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1ヒーローショーの見学者
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「おい、何かさ…、集まって」
と聞こえた。
化粧室に向かおうと伸ばした足は、突然足止めをくらった。その誰かが言った一言が、一瞬で不穏な空気になり、とても会場から抜け出せる雰囲気ではなくなった。
生徒達の声は広がり、ドーナツ状に観客席が出来始めた…
ノーマン王国の貴族達(15才から三年間)通うノーマン王立学園。
その年の学年ごとに制服のネクタイが違う。一年生オレンジ、二年生紺、三年生グレイが目印。
本日は、生徒会主催のクリスマスパーティーが行われている。学園の広いダンス会場を使って。
通常なら、和気藹々、学年関係なく無礼講な感じで、
「イエーイ」
なんて軽口言ってグラスで乾杯したり、仲の良いグループで話したり、婚約者や恋人とダンスを踊ったり…
そう楽しい時間であるはず。
「何、何、なんか始まるね~」
と近づいてきた私の隣で、野次馬根性の目をギラギラさせているのは、友人のミンネ子爵令嬢。
「静かに、大きな声出したら周りから見られるよ!」
と腕を払い注意する。
今、上座の三段程高い踊り場で舞台の中央に赤いネクタイの王太子殿下、左に青いネクタイの公爵令息、その隣に緑のネクタイの侯爵令息、王太子殿下の右に黄色のネクタイの王弟殿下、その隣に黒いネクタイの騎士団長息子の伯爵令息、そして王太子殿下の左腕の中に収まっているピンクのスカーフをしている男爵令嬢…
『何故生徒会メンバーはみんな色違いのネクタイをしているのだろう?』
ミンネの好奇心という疼きは身体全体から表しているようで少し揺れながら、餌を待たされている犬のようだ。
「フゥー、ミンネったらなんか下品よ」
と注意すると
「ティア、あなたこれから始まる事に興味がないの?」
と聞かれた。
「興味がないというか、関係ないというか…高位貴族の痴情のもつれなんて噂話、陰口あたりで面白おかしくその場限りのネタみたいなもので」
と言えば、
「あら、ティアだって侯爵令嬢じゃない、関係ないって事はないでしょう!」
と言われた。
「我が家は貧乏侯爵家よ、あの方達とは家格が違うわ。徴税も滞納して年始めに降格決定なのよ、伯爵…もしくは子爵まで、領地だってどれだけ没収されるかわからない身の上よ。人様のあれこれにつっこんでいる場合じゃなく…震え上がっているわ」
と少しだけ身振いさせて言えば、
「世知辛いわね」
と目線も合わせずに言われた。
言ってて思う。ちゃんと税は納めなきゃねって。
別に我が家は悪い事なんて何一つしていないのだけど、とにかく運が悪い。巡り合わせが悪い…今回もお金を隠したり悪政をしたり怠けていたわけではない。麦の納めの日に荷台が壊れ、道にばら撒くという惨事で納められなかっただけだ…
回想をしていれば、王太子殿下(赤)が話し始めた。
「すまない、この楽しいパーティーに水を差すような振る舞いをしてしまうのを心苦しく思うが、私達も我慢の限界だ。生徒会の仲間、大切なセレナに命の危険があったことで、この場で糾弾する!今までも含め今回の件、どうしても許せない。わかるな、カミューラ公爵令嬢!」
「始まったわ」
とミンネの野次馬根性ががっつりこの話に喰らい付いた。
「お言葉ですが、クラード様、私はその男爵令嬢に注意しただけですのよ、それに貴方様だけでなく婚約者のいる男性に接触、いえ、近すぎると貴族令嬢の心得を教えただけですのよ」
と一歩前に出た公爵令嬢ことカミューラ様は言った。
今、後ろにいる私からは表情は見えないけど、かなり言葉に憎しみを感じる…
確かに何度もあのセレナ様(ピンク)を教室内、廊下、外で怒鳴り注意していたのはみんな知っている…
ただ命の危機とは?
