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17フランツ王子のお茶会
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とうとう来てしまった。
お祖母様、お母様が、王都からわざわざ呼び寄せたドレス職人のオリジナル…私には不相応の美しいドレス。オレンジ色と黄色のグラデーションが妖精みたいだと思う。そう、私以外が着れば!
ドレスだけの一人歩きになる。絶対に。私は、いつもの若草色の綿生地ワンピースがお気に入りなのに。溜息をつきたくなる。このドレスを買うぐらいなら、さらに綿花工場の住み込み住宅をもう一棟建てればいいのにと思う。
ハァー。
伯爵領になって山の領地が加わった。綿花栽培にお母様が尽力し、お父様は、住宅地の整備をした。これによって女の子の職や住まいが安定して、もう売られるぐらいなら綿花工場に行くという人達が増えた。建築も盛んになり、男女共に職も結婚も増え、領民の数は、どの領地よりも増加しつつある。識字率も高くなり、税収が増え、学校もできることになった。
豊かになったことはいいし、嬉しい。
いろんな可能性が広がる。
自慢の領地だ。
しかし、ここは王都の宿。
「マリア、行きたくないわ。このドレス脱いでいつものドレスにならない?」
「もう馬車も来てます。無理です」
「病気ってことで通らないかしら?」
「今やドミルトン伯爵領は人気の領地。必ずお友達が出来ますよ」
「マリア、それはルイーゼ様に見つからなければね」
と言えば、マリアもその意味は理解している。従兄弟のハイド曰く、ルイーゼは、その評価の何もかもが許せないらしい。
我が領の悪口を言い回っていると報告しに来ていた。ハイドは、もうじき学園に入るため、お祖父様やお祖母様に挨拶に来た。
「学園か…」
王宮の門構えの立派さに、護衛のシンに
「シンさん、不相応すぎてお腹痛くなってきたわ」
「おや、アーシャ様でも城は怖いですか?」
「怖いと言うよりも縁がないかな」
「そうでしょうか?私にはいるべき場所のような」
と言った。いるべき場所?貴族の令嬢の就職先の一つは、王宮の侍女だけど。確かに伯爵領は、マークがいるから私に領地経営は無理だ。マークに頼んで学校の先生とか採用してくれないかしら。
ハァー。
薔薇のアーチが華やかで楽団の音楽まで聴こえてくる。
「アーシャ様!列が出来てますよ」
「挨拶ですか、やっぱり一人一人しているのね。ハァー」
「溜息つかないで下さい。マリアも悲しみます」
「だって…」
「アーシャ様らしくありませんよ、はい、いってらっしゃいませ」
馬車から降り、長い列にシンは私を誘導した。横を見ると沢山のメイドさんとタワーになっているお菓子の山。
噴水や庭園は、オレンジと青系の花が統一されていた。
美しい。ただ見ているだけなら。
青はフランツ王子の髪色に合わせているのかしら。バランスよく配置されていて、スケッチしたいと思った。
庭の美しさに見惚れてれば、前方から、
「ルイーゼ・ドミルトン公爵令嬢でございます。フランツ王子様、ご機嫌麗しくございます。兄エリオンからいつだって、フランツ王子様の話は聞いておりましたのよ。オッホッホ。第一王子を支えるのが、公爵家の勤め、私も微力ながら力添えをさせていただきたいですわ」
とルイーゼが言った。
高笑いが聞こえる。
後ろの事を考えずに、長い挨拶。相変わらず目立ちたいのか、真っ青なドレスにキラキラした髪飾り。とても10歳には見えない。ルイーゼの後はきっとサラとリリアンだろう。声が聞こえない。どれだけ大きな声で挨拶したのだろうか。声量が凄かった。
ルイーゼの位置を確認しながら前に進めば、少し離れた場所で三人組が挨拶の様子を見ている。
あれは、何の嫌がらせでしょう?
一人一人の王子様との挨拶チェック?
