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第27話 盗賊の頭
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盗賊の頭は、決して恵まれた生い立ちではなかった。
慎ましい農家の四男として生まれたが、疫病で、家族は倒れ、生き残ったのは、弟と頭だけだった。
それでも病のせいで顔は醜くなり、人々は偏見の眼で、疎んじた。
許せない。望んでこうなったわけではない。頭は怒りを常に宿していた。ある日、浅はかな男が、死にぞこないと囃し立てた。その瞬間、何かが弾けた。気が付けば、浅はかな男は、血塗れになって死んでいた。
「兄ちゃん!」「落ち着け!」と弟が必死で止めていたことにも気づかなかった。
こうして、頭は、生きるために人を殺し続けて逃げた。そして後を追いかけた弟と共に、追い立てられた者達、アウトサイダーの集団に入って、暴力でまとめ上げた。
頭は決して、頭は悪くなかった。生きるための知恵や、機転も早く、何が不要な人がすぐにわかるようになった。必要な人も目利きができるようになった。
弟は少し愚鈍だったが、怪力であり、戦には役に立った。弟は兄を唯一の家族として尽くしている。兄はそれを受け入れた。
そんな折、ゼーンという男がへらへらした顔で、現れた。しかし頭にはすぐに分かった。この男はどこかおかしい。
危険だ。すぐに殺そうと剣を振りあげたが、間に合わなかった。
ゼーンは獣のような瞬発力を持ち、あっという間に、ブーメランの刃で仲間たちを瞬殺し、頭の顔に深い傷をつけた。
ゼーンは笑った。
「かっこいい顔になったじゃねえか!」
弟が怒り狂って、飛び掛かろうとしたが、従者らしきものが、弟より小柄なのに、軽やかに弟を吹き飛ばした。
打ちどころが悪かった弟は気絶した。
くそったれ!こいつらのほうが戦闘が強い。人殺しにも卓越している! 兄は一目で技量を見抜いた。
兄と弟は狩られる側になった。 兄は弟をおいて逃げようとした。弟は重い。連れていくことはできない。
僅かな謝罪の思いと共に、兄は逃げようとしたが、駄目だった。ブーメランの武器が、兄の足の腱を斬ったのだ。
血しぶきと共に、兄は歩けなくなった。両足も斬られている。
「ごめんなあ・・お前の盗賊団はもらったよ。」ふんふんと無邪気にゼーンは笑った。
首にブーメランの刃が当てられた。それが盗賊の頭の呆気ない最期だった。弟も首を斬られる瞬間を死の間際に見た。ああ・・兄弟で同じ死に方をするなんでな。
これがついてない運命の末路か・・。
それが頭の最後の思いだった。
ゼーンは、生き残りの盗賊を狩り集めて叫んだ。
「よく聞け!俺が新しい盗賊の頭だ!」と叫んで、前の盗賊の頭の頭部を見せた。
首からは血がぽたぽたと流れている。
それを見た盗賊たちはうっと息を呑んで恐怖と共に従った。
ここでは力が全てだ。彼らは新しい頭 ゼーンという男に従った。そしてより盗賊団は大きくなり、聡明な能力のある人達が上に立つようになった。
軍隊のような生活をした。何があろうと生き延びる術を学ばされた。
彼らは質が高く、練度が増して、戦士として技量が上がった。その分、獰猛に残虐に敵を殺すようになった。
それがゼーンの率いる軍隊の始まりだった。
慎ましい農家の四男として生まれたが、疫病で、家族は倒れ、生き残ったのは、弟と頭だけだった。
それでも病のせいで顔は醜くなり、人々は偏見の眼で、疎んじた。
許せない。望んでこうなったわけではない。頭は怒りを常に宿していた。ある日、浅はかな男が、死にぞこないと囃し立てた。その瞬間、何かが弾けた。気が付けば、浅はかな男は、血塗れになって死んでいた。
「兄ちゃん!」「落ち着け!」と弟が必死で止めていたことにも気づかなかった。
こうして、頭は、生きるために人を殺し続けて逃げた。そして後を追いかけた弟と共に、追い立てられた者達、アウトサイダーの集団に入って、暴力でまとめ上げた。
頭は決して、頭は悪くなかった。生きるための知恵や、機転も早く、何が不要な人がすぐにわかるようになった。必要な人も目利きができるようになった。
弟は少し愚鈍だったが、怪力であり、戦には役に立った。弟は兄を唯一の家族として尽くしている。兄はそれを受け入れた。
そんな折、ゼーンという男がへらへらした顔で、現れた。しかし頭にはすぐに分かった。この男はどこかおかしい。
危険だ。すぐに殺そうと剣を振りあげたが、間に合わなかった。
ゼーンは獣のような瞬発力を持ち、あっという間に、ブーメランの刃で仲間たちを瞬殺し、頭の顔に深い傷をつけた。
ゼーンは笑った。
「かっこいい顔になったじゃねえか!」
弟が怒り狂って、飛び掛かろうとしたが、従者らしきものが、弟より小柄なのに、軽やかに弟を吹き飛ばした。
打ちどころが悪かった弟は気絶した。
くそったれ!こいつらのほうが戦闘が強い。人殺しにも卓越している! 兄は一目で技量を見抜いた。
兄と弟は狩られる側になった。 兄は弟をおいて逃げようとした。弟は重い。連れていくことはできない。
僅かな謝罪の思いと共に、兄は逃げようとしたが、駄目だった。ブーメランの武器が、兄の足の腱を斬ったのだ。
血しぶきと共に、兄は歩けなくなった。両足も斬られている。
「ごめんなあ・・お前の盗賊団はもらったよ。」ふんふんと無邪気にゼーンは笑った。
首にブーメランの刃が当てられた。それが盗賊の頭の呆気ない最期だった。弟も首を斬られる瞬間を死の間際に見た。ああ・・兄弟で同じ死に方をするなんでな。
これがついてない運命の末路か・・。
それが頭の最後の思いだった。
ゼーンは、生き残りの盗賊を狩り集めて叫んだ。
「よく聞け!俺が新しい盗賊の頭だ!」と叫んで、前の盗賊の頭の頭部を見せた。
首からは血がぽたぽたと流れている。
それを見た盗賊たちはうっと息を呑んで恐怖と共に従った。
ここでは力が全てだ。彼らは新しい頭 ゼーンという男に従った。そしてより盗賊団は大きくなり、聡明な能力のある人達が上に立つようになった。
軍隊のような生活をした。何があろうと生き延びる術を学ばされた。
彼らは質が高く、練度が増して、戦士として技量が上がった。その分、獰猛に残虐に敵を殺すようになった。
それがゼーンの率いる軍隊の始まりだった。
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