そして公爵令息(青)が
「イリーナ嬢、君もだ。私は知っている。セレナの持ち物を隠したのは君だろう?今日も我々とダンスが出来ないようにハイヒールを隠したな!髪飾りや私物をゴミ箱に捨てていたり燃やしたりしていたな。侯爵令嬢として恥ずべき行為!」
イリーナ様が一歩前に出た。黙らず答える姿勢は流石侯爵令嬢。
背中が震えている。
「私は知りません」
「証言は取れているんだ、君の取り巻きから」
ザワザワし始め、それらしき人物達の場所も浮島のように隔離され注目を浴びている。
…うわぁ、同情するわ。
ここから色々省略。
すぐに(黒)が、一歩前に出て
「恥知らずが!ルルチーナ嬢!セレナの教科書やノートを何かで引きちぎったりナイフで何回も傷をつけたね、知らないと思ったか?」
キツく冷たい罵声が飛んだ。
ルルチーナ様のお顔が真っ青になって足がもつれたのかその場で座り込んでしまった。
(緑)が、
「ここにいるみんなも知っているんだろう?セレナがいじめられていたのをさ。それなのに誰も庇わない。酷いね君達。人道に反しているよ。その中でも我が婚約者のキャサリン、君ってば噂を煽動して色んなところに種をまいてセレナを悪女だと罵って面白おかしく作り話をしていたよね。驚くのは学園内にとどまらず外、商会を通して貴婦人に噂を流していたのを知られてないと思ったのかい、反論は?」
と嘲笑うかのように緑のネクタイが揺れた。
キャサリン様が両手を握り締め、前を向き、反論した。
「そもそもおかしいでしょうが、ログワット様あなたの婚約者は私ですのに何故その男爵令嬢をエスコートしなきゃいけないのですか?毎回何かにつけて私と会うのを避けておりましたよね?そしてその忌々しい男爵令嬢とお茶をしたり街に出かけたり、その言動がおかしいと思いませんの?あなたお一人ではなく婚約者のいる男性を侍らせているなんてイヤラシイと思いませんの?ログワット様」
(黄色)が
「あのさ、キャサリン嬢そういう所がログワットが君に嫌気が差したんだと思うんだよねぇ。可愛い女の子はそんな策略じみた煽りなんてしないで、素直に甘えたらいいのに~僕は来るもの拒まずだよ、一人でも三人でも受け付けているよ」
とウインクした。
すると問題の男爵令嬢(ピンク)が涙目で訴える。
「申し訳ありません、皆様。私、勿論ここにいる方々に婚約者がいらっしゃる事は存じております。だけど、クラード殿下やシルベルト様達とお友達になりたかっただけです。普通にお話してお茶を飲んだりお花を見たり、街歩きをしたり…卑しい事は誓ってしておりません。それなのにみなさんからの執拗な虐め…私悲しくて恐ろしいです」
と涙ながらに訴えている。
そして(赤)が更に腕に力を入れたのか(ピンク)を自分の方に寄せた。
………
変ですよね、はっきり言ってあの子の言っていることも異常な事に感じるのだけど?
という目で隣のミンネを見れば目を爛々に輝かせてそのよくわからない言い分に夢中になっていた。
「「「「こんな愛らしいセレナを害するお前達とは婚約破棄する。証拠は全て揃っているからな」」」」
赤、青、黒、緑、声を揃えて言った。
それを受けて誰一人答えない。
…
会場が静かになった。
唯一この中で婚約者がいなかった(黄色)が、身振り手振りで、
「ふぅーーー、みんなごめんね。生徒会としては何かまた別に埋め合わせをするからさ。今日はもうパーティーって感じじゃないよね。残念だけどお開きにしよう」
と言った。
この重苦しい雰囲気から解放してくれるのはありがたいけど、これってどうなるのかしら?
