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46 家の問題とトモホーク王国の情報
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扉に体格のいい先輩が現れれば、話し声が止まって、みんなそちら側に注目する。
私は、目が合い、
「ミルフィーナ嬢、今日少しいいか?」
突然の教室に来たのは、アルフィン様だった。
「もちろん大丈夫ですが、放課後でよろしいですか?」
と言えば、
「ああ、では、レオナルド王子を王宮に送り届けたら、ダルン侯爵家に行ってもいいだろうか」
「はい、先触れを出しますので大丈夫です」
「では、また」
さらに身体が大きくなっていた。赤茶の髪は短いままツンツンしている。
「今のアルフィン様ですよね?ミルフィーナ様の婚約者ですか?」
とさっきまでダルン侯爵家の悪口言ってませんでしたかご令嬢さん?
やはり恋や婚約者話には敏感なお年頃です。
まだお嬢様キャラは健在中にして猫を被る。
「アルフィン様も兄様とは同級生で、今回のダルン侯爵家の言われようを心配してくださっていて、兄様が生徒会の仕事でいないから、今日訪問しても問題ないか伺ってくれたのです。みなさん大変気遣ってくださり心強いです」
と言えば、さっきまで、自分達が、面白おかしく言っていた手前、顔色を悪くした。
きっとこういう嘘や嫌味が悪役令嬢なんだよなと思いながら、ラーニャの
「意地悪令嬢ですよ」
が聞こえた気がする。
明日からの予定や準備の話を聞いていると隣の教室から甲高い叫び声が聞こえた。
ある男子生徒が廊下に出れば、一斉に廊下に注目が行く。
「いや、いやだ!行かない、ダルン侯爵の屋敷だけは行かない、この人はお母様じゃない。私に折檻もするし虐待もする。私をバードナー伯爵家に捨てた人よ。人手なしよ!」
それは、ヒロインとは思えない叫び。
でも、嘘には聞こえない魂の叫び。
先生も手がつけられないのだろう。私のクラスの先生も応援に行った。
私は一斉に見られた。この騒ぎ兄様は聞こえていないかな。
私は立ち上がり、扉入り口で廊下に見た。アリサさんは先生に抱えられ、どこかに連れて行かれるようだ。
廊下には見っともなく座っているお義母様。
呆然としながら、貴族らしからぬ人前で大粒の涙を流していた。
声をかけたいのに、足が前に出ない。
手に力を入れ扉を押し出すように足を動かした。
「お義母様」
目は何も見えていないだろう。涙が溢れ、髪型は崩れ、顔色も悪い。立つ気力も無く、スレンダーなのに床に身体がくっついたんじゃないかと思うぐらいちっとも動かない。
私一人じゃ駄目だと息を吐くと兄様が反対の肩を腕に絡ませ立ち上がらせる。
「こんな、こんな風になるなんて、すみません、お義母様」
小さくつぶやいた。青褪めた顔色に少し小刻みに震えている肩、私は、兄様に
「馬車まで運びましょう」
と言うと、
「ミルフィーナは教室に戻っていいよ。この責任は私にあるから、…
私がミルフィーナの意見に反対した。少し待った方が良いと言っていたのに」
と後悔の言葉を吐く。
誰も明日のことはわからない。兄様の責任ではない。
「では、私は荷物を取ってお義母様を連れて家に帰ります。こんな状態で一人では帰らせません」
教室に入れば注目は凄い。クラスに戻っている先生に、
「お騒がせしてすみません。お義母様が体調を崩してしまったので、屋敷に連れて帰ります。みなさんも我が家のことで心をざわつかせてすみませんでした」
と頭を下げて荷物を持ち、兄様と目が合う。反対の肩を支え、お義母様のヨタヨタする足を動かしながら馬車に乗った。
「兄様、ではお義母様をすぐに休ませます。執事長には軽く話しますが、父様にはお願い出来ますか?本日、アルフィン様がお見えになりますから」
「わかった。ミルフィーナ、本当にごめん」
こちらもかなり顔色が悪い、兄様は真面目な分お義母様のこの姿の責任を感じているんだろう。
「兄様が謝る事ではないです」
馬車は出発した。お義母様は、すっかり小さくなって震えている。怖かったんだろうな。娘に怒鳴られたのだから。
お義母様が、アリサさんに折檻したとは聞いたことなかったけど…
いろいろショックだっただろうな。
屋敷につき、お義母様の姿を見て、メイドや執事長がすぐに部屋に休ませてくれた。
執事長には軽く事情を説明した。
私の後ろには、ラーニャのロマンス小説仲間のリンがついてくれている。
「アルフィン様がお見えになるの、よろしくね」
とリンに言う。
「はい、お嬢様。攻略対象者の一人ですね。お嬢様を悪役令嬢にした者、しかと取材させていただきます」
ハアー、ラーニャはどこまで引き継ぎをしたのかしら?
