プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり

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18 プロローグでヒロインを退場させます2

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「いません」
執事長にラーニャが報告している声が聞こえた。
朝から廊下がバタバタしている。
「お嬢様、申し訳ありません、朝の用意をします」
とラーニャが私の服をクローゼットから出し、着替えさせてくれる。髪の毛を解かし始めるラーニャの顔は少し焦り、笑顔がぎこちない。

「ラーニャ、みんな忙しそうね。簡単に一つ結びでいいわ」
と言えば、ラーニャは顔を振り、
「いつも通り髪を編ませてください。私の仕事ですから」
と言った。
ラーニャから何も話さないということは、私には関係ない話なのかしら。口止めされている?
「ありがとう、ラーニャ。朝食を食べてくるわ」
と部屋を出た。
廊下ですれ違う使用人と軽く挨拶をしてダイニングにつけば、お父様の不機嫌な顔とお義母様の真っ青な顔、お兄様が私を見て肩を上げ呆れた顔をした。

「みんな、席についたな。アリサが部屋からいなくなった。今、使用人が探しているが、明日までに見つからない場合、バードナー伯爵家には手紙を書き、アリサがもしそれ以降に見つかった場合、修道院に入ってもらう。これは決定事項でお前達は、探したりしないでいい!それぞれ今日の予定を励め、後でミルフィーナ、執務室に来てくれ」

「はい、かしこまりました」

探さなくていいから、ラーニャは私に何も言わなかったのか。
屋敷内に隠れているのかしら?
黙々と食べる朝食に味があまり感じなかった。


執務室

「ミルフィーナ、どう思う?」
お父様が真っ直ぐに、見る。
「お父様の判断は正しいでしょうね。アリサさん外に出たのですか?」
と聞けば、
「窓は閉まっていて、玄関から出たわけはない。裏口も鍵が閉まっていた。あとは、朝方の調理場は、二人体制でやっていて、出入りに気を止めなかったと言っている」
「二人?三人体制では?」
「ヒョウのことか…アリサの件があるからバードナー伯爵家に送り出してから調理場に戻ってもらうつもりだったが、執事長曰く、今、本に夢中だそうだ。かなり物覚えが早く知識が豊富だと報告を受けた。やはりただの平民では無さそうだ。もしこのまま使用人としてなら執事長が、自分の後釜にしたいと言ってきた。ヒョウには、明日、ミルフィーナがいう王族の証のペンダントを見せてもらおうと思う」

「そうですか、ヒョーガル様として扱われるのが良いですが、今のトモホーク王国は帰国しても争いの中に巻き込まれてしまうだけかもしれませんね。どうにかレオナルド様とヒョーガル様が会う機会があれば良いのですが…
学校、お兄様と一緒に学校に通うのは難しいですか?」
と聞けば、

「う、うむ。貴族の学校に平民を…」
と嫌な顔をした。
まだ、お父様は王子様だとは、信じてくれてない?まだ迷っているのか?でも安否不明とか…
お父様の中でも曖昧なのだろう。
当然か。
平民と王子様なんて、侯爵として判断を誤るわけにはいかないよね。

でも、アリサさんの代わりにヒョーガル王子が通ってもお金は一緒よね、兄様と同じ歳だと思うのだけど。

そんな時に私は思いついてしまった。もしアリサさんが外に出て戻ってくるとして、彼女なら真っ先にお兄様に助けを求めるに違いないと。

「お父様、もしアリサさんが外から帰って来たとしても、最初に兄様の部屋に忍びこみますよ。彼女お金を持っているのですか?」
「いや、サラに確認したところ、前回の小遣いは全て使って、衣服は商人が代金を取りに来たぐらいだ。そうか困ったらエルフィンか、アリサなら考えそうだ、執事長を呼ぼう」

