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翌日になっても、噂話は続きザワザワと落ち着かないままだった。ただ休み時間になって、明るい声でサクラさんが
「みんな、生徒会メンバーが、今日は登校されたって。クラード様大丈夫かなぁ。心配してますって言いに行こうよ」
と誘っていた。
あんなに昨日サクラさんの悪口を言ったクラスメイトも、やっぱりその輪に入っていた。
ちょっと心の中で裏切り者と思ったのは秘密だ。
なぜかみんなサクラさんには優しい気がする…
本があったら、私はヒロインですからとかそんな言葉が聞こえてくるレベルだと思う。
そんな事を考えているとポツンと一人残された。まぁ、こうなる…何もするなと学園長に言われた後で、シルベルト様に手紙を書こうと3枚ほど書いて読み返してみた。どう考えても夢物語妄想話になってしまって、恥ずかしくて机にしまい、目を背けてしまった。
私に手紙でお知らせする才能はないと自覚した。
もう少し考えをまとめなければ、伝えることも出来ないと反省しつつ、一人、お弁当を持って中庭のベンチを目指す。
生徒会室に行ったと思われていたのに、まさかサクラさん一団が中庭にいた。
「ハア~仕方ないわ、別な所に行きましょう」
笑い声と噂話を背にし、違う方向へ足を進める。
前に学園長が言っていた庭園、春の花は終わってしまったかしら?あちらにもベンチはある。そこでお昼を食べようと向かった。
だいぶ花の入れ替えの為か空いているスペースはあるが、まだ花の景色と匂いは見頃だった。
ゆっくりお昼ご飯を食べていると、
「ティアラ嬢?」
と最近よく聞く声がする。
振り向けばシルベルト様だ。
お昼休みだというのに、また荷物を運んでいた。生徒会というのは、忙しいのね。
しかし、こんな場所に二人でいたら逢引きだと思われてしまう。
お昼の荷物をそこに置き、スッと立ち上がった。スタスタと私の方が近づいた。
なんだかシルベルト様は困った顔していた。どうしたのだろう、とは思うが、会話はここでする気はない。
そして小声で、
「シルベルト様、お久しぶりです。現在不都合につき、時間がよろしければ、お暇な時に我が家に足を運んでいただけないでしょうか?」
と言うと、何故か笑顔で何度も頷き、
「わかった」
と言った。
一礼してその場を離れベンチの荷物を片付けた。
とにかく淡々とだ。心の中で繰り返した。誰が見ているかわからない状況でこれ以上の火種を自分から作るわけにはいかない。
一つ手紙を書いていて気になったことがある。セレナさんのことだ。
彼女達一家は、黒魔術の使用で処罰されたと聞いた。なら、サクラさんは、カミューラ様を断罪した後セレナさんを淫魔として暴けないじゃないかと。
カミューラ様の言った巡り合わせの『役目』とイリーネ様が言ったセレナさんの『位置』に入り込んでいる子…
それを思い出して、身体中がぞわぞわした。
まさかね、
そんな目立ってないわ、
でも何故イリーネ様は教室まで来たの?
