【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり

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11謝罪

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廊下を歩きながら、大変な初日の夜になったものだと思った。地獄絵図なんて大袈裟かもしれないが、明日、元国王夫妻、カイル王子は帰るかもしれない。

なんていうか、私は、感情が乗らなかった。どこかずっと他人で、外から劇を観ている感覚が抜けなかった。
目の前で起こった出来事なのに。
私の家族が謝っているのに。

ハァー、これはルイーゼだけの責任?
ザマァみろ
そう思えない。廊下の窓に映る私は、冷ややかで、笑ってもなければ、悲しんでもない。

あの子が悪役令嬢ってわかってて何もしなかった私は、自分だけでも守れた?お父様は、この責任をとって男爵を取り上げられるかもしれないじゃない…
確かに、私、マリーさんに会わずしていなくなっているかも…
悪役令嬢の周りは消えるって、私達一家やお祖父様達かもしれない。
急に自分自身に怒りが沸いた。

何故私は、傍観者だったのだろう。これは、私の家族に起こったこと。ハッピーエンドの言葉を思い出していたはずだった。
しかし私は、抗うことも考える事もしなかった。これは、予告書を知っていたなら、避けることができたはずだ。
どうにかルイーゼを遠ざければ、良かっただけだから。それをお父様達に任せ見ないふり、お祖母様の手を使わせてしまって、ただ見てただけ。

私の家族が、不敬になるかもしれない。

慌て私は、調理場に向かった。意気消沈している料理人達。
「どうしたの?」
「メインも何もなくなった…準備していたのに!」
と料理人の一人が言う。
「そのメインは、煮込み料理に変える事は出来る?」
と聞けば、
「ワインソースの牛肉ですから、煮込めますよ、アーシャ様」
「では、至急に煮込み料理とパンとワインをつけて各部屋での食事に切り替えてもらいましょう。残しても仕方ないわ、料理長の責任ではありません。揉め事を起こしたドミルトン家の問題、みなさん本当にごめんなさい。メイドの皆さんの手数を増やしてしまってごめんなさい。洗い物は私がやるわ」

「アーシャ様にやらせられませんよ!」
「お願い手伝わせて、頼みごとばかりしているのだから」
「どうしたんですか?アーシャ様」
とマリアに言われた。
「揉めるとわかっていたのに、巻き込まれたくないからって見ないふりしたの!」
と言えば、使用人のみんなは笑ってくれた。
「わしだって、ルイーゼ様が来たと聞いた時から嫌な予感はしていたし、みんな感じていた。責任か!わしにもあるな。最高な煮込み料理を作って許して下るかな」
「私達も最高な配膳をしたら許して下るかしら?」
とみんなが笑った。
「じゃあ、やりましょう!」
新しく入った三人が洗い物をやると言ったが、芋を剥いたり雑用がありそうだったので、出来る限り私がやる。
「マリア、一つお願い、エリオン様に土産として馬車の中で食べれる物を差し入れてあげて欲しいの。シンには、護衛としてついてあげて欲しい」
慣れた人の方が、少しでも心が休まるだろうと思った。エリオンにも心から悪いと思った。事態を大きくしてしまった。火の粉うんぬん言っていて、私は考えようとしなかったのだから。

活気のある調理場に戻った。明日がどうなるかはわからないけど、今出来るもてなしをするしかなかった。

配膳をメイドがしに行く。料理長に
「お祖母様が、心を痛めているの。好物を作ってあげて欲しい」
と頼んだ。
甘く、バターの香りがして来た。薄い生地に果物が巻かれていた。
その配膳を、見送った後みんなにもう一度御礼を言って、私も部屋に戻れば、マリアが夕食を配膳してくれていた。真っ白な布に一輪の真っ赤な薔薇。湯気の立つ牛肉のワイン煮、一人で食べるのは寂しくて残念だったが、とても温かく優しい味がした。

そして本当に初日の夜が終わった。

「流石アーシャだなぁ。ほら、温かい料理にクレープもあるよ。君の好物も届いたよ。全員へ運ばれたそうだ。アーシャは、料理人やメイドを激励し感謝し、謝罪したそうだ。みんなで最高のもてなしをしようと、自分は洗い物を手伝ったそうだよ。私達の孫娘は、自慢だね。君が教えた子だからさ」
「レーリー、洗い物まで教えたことはないわ。あの子の気質ね。優しい子だわ。気質についてあれやこれは言えないけど、私も駄目ね。ルイーゼに理解をさせずに手を出してしまったわ」
「まだまだ若いってことさ」
と夫人の背中を摩り二人寄り添った。

