プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり

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アルフィン様が、騎士団を連れてきた。
全て終わった後ですから、勝者ラザリーさんです。

そして横転した馬車箱から、バードナー伯爵が出てきた。伯爵放置していいのかいアリサさん?

「ジョージ様~、凄い~かっこいい方がいますよ~ヒョーガル王子様ですって」
とアリサさんはバードナー伯爵の方には行かず、私達の側で、全力の大声で伯爵に向けて話している。

ぷっははは

「なんか安心してしまいました。アリサさんが、ちゃんとアリサさんで」
と言えば、
「何言っているですか、ミルフィーナ姉様?」

「私の中にある物語で、アリサさんはヒロインで私は、悪役令嬢、ヒロインが恋していく対象者は、兄様やアルフィン様、レオナルド王子様、そんな話を夢見ていたの」
と話していれば、そっとアリサさんの横にバードナー伯爵が追いついた。相変わらず、フォルムが丸い、卵ぽいななんて思いながら、アリサさんは伯爵が横につけば、自然と腕を絡ませた。

変わったな、アリサさん。
先程のヒョーガル王子への挨拶だって、ヒロイン節がかかっていたのに、相手の手を握らなかった。
イケメンは好きだと言葉を吐いても、自分の決めた線からは出ないのね。みんな大人になっていた。

ふふっ

「何ですか、ミルフィーナ姉様笑って!」
と言われ、
「とっても可愛いですね、アリサさん。バードナー伯爵領に行って、ますます可愛いくなったんじゃないですか?」
と聞けば、
「いやだ~、もうミルフィーナ姉様ったら、まぁ、婚約式もしましたし、今日も結婚式の準備のあれこれをお母様に相談して~、半年後には、伯爵夫人です~」
とクネクネしながら、伯爵に寄り添っていた。
バードナー伯爵は、汗を拭く振りをしながら周りを見回した。

「アリサさん、自分の話ばかりでなく、まず何故この状況になったかを確認した方がいいですよ。どう考えても我々は巻き込まれたと見るべきです。それも目の前にいるミルフィーナ様にね。色々と損害的な請求を考えましょう。ミルフィーナ様に出来る姿も見せてギャフンと言わせると言っていたじゃありませんか?」

「え~、偶然会えたのではないですか?」


損害とな!?確かにそれ含めてシュリル様並びにミラン国への追及と請求をしてもらわないと。
しかし伯爵様は、ラザリーさんのことはもういいのかい?気にしてなさそうだが…

後、ギャフンとは?

「バードナー伯爵、アリサ嬢、話の途中で申し訳ないが、ミルフィーナが乗って来た馬車が動くみたいだ。少々狭くなるがダルン侯爵も運び、そちらに乗り移動してもらいたい。ミルフィーナは、私が連れ帰るので」
と私の真後ろに立つ王子が言った。

馬車は一台しか無い。まぁ私が馬に懐中時計を当てて、馬に負傷させてしまったわけだから責任は取る。

しかし、肩に置かれた手が、ぎゅっと押さえられている気がして、なんだか私の鼓動がうるさい!

「私としては状況説明がすぐに欲しいのですが、ダルン侯爵様を医師に見せる方が先ですね。騎士一名は同行願います」
とバードナー伯爵が言い、その後、

「ミルフィーナ様~、私は~」
とラザリーさん。
チラッと後ろを向けば、まだ笑っている瞳とかち合う。
「君は、また御者を頼めるか?それとも馬に乗るか?」
とヒョーガル王子は指示を出す。
「わかりました、御者をします~」

「ありがとう、ラザリーさん。今日はあなたのおかげで助かりました。すぐに御礼はしますから、欲しい物を考えておいてね、本当に御者をして大丈夫なの?無理しないでね」
と言えば、
「わかりました~、御礼楽しみですね~御者好きなんですよ、あの一番前で風を受ける感じが~」
と語尾を伸ばした。

この鬱陶しい語尾伸ばしも、慣れてくればお店の店員さんみたいな気がしてきた。令嬢としてより平民に近いと言っていたのを思い出した。
まず命の恩人に鬱陶しいなんてあり得ない、ごめんなさいラザリーさん。

そして、私は、馬に乗る。ヒョーガル王子は私を背中から抱きしめるように手綱を持つ。
こんな密着耐えるの?何これ、恋だの愛だのなんて知らない令嬢だよ、私は。
まっさらな純真無垢な令嬢に、何この羞恥乗馬。

もう鼓動が全員に聞こえているのではないか、顔から火が出ているのではないか?
もう無理、絶対に無理。

「ヒョ、ヒョウ、ヒョーガル王子、さま、あの、私、やっぱり無理です」
と言えば、
「えっ、ああ、緊張する?顔真っ赤になっているみたいだね。後ろからだと耳が赤いのと、頭から湯気が出そうなぐらい熱くなっている」

な、何、冷静に話しているの?
この王子様。
めちゃくちゃ久しぶりに会って、さっきは、弱ったしょんぼり黒犬だったのに、何故馬に乗ったら強気なわけ?

