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67外堀

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パートナー…?

建国祭、夜会、パーティー…
パートナー!?

「駄目、駄目ですよ、シルベルト様、私なんて、駄目です。選んではいけません。見合う物を用意出来ませんし…」
と完全否定で言えば、シルベルト様は、寂しそうな顔して、

「ドレスなど一式こちらで贈らせて欲しい…やはり駄目だろう、か…急なことを頼んでいる自覚は、ある…」
とどんどん尻窄みで声が小さくなっていく。

いや、無理よ。
パートナーなんて、今の学園での噂に更に真実味をもたらせてしまうわ。また更に敵をわんさかと作る気は無いです。やっと平穏な日常を取り戻したのよ。
ここはお断りすべき!
シルベルト様のお相手に相応しくないときちんと話すべき。

「シルベルト様、私の家を何度も訪問して下さっておられますから、私とシルベルト様では釣り合いが取れません。シルベルト様が馬鹿にされてしまいます。ビルドの娘を連れていると…」
と言えば、顔を振って、

「すまない、迷惑な事を言ってしまって」

「迷惑というか…私にそのような大きな夜会など合わないと言いますか、相応しくありませんから…」
と言えば、
「…何故相応しくないと思う?どちらかと言えば私の方が…
セレナの件、婚約破棄の件、それからセオルドの件、あぁ、落とし君のイベントの件…あげればきりがないほどで、厚顔無恥だな、私は…
すまない、調子に乗り過ぎた。今日も突然現れて、友人との約束があっただろうに、また自分を押し付けてしまって」

あれ?
やっぱり、何となくシルベルト様が、私が最初に出会った感じと違う。
何がと言えば、何だろうか。

乱暴な言い方だけど鼻柱が折れた感じ?
何があったのかしら?

「押し付けとかではなくて、そんな大きなパーティーに参加したことがないんです。お茶会にも数回程度しか参加したことがない礼儀作法も知らない小娘を連れて来たとなれば、私、粗相をしてシルベルト様、いえ、レイヤード公爵家に恥をかかせてしまいます」

初めから扉は少し開いた状態だった(婚約者でもない未婚の男女なので)のだけど、
『バーーン』
と扉が開いた事で勢いよく空気が入ってくるような、突然の圧が私に襲ってきた。

「ティアラさん、大丈夫よ。あなたは恥になんてならないわ。このヘン、ゴホッ、息子を救ってくれた恩人よ。本当に会えて嬉しかったのよ。御礼をと思っていたら、ビルド侯爵家はあまり外には出ないでしょう。ずっと何かしたいと思っていて、この度の建国祭の夜会でしょう!お願いよ、ティアラさん、我が公爵家に用意させて欲しいの。我が家の使用人達も貴方にキタイ、ゴホッン、着飾らせたくて、今日もすでに商会の手配も済み、準備万端なのよ。パートナーと言ってもただのエスコート役と思って!まだ学生ですから、友人、そうね、今回の事件解決の友人って紹介するわ、私達も。そう、私も夫も参加するからサポートは任せて欲しいわ。だから、ね、ティアラさん、息子に今回は付き合ってもらえないかしら?このヘンタ、ゴホッゴホッあなたしか頼れる人がいないのです。この愚息が何かしないように、護衛騎士もつけるし、武闘派のメイドも待機させるわ」

とレイヤード公爵夫人が突然扉から入って来て捲し立てるように話された。

途中から、よくわからなかったが、友人として紹介すると言っていた、パートナーではなく…

夫人の後ろから先程並んでいたメイド達が後ろに並んでいる。
今日この屋敷に着いた時から、とても迎えられていると感じていたけど、まさかこの夜会の話まで準備されてのことだったのか…

シルベルト様なら、どの令嬢もエスコートを受けたいと思うから、困らないと思うのに、まるで誰もいないみたいな言い方をするのは何故なのかしら?

「待ってください、母上、ティアラ嬢に迷惑をかけるわけにはいかない。私は一人で参加出来ます、彼女に無理矢理押し付けるのは、違うので」

シルベルト様が立ち上がって庇ってくれるが、夫人が伝家の宝刀扇子で口元を隠しながら、魅惑的な微笑みで私を誘う。

「あら、こういうのも経験よ。学生の頃には失敗しても笑い話になるけど、ね。それにこんな可愛いお嬢さん、早く囲わないとね、シル?あなた馬鹿なの」

レイヤード公爵夫人の圧が…
後ろの使用人達の圧が…

あー駄目だ、私にノーと言う話術は残っていない。

「友人として参加してもよろしいですか…」
と言えば、シルベルト様は、嘘だろうと驚いてからの満面の笑み、夫人の手を叩いて喜ぶ姿。使用人の幾人かの目頭にハンカチを押さえている姿…
執事の仕事の指示出しの声…

一体どうして、こうなってしまったのだろうと後悔をしながら、力無く笑った。

すぐにドレスの採寸が始まり、公爵夫人の元、色、デザイン、アクセサリー、から全て精鋭達が相談しながら決めていく。私はお人形のように頷く。

思ったより早くに解放されて安心した。
しかし疲れた。

「無理をさせて、すまなかった」
とシルベルト様に言われたが、
「決めたのは私です。しかし本当によろしいんですか、ドレス一式贈ってもらうなんて…」

とんでもないような、いくら既製品でも生地も最高級だったし、商会も有名な所、私では、一生ご縁がなさそうな品品で余計な事をしないように、大人しく言われるままにしていた。

「実は、恩人の君に靴だけでなく最初からドレス一式を贈るつもりだったんだ。君に迷惑と言われたから引いたが…
今回全て片付いたわけではないが、それでも区切りとして君に贈れるという喜びをありがとう」

「いえ、そんな…」

「ハァーー
すまない、また自分ばっかり気持ちが昂ってしまって、姉上に散々注意されたんだ。その気持ちの昂りが気持ち悪いと…
シリル様が君に数多くの贈り物をしただろう。内心羨ましくて仕方なかったんだ。こんな事を言うと絶対に嫌がられるのは自覚しているのだが、あのクリスマスパーティーの日以来、感情の起伏が自分でも想像つかないほどで、自分でもコントロールが出来なかった」

「それは、黒魔術の副作用なんですか?」
と聞くと、シルベルト様はとても困った顔をされて、無言になってしまった。

少し言葉が、漏れた。

「あの日、恋に落ちた…」

ん?コイ…
えっ、これは、まさか…

「これはあの日の呪いからの解放とその衝撃と同時に喜びを味わったことでと説明を何度も繰り返していたんだが、結局、残った感情は、君があまりにも素敵だったって事なんだ…迷惑だとは思うんだけど…」

ナンデスト
素敵?
誰が?

「え、公爵令息で、学園の憧れを集めているシルベルト様が、何の変哲もない貧乏貴族の私が素敵なわけありません!勘違いです、よ、」
と何故か必死になって否定した。

「君は、美しいよ、すまない、迷惑だよな、ハァーー、こんな事言うつもりはなかった。友人で十分なんだ。恩を返せるだけ嬉しいんだ。本当に」

あまりにも後悔している様子が見て取れる。
そしてここは、レイヤード公爵家のサロン…
使用人いる…
公爵夫人に今の話、伝わる…

どうしよう!?
私こういうの本当に慣れてなくて、なんて答えたら良いのかわからないよ~

助けて~!
私、動けません!
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