「やだ~、面白い。先程の話本当なのかな、これからどうなるのかしら?婚約破棄が成立するの?」
とミンネがこっそりと私に耳打ちした。何がそんなに面白いのよ。私達はあの方達の痴情の絡れを見ただけ…
扉が開いて一斉に人が出ていく。
ミンネに
「ごめん、人が多いから2階の化粧室に寄ってから帰るわ」
と告げると
「あぁ~、ハイヒールのサイズが合わなかったものね。うわぁ、血が出ているじゃない。タイツからもみえる~頑張ったわね。立っているだけで痛かったでしょう?立食だったから早く解放されて良かったね。でもティアの靴って何処に消えたのかしら?セレナ様ではあるまいし隠されたってわけではないでしょう」
とミンネに言われる。
学園に着いてクラス用の下駄箱に向かえば、このパーティー用に準備していたハイヒールが私も無かったのだ。貧乏なので替えなんて用意しておらず、急遽先生に借りに行った。サイズの合わないハイヒールに踵はずりずりに削られ歩くだけでも痛かった。
婚約者がいる手前、一曲は必ず踊らなきゃいけないというミッションに更に踵は悲惨な状態になった。
あの生徒会メンバーのショーが始まる前に、化粧室に行きたかったと思いながらも、みんなと向かう方向を変えて階段を上がり化粧室で、黒タイツを脱ぎ、皮がズリっと剥けて血が出ている場所に濡らしたハンカチを当てた。
「ハァ、気持ちいい、でもこれは駄目ね。新しい物を買って返さなきゃ」
と血のついたハイヒールを見て深い溜息をついた。
「お金無いのに…ついてないわ。誰よ私の靴の盗人は」
と怒りと悲しみでハイヒールの踵を押し潰しつま先のみ履くサンダル状態で移動する。もう人の声もしない、生足だけど…この脱いだタイツを履くのも面倒だし、出血している踵は痛いしと恥ずかしいけど見られなければ、あのショーを見て、余計に私なんて関係ない、誰も見てない、そんな思いがあった。
急いで帰れば良い。
階段を降りるそれだけ…
痛みで前方不注意だったのは認める。
でも足元には気を使っていたはず…
何故か階段途中、ハイヒールの爪先が引っかかた。
そう、私は運が悪い。
いえ、ビルド侯爵家は運が悪いのだ。
転びそうになった。
慌てて手すりを掴んだ。
すっぽ抜けた…
そして、ハイヒールが宙を舞った。
ふわり?そんな可愛いわけはない。
靴が重力に逆らうはずがなく直線に、下にいた男性の頭に直撃した。
“ ガンッ ”
どう当たればそんな音が鳴る?
私は本当に運が悪い…
(運のせいにして不注意棚上げ中)
と聞こえた。
化粧室に向かおうと伸ばした足は、突然足止めをくらった。その誰かが言った一言が、一瞬で不穏な空気になり、とても会場から抜け出せる雰囲気ではなくなった。
生徒達の声は広がり、ドーナツ状に観客席が出来始めた…
ノーマン王国の貴族達(15才から三年間)通うノーマン王立学園。
その年の学年ごとに制服のネクタイが違う。一年生オレンジ、二年生紺、三年生グレイが目印。
本日は、生徒会主催のクリスマスパーティーが行われている。学園の広いダンス会場を使って。
通常なら、和気藹々、学年関係なく無礼講な感じで、
「イエーイ」
なんて軽口言ってグラスで乾杯したり、仲の良いグループで話したり、婚約者や恋人とダンスを踊ったり…
そう楽しい時間であるはず。
「何、何、なんか始まるね~」
と近づいてきた私の隣で、野次馬根性の目をギラギラさせているのは、友人のミンネ子爵令嬢。
「静かに、大きな声出したら周りから見られるよ!」
と腕を払い注意する。
今、上座の三段程高い踊り場で舞台の中央に赤いネクタイの王太子殿下、左に青いネクタイの公爵令息、その隣に緑のネクタイの侯爵令息、王太子殿下の右に黄色のネクタイの王弟殿下、その隣に黒いネクタイの騎士団長息子の伯爵令息、そして王太子殿下の左腕の中に収まっているピンクのスカーフをしている男爵令嬢…
『何故生徒会メンバーはみんな色違いのネクタイをしているのだろう?』
ミンネの好奇心という疼きは身体全体から表しているようで少し揺れながら、餌を待たされている犬のようだ。
「フゥー、ミンネったらなんか下品よ」
と注意すると
「ティア、あなたこれから始まる事に興味がないの?」
と聞かれた。
「興味がないというか、関係ないというか…高位貴族の痴情のもつれなんて噂話、陰口あたりで面白おかしくその場限りのネタみたいなもので」
と言えば、
「あら、ティアだって侯爵令嬢じゃない、関係ないって事はないでしょう!」
と言われた。
