靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり

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22妬み

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企画されたこのお茶会を聞いた時は、あんなに嫌々だったのに、終わり時間が寂しく感じるなんて思ってもいなかった。

「本日は、私の我儘にお付き合い頂き誠にありがとうございました。学園を卒業する前に思い出を作れました…本当にありがうございました」

ユリアーノ先輩が立ち上がって頭を下げた。ギースさんが拍手したので私達も真似して手を叩く。
ちょっとした嫌な事もあったが、楽しかったねとブランカ先輩も言い、頷き合った。

「クランさん、何度も助けて頂きありがとうございました。私もこういうお茶会が初めてだったので、大変参考になりました。先輩方の一歩踏み出す姿勢、見習おうと思います。残り一ヶ月ですよね?いつも通り挨拶させてくださいね」
と言えば、

「こちらこそ、和やかで楽しかったですよ。そうですね、卒業式も間近、警備員として最後まで安全、安心をお届け出来るように尽力します。ティアラさんに挨拶をいただけるなんて光栄ですよ」
と笑って言ってくれた。

流石大人、決して私の言葉を揶揄ったりせずに対応してくれる。

絶対に次は、三歳以上の年上を婚約者にしたいわ。大人の魅力を知ってしまった私に同級生の男子生徒は…子供だわ。

クランさんが、アラン先輩とギースさんに呼び止められたので、私は、みんなと別れ、そのまま下駄箱に向かおうとすると廊下の壁にもたれかかった不良集団…
サマリアさん達に出会った。

無視するのも違うような…

「ご機嫌よう」
と一言言った。

気に食わなかったのだろうか、サマリアさんが私の肩を押さえた。
「少し話をしましょうよ、ティアラ様…」
という顔は、完全に悪人、意地悪く嫌な感じだ。前を歩くサマリアさんに後ろを歩く私、両脇に囲うように立つ令嬢二人…

待ち伏せされていたのかしら?

凄く嫌な感じ…
こんな経験ないけど、これからキツい言葉を投げかけられるのはわかるわ、これは、まさしくいじめ!
なんで私が…と思ったけど、落とし靴の姫の件だろうな。

そんなになりたかったのね…
まだまだ言い足りないということなのね。
私だってなりたくてなったわけではないのに、言いがかりですって言ってやろうか!
でも3対1…

…黙ってようかな。

初めて入る教室。
物置のような備品が沢山詰め込まれた部屋に案内された。

「あなた、侯爵令嬢だからって調子に乗っているわよね。私を踏み台にして、クラード王子様達に気に入られようと良い子ちゃんアピールしていたわよね。やられたわ!あんな風に私、謙虚です、私、興味ありませんっていう方が他の女生徒との対比で目立つものね。よく考えてるわ。本当にずる賢いのね、ティアラ様って」
とサマリアさんに言われた。

ハァ!?
一切そんなつもりないですけどね。
「失礼じゃないですか、サマリアさん!」
と言った声に被せるように、
「貧乏っていえば、高位貴族が贈り物してくれるって考えての発言かしら?」
と女生徒の一人が言えば、
「あなたのクラス内でも、本当は色々知っていたのに私達に教えてくれなかったのよ、自分ばっかりで、なんて意地悪なんだろうって言われているわよ。地味で目立たないくせして、かなり嫌われているのね、可哀想~」
ともう一人の子にも言われた。

次から次に、3対1の不利さを痛感する。

これが僻み妬みか…悪口が並び尽くす。
目立つと何でもかんでも揚げ足を取ろうとするのはわかるけど、なんて下品なんだろう。

「言いたいことはそれだけなんですか?私は以前言った通り、何も知りませんでした。確かに副賞として白のハイヒールは贈られるようですが、それ以外では、生徒会メンバーと交流も会話もありません」
と言えば、

「そういうのが癇に障ってくるのよ!真面目です、良い子ちゃんです、ガツガツしてません!高位貴族の余裕ですか?私はあなた達とは違いますって言いたいの?」
とサマリアさんが、両手で私の肩を押した。
かなりの勢いで姿勢が崩れた。慌てて近くの棚に手で掴み耐えようとしたが尻餅をついた。そこをすかさず一人の女生徒が私の手首を持ち、棚の一部に縄をかけ私を固定した。

口だけじゃなく手まで出してきた!

全校集会だって言葉だけじゃなく暴力的な争い…私は忘れていた。

そうだった…みんな獰猛な、血気盛んな令嬢だらけだったわ。
どうしよう…
何故捕まった時声を上げなかったの!私の馬鹿!まだ近くにいたクランさんやブランカ先輩だって気づいてくれたのに…

後悔しながら、
「なんてことするんですか、サマリアさん。痛いじゃないですか、こんなことして先生に言いますよ」
と言えば、
「言いたければいいなさいよ。私達何もやってないわよね、ティアラ様が勝手に転んで縄に絡まっただけじゃない、何嘘ついているんですか?ねぇ、みなさん」
とサマリアさんが言った。

はあ!?
「そんな適当な嘘通じるわけないでしょう?縄まで用意して!」

「縄だってここにあったものだし、この備品部屋鍵もかかってないのよ、もちろん縄だって結んでないわ、自力で解けるでしょう…頑張ってね。さぁ私達は帰りましょう」

「そうね、調子に乗らないで下さいね、侯爵令嬢様。私達、あなたよりもっと上のご令嬢のお友達ですの、彼女が学園の話を聞いて心を痛めてますので私達はサマリアさんのお話を聞いて慰めていただけですわ」

「本当にあの方がいない学園で調子に乗らないでくださる。聞いたこともない侯爵令嬢のくせに。傷物令嬢なんて呼ばれないよう夜道は気をつけてね。オッホッホッホ」

…脅し
なんでそんなこと言われなきゃいけないのよ!!!
あの方とか言われたって知りませんよ!

「調子に乗っているですって?たかがイベントで選ばれただけの事で?そのようなことは生徒会長に直接お話しなされば良いのではないかしら?そして侯爵令嬢というけど、では、あなた達はどちらの出なのかしら?私に教えてくださらない?」
とキレた。

私ティアラ・ビルドは、キレました!!

「何よ、急に凄んで…サマリアさん私達は何も知らないわ。お先に失礼しますわ」
と突然敬語になり、歩き始めた。
サマリアさんは、
「カミューラ公爵令嬢に紹介してくださる約束はどうなったのよ~!!!」
と後を追いかけた。

カミューラ?
あぁセレナさんのいじめの主犯格ね。
扉に手をかけた時、再び私を見た。

「出る杭は打たれるのよ」
と言った。

何という捨て台詞、最低の人だわ。
「解きなさい」
「全部自分勝手な言いがかりでしょうがーーー」

という言葉は空振りに終わった。
令嬢らしからぬ大きな声を久しぶりに出した。ゴホッゴホッ…
(ハァーーーー、油断したわーー、関わったことのないカミューラ公爵令嬢ってどうして?)
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