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68告白

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(シルベルトside)

マズイ、
次の言葉が全く浮かばない。
こんなポロっとする告白、何やっているだよ、俺は!
全く想像してない方向に進んでしまった…
まさか一目惚れなんて…恋、なんて口走るとは!?こんな所で。
焦っている…間違いない。
どうしよう、立て直しを図りたいのに、全く浮かばない、全機能停止したような…俺に戦略は無理だ!!
こんな独りよがりにティアラ嬢を巻き込んでしまって、どうしたらいいんだ!



一昨日 王宮

「シルベルト、トリウミ王国の王族が建国祭に参加すると言ってきた、お詫びだのと言っているが、何を考えているかわからない…今回被害は学園で起きているため生徒会メンバーは参加だ」
とクラード様に突然言われた。

「何か荒事をするって事ですか?」
と聞けば、
「こんな他国で?普通ならありえない。でも何を考えているかはわからない」
と嫌そうな顔で言った。

「一応、万全だと、何もなかったとアピールするためにもパートナーを用意してくれ」


パートナー?

建国祭の夜会に参加と言われ、パートナーを連れて来いだと?
婚約破棄している我々になんて注文を!

「ちなみにシルベルトの父、宰相の指示だから…」

マジか、父~

みんな頭を抱えてしまっている。

出来ればティアラ嬢と参加したいと思った。でもそれは迷惑になるだろうなと思っていたのに、シリル様がドレスを注文したと聞いて慌ててしまった。誰に?なんて聞けないまま、一人イライラしている。
あの人はティアラ嬢に贈り物を沢山したという実績がある。…羨ましい限り。
日々、眩しくなる彼女を見てきた。どんどん変わる彼女に近づきたいと思っている男がどれだけ増えたか!


対抗意識を持った、多分嫉妬していたんだ。彼女を変えたシリル様に。
まずドレスの注文はどこですればいいかを相談した執事が悪かった。
執事に相談すれば、母上に話がいくに決まっていて、それが今朝だった。

「商会に来てもらいます。ビルド侯爵家のお嬢さんを連れて来なさい」

「彼女にも予定がありますから、無理です」
と言えば、
「今日は、聖杯の清めがあるそうね、教会で待機して誘って来なさい」

「何故そんな事をご存知なのですか?」

「フッ、私はこの国の宰相の妻ですよ、大きな催しは頭に入っています。夫人会やご令嬢方の動きなどね」
とドヤ顔。

「いえ、そんな付け回すみたいな真似は出来ません。それこそ私が警備隊に突き出されますよ」
と言えば、母様は、得意そうな顔をして、
「シリル殿下が動いているそうね、それで慌てたんでしょう?以前シリル殿下が彼女に大量に贈り物をしたのよね。あなたそれで悔しいと感じたんじゃないの?嫉妬したんじゃないの?全く、シル、勉強が出来ても、領地経営が出来ても、人として感情が生まれたて子鹿ですか、あなたは。ここは弱肉強食!恋?それは美味ですか、甘いのよ、手にする者しか食べれないの、感情を優先したいなら戦いなさい!これは奇跡なのよ…高位貴族にとって婚姻は、政略よ。今政略すべき婚約者がいなくなったあなたに好きな子が出来て、その相手も婚約者がいなくて、家格的にも釣り合いが取れる。王族に敵対しているわけでもない中立な侯爵家よ。何の問題があるの?あなたが今すべきことは、彼女にシルベルト自身を見てもらう事なのではないかしら?それで選ばれなかったらそれは仕方ないわ。だってあなた、変態なんだもの!」

「変態って…息子にはっきり言いますか?確かに彼女に、彼女だけに、色々と…それは、一目惚れから悦に入っていると姉上から診断されましたが。ハァーーー彼女を前にするとまず嫌われたくないと迷惑をかけたくないが始めにきて…」

うんうんと頷きながら母は、
「でも好きなんでしょう?理屈じゃないって前に言ったそうね。なら、まだ若いのだから、当たって砕けなさいよ。学生のうちなら、噂話も笑い話になるわ、ずるずる引きずられるより、レイヤード公爵家としては、利になります」

こういう時の母様は、流石宰相の妻という貫禄を見せる。

そしてもう駄目だ。扇子を振り回している母様をもう誰も止められない。
たとえ父でも。
昔お茶会で言われた事がある。

「レイヤード公爵家には、龍と寅がいる…」

それを父に聞いたら、知らなくていいこともあると言われた。

扇子を片手に使用人達にすでにティアラ嬢がこの屋敷に来るという決定事項で指示し始めている。

当たって砕けろ、か。
心が痛い。砕けたくは無いが、誰かが彼女と、も見たくない。

「わかりました。教会に行ってみます。断られたら帰って来ますから…」
と一応言って家を出た。

馬車に乗れば、どうしてかワクワクする。彼女の元に向かえるのは嬉しい。言い訳も出来るし、理由もある。

いやしかし、母のことを言うのは…違う。
教会につけば、やはりただの付け回す男じゃないかと冷静になって、言い訳を必死で考えて…

半年前の俺では想像がつかないほどアタフタしていて。
感情が生まれたての子鹿か、言い得ているなと思った。

上手くいかないかもしれないけど、聞いてみるだけ…
チャレンジしてみるだけ…
駄目なのはわかっている。迷惑なのも。
でもやっぱり、俺の隣であの靴を履いた彼女を見てみたい…



「ハァーーー、こんな事言うつもりじゃなかったんだ。すまない、勝手に盛り上がってしまって。答えが欲しいわけじゃなくて、ドレス一式を贈れるということが私にとって嬉しいって事だけ伝えたかったんだ。言葉で伝えるのが難しくてすまなかった」
と心を込めて謝罪した。
彼女に気持ちを寄せている男がエスコートするなんて彼女にとったら、付け回している変態だろう。

やってしまった!


無言が痛い。
ああ、普通に身体から変な汗は出るし、腹も痛くなってきた。
どうにか全部忘れてくれないかな。いや、今、襲撃されて全てを有耶無耶にして俺を誰か殴ってくれませんか!

突然、ティアラ嬢が真っ直ぐに俺を見て話しかけてきた。

あぁもう答えか、返事が怖くて相槌を打てない。
冷たくなる感覚が襲ってくる。

「…シルベルト様、お気持ちを聞かせてくださりありがとうございます。セオルド様の件もあり、私は人の気持ちに鈍感だと思っていたので、言葉にしていただけたことで、きちんと考えることが出来ます。周りに埋められるより、よっぽど誠実だと感じました。どうしよう、どうなっているのと先程まて、実はパニックになっていて…
でもこうして考える時間を下さり、冷静になれました。ありがとうございます。すぐにお返事は出来ませんが、向き合わせて下さい」
とティアラ嬢は、真剣な顔で言った。

えっ、いいの、まさかまだ断られなかったのか?
温かい何かが身体を巡る。

「あ、建国祭の夜会…パートナーとして参加してくれますか?」
と聞けば、

「パートナー…ですか?ゆ、ゆう、友人としてよろしくお願いします。華やかな場所は不慣れですが、ご指導ご鞭撻お願いします」
とティアラ嬢が真っ赤になって答えてくれた。

友人として、
ちょっと調子にのってしまった…

でも、断られたわけではなくて、ああ良かった。本当に良かった。気持ち悪いと言われなかった…
小さく拳を握ってポーズを取り喜びを噛み締めた。
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