「では、失礼します」
と言えば、お父様は、少し私の顔色を探るように、
「もしかするとバードナー伯爵家にミルフィーナが行ってもらうかもしれない。アリサが宝石を持ち出している、換金して遠くに逃げるかもしれん」
と言った。
「アリサさんが帰ってこないと見越して、その場合の控えとして花嫁修行にですか?」
「花嫁修行はない。婚約話として」

「わかりました。行きましょう。それで丸く収まるなら」
と言った。
今回は、私もお父様には誠意を見せた方がいいことはわかっていた。こんなに早く決まった見合い話、お父様も無理をしたのだろう。
これ以上は、お父様の顔に泥を塗るわけにはいかない。

私は前回、断っている。騎士団長の息子よりは攻略対象者じゃないバードナー伯爵の方がマシだと思っている。
まぁヒロイン追放して乙女ゲームだ攻略対象者だなんて関係ない話だけど。

『アリサさんが逃げる=ヒロインがこの展開を拒否している』

私はそんなこと考えもしなかった。


私が部屋に戻って、今日の家庭教師の授業の準備をしていれば、ラーニャが入ってきて、
「お嬢様、助かりました。エルフィン様の部屋を見張るだけなら交代で出来ます」

「実際、わからないわよ…
ただ乙女ゲームのヒロインは、何故か真っ直ぐに攻略対象者を疑ってないから」
と言えば、
「アリサ様のエルフィン様への執念は何か違いますものね。エルフィン様はすっかり冷めてしまいましたが」

不思議、何故アリサさんは兄様の表情とか見ないのだろう?自分が嫌われる事はあり得ないと思うのだろうか?

ごめんね、アリサさん。攻略対象者に邪険にされるヒロインにしてしまった。ひどい義姉です。
悪役令嬢からヒロインへの仕返しってやつでしょうか。
まだプロローグなんですが…
もしかすると私も学校に通えないかもしれないし。悪役令嬢もプロローグで終了ということかもしれない。

そうすれば、対等な関係のまま、ゲームは始まらず終了。


青い鳥の髪留めをつけ、いざ、勉強です。こういうズルだけは、やめれないの。いつもよりも声が大きく聞き取りやすいと感じながら、貴族名鑑を覚えていく。やはりそれでもキツい。何故人の名前なんぞ覚えなきゃならないのだ。茶会、パーティー、派閥、勝手にやっておくれと思うほどに爵位からの名前は辛いのです。

朝のアリサさんの家出、まだ見つかっていないようだけど、バードナー伯爵が嫌なのかしら?まだお会いしていないから、私としてはなんとも言えないが、ヒロインアンテナが立たないということは、イケメンではないのかもしれない。

貴族の名前を覚えて、爵位が上がれば上がるだけ、縦と横の繋がりが大事だと先生は言う。話題の提供に流行の情報を敏感に捕まえなければいけないらしい。
考えてみれば、お義母様は、毎日出かけている。身体大丈夫なのかしら。

「私、侯爵の家格でも無理かもしれないわ」
ボソッと呟いた言葉に先生は返した。溜息付きで。
「そうですね、ミルフィーナ様は、やればできるのですが、まだ目標が見つかっていない事で、積極性に欠けるのですよね」
と納得された。

もしかして私には、バードナー伯爵様がちょうどいい相手かもしれない。パーティー、茶会、行かなければ、貴族名鑑なんて覚えなくていいのでは?

勉強辛い、ヒロインアイテムをつけているおかげで小テストは合格したけど、自分一人じゃ暗記できない。楽な方へ楽な方へと引きつけられていくけどな、私の場合…


悪役令嬢の役目終えたら、私はどこに行くんだっけなぁ~、中途半端な記憶のせいで、頑張れない理由をどこかに口実を見つけて逃げ出したくなる。

実際、バードナー伯爵領に行きたいわけではないが、凄く嫌ではない、この不思議。

もしもの話…

を考えた。

確かにまだ結婚は嫌だな。
ごめん、アリサさん、確かに花嫁修行とか辛そうだなぁと現実を考えた。
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