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27ツギカラツギ

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生徒会で話を聞いたあと、午後の授業を聞き流し、ミンネ達と話すよりも慌て家に帰ろうと、急いで荷物を片付けて廊下に出た。

周りなど見ずに廊下の角を曲がると前にいた人とぶつかってしまった。

「申し訳ございません、急いでいて周りを確認しませんでした」
と言えば、
「久しぶりです」
と言われた。
返しとしては変だ。

顔を上げるとセオルド様がいた。
「…すみません、怪我などはありませんか?」
と聞くと、
「だ、大丈夫」
と胸を押さえていた。私の肩とぶつかったのはセオルド様の胸だったようだけど、それ以上何も言われなかったので、
「少々急いでおりまして、申し訳ありませんでした」
と一礼して前に進んだ。

そう言えば、この間、セオルド様をお見かけしたな…
視線は感じたけど、今はそれどころじゃなく父様への確認が一番。

外の正門近くには見慣れた制服姿がいた。
クランさんに、
「こんにちは」
と言えば、
「ティアラさん、今日は随分と急いでいるんですね」
と話しかけてもらえた。

本来なら嬉しい出来事なのに、今日は急いで、家に帰らなければならないため、断腸の思いで
「すみません、クランさん。急いで確認したいことがありまして、すぐに帰宅しますので失礼します」
と挨拶だけした。

ゔ~
せっかくだから話したかった…
お茶会の話の続きとか。
残念。

「ただいま戻りました。父様はいらっしゃるかしら?」
と聞くと、執事が、
「お嬢様、おかえりなさいませ、旦那様は執務室にいらっしゃいます。お嬢様の事大層喜ばれております」
と言われた。

既に、喜んでいる…と知らされた。いじめを?あり得ないでしょう!!出来れば関わりたくないのに。

執務室に入れば、
「よくやった」
と褒められた…

いじめられて賠償金よ…

めちゃくちゃ喜んでいる父様に、私は…
恥ずかしいよ…領地の税をまさか生徒会メンバー五人からのお金で未払い分払ってもらうなんて…
この話聞いて恥ずかしくてすぐ生徒会室出たからね。まさか学生に払ってもらうなんて…いくら王太子だ王弟だとお金持ちかもしれないけど、私達が納める税が王族に使われているんだから、変わりないって最後言われたしね。

私の感覚とは違う世界の方達…もう考えても駄目だ、相容れない。

父様に聞いたら、いじめの事は伏せられて、セレナさんの黒魔術を解いた御礼の報奨金という事で話を聞いたそう。

「えっ、賠償金って言ってたのよ、生徒会で、誰か」

「何だい?」

これは良くない。

家族に黙っているのも心苦しくなり、母様も来てもらい、洗いざらい全部話した。母様には、いじめの件で泣かれてしまった。
父様には、ロフト公爵家のカミューラ様に目をつけられたことを話すと、とても考えこむようになってしまった。

ただの報奨金だと喜んでいた所悪いけど、ちゃんと妬みや僻みの影響を受けていることを知ってもらいたかった。
被害の影響は、もしかすれば私を越えて家族にもかかってくるかもしれないから。
両親にも心配され、どうしてそんな色々な事を黙っていたのかと怒られ、悲しまれた。
言わなかったのは、困っている事を知られたくなかったから。ビルド家でこんな色々困っているのに更に心労をかけたくなかった。

「ごめんなさい…」
その続きは言葉が詰まった。

「いや、きっとお金がないことで苦労させているせいで自分で抱え込むようにさせていたんだね。私の責任だよ、ティアラすまなかった」



この空気を飲み込んで、諦めれば(現実逃避)楽になるだろう。

「でも王太子殿下の使者にサインもしてしまったよ…今からやっぱりいらないですと言うのか…」

「そうね、これでまた王宮に行って、手続きして、領地の返納、降格…
私はもう今回は、これでいいのではないかって思っているのよ」
と母様が悪魔の囁きをする。

上位貴族の決めたことに逆らう勇気もないし、結局大人しくしていようと父様も決めた。

私はかなり複雑だけど。
色々認めてしまえば、領民にも苦労をかけずに済んで…良かった。
お父様の話では、ある貴族からの領民に重税をかけるべきだと二年前から言われていたと告白された。
流行り病に荷台の事故、重なった不運に更に重税なんてビルドの領民が飢えてしまうわ。

