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36婚約パーティー

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キラキラ、キラキラ
どこを見ても眩しい。天井のシャンデリア、ガラスのコップ、ご婦人達のドレスに装飾。

両親と共に挨拶をした。ルイーゼは、相変わらず高圧的で、フランツ王子様は、色白が引き立つほど無表情と顔色が悪そうだ。目も合わせない。
あれから、本人から話も聞けてない。伝書鳩もきてくれない。もちろんルイーゼから聞けるわけがない。

ドミルトン公爵夫妻に挨拶した後、奥座にいる国王夫妻に挨拶した。
作り笑いなのか、崩れない笑みを浮かべる王妃様。
何があった?と疑問に思ったところで、たかが伯爵令嬢の私に話す筋合いはない。
高飛車な笑い声が響く。
両親と別れた後、端に行き飲み物をもらった。今日の主役は、ピカピカだ。そして真っ青なドレスに散りばめれた宝石と頭の上のティアラも光輝いて、きつく巻いた縦ロールは、崩れることを知らないパンのようで、遠目でもその迫力が伝わってくるが、今日は絵が描きたい衝動はない。
悪役令嬢と悲劇の王子様
そんな風に見える。

カイル王子は知っているのだろうか?あたりを見回してもいない。そう言えば、側妃様とリオン王子も。

なんだかとても浮いている。一人が高らかに笑って、一人はこの世を見ていないような目をして、アンバランスの二人で幸せとは無縁の香が漂っていた。

「あら、アーシャ来てたの?ふふあなたもドミルトン家で良かったわね。何も貢献してないけど」
「本当よね。ルイーゼ様のおこぼれで、王宮の婚約パーティーに出席出来ているのよ、感謝しなさい」
とサラとリリアンが前を立ちはだかる。
「本日は、おめでとうございます」
とありきたりな言葉を言った。何が、めでたいかはわからないけど、これで悪役令嬢として破滅が待っているのか?いや、予告書とは違って幸せになるのか。
「本当に調子の良い子ね」
と捨て台詞をもらった後、二人は立ち去った。
予告書通りになった。そしてマリーさんが現れて二人が恋をすればハッピーエンド。
これでいいのか?本当に?

今、マリーさんは学園に来ていない。それにあの残念なヒロインが悪役令嬢に勝てるんだろうか?
フランツ王子の気持ちはどこにある?あんな顔した婚約パーティーなんて誰も喜んでいないよ。

そして、ここに元婚約候補者達もいる。どういう事だろう?争いもせず、生徒会メンバーと談笑していた。
とても楽しそうだ。今更、悔しがっても婚約者が変わるわけではないから、平和が一番だけど。
私は候補者達と知り合いではないので、目線を外し、目立たないよう過ごす。生徒会メンバーに挨拶をとも考えたが、どうもあの場にいくのは躊躇う。
いや、面倒くさいのだ。それとやっぱり気になることがある。

もう一つ気になったのは、エリオンがいない事だ、実の妹と学友の王子殿下の婚約パーティーなのに、まだ一度も挨拶をしていない。派手な動きはせずに横目で探す。
この会場は、疲れる。僻みではないと思いたいが、息苦しい。勝手に部屋に行くわけにもいかず、外の空気に当たれば、エリオンがいた。
「エリオン様、このようなところにいらっしゃたのですか?本日は、おめでとうございます」
と言えば、
「アーシャ来てくれたんだね。パーティー楽しんで」
と言われた。エリオンは、嬉しいとも悲しいともない表情で、ただ遠くを見ていた。
「どうしたんですか?エリオン様。体調が悪いなら、執事を呼んできましょうか?」
と言うと、
「いや、なんでもないよ。この場にいないローズリー嬢の事を考えていただけさ」
「そうですね。会場には、生徒会メンバーが揃っていました。みんなドミルトン家の祝い事を喜んでくれるなんて良かったです」
単にみんなライバルだったのに手のひら返しましたよねと言ったつもりだった。情報が欲しかったのかもしれない。察したかどうかもわからないが、
「アーシャにとっては悔しい?」
「まさか、何とも思ってませんよ。ルイーゼ様が皆に慕われる王太子妃になって頂ける事を切に願っております」
と言えば、エリオンは急に表情が崩れた。
「アーシャ、まさか本気で言っているの?ルイーゼが皆から慕われる人?あり得ないだろう。どんだけ嫌味を言われてきた?散々苦労させられてきた私だから断言出来るよ。ルイーゼは最低な王妃になるよ」
「いえ、節度や周りからの進言もありましょう?」
「このままいけば、王妃の肩書きの軟禁にするんじゃないか王族は!」
とエリオンが笑った。気でも狂ったのか、いつものエリオンならそんな揚げ足を取られる言葉は言わない。
「いけません、エリオン様。言葉が過ぎます。誰が聞いているかわからないこの場で、王家に対して不敬なお言葉です」
と忠告すれば、
「フランツ王子様は、アーシャに頼らなかったんだな。カイル王子襲撃の際は、頼ったんだよな。伯爵領地で捕まえたことになっているし、お祖父様が事情聴取されている。アーシャが知らないわけないよね、お気に入りだし」
と少し投げやりな言葉が飛んできた。
「いえ、フランツ王子様から何かという指示はなかったですし、情報が欲しかっただけです。領内の事件でしたので外枠は把握しておりますが、王族間の事情は知りません。カイル王子様は次の日、ストック国に向かいました」
「そうか、それでもこれでいいんだよ。これで上手く国が回ると思えばいい。フランツ王子様は、アステリア王国に介入されるのが嫌、国内でドミルトン公爵家の力はおおきい、上手く機能するよ。殿下の望み通り」
とエリオンは言った。殿下の望みと言ったなら、最終判断は、本人が決めたのか、なら私がいう言葉は、
「望み通りなら良かったですね」
と笑って言った。これは本心だ。何が裏にあったとしても。

エリオンは、ゆっくり頷き
「あぁ」
と言った。とても辛そうに。
その後は何も言えなかった。

会場内に戻れば、両親が探してくれていた。やっと帰れるのか。早く帰りたい。私にはここは眩しすぎて…
心が痛すぎて。
鼻が曲がるような香水の匂いも目にきつい光も、何も感じない、この世を見ていない顔をしている学友も、あんなに辛い顔をした従兄弟も…
ただ、ただ、心配になって、涙を拭いた。
「どうした?アーシャ」
「眩しすぎて目がチカチカしてたの」
ドミルトン公爵家に泊まる両親とお祖父様達、私は、ドレスを脱がしてもらい、寄宿舎に帰ると言った。もう遅いわよとお母様に言われたが、近いからと言って、そそくさと退散した。

ミリーと馬車に揺られ、どうでしたか?と聞かれ私は、
「可哀想だったわ」
と答えた。ミリーは驚いて、
「何故、誰がですか?」
と言ったが、私は、少し微笑んだだけで答えなかった。
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