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第11話・男と男②
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陰間には、食べてはならないものがある。身体が臭いを放っては、客の興が冷めてしまう。だから葱などは口に出来ず、貝や鳥や焼き魚も禁忌である。
入れられる、とはいえお武家様は客だから、臭いはいい。ただ芋などの腹が膨れるものは、出してはいけないものが出てしまうから、都合が悪い。
「飯と汁物、香の物だが」
「汁物と香の物は、何でしょう?」
「豆腐と大根だ。如何だろうか?」
「差し支えございません。それでは、ほぐして参りますので、その備えをさせて頂きます」
廊下に出て、ポンポンと手を叩く。しばらくしてからパタパタと歩いてきた女中に注文をする。布団で胡座をかくお武家様は、ぽつねんと眺めるだけである。
頼んだものを、女中が訝しげに持参した。それは水を張った古桶と、使い古しの手ぬぐいである。
「何をする」
「手をついてくださいまし」
お武家様が両手をついたので腰を上げさせ着物をまくり、鍛え抜かれた秘密の園を濡らした手ぬぐいで拭いていく。傷つきやすい場所だから力を込めず丁寧かつ丹念に、生まれたての赤子を撫でるように拭いているが、その加減がどうも心地よいらしい。
「まぁ……如何なさいましょう」
苦虫を噛み潰していたお武家様は、今日はそれが目当てでないと苦汁を舐めた。これだけ立派なものを持ちながら、と少々残念に思えてしまう。
これで十分だろうと通和散を口に含んで、洗った場所に舌を差し込み塗り込んでいく。手ぬぐい越しの指などよりも遥かに勝る、剛柔を兼ね備えた感触に、前へ上へと立ち上がる腰のものは、更に怒張しはち切れんばかりに膨れ上がった。
「あやめ殿、これは堪らぬ」
「まだまだ、これからでございます」
蟻の塔渡りに舌先を這わせ、きゅうっと上がった袋の裏へと──
「あやめ殿、とてもよいが、趣旨が違う」
そうだった。今日の仕事は、いつもとまるで違うのだ。
口に残った通和散を、秘所へと流し込んでいく。期待に喘いでいるそこは、ぬらぬらと怪しく照っている。小指はスッと差し込まれたので、次いで薬指を滑らせる。節が太くごつごつとした男らしい男の指で弄ばれているせいだろうか、齢十四の子供の指では細くて物足りないらしい。
人差し指でも無理なく入る。それでは中指は、と押し込んでいく。
「どうだ、今日一日で仕上がりそうか」
「少々、締まっておられます。お武家様もいい具合になられたほうが、よりほぐれると存じます」
中に入れた指を曲げると、いいところに当たったようで、お武家様は背中を丸めて小刻みに震えはじめた。ここは兄さんたちや金剛に指を入れられて、よくいじられている場所だった。他人に入れるのははじめてだから、上手くいったと安堵する。それとともに、言葉にならない声を発するお武家様を、更なる高みへ登らせたくなってきた。
今なら、若い陰間をいじくり倒して楽しんでいる牡丹兄さんの気持ちがわかる。
「いい具合になって参りました。次は親指にございます」
「中指は、もう終わりか……」
お武家様は荒い呼吸の合間を縫って、寂しそうに呟いた。それが堪らず、舌舐めずりして親指を押し込み引き抜く。
「もっと、いいのが入るのですよ?」
人差し指と中指で、とろりと垂れた通和散を撫で回す。この二本が入るのか、と背筋がぞくぞくするほどの期待が、今すぐ欲しいと舌を出した。
中指を、続いて人差し指をひとつのところへ差し込んだ。やや力が必要だったが無理はさせず、おねだりに応じてじわじわと、奥へ奥へと呑み込ませていく。
「二本は、はじめてにございますか?」
「は……はじめてだ……こんな……」
「欲しがっておいでです。本当に欲しいのは、これではありませんか?」
二本の指先を軽く曲げ、膨らんでいた待望にそっと触れる。腰のものが激しく跳ねて、腹を叩いた。
指を伸ばして抜き差しし、中のしこりを二本の指で交互に撫でる。お武家様は呻いて、喘いで、仰け反った末、熱い吐息とともに腹の下で脈動し、布団に幾筋もの航跡を引き、ついには果てた。
通和散をねっとり纏った二本の指を引き抜いて、力を失い横になったお武家様のそばに寝そべった。白くて熱い粘液を指に絡ませ、指を開いて糸を引かせる。猥褻な香りが立ち上り、ついうっとりとしてしまう。
「こんなにいっぱい……出されたのですね……」
「至高の……快楽……であった……」
こんなに大きいものを押し込まれ、こんなにたっぷりと注がれていたら、どうなってしまっただろうかと惜しくもあり、ホッと胸を撫で下ろす、何とも複雑な空想に浸っていた。
すると胸を上下させていたお武家様は、くわっと目を見開くと跳ねるように飛び起きて、頭を抱えて激しく振った。
「違う! これでは終われんのだ!」
「焦る気持ちはわかりますが、少々休まれては如何でしょう。立て続けにして参りましたが、このまま続けてしまっては、閉まらなくなってしまいます」
それは困る。公方様をお連れする水戸までへの道のりで、我慢さえも出来なくなれば末代までの恥となる。お武家様は青ざめて、横たわっている薄い肩に縋りついた。
「あやめ殿、どうすればいい」
「締めて緩めてを繰り返してくださいまし。開いた名残はございますゆえ、どうぞご安心ください」
