靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり

文字の大きさ
上 下
25 / 77

25遭遇(ティアラ視点)

しおりを挟む
備品教室

信じられない、サマリアさん達~~!

縄を結んでないって言われても、両手首ぐるぐる巻きじゃないの!
怪力自慢で引きちぎれというのかしら!!両手使えなければ全然解けないから。

大きな声は、しんどい…
「誰かーー、いませんかーー、ゲホっ」
ハァ、困ったわ…お茶会をしていた時間分、居残り生徒の数が激減しているわ。

でも警備員さんの巡回!
前にクランさんが話していたわ。教室を確認して回るって。だから見つけてくれるはず!!

「助けーてー下さい、ゴッホ」

「どうした?今、行く」
えっ、反応あり…、意外に早くて良かった、助かったわ。

扉を開けた人物を見た瞬間、思わず、
「あ!」
と言ってしまった。ア、「オ」と言いそうだった所を飲み込んだ。
だって、この状況を作った生徒会メンバーの一人の顔だったから。

そして何故か相手も私に驚いていた。
こんなみっともない姿、驚いてしまうか…

「どうした?」
…この状況、遊んで見えますか?なんていうか腹が立ってくる。
「今、助ける…」

「ありがとうございます」
近づく(青)に、複雑な感情になる。

「何があった?」
と聞かれた。
これは、ある意味逆鱗の問いかけよ。感謝の気持ちよりも、腹が立つ怒りの感情が上回ってしまった。

「見ての通り、悪質な妬みの被害に遭いました…例のイベントのせいです…」
思わず、あなた達のせいですと感情のままに言ってしまった。
本当は…悪いのは、こんな酷いことをする人達。

「すまなかった」
(青)が言った。
この方、生徒会メンバーで公爵令息よね?謝られた?

「本当に申し訳ない、こちらの配慮不足だ…」
再び謝ってきた。
配慮不足だと…
違うわ、この人達は自分達が周りに及ぼす影響が全くわかってない。自分の思う通り、好き放題にやっているだけ。

自分勝手、サマリアさん達と一緒よ…

謝るぐらいなら、こんなくだらないイベントやるな!
教室内でも気を使わないといけないし!勝手に私を巻き込むな!!

「もう、名前も出て、変な噂や言いがかりの煽りを受けているんです。何がイベントですか!こんな被害を受けて、副賞を貰ったって少しも嬉しくありません」

思いのまま、言葉にした。
(青)の顔を見ながら…
これは八つ当たり。この人一人でイベントなんて出来ないのに。
わかっている。
私は生徒会メンバー全員を前にしたら、きっと今言った言葉だって言えない。
この人、(青)一人だから言える怒りの言葉。

「そうだと思う。君は、私達にとって命の恩人で、その恩を返したいという気持ちが先走って…
あの日、私をハイヒールで救ってくれた令嬢を探したいと始めたことで…イベントにしたことで君に多大な迷惑をかけた。本来なら地道に一軒一軒回って確認すれば良かったんだ。そうすれば、こっそりと見つけ出せて、こんなに知られることはなかったはずだ」
と言われた。

根本が違う。私は見つけて欲しいなんて思ってない。関わりたいと思ってない。恩人なんて大層な者として捉えて欲しくない…
考え方が違うのね。
公爵令息様とは…

「そんなことをしたら家族総出で騒ぎになるでしょうに…ハァー
何故、そんなに恩返しをしたがるのですか?いくら黒魔術で操られてたからと言っても私、公爵令息のあなた様にハイヒールを頭に落としたのですよ。そんな不敬な事をしているのですから、普通なら私が謝る立場。良くて両成敗みたいなものですよね?」

怒りの感情が引いていく。
この方が悪いわけじゃないことを奥底で理解してはいた。きっかけはあの件で、それは私がお手洗いに行ったからで、靴擦れを我慢すれば良かったことで、靴の踵を踏み潰さなければ…

結局、大元は、私。
そしてたまたま、それが、回って恩人になった。全部偶然。

「いや、あのままだったら確実に家から放逐されていた…身分というより人権さえも失っていたと思えるような…
本当に酷い術だったんだ!」

突然(青)は言い訳じみたことを言い出した。
ハァ?
何言っているの。自分が(ピンク)と仲良くウフフしていた全部が、酷い術だったって?本当にいやらしい気持ち無しですか?
浮気でしょう?単なる浮気心が招いた婚約破棄とかでしょう!

そうよ、この人達が破棄したから、私達に余波がきたのよ!!

