靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり

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11落とし靴の姫君探し

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(シルベルトside)
生徒会室

「いや、大失敗だったね。怖い、怖い。あの果敢な戦い方はどこで習うのだろうね」
シリル様が明るい声で言い始めた。
怖いと言いながら通常な様子…流石女性の扱いに長けているというべきか…


「まさか女生徒全員が、靴を落としたのは自分だと名乗りあげるなんて思わなかったな。私は10歳から始まった婚約者探しのお茶会を思い出したよ」
とクラード様も言った。
この人も平気なのかよ!

シリル様も思い出したように、
「あぁ、あの頃を彷彿させたね。取っ組み合いに罵声ね。そうか、カミューラ嬢があれを制したんだったね。彼女がいなければ傍若無人にもなるか」
壇上から見た光景…それは女生徒同士の手が出て足が出て、汚い言葉が出て、獰猛な目が怖かった。あんな姿は初めて見た。
先生方に後は任せ、我々はすぐに退散してしまった。大丈夫だったかな、先生方…申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

ログワットは、
「なんか学園内の噂で、私達が婚約破棄したからダンスのパートナーを募集しているという噂が蔓延したらしいな。全くどんな誤解をすればそんな話になるのか…今は…当分ご令嬢は無理だ。あの姿を見て幻滅するなという方が無理だろう」
と言っていた。

確かに…
「パートナーはいないが」


みんなセレナの件を思い出したんだと思う。

「私が持ってきたこの靴は、あまり意味をなさなかったですね」
と言えば、こちらに注目が集まった。話題を変えるきっかけになった。

「それだ!」
とシリル様が言い、

「その靴を女子生徒に履いて貰えばいいんじゃないのかな?」
と。

このハイヒールが、特注品かどうかはすでに調べていた。
「この靴、踵が折れてますが、市販のどこにでもあるハイヒールですよ」
と言えば、

「うん、それだけでも少しは絞られるでしょう。まずその靴を履ける人は違うわけでしょう、いやギリ履ける人もオッケーか…あとわかるのは一年生って事…最終的にはシルベルトの感ってやつかな。なんかシルベルトって鼻が利くんだって?」
と笑いながら聞いてきた。

父上がバラしたのか!

「シル、そうなのか、匂いでその女生徒がわかるのか?」
とフランまで目を開いてまで聞いてくる。お前は寡黙キャラでいろよ!余計なことを話すな。興味を持つな。持たないでくれ。
目の前のフランの顔は毎日傷だらけだ。よっぽど今回の事で父である騎士団長に鍛え直されているのだろう…

「フラン、今日の左頬痛々しいな」
と言えば苦笑していた。

そんな中またシリル様が、
「あぁそうだ、私も行くあてが決まった。トリウミ王国の王女と多分結婚する。島国だから、中々このノーマン王国には戻れないだろうな。クラードが王太子として一人だったから王位継承権のおかげで色々守られていたけど、今回は断れない案件らしい。一度あちらで一年の遊学期間は設けられるらしいけど、ほぼ決まりだと兄上、国王陛下には言われたよ。でもまだ内緒ね」
と笑って言われた。

クラード様も知らなかったようだ。

「今回の件ですか…確かトリウミ王国の王女って9歳…」
と神妙な面持ちでクラード様が聞くと、シリル様は顔を振った。

「まぁ、自分好みに育てる楽しみもあるし、それだけではないかな。今の今まで王弟として遊んでいたツケ…いや姉上も兄上もみんな国内外で王族としての務めは果たしているわけで私だってやるべきことはやらなければいけない。みんなも後一年学園に、在籍しているうちに後悔がないように日々邁進してくれよ。たまには年長者らしいこと言えたかな?」
と再び笑った。
明るいシリル様だから、しんみり同情されたりするのは嫌だろう。

話題を変えつつ、結局シリル様の言う通り、片方のハイヒールを女生徒全員に履いてもらうというよくわからないイベントを決行する事になった。

誰かが言った
『落とし靴の姫君探し』
そんなイベントになった。



「三年生も、二年生も関係ないだろうけど噂が噂を呼ぶって本当に怖いな…」
と生徒会メンバー全員がこのイベントをする事に頭を抱えた。

何故かこのハイヒールのサイズがぴったりの女学生が生徒会メンバーのパートナーを務めるという話になり変わっていた。

「あぁ、私ぴったりですわ!」
「見てください殿下」
「ほら、ピッタリです」
「私の為の靴!」

ずっと続くこのフレーズ…大きくても小さくてもみんな揃って
「「「「ピッタリです」」」」
という。
流石にぎゅうぎゅうに詰めて履けない令嬢も中にはいた。
それでも
「明日には履けるようになってます!今日は足が浮腫んでしまっていて」
と言われた。
そんな時なんて返答したらいいかわからない。足の大きさを問うっている訳じゃないんだけどな。
ある時はつかみ合いの喧嘩にもなった。

『だって君達一年生じゃないから』

とはいえなかった。みんなあまりにも必死で…怖い

女子怖い。

貼り付く笑顔になってもう半ば強制的な我慢大会みたいに淡々と次から次にハイヒールを履いてもらうだけ。サイズがピッタリだろうが関係ないのだ。
まず踵折れ曲がっているからね。

噂の蔓延って怖い。

私は女生徒の足を(黒タイツ越し)見ても下半身は反応しない。
これは、私にとって朗報だ!

クラード様とシリル様は、呆れるよりも王族として、生徒会長として求められていることに気づいたようで、
「みんな私達と踊りたいんだな」
とそんな事を言いはじめた。
それだけではないと思う…が。

彼女達はその先の婚約者候補、パートナー、王妃まで…考えて勝ち抜き戦だと思っている気がする。
もう戦いなんだよ!!怖すぎるよ!と言えない。王太子があんまりそこら辺を考えてないなら、余計なことは言えない。

そして一年生の落とし靴の姫君探しイベントの前に一つの結論が出た。

「卒業パーティーでできる限りの女生徒達と一曲ダンスを踊ろう」
「それが、彼女らの思い出になるならそうしよう」
「これで暴力的な争い(戦い)が収まるならいい…」
「恐怖しかないもんな。靴を履く時の目…」
「もう嫌だ」(これは、私の声)

これを生徒会として決まったこととして掲示板に貼れば、沢山の歓声が上がったので、今まで迷惑をかけていた分少しでも喜んでもらえて良かったと言い合った。
それで全てが帳消しにはならないが…
争いが収まればいい。

だけど俺は、本当にその女生徒が見つかってしまった場合なんて声をかけたらいいのだろう。
求められれば宝石もダンスも踊るけど、かける言葉が見つからない。セレナの事を話せば、君のおかげだよ、なんて言えるけど、淫魔のことは言いたくない。知られたらセレナの唾液を君の血で相殺してくれた、その感謝なんて良い印象を持たれるとも思わない。
そんな事をぐるぐると考えていた。

そして問題は、足だ。
私は、あの日の足が忘れられない。一目惚れというものかもしれない。多くの医学や精神学の本を読んだ。
あの足は私にとって唯一無二の好みの足だと結論付けた。
二年、三年の女生徒の足に反応しないからだ!!
私は変態ではない。
あの足だからこそ勃つ!
きっとそうだ、それ以外だったら…私は足フェチという性癖に当たるらしい。

「とうとう一年生だ」
思わず呟いたのは、決して気合いが入っている訳ではない。変態かどうかの見極めもかかっているとは誰にも教えられない私だけの重要項目だ。
(一目足惚れ、間違いない)
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