まるで、
私にも引き合わせるためのよう…
勘違いかもしれない。
でも学園長が言った一歩引いてみれば、セレナさんが居なくなり、落とし靴の姫君に選ばれてから、悪口やイリーネ様達に嫌味を言われ始めた。
たまたま、で片付けられれば良いけど。
誰にも見られなかったようで、何もないままニ日が過ぎ、今週末、シルベルト様がお越しになると父に連絡をくれた。
「良かったわ、教室に来られたらどうしようかと思っていたのよね。あの時小声で話したから、意図に気づいてくれたのかしら?」
*
教室に入れば、クラスメイトが騒いでいた。
「おはようございます」
と声をかければ、
「おはようございます、ティアラ様!知ってますか?今度の建国祭の前に聖杯を浄める為の乙女、聖女を選ぶそうです!」
と私にもその子は、惜しみなく情報を伝達してくれた。
よっぽど、情報を掴んだ事が嬉しいのかしら、みんな私のことを全く気にせず、意識は、聖女にいっているみたいだった。それは、ここ最近一人ぼっちの私にとって驚く出来事だった。
ミンネが入ってきて、またその子は情報を伝えに言ったようだ。
「どんな風に選考されるのかしら?」
「建国祭の聖女でしょう?」
「違うわ、聖杯を浄める聖女でしょう?」
「今日から毎日教会に祈りにいけばいいのかしら?」
「教会関係者に顔を売っておくのね、確かに信仰しているインパクトは与えられるわね」
そうか、やっぱり聖女が選ばれるのか。本の通りなら、近々カミューラ様が…。
「おはよう、みんな~」
と一際元気な声が響いた。
また情報元の子からサクラさんにも伝わり、
「本当に?そんな楽しいイベントがあるの?わぁー留学生でも参加出来るのかな、ダメだったらショックだよ~みんなが楽しんでいるのに私だけ参加出来なかったら…」
と落ち込んで見せた。
すかさず、クラスメイト達は、
「大丈夫だよ」
「教会だし、まだ選考方法とかわからないしね」
とフォローにまわる。
嫌になるわ、本当に物語通りに演じるなんて。あちらを見なくてもわかる。俯いて悲しそうにして、みんなに見えないように心の中で笑っているんだわ。
これは、絶対に近寄ってはいけない。
「休み時間になったし、選考方法調べてみない?図書室とかで」
とサクラさんが言った。
もう行動を起こす気だ。カミューラ様が狙いだろう。彼女の悪事のネタを掴んで、まずは悪女を排除してから次のセレナ様が淫魔だと暴くのが流れ…
セレナさんがいない今、どうする気なのかしら?
みんながいなくなった後にゆっくり移動する。今日は図書室にも行けないから。
「ティア!」
随分と久しぶりの声の気がする。
「ミンネ、戻ってきたの?大丈夫?」
と聞くと、
「ん?あまり大丈夫じゃないけど、少しだけ。さっき急にティアの名前が出てきたの、クラスメイト全員と仲良くしたいなぁって。あの子、私達が離れようとすると何かするの。そして縛りみたいな命令みたいな記憶もわからないの、どうしよう、ティア、思った以上に怖い」
「ミンネ、私も今、何もするなと言われたの。明日シルベルト様に会えるから必ず相談するわ、待ってて。早く戻って」
と言えば、一度頷き、また廊下を走る音がした。
ブランカ先輩の使命というのに近い状態なのか、サクラさんとは友達、親友という使命?
絶対嫌だなぁと思う。
でもクラスメイトで私だけ除外されていだはずなのに、仲良く?ますます私は、用心した方がいいと気を引き締めた。
*
「ようこそ、お越しくださいました。シルベルト様」
と一台の立派な馬車を迎えた。
片手に花束と菓子の土産付き。
「何がいいかわからなくて、ログワットに前に進められた菓子にしたんだけど、迷惑にならなければいいのだけど」
とシルベルト様が言った。
春休みあけてから、なんとなくシルベルト様の様子がおかしい気がする。
なんというか、普通…
余計な言葉がなくなったような、
気が利くようになった?なんて私は、上から目線なんでしょう。
言葉に出来ないけど、シルベルト様の変化を感じた。
「こちらからお誘いしましたのに、気遣い感謝します。とても素敵なお土産ありがとうございます。どうぞ中にお入りください。少し込み入った話になると思いますので、私は、お菓子があると気分も上がります。お花も素敵ですね、香りも穏やかになります」
と言って花に顔を近づけた。
とても良い香りだ。なんだか相談というのを建前にして、誘った女みたいで恥ずかしくなった。顔に熱が集まる。
ゆっくり、穏やかに笑いながら、
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
と言った。
なんていうか、本当に、どうしちゃったのシルベルト様。
こんな感じだったかしら?