元国王夫妻のところにも
「温かい煮込み料理がゆっくり食べれて美味しいよ。男爵の気遣いに感謝だなぁ」
「このワインも美味しいわ。今日は、旅の疲れもあるし、みんなで食べるより自分のペースで頂けるから、とても助かるわ」
とメイドに言えば、メイドは、少し困った顔して、
「はい、喜んでいただけて良かったです」
と答えた。もう一人のメイドが、
「良かった、アーシャ様」
と言えば、元国王夫妻が
「アーシャ?」
と言った。
「アーシャとは、確か端にいた幼い少女で顔は覚えていないな。そのアーシャ嬢が、指示を出したのか?」
「あら、挨拶をいただいたのに私も覚えておりませんね。ルイーゼさんが強すぎて、どの娘さんだったかしら?」
と聞けば、メイド達は頷き、
「私達は、アーシャ様の指示で動きました」
と報告した。

ドミルトン男爵夫妻
「まぁ、アーシャが手を打ってくれたか。本当に賢い子で助かるな」
「頑張りすぎのところがありますが、あの子は、お義母様の言う通りドミルトン家を支える子かもしれませんね。ただ相談なしはいけませんね」
とメイドに言えば、
「アーシャ様も報告にあがらず、調理場で洗い物をしておりまして」
「えっ、洗い物!」
とドミルトン男爵夫妻も驚いていた。

エリオンは、ドミルトン男爵の馬車を借りて領主館に向かう。
「シン、私は一人で大丈夫だったのに」
「アーシャ様の指示ですので、さぁこちらもお食べ下さい」
とバスケット籠を差し出す。開ければ、綺麗に並べてあるサンドウィッチとフルーツ。
「まだまだ成長期ですよ。エリオン様」
とシンが言えば、
「アーシャは、凄いな。何手も先を読んでいるんじゃないかな。アーシャならルイーゼを止められたかもしれないな」
とエリオンが言い、シンが顔を振り、
「いいえ、アーシャ様は、今日使用人達に謝罪をしました。これは、ドミルトン家の粗相だと反省をし、それを私達使用人に話し、協力を頼み感謝しました。先を読んでいるなら失敗する前に避けるでしょう。大丈夫、一緒ですよ。アーシャ様もエリオン様も」
と言った。エリオンは、一緒と言われて安心したのか食べ始めた。
横で微笑みながらシンは、アーシャ様には観察眼や掌握術があるけどと思っていた。今日の調理場の話を聞いただけでも、みんなのやる気が一層増したのも理解した。
「本当に凄い」
と小さく呟いた。

真っ暗な部屋。
すぐにメイドを追い出し、カイル王子は、運ばれた食事に手をつけなかった。
「何故、何故、私がこんな風にならなければいけないんだ。くそっ」
周りにあるクッションを投げつけ、窓に映る自分の顔を見て、ぐしゃぐしゃになる醜さに座り込んだ。
カイルは、毎日悪夢にうなされ、寝つけなくなっていた。どんどん、目のまわりは窪み、黒くなっていく。その顔を見てまた全てを呪っていった。

ルイーゼは叩かれた頬に冷やした布を当て、メイドや侍従に物を投げ当たり散らかす。憎々しくお祖母様や男爵夫妻、アーシャを思い出しながら、
「許さない、絶対に許さない」
憎しみを込めて言っていた。

ドミルトン男爵領にニ台の幌馬車と商人の男達が入ってきた。警備隊の男に
「すいません。私達アステリア王国のカイタル商会の者ですが、明日、こちらで収穫祭と聞きまして、フリーマーケットに参加させて頂きたいのですが?」
と聞いた。警備隊の男は、
「今年は、来賓もお見えになるから、通商届けがない商会や商人にはご遠慮してもらっている」
と言えば、ぺこぺこしている商人は、
「村を回って商いすることも駄目ですかね?アステリア王国なので珍しい酒や食べ物、道具などありますが」
と警備隊の男に酒の瓶を渡す。
「村か、仕方ないな。来賓も村には来ないだろうし、わかった、商会長には伝えておくよ。でも今は夜中だ。しっかり休めよ」
と言って別れた。商人の男は、幌馬車に向かって、
「お前ら、探してこい!」
と言って数人の男が、馬車から外に飛び出した。
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