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(シルベルトside)
生徒会室

「靴の仕上がりは、いつになるかなぁ。みんなの前とかで渡した方が、このイベントが終了したってわかりやすいよね。どうする?」
とシリル様が言い出した。

いや、彼女は、そういうの嫌がっているタイプだと思う。

「いや、やめておいた方がいいのでは?」
と言うと、
「確かに、困った顔ばかりしていたな」
とクラード様も気づいていた。

「女生徒の妬みは色々あるからね。それこそセレナのいじめの数ね」
とログワットも呆れて言う。

「あれは、カミューラ嬢が周りを手先扱いして率先して行っていたわけだろう。流石に今は停学中だ。何も出来ないだろう?」
クラード様は嫌な顔をした。
元婚約者だ、彼女の性格の苛烈さは一番知っているのだろう。
セレナは確かに淫魔だったかもしれないが、それにしても日常的なイジメは酷かった。
ただ考えてみれば、常人なら落ち込んだり、私達を避けたり、逃げたりするような所をいつも普通に正面から受けていた。
だから余計に多くの人の目についたし、証言も証拠も集まった。
悲しそうな顔をしても、誰かが慰めれば、笑い楽しそうにしていた。

今考えてみれば、よくあんなに平然と受けていたなと不思議なことが多い。

「流石に反省はしているだろう、あれだけのことをしていて、公爵だって顔色悪くしていたと聞いたよ」
とシリル様も言っていたが…

「なぜ誰も彼女に命令されて断らないのでしょう?毒なんて殺人罪ですよ、暴漢に襲わせたりも未遂だとしても残虐でしょう…何故裁判や捕獲できなかったのですか?」
と言えば、クラード様が、
「国王陛下とロフト公爵が早々と会談をしたことは聞いている。セレナが淫魔だと情報を入手したのかもしれない。随分と強気な面も見せていたらしいよ、ロフト公爵は。あの悪女が淫魔の力で私達を唆した、それを悪意や危険を知りつつもカミューラ含め令嬢達は、諌めようとしたと判断されたようだ…
でも、それは建前で、民に淫魔だ魔物を召喚したなんてことを公表したくないのだろう。でもやっていることはえげつない。そんな令嬢を王妃には出来ないから、いくら公爵が国王に泣きつこうがそれだけはない。私は結局性根が他者を傷つける者だと思っているからな」
と言った。

「確かにな、ルルチーナも命令されたと言っていたが、結局長いものに巻かれた…。勿論こちらの方が悪いが」

「政略的婚約だとしても…カミューラ公爵令嬢は過激だよ、そして令嬢達の支配力がずば抜けている…もし学園に復学する際には気をつけた方がいいよ。今までは王太子の婚約者という立場があったから、私達には牙を向けなかったけど、彼女が今後何を思うか…それはわからないから」
シリル様が何かのスタンドをカタカタと遊びながら話す。そして机から落とした。

「うわぁ~、ごめん、勢いよく弾いてしまった…あちゃ~、欠けてしまったよ。これ何に使うんだっけ?」
とシリル様が慌てて拾った。ログワットもその場に行き、確認する。

「何でしたっけ?」

「シリル様もログワットも手間をかけるなら、書類整理した方がいい」
と先程から黙々と棚の片付けに回っていたフランが言った。

全くその通りだ。

仕方がないので、私が割れたスタンドを見に行く。
「これは卒業式の日に見本の証明書を立てるスタンドですね。全くあなた様は!もう少し落ちつきを持ってください。替えがあるか調べてきます」

「ああ、頼むシルベルト」
とクラード様にも言われ、生徒会室を出る。

全く、碌な事しないな。
渡り廊下を歩いているとサロンが見えた…ティアラ嬢!?

「嘘だろう…」

すぐに壁に隠れた。再び見ると和やかそうに、楽しそうに話して、立ち上がって何かまた嬉しそうに会話していた。

一歩が進まない。
足が地面に張り付いたみたいだ。
もう一度見た。
別れ際だ…あぁ、手を振っている…誰だ、あの人は?いや、一人は生徒であれは騎士団の制服、あの成人男性は?

男だけで残っている。

聞いてみようか?外部の人間が勝手に入ってサロンを利用しているなんておかしな話だ。
身元確認は必要だ。
俺は生徒会だし、知る必要がある…はずだ。

一歩、動け、足!

「失礼、私、この学園の生徒会をしている者ですが、少々確認したいのですが、今、大丈夫ですか?」

よし、不自然ではない。

「あ、シルベルト様」
と学生服を着た三年生は言った。

「三年生の方でしたか、そちらの騎士と男性の方は、どちら様でしょうか?校内に入る許可はありますか?」
と聞くと、三年生が、
「二年のブランカ嬢がサロン使用許可と外部の客人の申請を出してあると聞いてます。職員室に確認して下さい」

三年生、やるな…

「わかりました。失礼します」

職員室に向かった。
まず確認だ。

サロン許可申請書を見て、今日お茶会を開いたこと、女生徒三名男性三名…

お見合いか、これ?
いや、お茶会だ。
こんなこと、学園でやっていいのか?

「すいません、先生、こういうお茶会を学園でやってよろしいんでしょうか?」
とすぐ横にいた先生に確認した。

すると、先生は困った顔をして、
「シルベルトさん、この慣わしそもそもあなた達が作ったでしょう。一年生の時。セレナさんを中心に。広く外部にも開かれたお茶会、身分とか学園では関係ないから過ごしやすいって。セレナさんのために」
と小声で言われた。

言われてみて思い出した。
女生徒周りがお茶会をやってもセレナは男爵令嬢だから呼ばれないと悩みを打ち明けられて…
私達がセレナを招待したお茶会を開くために学園のサロンを解放しようと決めて…

確かにそうでした。

「外部の客人なら、身元は判明していますよ、ちゃんと入校手続きを警備の方で書いてありますから」

「先生、ありがとうございました。ご迷惑おかけしました」

ハァー、結局自分達があの頃の勢いで作ったお茶会のシステムだった。
本当にそんなことも忘れるほど洗脳されていたなんて如何わしい…
あの頃、毎回順番にセレナを招いて二人でお茶を飲んで有名な菓子を取り寄せて…

その後は我が家の馬車で送ったり、キスをしたり…淫魔に惑わされた自分に、再びガッカリした。

「本当に何をしていたんだ私は」

足が再び重く感じながら廊下を歩く。
バタバタと廊下を走る音。
注意をしようか!
しかし、俺に人を注意する資格があるんだろうか?

「ちゃんと言われた通り脅したり、いじめたりしたんだから、高位貴族を紹介してくれるんでしょ!」

廊下の曲がり角まで聞こえた声が甲高い。不穏な内容、頭が痛くなりそうなぐらい関わりたくないなとおもっていた。
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