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第4話・谷中②
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先を根元を裏側を、と舐め回すうち住職はあっという間に極楽浄土へと昇ってしまった。舌の上から喉の奥へ、ねっとりとした生臭い苦味が脈を打ち、口いっぱいに広がっていく。
誰のものを何度と口にしようとも、この味だけは慣れなかった。興が冷めてしまうから、糸引く口元を指で押さえてむせ返るのを必死に堪え、こっそりと懐紙に包んで袂に仕舞った。
桔梗兄さんは、どうして美味しそうに飲み込んでくれたんだろう。
「美味しゅうございました」
口を拭って三つ指ついて、しなしなと力を失っていく仏様に礼を告げた。住職はそうかそうかと満足そうに、痺れる脚を崩していった。
「ご苦労だったね。少し休もうじゃないか」
そう言って住職が這っていったのは、隣の部屋に敷かれた厚い布団であった。当然、本当に休むなど陰間には許されない。
先回りして布団に住職を招き入れ、あとに続く。横になって向き合うと、住職は糸が残る頬に触れて口を吸った。これに思わず住職の胸を押して、無理に引き剥がしてしまう。
「さっき、吸ったばかりにございます」
「構うものか、あやめとこうしたいのだよ」
互いの舌を絡め合って、息継ぎのため唇を離す。見つめるふたりをつなぐ糸は、口のものか下のものか、もうわからない。
「ああ、あやめは可愛いね。子供らしい大きな瞳、戸惑いを隠せないその仕草、それで懸命で健気だ。上方言葉でないのも、初々しくて新鮮だ」
痛いところを突かれてしまった。陰間は上方から下ってきたものが上等なので、その誰もが上方言葉を使っている。数日をかけて小指を薬指を人差し指を、中指を入れて親指を入れ、二本を入れて仕上げに金剛の腰の一物を入れるのと一緒に、客の受けがいいからと生まれ育ち関わりなく上方言葉も習うのだ。が……
「習ったのですが、どうも嘘が見えてしまって」
教えてくれた店のみんなや、住職はじめ取った客のすべてに申し訳なく、伏せた目を布団に落とす。
それと同時に、自身が嘘の固まりだと自責した。
すると住職が島田を撫でて、慈愛に満ちた眼差しで見つめてきた。
「すっかり、好いてしまったよ。また座敷に上げてもいいかい?」
この言葉もまた、嘘で塗り固めているのかも知れなかったが、心の底から救われた気がしてならず、肩から背中へ腕を絡めて住職と唇を重ね合わせた。
それから腰へ、その前へと指先を回していくと、触れたものにハッとして、悪戯っぽくはにかんだ。
「もう、大きくなってしまったのですか?」
「それは、愛おしいからさ。あやめは、どうだ?」
布団の間を潜っていく手が襦袢をかき分け、やや固くなった若さを指で摘んだ。そしてその手が腰を舐め、双丘を越えて極楽の谷へ落ちていく。
「前は固いが、後ろはすっかり柔らかいな」
「お待ちになって」
懐紙を仕舞った反対側の袂から通和散を取り、口に含んだ。ちょっと湿り気が足りないので、身体を起こして冷めた茶を少し啜った。
とろとろとした粘液を口から手の平へと垂らし、奈落へと塗り込んでいく。まだ膝が抜けている住職は仰向けになり、天界が落ちてくるのを待ち望んでいた。
住職の腰に跨って、掴んだものをゆっくりと差し込んでいく。
「はあああああっ!……」
めりめりと広がる感触が痛みを抜けて快楽へ変化していく。思った……とおり……きつかった……。仰け反り、うつむき、歪めた顔から力が抜けると、きゅうっと締まった門が開いて、下から上へ前までも刺激がびりびりと伝わっていった。
住職は着物を襦袢を帯まで下ろし、桜色した果実に指を伸ばして撫で回す。そのくすぐったさに身を歪めると、襦袢を割って上下する腰で膨れたものを握られた。
「あやめ、ともに果てよう」
「……嬉しゅう……ござい……ます……」
指でこねくり回されて、丹田に湧き上がった快楽が前へ前へと膨張していく。貫かれた腰の上下は、次第にその激しさを増していった。
このままでは、大事な法衣を汚してしまう。住職の前をはだけて果ててしまうのに備えると、掴む指も激しさを増した。
「あやめ! 出る!……」
「あ、あ、あ……」
中の深くへ熱い粘液が注ぎ込まれた。その勢いは奥の奥まで届くほどで、はち切れそうな丹田を強く強く押し込んでいく。
根元までこみ上げた熱情が脈動し、住職の痩せた腹を生温かく濡らしていった。力を失った住職の指が離れてもなお、ぴくん、ぴくんと跳ね飛んで雲をいくつも描いてこぼした。
腰から脚にまで至る痺れを必死に堪え、血の気が引いていく住職のものを外界に晒した。ぽっかりと空いた天国の門から、白く濁った通和散がとろりと垂れて腿を這う。
荒い息を落ち着かせると、へその下からぞわぞわとした感触が降りてきた。これに慌てて身体を離そうとしたものの、迫りくる激流は緩んでしまった口を軽々と抜けた。
「あああ!……住職様! 申し訳ございません!」
下から注いでしまったそれは、住職の腹に漂っている白濁の粘液を洗い流した。そしてそれは留まることなく、ふたりの熱を保った布団へと染み込み、広がっていった。
