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6名前もないエキストラ

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宰相就任パーティーが終われば、お父様やお母様は、領地に戻る。ここにいても嫌味を言われたり、疲れることだらけなので私も一緒に帰る事にした。お祖父様は、例の件で残り、お祖母様も、久しぶりにお友達に会うそうで、
「ではまた、領地で」
と言えば、端の方に珍しくエリオンが見送りに来てくれた。
「驚きました、エリオン様が、来てくださるなんてありがとうございます。またお会いしましょう。お元気で」
と言えば、エリオンは、
「ルイーゼに助言してやったのに、何もわかってない。やっぱり無駄だった。お前の言う事なんて聞かなきゃ良かった」
と言った。初めて子供らしい言葉を聞いた気がする。エリオンとは、改めて1歳しか違わないのだと思った。
「気質や考え方を変えるなんて、出来ませんよ。ただ気づかせてはあげたいとは思いますけど。エリオン様、お互い火の粉がかからないよう立ち回りましょうね」
と正直に心の中の言葉を言った。初めてエリオン様が笑った。
「何だ、それ。ずっとそう思って行動していたのか。お前の動き方は確かにそうだなぁ。目立たないようにしていたのか?いや、事が大きくなる前に見つけさせる?火の粉がかからない位置ににげろという意味か?」
「いいえ、ルイーゼ様の印象が強すぎて、私のような者は何をしても印象に残りませんよ。私は、いつも巻き込まれたら大変そうだなと思っているだけです。では、また」
と言って別れた。
帰りの馬車で、お母様に
「いつの間にエリオンさんと仲良くなったの?」
と聞かれたが、仲良くなったかどうかはわからない。ただ正直の言葉を言ったら、笑ってくれただけ。あの方も大変だ。悪役令嬢の兄だもの。王子に告げ口をする役目みたいだけど、自分の妹が色々問題を起こして、家も家族も無事でいられたのか?フランツ王子様がマリーさんと婚約することが決まっているなら、本当に公爵家はどうなったんだろう。

「ハァー疲れたました、王都は人が多すぎます」
とやっぱり私はのんびりがいい。本を読んで、魚釣りをして、果物を取ったり、馬に乗ったり、マークと遊んだり。
「大変、マークのお土産買うの忘れてしまったわ」
と言えば、お父様が笑った。
「大丈夫、お祖母様からお菓子を頂いたよ」
「さすがお祖母様」
ハァ~本当に疲れた、馬車の揺れは、ずっと続く。また瞼が重くなる、到着までまだまだある。暗記した紙を思い出しながら、部屋に戻ったら確認してみなければ、影響はどのぐらいあるかな~と思いながら眠りについた。

夢を見た。久しぶりだ。ペンの音が心地良い。
私は、ペンを走らせながら、歌っていた。
「端っこにいつも書いているキャラ、設定とかあるの?なんでここに!みたいなの狙っているとか?」
「まさか、違いますよ。メインキャラと言葉も交わしませんし、接点はないエキストラです。同じエキストラの使い回し的なやつです」
「え~、いつか気づかれるんじゃない?」
「まさか、こんな小さく表情も書いていませんし、通り過ぎですよ」
「いやいや、最近大きくなってない?すぐ後ろのエキストラ的な?」
「たまたま、先生の場所指定があったから、お気に入りを書いただけですよ。大丈夫、名前も出ないエキストラですもの」
「そうね、名前がないわね、勝手につけちゃえば」
「いえいえ、エキストラに名前をつけたら、役が発生してしまうじゃないですか、あり得ないです!」
「そうね、エキストラじゃなくなっちゃうわね」



「アーシャ、休憩よ。起きて」
とお母様に起こされた。何か夢を見ていた、絵を描いている夢。
「お母様、私、絵を描きたいわ」
と言えば、
「私も植物の研究で絵はいっぱい描いているから、アーシャも一緒にスケッチに行きましょう」
「嬉しい」
「じゃあ、スケッチブックは2冊買おう、マークの分さ」
とお父様が言った。
「大好きよ、お父様」