「迷惑をかけなければね」
まぁ、ロマンス小説仲間だけあって、やはり空想、妄想、対応可能なメイドだった。まぁラブに重きを置き自ら、ペンを走らせる女の子だ。
しかし最近は、ハード系にハマっていると教えてくれた。
「奥様は大丈夫ですかね?」
「どうかしら?アリサさんを止められるのはバードナー伯爵様しかいないと思うわ」
「ええ~、伯爵様が嫌で学校に来たのではないんですか?」
とリンが驚いていた。
「私は違うと思うわ」
乙女ゲームのヒロインだから学校に行かなければという使命感があったのかも知れないし、もちろんダルン侯爵家憎しの感情もあったかもしれない。
でも新しい制服、手続き、バードナー伯爵がしたのだろう。ラザリーさんがなぜ学校を辞めたかはわからないけど。
きっとアリサさんを救ってくれるのは伯爵だと思う。
***
ダルン侯爵家 サロン
「アルフィン様、賑やかな我が家で申し訳ありません」
と頭を下げてから、席を進める。
「ダルン侯爵家の問題に首を突っ込むわけではないから、気にするな。先日まで一か月、北の森で野営訓練を騎士団でしていた。そこからトモホーク王国の情報が手に入った。まず元国王は、去年ご逝去されたそうだ。そして、現国王、王弟は、生死不明、で城から退去されている。ヒョーガル王子についても立太子の情報はない。しかし前国王派が執権しているのは間違いなさそうだ」
淡々と言うアルフィン様。
「ぁえ、まずヒョーガル王子様は、王宮を取り戻した!?っていう…ことは、勝利したってことですか?もしや、あの王族の証のペンダントがないから王子として立てないのではないですか?どうしましょう!?」
と私は、慌ててしまった。
「ミルフィーナ嬢落ち着いて、いや、王弟退去という情報は本当に最近だと思う。商人の話では、貿易の中心は東部から規制が緩和したから、自由に動けるようになった。情報統制は王弟派がしていたから、それが崩れた意味はわかるだろう。ヒョーガル王子達の勝利は、間違いない。ただ誰が国王として統治しているのかはわからないし、ヒョーガル王子の安否はわからない。それだけ伝えたくて」
とあまり崩れない表情が少し難しい気に見えた。
「安否…
きっと、大丈夫です。強いですから…アルフィン様、本当にありがとうございます。もし王子の証としてペンダントが必要な時は、王宮に持参します」
と言えば、アルフィン様は苦い顔で
「それはヒョーガル王子が凄く嫌がりそうだからな。必要な時に取りにくるさ。あいつ、黒豹って呼ばれていたんだろ。全くあの剣術大会はトラウマになった。圧倒的すぎて、何も出来なかった。あんなの初めてだ。倒れた俺に、王子としての綺麗な剣より、黒豹の剣が好きだと言うから全力を出したよって言ったんだ。黒豹?って騎士団に聞いたら盗賊団でそんな名前聞いた事があると知ったよ。まぁまた試合が出来れば、俺はいい!今のあいつがどんな高みの剣を振るうか楽しみだ」
そう言ってアルフィン様は帰っていった。
「安否」
嬉しい報告であり、不安が募る報告だった。何が起きているのか隣国という距離の遠さにただ無事を願うことしか出来なかった。
アリサさんには悪いが、私の意識はトモホーク王国に傾いていて、我が家のゴタゴタしている間も、私は毎日手紙の確認をした。
しかし、手紙は届かなかった。
私は、目が合い、
「ミルフィーナ嬢、今日少しいいか?」
突然の教室に来たのは、アルフィン様だった。
「もちろん大丈夫ですが、放課後でよろしいですか?」
と言えば、
「ああ、では、レオナルド王子を王宮に送り届けたら、ダルン侯爵家に行ってもいいだろうか」
「はい、先触れを出しますので大丈夫です」
「では、また」
さらに身体が大きくなっていた。赤茶の髪は短いままツンツンしている。
「今のアルフィン様ですよね?ミルフィーナ様の婚約者ですか?」
とさっきまでダルン侯爵家の悪口言ってませんでしたかご令嬢さん?