「だとしても、皆様が、婚約破棄をなさっているため、たくさんのご令嬢達が、婚約者候補でもその立場になんとしてでも入り込もうとしている事を全く理解していないのですよ。だから、少しのことでパートナーだ、侯爵令嬢だから贔屓されているとか、初めから出来レースだったとか言われて…言われる筋合いがない悪口を言われたりしているんです。…私には、本当に関わらないで欲しいです…」

この勘違いな方に、はっきり言わないと駄目だと思う。全然わかってない。男女のアレコレは私にはわからないけど、酷い術だと言われても関係ない所に影響あったわけで、きっとこの人は何も知らないし、きちんと理解していないのよ。

「わかった、すまなかった…
まだ君をいじめた女生徒達がいるかもしれない。馬車留めまで送るよ」
と言われた。

そんな光景をまた見られたら、いじめを助長するだけだと思うわ。
どうしてわからないの!馬鹿?
「走ってそちらまで行くので大丈夫です」
と歩き出した。彼を見ずに。

「では、後ろをついていく…万が一のためだ」
と言われた。
非常に重い空気だ。
居心地の悪さは逃げ出したいほどに。
でも、彼を見たくないし意識したくないのに、どうもチラッと後ろを気にしてしまう。

ん?
目の端で捕えたのはずっとこちらを見ているセオルド様?のように見えた。
途中で先生に会い事情を説明した。

(青)顔色が…悪い。

泣きそうで
悲しそうで
絶望感が滲み出てて

鬱陶しい

ハァー、言い過ぎたわ。私も自分が酷い目に遭ったからって、乱暴な言葉で責めたてて調子に乗りすぎたかも。

「あの、ありがとうございました。馬車が見えましたから」
と言えば、
「ああ、本当にすまなかった」
とこの世の終わりみたいな顔で言われてもね、対応が難しい…

この人達は、普通を知らないから…同じ目線で考えてはいけないのに。私の方が押し付けがましかったのかも。雲の上の存在に…どうしよう…

「…はい。私の方こそ生意気な口の利き方をしてすいませんでした」

彼は、申し訳ないほど死にそうな微笑みをくれる。
「怒ってないから安心して。私の方が迷惑かけたんだから、早く乗って家でくつろぐべきだ」

彼…シルベルト様は、私をフォローしてくれていて…
自分が言った言葉が、彼を傷つけている事に心が痛くなった。



馬車に乗っても、このモヤついた気持ちが、離れない。
「ウーー、ウーー」
とただ下品に唸る。

なんでこんなに私が悪いみたいに感じるわけでしょうか?
私は悪くない。
絶対に悪くない。

サマリアさん達が悪いし、私は調子に乗っていないし、カミューラ公爵令嬢なんて、どうして出てくるのよ!

関係ないじゃない。

停学中なら、大人しく自宅待機していなさいよ。お友達だか手先だか知らないけど何故関係もない所から口を出すのよ!理解出来ないわ。

ハァーーーーーー

どうしよう。
どうしてあんな事言っちゃったんだろう。黒魔術で操られていたって、肉体も精神も…体験したことないから辛さや苦しみもわからないのに…
自分の意思で婚約破棄をしたわけじゃないかもしれないのに、なんか散々と失礼な事を言っていたよね、私。

シルベルト様は婚約者の方と破棄したかったわけではなかったかもしれない。浮気だってしたくなかったかもしれない。

ハァーーー
決めつけていたな。
この人のせいで私がこんな仕打ちにあっていると。

シルベルト様に言い訳もさせず、ただ一方的に責めた…
サマリアさん達と一緒のことをしてる。

だから、心が引っかかって、心傷つけてあんな表情にさせて、自分自身が情けなくて、後悔している。

最低です。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

『捨てられダイヤは輝かない』貧相を理由に婚約破棄されたので、綺麗な靴もドレスも捨てて神都で自由に暮らします

三崎こはく@休眠中
恋愛
 婚約者クロシュラに突如として婚約破棄を告げられたダイナ。悲しみに暮れるダイナは手持ちの靴とドレスを全て焼き払い、単身国家の中心地である神都を目指す。どうにか手にしたカフェ店員としての職、小さな住まい。慎ましやかな生活を送るダイナの元に、ある日一風変わった客人が現れる。  紫紺の髪の、無表情で偉そうな客。それがその客人の第一印象。  さくっと読める異世界ラブストーリー☆★ ※ネタバレありの感想を一部そのまま公開してしまったため、本文未読の方は閲覧ご注意ください ※2022.5.7完結♪同日HOT女性向け1位、恋愛2位ありがとうございます♪ ※表紙画像は岡保佐優様に描いていただきました♪

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

いつの間にかの王太子妃候補

しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。 遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。 王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。 「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」 話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。 話せるだけで十分幸せだった。 それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。 あれ? わたくしが王太子妃候補? 婚約者は? こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*) アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。 短編です、ハピエンです(強調) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です

灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。 顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。 辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。 王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて… 婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。 ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。 設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。 他サイトでも掲載しています。 コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

処理中です...