「我が家は貧乏侯爵家よ、あの方達とは家格が違うわ。徴税も滞納して年始めに降格決定なのよ、伯爵…もしくは子爵まで、領地だってどれだけ没収されるかわからない身の上よ。人様のあれこれにつっこんでいる場合じゃなく…震え上がっているわ」
と少しだけ身振いさせて言えば、
「世知辛いわね」
と目線も合わせずに言われた。
言ってて思う。ちゃんと税は納めなきゃねって。
別に我が家は悪い事なんて何一つしていないのだけど、とにかく運が悪い。巡り合わせが悪い…今回もお金を隠したり悪政をしたり怠けていたわけではない。麦の納めの日に荷台が壊れ、道にばら撒くという惨事で納められなかっただけだ…
回想をしていれば、王太子殿下(赤)が話し始めた。
「すまない、この楽しいパーティーに水を差すような振る舞いをしてしまうのを心苦しく思うが、私達も我慢の限界だ。生徒会の仲間、大切なセレナに命の危険があったことで、この場で糾弾する!今までも含め今回の件、どうしても許せない。わかるな、カミューラ公爵令嬢!」
「始まったわ」
とミンネの野次馬根性ががっつりこの話に喰らい付いた。
「お言葉ですが、クラード様、私はその男爵令嬢に注意しただけですのよ、それに貴方様だけでなく婚約者のいる男性に接触、いえ、近すぎると貴族令嬢の心得を教えただけですのよ」
と一歩前に出た公爵令嬢ことカミューラ様は言った。
今、後ろにいる私からは表情は見えないけど、かなり言葉に憎しみを感じる…
確かに何度もあのセレナ様(ピンク)を教室内、廊下、外で怒鳴り注意していたのはみんな知っている…
ただ命の危機とは?
そして公爵令息(青)が
「イリーナ嬢、君もだ。私は知っている。セレナの持ち物を隠したのは君だろう?今日も我々とダンスが出来ないようにハイヒールを隠したな!髪飾りや私物をゴミ箱に捨てていたり燃やしたりしていたな。侯爵令嬢として恥ずべき行為!」
イリーナ様が一歩前に出た。黙らず答える姿勢は流石侯爵令嬢。
背中が震えている。
「私は知りません」
「証言は取れているんだ、君の取り巻きから」
ザワザワし始め、それらしき人物達の場所も浮島のように隔離され注目を浴びている。
…うわぁ、同情するわ。
ここから色々省略。
すぐに(黒)が、一歩前に出て
「恥知らずが!ルルチーナ嬢!セレナの教科書やノートを何かで引きちぎったりナイフで何回も傷をつけたね、知らないと思ったか?」
キツく冷たい罵声が飛んだ。
ルルチーナ様のお顔が真っ青になって足がもつれたのかその場で座り込んでしまった。
(緑)が、
「ここにいるみんなも知っているんだろう?セレナがいじめられていたのをさ。それなのに誰も庇わない。酷いね君達。人道に反しているよ。その中でも我が婚約者のキャサリン、君ってば噂を煽動して色んなところに種をまいてセレナを悪女だと罵って面白おかしく作り話をしていたよね。驚くのは学園内にとどまらず外、商会を通して貴婦人に噂を流していたのを知られてないと思ったのかい、反論は?」
と嘲笑うかのように緑のネクタイが揺れた。
キャサリン様が両手を握り締め、前を向き、反論した。
「そもそもおかしいでしょうが、ログワット様あなたの婚約者は私ですのに何故その男爵令嬢をエスコートしなきゃいけないのですか?毎回何かにつけて私と会うのを避けておりましたよね?そしてその忌々しい男爵令嬢とお茶をしたり街に出かけたり、その言動がおかしいと思いませんの?あなたお一人ではなく婚約者のいる男性を侍らせているなんてイヤラシイと思いませんの?ログワット様」
(黄色)が
「あのさ、キャサリン嬢そういう所がログワットが君に嫌気が差したんだと思うんだよねぇ。可愛い女の子はそんな策略じみた煽りなんてしないで、素直に甘えたらいいのに~僕は来るもの拒まずだよ、一人でも三人でも受け付けているよ」
とウインクした。
すると問題の男爵令嬢(ピンク)が涙目で訴える。
「申し訳ありません、皆様。私、勿論ここにいる方々に婚約者がいらっしゃる事は存じております。だけど、クラード殿下やシルベルト様達とお友達になりたかっただけです。普通にお話してお茶を飲んだりお花を見たり、街歩きをしたり…卑しい事は誓ってしておりません。それなのにみなさんからの執拗な虐め…私悲しくて恐ろしいです」
と涙ながらに訴えている。
そして(赤)が更に腕に力を入れたのか(ピンク)を自分の方に寄せた。
………
変ですよね、はっきり言ってあの子の言っていることも異常な事に感じるのだけど?