やはり恋や婚約者話には敏感なお年頃です。
まだお嬢様キャラは健在中にして猫を被る。
「アルフィン様も兄様とは同級生で、今回のダルン侯爵家の言われようを心配してくださっていて、兄様が生徒会の仕事でいないから、今日訪問しても問題ないか伺ってくれたのです。みなさん大変気遣ってくださり心強いです」
と言えば、さっきまで、自分達が、面白おかしく言っていた手前、顔色を悪くした。
きっとこういう嘘や嫌味が悪役令嬢なんだよなと思いながら、ラーニャの
「意地悪令嬢ですよ」
が聞こえた気がする。
明日からの予定や準備の話を聞いていると隣の教室から甲高い叫び声が聞こえた。
ある男子生徒が廊下に出れば、一斉に廊下に注目が行く。
「いや、いやだ!行かない、ダルン侯爵の屋敷だけは行かない、この人はお母様じゃない。私に折檻もするし虐待もする。私をバードナー伯爵家に捨てた人よ。人手なしよ!」
それは、ヒロインとは思えない叫び。
でも、嘘には聞こえない魂の叫び。
先生も手がつけられないのだろう。私のクラスの先生も応援に行った。
私は一斉に見られた。この騒ぎ兄様は聞こえていないかな。
私は立ち上がり、扉入り口で廊下に見た。アリサさんは先生に抱えられ、どこかに連れて行かれるようだ。
廊下には見っともなく座っているお義母様。
呆然としながら、貴族らしからぬ人前で大粒の涙を流していた。
声をかけたいのに、足が前に出ない。
手に力を入れ扉を押し出すように足を動かした。
「お義母様」
目は何も見えていないだろう。涙が溢れ、髪型は崩れ、顔色も悪い。立つ気力も無く、スレンダーなのに床に身体がくっついたんじゃないかと思うぐらいちっとも動かない。
私一人じゃ駄目だと息を吐くと兄様が反対の肩を腕に絡ませ立ち上がらせる。
「こんな、こんな風になるなんて、すみません、お義母様」
小さくつぶやいた。青褪めた顔色に少し小刻みに震えている肩、私は、兄様に
「馬車まで運びましょう」
と言うと、
「ミルフィーナは教室に戻っていいよ。この責任は私にあるから、…
私がミルフィーナの意見に反対した。少し待った方が良いと言っていたのに」
と後悔の言葉を吐く。
誰も明日のことはわからない。兄様の責任ではない。
「では、私は荷物を取ってお義母様を連れて家に帰ります。こんな状態で一人では帰らせません」
教室に入れば注目は凄い。クラスに戻っている先生に、
「お騒がせしてすみません。お義母様が体調を崩してしまったので、屋敷に連れて帰ります。みなさんも我が家のことで心をざわつかせてすみませんでした」
と頭を下げて荷物を持ち、兄様と目が合う。反対の肩を支え、お義母様のヨタヨタする足を動かしながら馬車に乗った。
「兄様、ではお義母様をすぐに休ませます。執事長には軽く話しますが、父様にはお願い出来ますか?本日、アルフィン様がお見えになりますから」
「わかった。ミルフィーナ、本当にごめん」
こちらもかなり顔色が悪い、兄様は真面目な分お義母様のこの姿の責任を感じているんだろう。
「兄様が謝る事ではないです」
馬車は出発した。お義母様は、すっかり小さくなって震えている。怖かったんだろうな。娘に怒鳴られたのだから。
お義母様が、アリサさんに折檻したとは聞いたことなかったけど…
いろいろショックだっただろうな。
屋敷につき、お義母様の姿を見て、メイドや執事長がすぐに部屋に休ませてくれた。
執事長には軽く事情を説明した。
私の後ろには、ラーニャのロマンス小説仲間のリンがついてくれている。
「アルフィン様がお見えになるの、よろしくね」
とリンに言う。
「はい、お嬢様。攻略対象者の一人ですね。お嬢様を悪役令嬢にした者、しかと取材させていただきます」
ハアー、ラーニャはどこまで引き継ぎをしたのかしら?