「みんな、生徒会メンバーが、今日は登校されたって。クラード様大丈夫かなぁ。心配してますって言いに行こうよ」
と誘っていた。
あんなに昨日サクラさんの悪口を言ったクラスメイトも、やっぱりその輪に入っていた。
ちょっと心の中で裏切り者と思ったのは秘密だ。
なぜかみんなサクラさんには優しい気がする…
本があったら、私はヒロインですからとかそんな言葉が聞こえてくるレベルだと思う。
そんな事を考えているとポツンと一人残された。まぁ、こうなる…何もするなと学園長に言われた後で、シルベルト様に手紙を書こうと3枚ほど書いて読み返してみた。どう考えても夢物語妄想話になってしまって、恥ずかしくて机にしまい、目を背けてしまった。
私に手紙でお知らせする才能はないと自覚した。
もう少し考えをまとめなければ、伝えることも出来ないと反省しつつ、一人、お弁当を持って中庭のベンチを目指す。
生徒会室に行ったと思われていたのに、まさかサクラさん一団が中庭にいた。
「ハア~仕方ないわ、別な所に行きましょう」
笑い声と噂話を背にし、違う方向へ足を進める。
前に学園長が言っていた庭園、春の花は終わってしまったかしら?あちらにもベンチはある。そこでお昼を食べようと向かった。
だいぶ花の入れ替えの為か空いているスペースはあるが、まだ花の景色と匂いは見頃だった。
ゆっくりお昼ご飯を食べていると、
「ティアラ嬢?」
と最近よく聞く声がする。
振り向けばシルベルト様だ。
お昼休みだというのに、また荷物を運んでいた。生徒会というのは、忙しいのね。
しかし、こんな場所に二人でいたら逢引きだと思われてしまう。
お昼の荷物をそこに置き、スッと立ち上がった。スタスタと私の方が近づいた。
なんだかシルベルト様は困った顔していた。どうしたのだろう、とは思うが、会話はここでする気はない。
そして小声で、
「シルベルト様、お久しぶりです。現在不都合につき、時間がよろしければ、お暇な時に我が家に足を運んでいただけないでしょうか?」
と言うと、何故か笑顔で何度も頷き、
「わかった」
と言った。
一礼してその場を離れベンチの荷物を片付けた。
とにかく淡々とだ。心の中で繰り返した。誰が見ているかわからない状況でこれ以上の火種を自分から作るわけにはいかない。
一つ手紙を書いていて気になったことがある。セレナさんのことだ。
彼女達一家は、黒魔術の使用で処罰されたと聞いた。なら、サクラさんは、カミューラ様を断罪した後セレナさんを淫魔として暴けないじゃないかと。
カミューラ様の言った巡り合わせの『役目』とイリーネ様が言ったセレナさんの『位置』に入り込んでいる子…
それを思い出して、身体中がぞわぞわした。
まさかね、
そんな目立ってないわ、
でも何故イリーネ様は教室まで来たの?
