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50ベラの物語 2

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やっと、家に着いた。

あれからブランカ先輩は、シルベルト様に家に待機した方がいいと言われていた。何でも王宮には、それに関して医師がいるから、診察をしてもらった方がいいと助言をしていた。

今までになく重くなった制服を脱ぐ。

ブランカ先輩の話を聞いて、変な話もあるものだと思った。
でも同時に私は、あの時のカミューラ様の我慢しているような顔が浮かんだ。

「使命って何と思ったけど、あの場では言える雰囲気じゃなかったし…もしかして、カミューラ様も使命でイジメとかしている?悪役とかサクラさんが言っていた意味はこのことかしら?」

なら、彼女は誰かに洗脳されて悪役をやらされているってこと?カミューラ様と出会った私も役目があるといった訳、彼女は、理解していると思う。
では、悪役なんてしなくていいのに…
やっぱり私には理解不能だと思った。

トリウミ王国の本が目についた。

一冊目、天使の子セレナ、悪魔の子カミューラ…

本を読めば、答えはわかるような気がした。だってあの最後のイラストは、クリスマスパーティーの断罪の場面とそっくりだったから。

二冊目 作者ベラ

舞台は学園、生徒会という高位貴族の令息達で占めているグループに憧れる謎の乙女、セレナ。可愛らしい明るく天真爛漫な乙女が、入学する。その生徒会メンバーは難ありの者ばかり。そのメンバーの心を変えていきながら、メンバーから信頼と親愛を一心に受けるセレナ。しかしその生徒会メンバーには婚約者がいて散々な嫌がらせを受けていた。しかし悪事の証拠が揃い、生徒会メンバーからその婚約者達は、大きなパーティーで断罪される。
そして学園に平和が戻ったと締めている。

最後のページイラストは、ピンクのスカーフ、赤、青、緑、黄色、黒、の並び

セレナがヒロインで、意地悪な王太子殿下の婚約者の筆頭はカミューラ。
クリスマスパーティー前に起きたという噂話、似すぎているその内容に驚いた。また最後のページは…この場面、前回と同じ人達かと思って見れば、学園の名前も貴族達の登場人物名も違うのに、ヒロインと退治される令嬢は一緒の名前。

ここで生徒会メンバーに婚約者達の悪事の証拠を集めた人達は、新聞部だった。リーダーはブランカという女性。そしてその後輩はミンネ…

「発行はニ年前」

でもミンネにブランカ先輩…サクラさんが呟いているのは、この話と関係している?二人は役目があって、二年前に出会っている?

思い出すのは、カミューラ様が言っていた言葉。
『私との巡り合わせ』



三冊目 作者ベラ

ある学園に、一人の留学生がやってくる。名前はサクラ。その学園は、セレナとカミューラという女生徒が対立している学園。サクラはすぐに学園を仕切る生徒会メンバーと知り合い仲良くなる。セレナと行動を共にする。カミューラ達の意地悪にも負けず二人は、カミューラ達の悪事を暴いたが、サクラはセレナの秘密、実は淫魔で周りを操っていたことに気づく。そしてセレナから生徒会メンバーの王太子や公爵令息らを救い、サクラが聖女になる。

「最後のページは聖杯を持ち祈っているの?その横にいるのは、王太子殿下?後ろに控えているのが生徒会メンバーかしら。
サクラさんの名前が出てきたわ…前の作品は、セレナさんがヒロイン、今回はサクラさん、悪役令嬢は全部カミューラ様、発行日は、やっぱり二年前」

そして校内案内のシーンがあった。
一人で校内を歩き回るサクラが王太子殿下とぶつかり、案内してもらうというシーン。
確かに、緊張してクラスに馴染めないという理由、勇気を出せと励まされ、翌日友達ができたと王子に報告に行き、仲良くなり生徒会メンバーに入るきっかけだ。