恐ろしい。
まだ席につかない。不思議な光景。執事に席に着くよう促されている。顔だけこっちを見て、無理矢理移動しているし。相変わらず、恥ずかしいし、巻き込まれたくないわ。
「アーシャ・ドミルトンでございます。本日は、お招きありがとうございます」
と端的に挨拶をしてその場を離れようとすれば、
「アーシャ嬢、良く来てくれたね」
と白い陶器みたいな肌に濃い青系の髪、冷たそうに見えるはずなのに、何故か優しい印象を受けた。
おや、氷の王子が笑っておりますぞ。
無表情の設定はどうしたのか?
頭を下げ、その場を去る。
何かめちゃくちゃ怖い。その場の視線だよ。令嬢の視線めちゃくちゃ怖いんだけど。
端のテーブルに着きお茶を入れてもらった。前の方のテーブルに真っ青なドレスが見えたので中々いい場所取りが出来たはずだ。フランツ王子様は一つ一つテーブルを回るらしい。カイル王子様もお菓子のタワーのケーキの場所にいたが、令嬢に囲われていた。
「あの、フランツ王子様と知り合いなんですの?私、あなたの挨拶の後ろだったので、フランツ王子様から返しがあるなんて羨ましいですわ」
と隣の席の令嬢に聞かれ、
「まさか、知らないです。従兄弟が、エリオン・ドミルトンですので、何年も前から王子殿下とは学友と聞いております。その関係でしょう」
と答えた。令嬢怖い。10歳でもみんな狙いにいっているんだ。もっとも睨みを利かしている悪役令嬢ルイーゼ様は、どのテーブルにも牽制を仕掛け始めて動いていた。
「さぁ、私も」
と立ち上がった。
まだ私には気づいてないようだし、今のうちにどこかへ…
「まだフランツ王子様がこちらのテーブルを回ってませんのよ」
と隣の席の子に言われたので、
「お菓子を取りに行ってきます。回ってこられたらそのようにお伝えください。オッホッホ」
とルイーゼが向かう方とは、逆に行く。カイル王子とも逆になるが仕方がない。ベンチも無ければ花もない。土が曝け出ている場所。
「隠れられないわね」
少し離れれば大きな木があった。ゴツっとした根元に腰をかけ、落ちている木の枝で蟻の巣を突いていた。
「少しお菓子を持ってから移動すれば良かったな」
「お腹が空きましたか?ご令嬢」
と後ろから声がして、振り返れば、
「カイル王子様!」
近くで見ると背が高くなり、黄色の髪は伸びて紐で括り、肌色は褐色で傷さえも精悍な感じでもう可愛さではなくカッコ良さになっていた。
「久しぶりだな。オレンジのドレス姿の令嬢がふらふら何もない場所に向かっていたからね、もしやと思ってな」
と笑って言う。
「よくわかりましたね」
「手紙で隠れ場所を聞くぐらいだからな。すぐに姿を消す事を考えるだろうと思って、ケーキを取っておいたぞ」
「なんと」
メイドの一人がサッと布を敷き、美しいケーキが並ぶ。思わず手を叩いてしまった。
「凄い!サプライズだわ」
「まぁ、アーシャが事前に知らせてくれたからな。こちらも用意しただけ」
「ありがとうございますカイル王子様」
あー、手紙を書いてて良かったと感動しながら、モグモグ食べていれば、
「今年は収穫祭行けそうだ」
とカイル王子が言った。
「本当ですか?それは楽しみですね、カイル王子様が武術大会に参加してくれれば活気が出ますね。後夜祭のダンスパーティーまで参加出来そうですか?」
「あぁ、三日ほど泊まらせてもらう予定だから」
「あの時以来、村人達が、お祝い事とかもイノシシの丸焼きを囲うようにダンスをするのが、流行りなんです。今や狩猟の儀式みたいですよ」
「なんだ、それ」
「ダンスして肉を食べるお祝いって事です」
と言えば、また後ろからスッと現れた影。
「お二人さん、第一王子のお茶会をサボるなんて酷いな」
と青い髪が揺れた。
「兄様」
「フランツ王子様」
と私達が後ろを振り向くと
「何の話?」
「今年の収穫祭」