という目で隣のミンネを見れば目を爛々に輝かせてそのよくわからない言い分に夢中になっていた。
「「「「こんな愛らしいセレナを害するお前達とは婚約破棄する。証拠は全て揃っているからな」」」」
赤、青、黒、緑、声を揃えて言った。
それを受けて誰一人答えない。
…
会場が静かになった。
唯一この中で婚約者がいなかった(黄色)が、身振り手振りで、
「ふぅーーー、みんなごめんね。生徒会としては何かまた別に埋め合わせをするからさ。今日はもうパーティーって感じじゃないよね。残念だけどお開きにしよう」
と言った。
この重苦しい雰囲気から解放してくれるのはありがたいけど、これってどうなるのかしら?
「やだ~、面白い。先程の話本当なのかな、これからどうなるのかしら?婚約破棄が成立するの?」
とミンネがこっそりと私に耳打ちした。何がそんなに面白いのよ。私達はあの方達の痴情の絡れを見ただけ…
扉が開いて一斉に人が出ていく。
ミンネに
「ごめん、人が多いから2階の化粧室に寄ってから帰るわ」
と告げると
「あぁ~、ハイヒールのサイズが合わなかったものね。うわぁ、血が出ているじゃない。タイツからもみえる~頑張ったわね。立っているだけで痛かったでしょう?立食だったから早く解放されて良かったね。でもティアの靴って何処に消えたのかしら?セレナ様ではあるまいし隠されたってわけではないでしょう」
とミンネに言われる。
学園に着いてクラス用の下駄箱に向かえば、このパーティー用に準備していたハイヒールが私も無かったのだ。貧乏なので替えなんて用意しておらず、急遽先生に借りに行った。サイズの合わないハイヒールに踵はずりずりに削られ歩くだけでも痛かった。
婚約者がいる手前、一曲は必ず踊らなきゃいけないというミッションに更に踵は悲惨な状態になった。
あの生徒会メンバーのショーが始まる前に、化粧室に行きたかったと思いながらも、みんなと向かう方向を変えて階段を上がり化粧室で、黒タイツを脱ぎ、皮がズリっと剥けて血が出ている場所に濡らしたハンカチを当てた。
「ハァ、気持ちいい、でもこれは駄目ね。新しい物を買って返さなきゃ」
と血のついたハイヒールを見て深い溜息をついた。
「お金無いのに…ついてないわ。誰よ私の靴の盗人は」
と怒りと悲しみでハイヒールの踵を押し潰しつま先のみ履くサンダル状態で移動する。もう人の声もしない、生足だけど…この脱いだタイツを履くのも面倒だし、出血している踵は痛いしと恥ずかしいけど見られなければ、あのショーを見て、余計に私なんて関係ない、誰も見てない、そんな思いがあった。
急いで帰れば良い。
階段を降りるそれだけ…
痛みで前方不注意だったのは認める。
でも足元には気を使っていたはず…
何故か階段途中、ハイヒールの爪先が引っかかた。
そう、私は運が悪い。
いえ、ビルド侯爵家は運が悪いのだ。
転びそうになった。
慌てて手すりを掴んだ。
すっぽ抜けた…
そして、ハイヒールが宙を舞った。
ふわり?そんな可愛いわけはない。
靴が重力に逆らうはずがなく直線に、下にいた男性の頭に直撃した。
“ ガンッ ”
どう当たればそんな音が鳴る?
私は本当に運が悪い…
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