「少し、聞いて、ミルフィーナ」
と落ち着いた口調で話し始めた。

「俺がトモホーク王国に入った途端、王弟派から襲撃があった。ミルフィーナから渡された髪留めが助けてくれた。一度目は、髪留めが反射して奇襲を気づかせてくれた。二度目は、胸にしまっていた髪留めに、短剣が刺さり刃が身体を通さなかった。あの時ミルフィーナに守られている事を理解した。絶対に生きる、生きてミルフィーナに会うと覚悟を決めた。ボルドートの騎士に俺のペンダントを渡しただろう、あれ、何故騎士に襲われそうになった時守りの魔法陣発動しなかったんだ?」

「えっとそれは、大事なものだから、皮袋に入れてこのポケットに入れていて」

「俺、肌身離さずつけてたの知っているよね?それじゃ発動しないよ」
と先程とは逆に、私、追い詰められ、叱られているんだけど…

ハアー
と深い溜息を吐いてから
「自分が危なかったんだよ。なんでこんな袋の中に閉まっているのさ?ペンダントを渡した意味がないまま終わるところだったよ。俺の代わりにミルフィーナを守るために渡したのに」
なんかかなり饒舌になってない?
私マウント取られているんだけど…

「だってこんな大事なもの、もし魔法陣を使い力がなくなってペンダントが壊れたら、王子の証明が出来なくなってしまうと思ったのです」
と言い訳をした。
しかし、饒舌王子は止まらない。

言葉を有利に運ぶための攻め時を見逃さないヒョーガル王子、これは、バトルロワイアル延長戦か!?

「うん、でも大丈夫だと思ったから渡した。まずは、ミルフィーナが無事じゃなかったら意味ないから!俺は二度目の襲撃を受けたあと、近くの街の途中で元国王軍の副団長や辺境伯の兵達に会って、家族に会えた。話は聞くことが出来たけど、姉上のリリアン王女が、よくわからない事ばかり言って、もうさっさと終わりにしようと国王派の貴族や軍の一部の人間の集まりに参加した。そこでミラン国が王弟に資金提供していることを知り、まず港を押さえた。ミラン国は、船でしか貿易は出来ないからね。それによって、書類や金の流れを止め証拠を押さえた。王弟派も金で繋がっていた内政官がいて、王宮の中から崩れたよ。そして執権を取り戻したが、今度は内外から権力の圧力をかけられた。母が女王として統治することは、他国から見れば、すぐに崩壊するだろう、付け入る隙があると油断させることで、時間稼ぎが出来た。姉にも弟にも王族としての決断をさせた。私は、軍の立て直しを第一として、女王には内外の政務に出来るかぎり尽力してもらった。だから公式の場で私は、騎士として振る舞い王子としての務めは弟にお願いした。それによって弟が王太子みたいな扱いで国内を抑え、姉はミラン国を頼るふりをしてもらうことで、どの勢力も動かないでいてくれた」
と話す。

「よくそんな勝手を女王が許してくださいましたね?」
と当たり前のことを聞くと、


「うん、執権を取り戻す際に女王陛下だけじゃない家族とは密約を交わした。執権は取る代わりに王子として結婚相手は、利益で選ばないし、ある侯爵令嬢以外は認めないと」

「えっ!?」

何その凄く大事なことをさらっと言っているよね。雰囲気とか無視してヒョーガル王子の世界に入っているよね!?

「まぁ、結局選択したのは女王陛下だ。相手がどんな令嬢か心配して、我が国一の賢者をボルドート王国に派遣して王妃教育で調査するなんて言い出して、ヨーダ先生をボルドート王国に派遣する護衛として来たんだ。まだ国が安定していないから迎え入れることは出来ないと思って会わないようにしていた。ボルドート王国とは友好的な同盟を話し合いに来てもいたが、まさかそんなに拗ねるとは思わなかった」

アン?
何最後の一文!
おかしくない、おかしいよね?
拗ねる!?

だ、と!

「何言っているんですか、トモホーク王国の内情なんて知りませんよ。だって情報入って来ませんし!こちらは、ご無事かどうか心配していたんです、手紙ぐらい書けるでしょう?別に私だって、追いかけて、すがろうなんて思っていませんよ!一年も二年も音沙汰無しなんて忘れてください、もう会えません、なわけですよ!15歳の令嬢の気持ちなんて!!わからないでしょう?わかろうともしてませんものね、ヒョーガル王子様は!ロマンス小説じゃ、そういう男、当て馬にされるイケメン青年ですよ。結局、ヒロインをいつも陰で支えた幼馴染とか喧嘩しながら友情から愛情に変わる青年とか側にいる近しい者が教会で鐘を鳴らすのよ」

と言えば、


「ごめん」

クゥーーー
可愛いすぎるだろう!

教訓
イケメンは許される範囲が広すぎるー。

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