そして私の王都旅は終了した。

王都、離宮

元国王と元ドミルトン公爵、そして元王妃と元ドミルトン公爵夫人が、庭園見渡せる一角でお茶をしている。

「本当にこの度はありがとう、レーリー」
「やめろよ、頭を下げるな」
「もう国王じゃない、ただの学園で過ごした学友だろう」
と元国王が言えば、夫人も
「まぁ、懐かしい呼び名ですね。若返ったみたい」
と元王妃と笑いあっていた。
「本当に無事で良かった。しかし発見したのも場所の特定したのも、私の孫娘なんだ。面倒に巻き込みたくなくて調書では話してない。しかし警備隊の幾人には最初の段階で話したが、信じてなかったし、まさか褒賞なんて話になるとは思わなかったよ」
「孫娘か、随分と優秀そうだなぁ。そんな自慢げに話すとは。ドミルトン公爵も宰相になったし優秀だな。どうだ、フランツと婚約するか?」
「公爵の爵位を継いだ孫娘ではないよ。三男のライルの娘、アーシャだ。あの子は爵位とは関係なく育っているからライル同様のびのび自由奔放だな。周りを見る力があるし頭がいい。そして優しい子だよ。こんな悪魔のような巣にあの子は、放り込めない」
「私もレーリーに賛同しますわ」
と夫人も加勢する。
「これは手厳しいな。今フランツは謹慎、カイルは治療中。ハァ~、ここからは、意見を聞きたい。フランツは、カイルを誘って、警備や護衛を撒いて街に出たと言っている。本当にそんなことが可能なのだろうか?」
「何が言いたい?わざと警備の穴があったもしくは嵌められた?とかか。まさか偶然盗賊に出会しただろ!」
「偶然なんて王宮にあるか?王妃はその線を疑って、この数日フランツに聞いたり、説教しているらしい。かなり調査をしているようだ。任務体制から使用人の入れ替えをやっている。フランツはカイルに怪我を負わせた責任も感じているだろうし、かなり追い込まれていると聞く。一方でカイルは、消えない傷だと聞いた。顔だからな、誰でも目に入る場所だ。これからの未来が心配になったよ」
「いやいや、フランツ王子は明るく誰からも愛されるような王子様だろう」
元王妃が、話し始めた。
「私も心配なんです。国王が新しく側妃をアステリア王国から頂いたでしょう。去年、男の子を生みました。第3王子リオン。勘繰りたくはないけど、かなりの使用人をアステリアから連れて来たわ。そして城と街との出入りも激しいと聞くわ。王妃もそれがわかっているから、油断をするなとフランツにキツく言っていると思うの。カイルの母は亡くなっているから、後ろ盾がない。フランツが亡くなったら、リオンが国王となるだろうと」
厳しい表情で話した。夫人は、元王妃の背中をさすり、
「身内での争いは心配で辛いわね」
と声をかけた。
「アステリア王国から多くの侍女やメイドを連れてきたのだが、最近は妙齢になったとかで、次々オルビア国の貴族に嫁がせているんだ。王妃は、そのあたりも心配している。調べてもらえないか、レーリーの伝手で」
「エドワードに知られたらかなりまずいだろう、協力はしてやりたいが無理だろう。私設部隊も持ってないし…まさか商会を使えってことか?」
「商会組合の理事長だったレーリーなら商人から何らかの情報を得られるかもしれないだろう。今回商人風な盗賊とも聞いた。何か情報が入るかもしれない。争いは避けたいのだ。協力してくれレーリー」
と元国王は再び頭を下げた。友人でもある元国王に何度も頼まれたら、さすがに断れないと諦めて頷いた。

こうして、レーリーは商会の組合長に話し作戦を練って王宮と通商が出来るまで王都にいた。その間に、アステリア王国の侍女やメイドが婚姻を結んだ領地に商人を向かわせ、情報を頼んだ。
一ヵ月後、領地に戻った。

エリオンは、フランツ王子が謹慎、カイル王子が治療中のため、王宮で勉強は出来ない分、ルイーゼの言動を観察していた。観察すればするほど、傲慢な高圧的な物言いをするルイーゼが嫌いになる。
「何故こうも馬鹿なんだ」
と何度も目を背けた。いつものように無視すればいいだけだ。しかし、あれが自分の妹だとそして、今まで以上に面倒が起きるに決まっていると確信を持った。アーシャの言う通りかもしれない。
「私に迷惑がかからないようにする為には…」
と考えるようになった。
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