まるで、
私にも引き合わせるためのよう…
勘違いかもしれない。
でも学園長が言った一歩引いてみれば、セレナさんが居なくなり、落とし靴の姫君に選ばれてから、悪口やイリーネ様達に嫌味を言われ始めた。
たまたま、で片付けられれば良いけど。
誰にも見られなかったようで、何もないままニ日が過ぎ、今週末、シルベルト様がお越しになると父に連絡をくれた。
「良かったわ、教室に来られたらどうしようかと思っていたのよね。あの時小声で話したから、意図に気づいてくれたのかしら?」
*
教室に入れば、クラスメイトが騒いでいた。
「おはようございます」
と声をかければ、
「おはようございます、ティアラ様!知ってますか?今度の建国祭の前に聖杯を浄める為の乙女、聖女を選ぶそうです!」
と私にもその子は、惜しみなく情報を伝達してくれた。
よっぽど、情報を掴んだ事が嬉しいのかしら、みんな私のことを全く気にせず、意識は、聖女にいっているみたいだった。それは、ここ最近一人ぼっちの私にとって驚く出来事だった。
ミンネが入ってきて、またその子は情報を伝えに言ったようだ。
「どんな風に選考されるのかしら?」
「建国祭の聖女でしょう?」
「違うわ、聖杯を浄める聖女でしょう?」
「今日から毎日教会に祈りにいけばいいのかしら?」
「教会関係者に顔を売っておくのね、確かに信仰しているインパクトは与えられるわね」
そうか、やっぱり聖女が選ばれるのか。本の通りなら、近々カミューラ様が…。
「おはよう、みんな~」
と一際元気な声が響いた。
また情報元の子からサクラさんにも伝わり、
「本当に?そんな楽しいイベントがあるの?わぁー留学生でも参加出来るのかな、ダメだったらショックだよ~みんなが楽しんでいるのに私だけ参加出来なかったら…」
と落ち込んで見せた。
すかさず、クラスメイト達は、
「大丈夫だよ」
「教会だし、まだ選考方法とかわからないしね」
とフォローにまわる。
嫌になるわ、本当に物語通りに演じるなんて。あちらを見なくてもわかる。俯いて悲しそうにして、みんなに見えないように心の中で笑っているんだわ。
これは、絶対に近寄ってはいけない。
「休み時間になったし、選考方法調べてみない?図書室とかで」
とサクラさんが言った。
もう行動を起こす気だ。カミューラ様が狙いだろう。彼女の悪事のネタを掴んで、まずは悪女を排除してから次のセレナ様が淫魔だと暴くのが流れ…
セレナさんがいない今、どうする気なのかしら?
みんながいなくなった後にゆっくり移動する。今日は図書室にも行けないから。
「ティア!」
随分と久しぶりの声の気がする。
「ミンネ、戻ってきたの?大丈夫?」
と聞くと、
「ん?あまり大丈夫じゃないけど、少しだけ。さっき急にティアの名前が出てきたの、クラスメイト全員と仲良くしたいなぁって。あの子、私達が離れようとすると何かするの。そして縛りみたいな命令みたいな記憶もわからないの、どうしよう、ティア、思った以上に怖い」
「ミンネ、私も今、何もするなと言われたの。明日シルベルト様に会えるから必ず相談するわ、待ってて。早く戻って」
と言えば、一度頷き、また廊下を走る音がした。
ブランカ先輩の使命というのに近い状態なのか、サクラさんとは友達、親友という使命?
絶対嫌だなぁと思う。
でもクラスメイトで私だけ除外されていだはずなのに、仲良く?ますます私は、用心した方がいいと気を引き締めた。
*
「ようこそ、お越しくださいました。シルベルト様」
と一台の立派な馬車を迎えた。
片手に花束と菓子の土産付き。
「何がいいかわからなくて、ログワットに前に進められた菓子にしたんだけど、迷惑にならなければいいのだけど」
とシルベルト様が言った。
春休みあけてから、なんとなくシルベルト様の様子がおかしい気がする。
なんというか、普通…
余計な言葉がなくなったような、
気が利くようになった?なんて私は、上から目線なんでしょう。
言葉に出来ないけど、シルベルト様の変化を感じた。
「こちらからお誘いしましたのに、気遣い感謝します。とても素敵なお土産ありがとうございます。どうぞ中にお入りください。少し込み入った話になると思いますので、私は、お菓子があると気分も上がります。お花も素敵ですね、香りも穏やかになります」
と言って花に顔を近づけた。
とても良い香りだ。なんだか相談というのを建前にして、誘った女みたいで恥ずかしくなった。顔に熱が集まる。
ゆっくり、穏やかに笑いながら、
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
と言った。
なんていうか、本当に、どうしちゃったのシルベルト様。
こんな感じだったかしら?
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