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102 王女達

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マリングレー王国、王都

今までカーテンコールに応えたことはなかったが、最後演者全員で舞台に上がり、私が歌った歌をみんなで歌った。
この歌は、とても有名な曲で国によって、歌詞に違いはあるけどマリングレー王国でも馴染みがあり、初日から合わせて歌っていたので、最後、この会場の観客全員と一緒に歌えた気分になれた。

…歌が風に乗り、目に見えない何かを引き連れて空に昇っていくような、不思議光景を目の当たりにした。
ラナに聞くと、人々の熱気じゃないかと…


鳴り止まない歓声を無視して、まさかその場で動きやすい服装に隠者のマント、スーパー眼鏡、髪色を変え、馬車に乗って出発した。

「余韻に浸る暇がない…」

と言えば、お義母様から、

「前建国祭の夜会に出席するのよ!」

「えっ?夜会って、あの。リリエットが出席するという夜会ですか?」

「王族の皆様からの話では、ティア王女様からの呪いから解放されたのでしょう?それなら、ミランダ、あなたは文句をぶつけて良いはずよ!それに、対面で会えるとしたら、この機会しかないと思うの。ここまで他国で仕出かしてお咎め無しはないわ…やっぱりまだティア王女様に会うのは怖いかしら?」


「…怖いと感じたのは、クリネット国のみんなに忌み子としての私を知られる事…お義兄様やイズリー家のみなさんは、そんな迷信を信じないで接してくれたけど、万が一嫌われたらという私の弱い心でした。アンドル王子様は、ご存じの上で友達として、変わらずに声をかけてくれました、今回のこの国での公演で、誰も私の事を忌み子なんて呼ぶ人はいなかった。私は、私のまま受け入れられた…だからリリエット達に、私、マリングレー王国出身だって、伝えようと思いました、それなのに、ティア王女様が今もクリネット国を荒そうとしているなら、苦言と注意をします」

と言えば、

「それでこそ、海のプリンセスよ!ガツンと言いなさい」

と笑ってる。

急ぐ馬車は、私達にとって身体的にとても辛い旅路になったけど、思い出話で盛り上がったり、精神的に励まし合いながら、なんとか夜会の開始時刻前にイズリー家に着く事が出来た。



クリネット王国 王宮客間、ティアside

夜が明けていく…
ダイアナを呼び出す方法が思いつかない。ここで接触を持つのは、リウム兄様に言われた前世持ちの転生者、私達は同郷と認めた事になる。

余計な事を…
窓に映るのは、醜い中年女。水色の髪はそのまま…髪を顔の前持ってくる。

「酷い有様。あぁ、目を隠せばまだなんとか…フゥ」

忌み子の夢を見て、はっきり自覚した。この国いる、近づいている。水色の髪、青紫の瞳、美しい姫のまま成長していた。
素顔を出していれば、国一番の美しさは間違いないのに、噂にもなっていない…

「変装…」

それしか有り得ない。
ぐちゃぐちゃにした髪を更に掻き乱す。
私がこの国に溶け込むとしたら、茶髪にして、目立たないようにする。例えば顔を隠す為に、前髪を伸ばしたり、眼鏡、化粧、

前回の夜会で…当てはまる令嬢がいた、廊下で質問した令嬢。あの時、声が違うと思ったけど、喉を押さえていたような…
あの分厚い眼鏡からは、瞳の色が見えなかった。

隠すなら…色。


前回婚約者決めの夜会で伯爵家以上だった。


「お食事をお持ちしました」

「ねぇ、あなた私の侍女じゃないわよね?明日は夜会よ。私の侍女達を呼んで欲しいわ。湯浴みとマッサージを明日の為に念入りにしたいの。髪も切りたいし、すぐ手配して」

と言えば、目の前の侍女は驚いていた。

「ご参加するのですか?」

「もちろんよ、この為に私は来たのよ!さっさと兄様でも確認してらっしゃいな。私は動かないわ、護衛騎士を置いて行けばいい」

と言えば、

「まずは、お食事の用意を致します」

とテーブルに並べて行く。最後にコップに水を入れて。

用意されてもあまりお腹が空いてなかった。ディライドのお茶の日から、食事の記憶がないのに。兄様の側近から水を飲んだな。
不思議だ。
パンを千切りスープに付けて食べた。噛むという行為が、煩わしくなった。