「迷惑をかけなければね」
まぁ、ロマンス小説仲間だけあって、やはり空想、妄想、対応可能なメイドだった。まぁラブに重きを置き自ら、ペンを走らせる女の子だ。
しかし最近は、ハード系にハマっていると教えてくれた。
「奥様は大丈夫ですかね?」
「どうかしら?アリサさんを止められるのはバードナー伯爵様しかいないと思うわ」
「ええ~、伯爵様が嫌で学校に来たのではないんですか?」
とリンが驚いていた。
「私は違うと思うわ」
乙女ゲームのヒロインだから学校に行かなければという使命感があったのかも知れないし、もちろんダルン侯爵家憎しの感情もあったかもしれない。
でも新しい制服、手続き、バードナー伯爵がしたのだろう。ラザリーさんがなぜ学校を辞めたかはわからないけど。
きっとアリサさんを救ってくれるのは伯爵だと思う。
***
ダルン侯爵家 サロン
「アルフィン様、賑やかな我が家で申し訳ありません」
と頭を下げてから、席を進める。
「ダルン侯爵家の問題に首を突っ込むわけではないから、気にするな。先日まで一か月、北の森で野営訓練を騎士団でしていた。そこからトモホーク王国の情報が手に入った。まず元国王は、去年ご逝去されたそうだ。そして、現国王、王弟は、生死不明、で城から退去されている。ヒョーガル王子についても立太子の情報はない。しかし前国王派が執権しているのは間違いなさそうだ」
淡々と言うアルフィン様。
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と私は、慌ててしまった。
「ミルフィーナ嬢落ち着いて、いや、王弟退去という情報は本当に最近だと思う。商人の話では、貿易の中心は東部から規制が緩和したから、自由に動けるようになった。情報統制は王弟派がしていたから、それが崩れた意味はわかるだろう。ヒョーガル王子達の勝利は、間違いない。ただ誰が国王として統治しているのかはわからないし、ヒョーガル王子の安否はわからない。それだけ伝えたくて」
とあまり崩れない表情が少し難しい気に見えた。
「安否…
きっと、大丈夫です。強いですから…アルフィン様、本当にありがとうございます。もし王子の証としてペンダントが必要な時は、王宮に持参します」
と言えば、アルフィン様は苦い顔で
「それはヒョーガル王子が凄く嫌がりそうだからな。必要な時に取りにくるさ。あいつ、黒豹って呼ばれていたんだろ。全くあの剣術大会はトラウマになった。圧倒的すぎて、何も出来なかった。あんなの初めてだ。倒れた俺に、王子としての綺麗な剣より、黒豹の剣が好きだと言うから全力を出したよって言ったんだ。黒豹?って騎士団に聞いたら盗賊団でそんな名前聞いた事があると知ったよ。まぁまた試合が出来れば、俺はいい!今のあいつがどんな高みの剣を振るうか楽しみだ」
そう言ってアルフィン様は帰っていった。
「安否」
嬉しい報告であり、不安が募る報告だった。何が起きているのか隣国という距離の遠さにただ無事を願うことしか出来なかった。
アリサさんには悪いが、私の意識はトモホーク王国に傾いていて、我が家のゴタゴタしている間も、私は毎日手紙の確認をした。
しかし、手紙は届かなかった。
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