カイル王子が答えた。
「あぁ、私も行きたいな」
と白い顔で言う王子の表情からは本気かどうか読み取れない。
「難しいでしょうね、第一王子が一つの領地に肩入れしては争いや噂を作る元になります」
とカイル王子が言えば
「そうだね」
とフランツ王子は、やっぱり表情を変えない。だけど、なんとなくだが、私は、
「行きたいんですね、カイル王子様が羨ましいと」
と言って笑ってしまった。
表情は作らずとも声のトーンでいじけているのがわかる。やはりまだ子供で、氷の王子ではない、これからなのかもしれないけど。
あんなに茶会にも行きたくなかったし、会いたくなかった第一王子様が、私達と同じで我慢もしている。私の今日の我慢を帳消しにするように、
「さぁ立ち上がって、ランララランララ…ララはい、お互い手を合わせて叩き合う、ランララランララ…」
木の影で子供が踊っている。
言葉はいらない。
社交ダンスでもない。村人のダンス。
フッフフ
「アーシャ、君には御礼を言わなければならない。あの日、見つけてくれてありがとう。命の恩人だ」
フランツ王子様が言った。私は、人差し指を口に当て、顔を振った。
そしてフランツ王子を探しているメイド達の方に指をさして
「あなた様の好きなように羽ばたいて下さいませ。せっかくの人生、囲われ羽も押さえつけられるかもしれませんが、こうやって羽ばたかせる場所をカイル王子様が作ってくれます。あなた様は一人じゃありません」
と言って別れた。最後こちらを一切見なかったけど、あの事件を気に病まないでカイル王子は生きているんだからとの思いは伝わっただろうか?
その後カイル王子は、なんか不機嫌だったし、茶会の会場では令嬢達が揉めているしで、この隙に横を通ってさっさと馬車で帰った。
フランツ王子様には断りを入れなかったが、踊ったし、話したし、今日の役割は果たしただろうと逃げた。
結局、お茶は、口をつけた程度でケーキはかなり食べれたから良しとした。
お祖母様、お母様が、王都からわざわざ呼び寄せたドレス職人のオリジナル…私には不相応の美しいドレス。オレンジ色と黄色のグラデーションが妖精みたいだと思う。そう、私以外が着れば!
ドレスだけの一人歩きになる。絶対に。私は、いつもの若草色の綿生地ワンピースがお気に入りなのに。溜息をつきたくなる。このドレスを買うぐらいなら、さらに綿花工場の住み込み住宅をもう一棟建てればいいのにと思う。
ハァー。
伯爵領になって山の領地が加わった。綿花栽培にお母様が尽力し、お父様は、住宅地の整備をした。これによって女の子の職や住まいが安定して、もう売られるぐらいなら綿花工場に行くという人達が増えた。建築も盛んになり、男女共に職も結婚も増え、領民の数は、どの領地よりも増加しつつある。識字率も高くなり、税収が増え、学校もできることになった。
豊かになったことはいいし、嬉しい。
いろんな可能性が広がる。
自慢の領地だ。
しかし、ここは王都の宿。
「マリア、行きたくないわ。このドレス脱いでいつものドレスにならない?」
「もう馬車も来てます。無理です」
「病気ってことで通らないかしら?」
「今やドミルトン伯爵領は人気の領地。必ずお友達が出来ますよ」
「マリア、それはルイーゼ様に見つからなければね」
と言えば、マリアもその意味は理解している。従兄弟のハイド曰く、ルイーゼは、その評価の何もかもが許せないらしい。
我が領の悪口を言い回っていると報告しに来ていた。ハイドは、もうじき学園に入るため、お祖父様やお祖母様に挨拶に来た。
「学園か…」
王宮の門構えの立派さに、護衛のシンに
「シンさん、不相応すぎてお腹痛くなってきたわ」
「おや、アーシャ様でも城は怖いですか?」
「怖いと言うよりも縁がないかな」
「そうでしょうか?私にはいるべき場所のような」
