や村人を傷つけないで・・貴方の元に従うから・・。」
「お前が俺のところにずっといるのなら見逃す・・。」
ゼーンはナラの唇に接吻した。とても情熱的な抱擁だった。ナラは夢みるようにゼーンに従った。
その日、ナラは村から姿を消した。
ソアラたちは探し回ったが、行方は知れなかった。
ゼーンもどうやらその血を受けづいたらしい。母親はラテルが戯れに遊んだ数多の女だろう。もう顔も覚えて居まい。
それでもゼーンは母親の優しい手や、育ててもらった記憶が漠然とある。母親はよく狂った男から生き延びられたものだ。殺されずに済んだだけでも奇跡だ。
その母親もゼーンが幼少の頃亡くなった記憶がある。
ナラと交わった時、何故かその母を思い出した。懐かしさと慕わしさ。 狂った本能を宥める中和力。
ナラといると安堵できた。やっと息ができるような感じだ。
今までは人を殺した瞬間だけ喜びだけをかんじたのにな。そんなナラが子作りの儀式をすると聞いた。
その瞬間、何故かゼーンは裏切られたという思いを感じた。
確かに、戦が起きると、村の男たちは戦へ強制的に駆り立てられるだろう。その前に子孫を残そうとするのは生物として正常な反応だ。
しかし、ゼーンはナラは自分だけの女だと思っていた。あれは俺だけの女なのに。ゼーンは独占欲を持った子どものように暴れたかった。
監視していた村から、ゼーンは監視を止めて、直接ナラが一人でいる時会いにいった。
柔らかな穏やかな顔をした女。美しい肢体。ゼーンはなんだか胸が熱くなった。
「ナラ・・俺がだれがわかるか?・・」
ゼーンは誰が分からなかったらナラを殺そうと決めていた。記憶にも残らない程度の男だなんてゼーンの自尊心が赦さなかった。
ナラは目を見開いて、「あれは夢かなと思っていました・・。初めての人を忘れられるわけがありませんよ。」
ナラは頬を染めてゼーンを見た。ああ可愛いな。こんなに愛しいと思ったのははじめてだ。
「お前は、俺の女だろう。なのに他の男と子作りをするのか・・?」
ナラは少し顔をふせた。
「でも、村長に従わなければならないし・・みんなやっているから私だけ逃げることはできないです・・。」
ゼーンは不意に全てをナラに暴露したくなった。かまうものか。何も知らない女に世界を知らせたい。
「俺は、ゼーンだ。ここら辺の夜盗を率いている。ガリア王家の庶子でもある。ここらへんはガリア王家の監視する地域になっていたんだよ。
ナラ・・お前の住む村も監視するところだったんだ。今でもだ。お前のことはそんな時、見初めて一夜を共にした。」
「それにも理由があった。ナラ・・お前と村にはなにか変な力が纏っているように見えるんだよ。王家の血をひいているものは分かる。お前らは特殊な力を持っている一族だよ。
だから今までこの村は無事だったんだ・・。
お前もこの素朴だが穏やかで平和な村に違和感を感じたことはあったろう。
だって外の世界とこんなに違うもんな。」
ナラは不思議と冷静だった。ゼーンという男がナラの気づいた違和感や疑問に答えるように話してくれた。
嗚呼・・やはり、全ては意味と理由があったのか・・。なんとなくこれは偶然ではないと感じていたが・・。
「・・そうだったのですね。なんだかこの小さな村を貴方と交わってから違和感を感じました。それはやはり、なにか変化を得てしまったのでしょうか?貴方と出会って私は変わってしまった。」
「悪かったな。だか俺もだ。お前といると安堵する。お前が可愛いと思ってしまう。愛しいとも。昔の俺にとってはありえない事態だ。お前に魅了されたのかと疑っているぐらいだ。」
ナラは呆然とゼーンを見つめていた。この美しい残虐な男が私を・・?信じられなかった。
「貴方も私もおかしいですね。何かが変わってしまって怖いです。貴方は本当は敵でしょう。村を滅ぼそうとするつもりだったこともあるでしょう・・。ガリア王家の悪名は有名です。こんな僻地にまで流れてくるほどです。」
ゼーンはナラには嘘をつきたくなかった。これもナラの力だろうか。悪くない。ゼーンはナラに変わらせられるのを楽しんだ。
「そうだ。王が命令したら滅ぼすつもりだった。でも止めた。お前が居るから。俺はやらない。
ナラのいるところは奪わない。」
「ナラ。選べ。俺と一緒に来るか?それとも村に留まるか?どうする?」
ゼーンはナラに手を伸ばした。
ナラは思った。この男は敵だ。ずっと騙して監視していた。わたしの身体も奪った・・。
断ろうと思ったが、何故か無意識にナラは、ゼーンの手を取った。黙ってゼーンがナラを抱擁するのを黙認した。
私は一体・・?私の中の何かがこれは正解だと言っている・・?
表面意識のナラの自我は当惑していたが、深淵の意識のナラは、ゼーンを求めていた。
ゼーンとナラの子が出来たらその子は運命の子だ。
お互いに惹かれあっているのは偽りではない。何かが引き寄せあっているのだ。
「村を滅ぼさないで・・友人や村人を傷つけないで・・貴方の元に従うから・・。」
「お前が俺のところにずっといるのなら見逃す・・。」
ゼーンはナラの唇に接吻した。とても情熱的な抱擁だった。ナラは夢みるようにゼーンに従った。
その日、ナラは村から姿を消した。
ソアラたちは探し回ったが、行方は知れなかった。
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