靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり

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もう少し成り行きを見ろ、
『何もするな』
と言われたのだろう。

気持ちが下がった。何かがポキポキと折られた感じになった。学園長なんて関係ないわ、私の思うように行動します、なんて言えなかった。

それは、落とし靴のイベントの後にも思ったが、始めから正直に靴を落としましたと片方を持って生徒会室に行けば、他の女生徒を巻き込まなかったと思う。
イベントにして、選ばれるかもという期待と興奮が、サマリアさんみたいな逆上や悪口を言うクラスメイトを生み出したと思う。
あの時、巻き込まれたくないを選択して、結局選ばれて、色々あって…

学園長が言う通り、今回、自ら舞台に上がり掻き回そうとしているのかも。呼ばれてはいない…

また気持ちが沈む。
いつのまにか私自身、自分に何か期待していたのかもしれない。


教室に戻ると、また言い争う声が聞こえた。
そこにいたのはイリーネ様と数名の三年生女生徒と前に立って応戦しているのはサクラさん。

思わず見て、これはマズいという感が、いち早く働いた。
私の危機アンテナも作動してくれたようで扉に手をかけた手を後ろ側に押すようにバックステップをした。
多分違和感なく教室から離れられた。

話す内容も気になるけどしょうもないことだろう。
お手洗いに逃げ込む。
「ダンスも得意ではないけど、今のは中々スムーズだったわ。予鈴が鳴るまでここに隠れていましょう」
と個室に入る。
しばらくすると、乱暴な音が聞こえてから、話し声。

「留学生かもしれないけど、あの子の非常識さは何なの?」

「びっくりしたわね、お昼休み廊下でイリーネ様とすれ違っても頭も下げなかったんでしょう?」

「いい迷惑よ、一緒にいた私達まで睨まれたんだから。ここは学校なんだから何故私達が端によって、あなた方に道を譲らないといけないかとか、身分を笠にして偉そうにするのはおかしいって言い始めちゃって」

「嘘でしょう?怖いもの知らず。何故かサクラってイリーネ様と対等って思っているよね」

「本当に、ねぇ。それを言い終わった後とかに、私達も何か言えみたいな動作して、扇動するの、あれ何なの?」

「わからないわ、イリーネ様達教室までついて来たわね。よっぽどよ。イリーネ様もあなたは年上を敬う心はないのですかとか、私に対しては敬称がないのにシルベルト様にはあるのはどうして?とか聞かれてタジタジになってさ。対等的な立ち位置どうしたのって状況になって、最後は逆ギレよね。そうやって私の事イジメるんですかだって。酷いです!!だって」

「慌ててお手洗いに逃げ込んでしまったわ」

「巻き込まれて顔を覚えられたら、最悪だもの。逃げれて良かったわ、何でかサクラの前や側で言えないしね」

「私もなんで側に近寄ってしまうのかな?話が面白いから?」

「えぇーー、それはないでしょう。たしかに最初の頃は面白かったけど、今はあんな風にイリーネ様に喧嘩売っていたら、みんな離れるでしょう」

「私もなんかあの子怖いし…でもなぜかあの場所がクラスの中心になるのよね」

カーンカーン
予鈴が鳴った。

多分同じクラスの子達。
私の心はドっと落ち込んでいたけど、今の話を聞いて、

「でしょう!!あの子おかしいのよ」
と強く同意した。
「早くミンネと話したい。絶対ミンネからも文句が出ているはず」
とちょっと気分は良かった。

そう思ってしまう私も中々かもしれないけど、留学生サクラさんに関してはどうも嫌いが先行する。


(シルベルトside)
王宮 王太子執務室

「まさかなんでこんな時にクラード様の異母兄だと発表するのか」
と言えば、ログワットが、真面目な顔で
「よっぽどセレナのこと許せないとか」
言った。

父上は、俺のことを愚息と呼び、確かにガッカリしたとは、言われていたが、見捨てられてはいない。
セレナだけのことではないだろう。

「このタイミングじゃなきゃ駄目だったのか…」

「タイミング」
とクラード様が繰り返す。
何か考えているようだ。

「準備していたというわけか、それだと陛下はずっとご存知だったと言っているようだぞ。今までどこに隠していた?誰にもバレないようになんてありえない話だ」
ログワットの家は、貿易が盛んな為、情報通を自負している。
そのログワットの家が知らないとなるとますます謎の異母兄殿下だ。


「考えてみればシリル様をあっさりとそれも突然にトリウミ王国に遊学させたのもあちらの王女と見合いだ、婚姻を結ぶだの、まだ先の事なのに変だった。何もかもが急時立てで、追い出すようだったと思う」
絞り出すような声を発したクラード様。

「確かにシリル様に関しておかしかった。突然のお見合い、急いで出発した感じ、それでいてシリル様は楽しそうにしていませんでしたか?」

「確かに。とても9歳の王女と婚姻が決まっているという感じじゃなくてまるで様子見…調べに行くみたいな…」
とクラード様も言った。

「シリル様は何かご存知なのか、クラウス様について、もしくはトリウミ王国には何かあって陛下の命令で動いているとか?」
と聞くと、クラード様は黙った。

「俺たちにも言えないことか。王弟殿下の仕事?」
とログワットが言うと、クラード様が、
「昔聞いたことがある。王弟の仕事について…」

「それは、何ですか?」
と聞くと
「それは、言えない。ここからは王家の秘密だ。ただシリル様がもしそうなら…彼は本当に私の兄なんだとわかった。どこかで疑っていたんだ、突然沸いて出た異母兄に…」
クラード様が言った言葉はこれ以上聞いても答えてくれないものだとわかった。

「今日は学園を休みましたし、きっと生徒会室は噂を聞きつけた下世話な生徒だらけですよ」
ログワットの言った言葉はその通りだと思うが、
「クラード様、学園長には逃げたと思われたのではないですか、今日サボって…」
と聞くと
「かもしれない。私の事を馬鹿にしてそうだったから…明日にはちゃんと行くし、話もする」
と言われた。

「それがいいですね。昨日、父にブランカ嬢の事は話して、今日王宮から医師と研究者が事情を聞いたり診断するそうです。あの場にいたティアラ嬢は大丈夫でしょうか?」

「なんでティアラ嬢の心配なんてするんだよシル」
とログワットが言うが、
「それは、やはり良い気分じゃないだろう?自分の血を触ってブランカ嬢があんな状態になったんだぞ」
と言えば、

「シルは言ったのかよ。君の血のおかげで私は解呪されたんだよって」

「言うわけないだろう。そんな気持ち悪がられるだろう」

「いや、シルその前から、っていうか、やっと気づいたのか!!足がどうこうとか、靴の拘りとかめちゃくちゃ気持ち悪いこと言っていたからな!自覚あるか」

「今はある。まぁ全て言い訳だから」
とログワットに指摘され、姉上が言っていた通り、周りに気づかれていたことにショックを受けた。


「騒いでしまって悪かった、反省している」
とクラード様に言われて、私達も執務をし始めた。
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