お武家様は胡座をかいて、それはそれは真剣に腹から下に力を込めては緩めてを、延々と繰り返していた。
入れられる、とはいえお武家様は客だから、臭いはいい。ただ芋などの腹が膨れるものは、出してはいけないものが出てしまうから、都合が悪い。
「飯と汁物、香の物だが」
「汁物と香の物は、何でしょう?」
「豆腐と大根だ。如何だろうか?」
「差し支えございません。それでは、ほぐして参りますので、その備えをさせて頂きます」
廊下に出て、ポンポンと手を叩く。しばらくしてからパタパタと歩いてきた女中に注文をする。布団で胡座をかくお武家様は、ぽつねんと眺めるだけである。
頼んだものを、女中が訝しげに持参した。それは水を張った古桶と、使い古しの手ぬぐいである。
「何をする」
「手をついてくださいまし」
お武家様が両手をついたので腰を上げさせ着物をまくり、鍛え抜かれた秘密の園を濡らした手ぬぐいで拭いていく。傷つきやすい場所だから力を込めず丁寧かつ丹念に、生まれたての赤子を撫でるように拭いているが、その加減がどうも心地よいらしい。
「まぁ……如何なさいましょう」
苦虫を噛み潰していたお武家様は、今日はそれが目当てでないと苦汁を舐めた。これだけ立派なものを持ちながら、と少々残念に思えてしまう。
これで十分だろうと通和散を口に含んで、洗った場所に舌を差し込み塗り込んでいく。手ぬぐい越しの指などよりも遥かに勝る、剛柔を兼ね備えた感触に、前へ上へと立ち上がる腰のものは、更に怒張しはち切れんばかりに膨れ上がった。
「あやめ殿、これは堪らぬ」
「まだまだ、これからでございます」
蟻の塔渡りに舌先を這わせ、きゅうっと上がった袋の裏へと──
「あやめ殿、とてもよいが、趣旨が違う」
そうだった。今日の仕事は、いつもとまるで違うのだ。
口に残った通和散を、秘所へと流し込んでいく。期待に喘いでいるそこは、ぬらぬらと怪しく照っている。小指はスッと差し込まれたので、次いで薬指を滑らせる。節が太くごつごつとした男らしい男の指で弄ばれているせいだろうか、齢十四の子供の指では細くて物足りないらしい。
人差し指でも無理なく入る。それでは中指は、と押し込んでいく。
「どうだ、今日一日で仕上がりそうか」
「少々、締まっておられます。お武家様もいい具合になられたほうが、よりほぐれると存じます」
中に入れた指を曲げると、いいところに当たったようで、お武家様は背中を丸めて小刻みに震えはじめた。ここは兄さんたちや金剛に指を入れられて、よくいじられている場所だった。他人に入れるのははじめてだから、上手くいったと安堵する。それとともに、言葉にならない声を発するお武家様を、更なる高みへ登らせたくなってきた。
今なら、若い陰間をいじくり倒して楽しんでいる牡丹兄さんの気持ちがわかる。
「いい具合になって参りました。次は親指にございます」
「中指は、もう終わりか……」
お武家様は荒い呼吸の合間を縫って、寂しそうに呟いた。それが堪らず、舌舐めずりして親指を押し込み引き抜く。
「もっと、いいのが入るのですよ?」
人差し指と中指で、とろりと垂れた通和散を撫で回す。この二本が入るのか、と背筋がぞくぞくするほどの期待が、今すぐ欲しいと舌を出した。
中指を、続いて人差し指をひとつのところへ差し込んだ。やや力が必要だったが無理はさせず、おねだりに応じてじわじわと、奥へ奥へと呑み込ませていく。
「二本は、はじめてにございますか?」
「は……はじめてだ……こんな……」
「欲しがっておいでです。本当に欲しいのは、これではありませんか?」
二本の指先を軽く曲げ、膨らんでいた待望にそっと触れる。腰のものが激しく跳ねて、腹を叩いた。
指を伸ばして抜き差しし、中のしこりを二本の指で交互に撫でる。お武家様は呻いて、喘いで、仰け反った末、熱い吐息とともに腹の下で脈動し、布団に幾筋もの航跡を引き、ついには果てた。
通和散をねっとり纏った二本の指を引き抜いて、力を失い横になったお武家様のそばに寝そべった。白くて熱い粘液を指に絡ませ、指を開いて糸を引かせる。猥褻な香りが立ち上り、ついうっとりとしてしまう。
「こんなにいっぱい……出されたのですね……」
「至高の……快楽……であった……」
こんなに大きいものを押し込まれ、こんなにたっぷりと注がれていたら、どうなってしまっただろうかと惜しくもあり、ホッと胸を撫で下ろす、何とも複雑な空想に浸っていた。
すると胸を上下させていたお武家様は、くわっと目を見開くと跳ねるように飛び起きて、頭を抱えて激しく振った。
「違う! これでは終われんのだ!」
「焦る気持ちはわかりますが、少々休まれては如何でしょう。立て続けにして参りましたが、このまま続けてしまっては、閉まらなくなってしまいます」
それは困る。公方様をお連れする水戸までへの道のりで、我慢さえも出来なくなれば末代までの恥となる。お武家様は青ざめて、横たわっている薄い肩に縋りついた。
「あやめ殿、どうすればいい」
「締めて緩めてを繰り返してくださいまし。開いた名残はございますゆえ、どうぞご安心ください」
お武家様は胡座をかいて、それはそれは真剣に腹から下に力を込めては緩めてを、延々と繰り返していた。
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