お茶だ、お茶を啜って、そのあとに備えをしなかったせいだ。恥ずかしさと後悔で燃える頬を、潤む瞳を両手で押さえることしか出来なかった。
誰のものを何度と口にしようとも、この味だけは慣れなかった。興が冷めてしまうから、糸引く口元を指で押さえてむせ返るのを必死に堪え、こっそりと懐紙に包んで袂に仕舞った。
桔梗兄さんは、どうして美味しそうに飲み込んでくれたんだろう。
「美味しゅうございました」
口を拭って三つ指ついて、しなしなと力を失っていく仏様に礼を告げた。住職はそうかそうかと満足そうに、痺れる脚を崩していった。
「ご苦労だったね。少し休もうじゃないか」
そう言って住職が這っていったのは、隣の部屋に敷かれた厚い布団であった。当然、本当に休むなど陰間には許されない。
先回りして布団に住職を招き入れ、あとに続く。横になって向き合うと、住職は糸が残る頬に触れて口を吸った。これに思わず住職の胸を押して、無理に引き剥がしてしまう。
「さっき、吸ったばかりにございます」
「構うものか、あやめとこうしたいのだよ」
互いの舌を絡め合って、息継ぎのため唇を離す。見つめるふたりをつなぐ糸は、口のものか下のものか、もうわからない。
「ああ、あやめは可愛いね。子供らしい大きな瞳、戸惑いを隠せないその仕草、それで懸命で健気だ。上方言葉でないのも、初々しくて新鮮だ」
痛いところを突かれてしまった。陰間は上方から下ってきたものが上等なので、その誰もが上方言葉を使っている。数日をかけて小指を薬指を人差し指を、中指を入れて親指を入れ、二本を入れて仕上げに金剛の腰の一物を入れるのと一緒に、客の受けがいいからと生まれ育ち関わりなく上方言葉も習うのだ。が……
「習ったのですが、どうも嘘が見えてしまって」
教えてくれた店のみんなや、住職はじめ取った客のすべてに申し訳なく、伏せた目を布団に落とす。
それと同時に、自身が嘘の固まりだと自責した。
すると住職が島田を撫でて、慈愛に満ちた眼差しで見つめてきた。
「すっかり、好いてしまったよ。また座敷に上げてもいいかい?」
この言葉もまた、嘘で塗り固めているのかも知れなかったが、心の底から救われた気がしてならず、肩から背中へ腕を絡めて住職と唇を重ね合わせた。
それから腰へ、その前へと指先を回していくと、触れたものにハッとして、悪戯っぽくはにかんだ。
「もう、大きくなってしまったのですか?」
「それは、愛おしいからさ。あやめは、どうだ?」
布団の間を潜っていく手が襦袢をかき分け、やや固くなった若さを指で摘んだ。そしてその手が腰を舐め、双丘を越えて極楽の谷へ落ちていく。
「前は固いが、後ろはすっかり柔らかいな」
「お待ちになって」
懐紙を仕舞った反対側の袂から通和散を取り、口に含んだ。ちょっと湿り気が足りないので、身体を起こして冷めた茶を少し啜った。
とろとろとした粘液を口から手の平へと垂らし、奈落へと塗り込んでいく。まだ膝が抜けている住職は仰向けになり、天界が落ちてくるのを待ち望んでいた。
住職の腰に跨って、掴んだものをゆっくりと差し込んでいく。
「はあああああっ!……」
めりめりと広がる感触が痛みを抜けて快楽へ変化していく。思った……とおり……きつかった……。仰け反り、うつむき、歪めた顔から力が抜けると、きゅうっと締まった門が開いて、下から上へ前までも刺激がびりびりと伝わっていった。
住職は着物を襦袢を帯まで下ろし、桜色した果実に指を伸ばして撫で回す。そのくすぐったさに身を歪めると、襦袢を割って上下する腰で膨れたものを握られた。
「あやめ、ともに果てよう」
「……嬉しゅう……ござい……ます……」
指でこねくり回されて、丹田に湧き上がった快楽が前へ前へと膨張していく。貫かれた腰の上下は、次第にその激しさを増していった。
このままでは、大事な法衣を汚してしまう。住職の前をはだけて果ててしまうのに備えると、掴む指も激しさを増した。
「あやめ! 出る!……」
「あ、あ、あ……」
中の深くへ熱い粘液が注ぎ込まれた。その勢いは奥の奥まで届くほどで、はち切れそうな丹田を強く強く押し込んでいく。
根元までこみ上げた熱情が脈動し、住職の痩せた腹を生温かく濡らしていった。力を失った住職の指が離れてもなお、ぴくん、ぴくんと跳ね飛んで雲をいくつも描いてこぼした。
腰から脚にまで至る痺れを必死に堪え、血の気が引いていく住職のものを外界に晒した。ぽっかりと空いた天国の門から、白く濁った通和散がとろりと垂れて腿を這う。
荒い息を落ち着かせると、へその下からぞわぞわとした感触が降りてきた。これに慌てて身体を離そうとしたものの、迫りくる激流は緩んでしまった口を軽々と抜けた。
「あああ!……住職様! 申し訳ございません!」
下から注いでしまったそれは、住職の腹に漂っている白濁の粘液を洗い流した。そしてそれは留まることなく、ふたりの熱を保った布団へと染み込み、広がっていった。
お茶だ、お茶を啜って、そのあとに備えをしなかったせいだ。恥ずかしさと後悔で燃える頬を、潤む瞳を両手で押さえることしか出来なかった。
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