椰子の実ひとつ -電車の女学校-

 昭和18年、春。

 瀬戸内海の小さな島で生まれ育った美春は、はじめてひとりで汽車に乗り、はじめて広島に降り立って、はじめて目にする大都会に圧倒された。

「新しく出来る家政女学校に通うんじゃけど、どこにあるんかね?」

 駅前で案内してくれた千秋、路面電車に乗り合わせた夏子も同じ学校に通うらしい。

「勉強しながら働いて、お給金を貰えるなんて、夢のような学校じゃねぇ」

 しかし入学式兼入社式で、美春は衝撃の事実を知らされる。

「うち、路面電車ちゅうのに乗るんかね!?」

 ここは、広島電鉄家政女学校。
 路面電車に乗って、少女たちの青春が走り出す。

 楽しいことも、つらいことも、寂しい思いも分かち合い、淡い恋に心が躍る少女の日々は、たったひとつの爆弾が一瞬にして消し飛ばす。

 何もかもが消えた広島で、少女は希望の光となった。

 残酷描写のある話には※を付けます。
24h.ポイント 0pt
1
小説 192,058 位 / 192,058件 歴史・時代 2,385 位 / 2,385件

あなたにおすすめの小説

三国志〜終焉の序曲〜

岡上 佑
歴史・時代
三国という時代の終焉。孫呉の首都、建業での三日間の攻防を細緻に描く。 咸寧六年(280年)の三月十四日。曹魏を乗っ取り、蜀漢を降した西晋は、最後に孫呉を併呑するべく、複数方面からの同時侵攻を進めていた。華々しい三国時代を飾った孫呉の首都建業は、三方から迫る晋軍に包囲されつつあった。命脈も遂に旦夕に迫り、その繁栄も終止符が打たれんとしているに見えたが。。。

義烈の嵐 神風連の乱(事変)

しげはる
歴史・時代
保守思想の起源である明治初頭の士族反乱。 その中で最も動機的異彩を放つ、明治九年熊本で起こった「神風連事変」宇気比によって決起した烈士達の思想背景やその人物を描く。

我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。 一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。 二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。 四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。 五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 そして、1907年7月30日のことである。

ローマの遺産(ロマヌス=ヘレディタス)

八島唯
歴史・時代
 時は十五世紀初頭。西ヨーロッパ諸国は東のイスラーム教国であるオスマン帝国の圧迫を受けていた。防波堤であるビザンツ帝国は衰退はなだしく、その対応が求められていた。レコンキスタの途上にあってイベリア半島の雄でもある新興国カスティリヤ王国はさらに東から勃興しつつあったティムール帝国に目をつける。彼の国はかつてユーラシア大陸を席巻したモンゴルの末裔を称し、領土を拡大していた。さらにオスマン帝国の領土も狙い、両国は雌雄を決する対決に向かっていた。この状況を踏まえ、カスティリヤ王国はティムール帝国との同盟によりオスマン帝国の圧迫に対抗することを決意する。派遣された外交団を狙う刺客。その窮地を救う謎の集団。オスマン帝国の『稲妻』とも称されるスルタンバヤジットと、暁のごとき勢いで西に領土を拡大するティムールの対決。アンカラの戦いの中に埋もれた、忘れられた物語を、今綴ろう。

なにわしぶ子
歴史・時代
はるか昔、奈良時代。 歌を詠み、月を愛でた華やかな貴族社会の中で 波乱万丈な人生を歩んだひとりの女性が居た。

明治仕舞屋顛末記

祐*
歴史・時代
大政奉還から十余年。年号が明治に変わってしばらく過ぎて、人々の移ろいとともに、動乱の傷跡まで忘れられようとしていた。 東京府と名を変えた江戸の片隅に、騒動を求めて動乱に留まる輩の吹き溜まり、寄場長屋が在る。 そこで、『仕舞屋』と呼ばれる裏稼業を営む一人の青年がいた。 彼の名は、手島隆二。またの名を、《鬼手》の隆二。 金払いさえ良ければ、鬼神のごとき強さで何にでも『仕舞』をつけてきた仕舞屋《鬼手》の元に舞い込んだ、やくざ者からの依頼。 破格の報酬に胸躍らせたのも束の間、調べを進めるにしたがって、その背景には旧時代の因縁が絡み合い、出会った志士《影虎》とともに、やがて《鬼手》は、己の過去に向き合いながら、新時代に生きる道を切り開いていく。 *明治初期、史実・実在した歴史上の人物を交えて描かれる 創 作 時代小説です *登場する実在の人物、出来事などは、筆者の見解や解釈も交えており、フィクションとしてお楽しみください

関西桃産太郎

なおちか
歴史・時代
関西地方のとある場所で、おじいさんとおばあさんが大きな桃を拾い、持ち帰った。 その桃から男の子が産まれ、2人は太郎と名付け可愛がった。 スクスクと成長した太郎は、自分の産まれた理由や意味が桃の流れてきた川上にあるのではないかと思い、おじいさんと共に川の源流に向かう。そこで太郎が見た物とは・・・ ※小説家になろうでも連載中です

吼えよ! 権六

林 本丸
歴史・時代
時の関白豊臣秀吉を嫌う茶々姫はあるとき秀吉のいやがらせのため自身の養父・故柴田勝家の過去を探ることを思い立つ。主人公の木下半介は、茶々の命を受け、嫌々ながら柴田勝家の過去を探るのだが、その時々で秀吉からの妨害に見舞われる。はたして半介は茶々の命を完遂できるのか? やがて柴田勝家の過去を探る旅の過程でこれに関わる人々の気持ちも変化して……。

処理中です...