と言った。いるべき場所?貴族の令嬢の就職先の一つは、王宮の侍女だけど。確かに伯爵領は、マークがいるから私に領地経営は無理だ。マークに頼んで学校の先生とか採用してくれないかしら。
ハァー。
薔薇のアーチが華やかで楽団の音楽まで聴こえてくる。
「アーシャ様!列が出来てますよ」
「挨拶ですか、やっぱり一人一人しているのね。ハァー」
「溜息つかないで下さい。マリアも悲しみます」
「だって…」
「アーシャ様らしくありませんよ、はい、いってらっしゃいませ」
馬車から降り、長い列にシンは私を誘導した。横を見ると沢山のメイドさんとタワーになっているお菓子の山。
噴水や庭園は、オレンジと青系の花が統一されていた。
美しい。ただ見ているだけなら。
青はフランツ王子の髪色に合わせているのかしら。バランスよく配置されていて、スケッチしたいと思った。
庭の美しさに見惚れてれば、前方から、
「ルイーゼ・ドミルトン公爵令嬢でございます。フランツ王子様、ご機嫌麗しくございます。兄エリオンからいつだって、フランツ王子様の話は聞いておりましたのよ。オッホッホ。第一王子を支えるのが、公爵家の勤め、私も微力ながら力添えをさせていただきたいですわ」
とルイーゼが言った。
高笑いが聞こえる。
後ろの事を考えずに、長い挨拶。相変わらず目立ちたいのか、真っ青なドレスにキラキラした髪飾り。とても10歳には見えない。ルイーゼの後はきっとサラとリリアンだろう。声が聞こえない。どれだけ大きな声で挨拶したのだろうか。声量が凄かった。
ルイーゼの位置を確認しながら前に進めば、少し離れた場所で三人組が挨拶の様子を見ている。
あれは、何の嫌がらせでしょう?
一人一人の王子様との挨拶チェック?
恐ろしい。
まだ席につかない。不思議な光景。執事に席に着くよう促されている。顔だけこっちを見て、無理矢理移動しているし。相変わらず、恥ずかしいし、巻き込まれたくないわ。
「アーシャ・ドミルトンでございます。本日は、お招きありがとうございます」
と端的に挨拶をしてその場を離れようとすれば、
「アーシャ嬢、良く来てくれたね」
と白い陶器みたいな肌に濃い青系の髪、冷たそうに見えるはずなのに、何故か優しい印象を受けた。
おや、氷の王子が笑っておりますぞ。
無表情の設定はどうしたのか?
頭を下げ、その場を去る。
何かめちゃくちゃ怖い。その場の視線だよ。令嬢の視線めちゃくちゃ怖いんだけど。
端のテーブルに着きお茶を入れてもらった。前の方のテーブルに真っ青なドレスが見えたので中々いい場所取りが出来たはずだ。フランツ王子様は一つ一つテーブルを回るらしい。カイル王子様もお菓子のタワーのケーキの場所にいたが、令嬢に囲われていた。
「あの、フランツ王子様と知り合いなんですの?私、あなたの挨拶の後ろだったので、フランツ王子様から返しがあるなんて羨ましいですわ」
と隣の席の令嬢に聞かれ、
「まさか、知らないです。従兄弟が、エリオン・ドミルトンですので、何年も前から王子殿下とは学友と聞いております。その関係でしょう」
と答えた。令嬢怖い。10歳でもみんな狙いにいっているんだ。もっとも睨みを利かしている悪役令嬢ルイーゼ様は、どのテーブルにも牽制を仕掛け始めて動いていた。
「さぁ、私も」
と立ち上がった。
まだ私には気づいてないようだし、今のうちにどこかへ…
「まだフランツ王子様がこちらのテーブルを回ってませんのよ」
と隣の席の子に言われたので、
「お菓子を取りに行ってきます。回ってこられたらそのようにお伝えください。オッホッホ」
とルイーゼが向かう方とは、逆に行く。カイル王子とも逆になるが仕方がない。ベンチも無ければ花もない。土が曝け出ている場所。
「隠れられないわね」
少し離れれば大きな木があった。ゴツっとした根元に腰をかけ、落ちている木の枝で蟻の巣を突いていた。