「だから、校内案内にこだわっていたのかしら?本通りになると思っているの?生徒会メンバーの名前は違うけど、ミンネの話では、聖杯を浄めるイベントはあるわけで」

考えがまとまらない。この本が予言書のようで、でも違うと思うのは、セレナさんはサクラさんが留学する前にいないし、生徒会メンバーの名前も違う。
おかしいし、変なのに、似ていて気味が悪い。とても面白いなんて思えない。

そしてサクラさんが私のことをもぶさんと呼んだ理由がわかった。
台詞で
「廊下ですれ違ったなんて、女生徒の多数で、モブでしょう。名前もない者に、証拠にも証言にもならないわ」
とサクラさんがセレナさんに言う台詞。

女生徒の一人。名前もない者。

「随分と言われていたのね、私。本当に彼女に馬鹿にされているのね」

きっと彼女は、この物語を知っているんだろう、この本の通りになるって信じている気がする。
本の通り行動していると言えばいいのか…


最後の一冊が気になって、結局真夜中にも関わらず読み始める。

四冊目、作者ベラ

四人の赤子、名前は、セレナ、カミューラ、サクラ、ベラ。カミューラは美しく賢い、いつもみんなのリーダーでベラは人見知りの上、無口。
でもベラには秘密がある。魔法具を拾った。魔法具はベラの夢を叶えてくれる。描く物が手に入る夢の時間。
少女になる頃、大貴族が、自分の娘を探しに来たと言われた。その家にみんな行きたかった、だってお金持ちで幸せそうだったから。選ばれたのはカミューラ。セレナが言った、カミューラは狡い事をしたと。サクラが言ったカミューラは媚びて、私達を排除したのだと。
しばらくすると二人も養子に出て行った。
ベラは一人残った。
年頃になるとある一人の青年と出会い、恋をした。身分で苦しんでいた彼の為に何かしたいと、この私の日記の中だけでも、私達は幸せな王子とお姫様にした。私はもっと可愛い女の子になりたくて、やり直しを願ってしまった。
目が覚めると王女になって、彼が消えていた。すぐに悪者が現れた。秘密を見られ、自分を主役に、こんな物語を書けと脅された。書き終わると魔法具を取り上げられた。
私は、あれから王女のまま、突然現れたのに何故か誰一人疑わない、元に戻れない。
でも王子がいつか私を迎えに来ると信じている。

「ここで終わっている、イラストもない、これは…日記?発行は去年」

どうなったかわからないままだ。

部屋の中は、ランプの灯りより窓からの夜明けの方が明るくなっていた。

ハァーーー
もし本当に、ベラという作者が魔法具を使って書くと真実になるというなら、悪者と表現した人は、セレナさんとサクラさんになる。

それも最初に書かしたのがセレナさんで次がサクラさん。だって彼女は、最後セレナさんを悪役にしたわけだから。
この本を寄贈したのが、カミューラ様。全てを知っているわけで…

「わかっているなら、この事態を避けるのが普通、避けれないのがブランカ先輩曰く使命というものなのかしら」

考えてもわからない。
私一人ではどうすることも出来ない。

「どうしよう」
こんな話、誰が信じてくれる?
私自身な考えもまとまっていないのに。

部屋に入ってくる朝の光。
それに反射するようにキラキラとカーテンを光があたる。
しまっていたはずの靴の箱が開いていた。

「母様かしら?全くもう~」

青い宝石が散りばめられて、ピカピカ眩しい靴。
シルベルト様なら私の話をまともに聞いてくれる?本を持っていけば、何かわかるかも。
頭に浮かんだのは、シルベルト様。

「私とは関わらないで下さいとか、あんな大きなこと言っておいて、結局、昨日もだし、頼ろうとしている私は、クラスメイトの子達が言っている図々しいとかなんだろうな。誰かに言われたセレナさんの代わりになろうとしているが耳が痛い話になってきたな、ハァーーー、帰れって言われたのに、自分から生徒会室に行っているものね。もう、誤解とか巻き込まれたとかじゃないわ」

ハァーーーーーー、
それでも気になるものは、気になってしまって、袋に四冊の本を入れ、準備した。

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