うん、きっと良かったんだね、いじめの賠償金。この使い道が、流されてしまう自分が怖いわ。

週が明けて、いつもなら教室の中央にいるのに今日は、みんな席についてノートを見ていた。
「おはよう」
と言えば、ミンネが側に来て、
「もう、心配したよ。急いで帰るし…」
と言われ、ミンネ達に説明した。
生徒会室内であったこと、但し領地の徴税未払い分を報奨金としてもらい支払った事は言っていない。
流石にそこは…
父様からも黒魔術を解いた事は秘密だからその口止め料も入っていると思うと聞いているから。

ミンネも
「怖かったものね、シリル殿下。やっぱり高位貴族がすることにケチをつけたら駄目なのよ。これでみんなティアのこと放っておいてくれればいいね」
と言われた。

これで本当に終われば嬉しい。
しかしそんなすぐに変わらないのが、運の悪いビルド家で、

「ティアラ様、三年生の方が見えているわよ」

見れば、顔色を悪くしたユリアーノ先輩だった。
あぁ、何かあるなとわかるのも悲しい性です。あんなにお茶会楽しかったのにね。
「どうしましたか、ユリアーノ先輩?」
言うしかない一言を投げた。


「今日、我が家に来てもらえないかしら?」
と少し震えた声が出ている。
そんなビクビクして誘われたら、絶対何かあるってこちらも構えます!

サマリアさんの件で学習済みです。

「急なお誘いは、流石に…無理ですわ、ユリアーノ先輩?ここでは言えないことですか?昼休みでも駄目ですか?」
と聞けば、
「そうよね、突然ですもの、無理よね…」
と絶望的な顔をした。

これは絶対に何かある…
それもこのタイミングだ。
「ブランカ先輩には?」
顔を振ったユリアーノ先輩。

「困っている事をお伝えしても良いですか?」
と聞けば、
「どうすることも出来ないのよ…」
と走っていってしまった。

流石にこれは気になるわ…

ブランカ先輩に連絡して、昼休みに時間を作ってもらった。

「そう、ユリアーノ先輩がお困りなのはきっとロフト公爵家関係よ」
と断言された。

「ロフト公爵家からユリアーノ先輩の元婚約者サイモン様を取られたのだから。ティアラ様はあまり下世話なお家事情をご存知ないと思うのだけど、このサイモン様は、次男で子爵の位を頂く予定だった所、多分、嫡男を押しのけて侯爵位を継ぐという噂になり始めたの。理由は簡単。彼の後ろにロフト公爵家がついたから。次男だったサイモン様が嫡男と爵位を交換するという話よ。お家騒動よね。そうなれば、カミューラ様も体裁は保てるでしょう。でも嫡男は面白くないわよね。そしてユリアーノ先輩には、ロフト公爵の末弟の後妻にと話が来たのではないかしら」

どこからそんな詳しい情報を仕入れているのか…
それにしても先日からよく聞く名前。

「また、カミューラ様にロフト公爵ですか…
私、お茶会の帰りにいじめに遭いまして、サマリアさんとカミューラ様の手先令嬢に捕まって罵倒され監禁されてしまい…
それをシルベルト様が発見してくださり、その三名にシリル殿下が尋問、そしてロフト公爵様もその場に呼んで、カミューラ様の罪を問うと聞きました…
それがユリアーノ先輩に降りかかったのでしょうか?」
と聞けば、

「えっ?そんなことが!」
ブランカ先輩が考え始めた。

そして、
「もしかして、見せしめ…カミューラ様ならやりかねないわ。生徒会に行きましょう!」
と言った。

更に面倒くさい事になりそうで、関わりたくないのに…
もがけばもがくほど深みに嵌る蟻地獄。

意気揚々と歩くブランカ先輩。

その後を付いていく私は、相談なんてしないで、申し訳ないけどユリアーノ先輩を見ないふりをすれば良かったと後悔していた。

この道は、巻き込まれるために敷かれた道にしか見えなかったから。
(どうして、私ばかり…)
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