「少しお菓子を持ってから移動すれば良かったな」
「お腹が空きましたか?ご令嬢」
と後ろから声がして、振り返れば、
「カイル王子様!」
近くで見ると背が高くなり、黄色の髪は伸びて紐で括り、肌色は褐色で傷さえも精悍な感じでもう可愛さではなくカッコ良さになっていた。
「久しぶりだな。オレンジのドレス姿の令嬢がふらふら何もない場所に向かっていたからね、もしやと思ってな」
と笑って言う。
「よくわかりましたね」
「手紙で隠れ場所を聞くぐらいだからな。すぐに姿を消す事を考えるだろうと思って、ケーキを取っておいたぞ」
「なんと」
メイドの一人がサッと布を敷き、美しいケーキが並ぶ。思わず手を叩いてしまった。
「凄い!サプライズだわ」
「まぁ、アーシャが事前に知らせてくれたからな。こちらも用意しただけ」
「ありがとうございますカイル王子様」
あー、手紙を書いてて良かったと感動しながら、モグモグ食べていれば、
「今年は収穫祭行けそうだ」
とカイル王子が言った。
「本当ですか?それは楽しみですね、カイル王子様が武術大会に参加してくれれば活気が出ますね。後夜祭のダンスパーティーまで参加出来そうですか?」
「あぁ、三日ほど泊まらせてもらう予定だから」
「あの時以来、村人達が、お祝い事とかもイノシシの丸焼きを囲うようにダンスをするのが、流行りなんです。今や狩猟の儀式みたいですよ」
「なんだ、それ」
「ダンスして肉を食べるお祝いって事です」
と言えば、また後ろからスッと現れた影。
「お二人さん、第一王子のお茶会をサボるなんて酷いな」
と青い髪が揺れた。
「兄様」
「フランツ王子様」
と私達が後ろを振り向くと
「何の話?」
「今年の収穫祭」
カイル王子が答えた。
「あぁ、私も行きたいな」
と白い顔で言う王子の表情からは本気かどうか読み取れない。
「難しいでしょうね、第一王子が一つの領地に肩入れしては争いや噂を作る元になります」
とカイル王子が言えば
「そうだね」
とフランツ王子は、やっぱり表情を変えない。だけど、なんとなくだが、私は、
「行きたいんですね、カイル王子様が羨ましいと」
と言って笑ってしまった。
表情は作らずとも声のトーンでいじけているのがわかる。やはりまだ子供で、氷の王子ではない、これからなのかもしれないけど。
あんなに茶会にも行きたくなかったし、会いたくなかった第一王子様が、私達と同じで我慢もしている。私の今日の我慢を帳消しにするように、
「さぁ立ち上がって、ランララランララ…ララはい、お互い手を合わせて叩き合う、ランララランララ…」
木の影で子供が踊っている。
言葉はいらない。
社交ダンスでもない。村人のダンス。
フッフフ
「アーシャ、君には御礼を言わなければならない。あの日、見つけてくれてありがとう。命の恩人だ」
フランツ王子様が言った。私は、人差し指を口に当て、顔を振った。
そしてフランツ王子を探しているメイド達の方に指をさして
「あなた様の好きなように羽ばたいて下さいませ。せっかくの人生、囲われ羽も押さえつけられるかもしれませんが、こうやって羽ばたかせる場所をカイル王子様が作ってくれます。あなた様は一人じゃありません」
と言って別れた。最後こちらを一切見なかったけど、あの事件を気に病まないでカイル王子は生きているんだからとの思いは伝わっただろうか?
その後カイル王子は、なんか不機嫌だったし、茶会の会場では令嬢達が揉めているしで、この隙に横を通ってさっさと馬車で帰った。
フランツ王子様には断りを入れなかったが、踊ったし、話したし、今日の役割は果たしただろうと逃げた。
結局、お茶は、口をつけた程度でケーキはかなり食べれたから良しとした。
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