「いいわ、食べなくても」

扉を叩かれた。
兄様の側近が入ってきた。

「お水ぐらいお飲みになられた方が良いのではありませんか?」

急に王女を心配している風を装い始めても、あんたも私にとって要らない人。

「今はいいわ、早く連れて来て、身体がベタベタして気持ち悪いから。何?なんて顔で見ているのよ?」

私の言動を見逃すまいとしているようだけど、髪を振り乱している女は大層怖いようで近寄れないみたいだ。

「…すぐに用意させます」

と言って、連れて来てくれた。
小さな悲鳴や息を飲むように私の前に現れた侍女達。

「ねぇ、あなた達も前回の夜会で私の侍女としてこの国について来たわよね。私が侍女服を着た時に、地味な眼鏡の令嬢に話しかけたじゃない?あれ、誰だったか覚えている?夜会に参加していたわよね…」

「…夜会では壁に控えておりましたが、そのような令嬢は覚えがありません」

と侍女の一人か言った。

「そう、では伯爵令嬢以上の地味な眼鏡、多分茶髪にしているかしら…至急聞き取り調査して」

「申し訳ございません、ティア王女様。リウム王子様から、個人的な頼みは聞いてはならないと約束してまして」

「そうなの?でもあなた達は、私に誓いを立てた侍女よね。流行病の時、私の教会から出した対処法で、家族や領民が救われたって喜んでいたわよね?」

と言えば無言になる。

「そちらのあなた達も私の事を、聖女様と讃えていたはずだけど…人って変わるのね…残念だわ。あなた達に不幸が訪れるかもしれないわね。ほら、見てよ、私の顔…」

と顔を隠す為に乱れた髪を掻き上げる。

「「「ヒィ」」」

叫び声が上がった。気分が悪い反応だが、今は、それさえもどうでもいい。

「冷やしたタオルをご用意します…」

一人だけは、役に立ちそうか…

「まず、湯浴み、それから目を隠すように髪を切って!」

顔色の悪いまま侍女達は蜂の巣をついたようにいなくなる。

「ティア王女様…」

「あら、一人だけ勇者がいるわ」

と言えば、

「失礼ながら、お茶会の倒れられた時、目や額をぶつけられて、まだ腫れが引いておりませんので、夜会は欠席された方が良ろしいのではないですか?」

腫れている?違うわよ、これが元々の私の顔よ。

「本当に失礼ね、私は参加するの、目の下まで前髪を垂らすから、鋏を用意しなさい。私は王女よ、あなた逆らうの?」

「…いいえ」



湯浴みを終えるとサッパリした。ぼんやりしていた頭の中がクリアになっていくみたいだった。
命じるまま髪を切ってもらうと、

「ティア王女様、お水をお持ちしました」

そう言えば、水しか飲んでない気がする…

「果実水がいいわ、用意して」

と言えば、私が知らない侍女は困った顔を一瞬した。
そう言えば、食事や水を口にしなくなって、五感がはっきりしてきたような、
…水の中に何か入れられていた?

私の荷物に入っていた…麻薬…

「ねぇ、私の荷物ってどこにあるの、この部屋、最初に案内された部屋じゃないわよね。…元の部屋に帰りましょう」

と扉から出れば、リウム兄様達が現れた。

「ティア、元気になって良かったよ」

「何、調子の良いことを言うのよ、私の荷物…漁りましたか?盗人のように」

「何言っているのか、わからないな。それよりも明日の夜会に参加するって聞いたよ。ずっと寝たきりになっていたのに社交は無理だろう?今回は、私の方で辞退しておくよ」

「あまり、勝手をなさらないで欲しいわ」

と言えば、突然、

「あら、誰かと思えばマリングレー王国の聖女様じゃありませんか?随分と酷い髪形…私あなたとお話ししたかったのよ。もうすぐ、私のマリングレー王国への婚姻でしょう?義理とは言え家族になるのだから、私の兄様とも挨拶して欲しいのよ!」

あ、マユリカ王女。
ふふ、なんて都合の良い…

「お久しぶりね、マユリカ王女様…
そうね、マリングレー王国の紹介をさせて、家族だもの!ねぇ、兄様」

「…夜会は遠慮した方が良い…」

と認めないが、

「ええ~リウム様~、そんな冷たい事仰っらないで欲しいわ~」

と兄様の腕に絡みついてきた。
…リウムは積極的な女性が大の苦手だ。

この馬鹿がせっかくチャンスを作ってくれたのだから、

「次に会う時は、我々は婚姻の為に国に来る時ですよ。文化や服、情報交換は王女同士必要です」

と言えば、馬鹿も更にネチネチとまとわりついて、用事があるとその場を逃げだし、馬鹿が追いかけている。

何とか夜会には参加できそうだ。




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