今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
上 下
97 / 120

97 ティア・マリングレー 3

しおりを挟む
ティアside

クリネット国に入国して三日目の朝、イズリー領の領主館から下位貴族らしい飾りもない素っ気ない馬車を借り出発した。

「本当にこれはどういう事なの。身体が痛いじゃない!クッションを敷き詰めて乗る乗り心地の悪さ、神官達に無駄遣いしないよう伝えなさい」

と私の侍女に命じた。連れて来た使用人の半数以上が、馬車の数が足りない為残り、護衛騎士だけは全員連れていく。

「なんてタイミングが悪かったのかしら」

と言えば、斜め前に座ったリウム兄様の側近が、

「僭越ながらティア王女様、イズリー伯爵に連絡はしたのですか?夜会の開催日より三週間も早く到着なされてますし、神官達が勝手な行動をしているのも、イズリー伯爵は気分が悪いのではないですか?」

と言う。

「あなた、連絡してないの?」

端に座った侍女に聞く。青い顔してまるで私がいじめているみたいじゃない?

ハァー、使えないわ、どいつもこいつも言われた事、命令された事しか行動しない。

「ねぇ、もしかして私イズリー伯爵に意地悪されていたってことじゃないかしら?馬車を隠されたとか」

というと兄様の側近は、私を信じられない者のように見た。
こいつも使えない…
私は王女よ、神官に貸し出したなら、追いかけて取り戻してくるべきでしょう。

「ハァー、才女と崇められている王女様の発言とは思えません。そもそも王女様が神官達に金を支給して情報収集を命じた訳ですよね、後火薬に薬、惚れ薬でしたっけ…」

こいつ、どこまで知っている?

「なんて事言うのよ、惚れ薬なんて作ってないわ。貧民の治療薬よ。あなた先程から失礼極まりないわ。お兄様の側近かもしれないけど、何故私と一緒に来たのよ!気分が悪いわ、この馬車から降りなさい」

確かに、国王やリウム兄様を脅す為に言った言葉を取られた。確か侯爵家…の次男だったわね。本当に何しに来たのかしら?

あぁ、イライラする。多くの者達の行動が私の神経を逆撫でる。

途中で馬車は変える事は出来たが、王宮に到着するまで、8日もかかった。

「本当に最悪よ、私は急いでいるって伝えたはずなのに。いつのまにか後から来た侍女達に追いつかれるなんて…絶対に仕組んだ者がいるでしょう、この中に!」

侍女に文句を言っていると、扉が叩かれた。

「…ティア王女様、アンドル第一王子様がお見えになりましたが、いかが致しましょう…」

なんでこのタイミングなのよ!

普通ホストなら出迎えるのが常識なのに。
客室に通されてから挨拶に来るなんて、非識だわ。

「着替え途中だから、また後ほどとお伝えして」

少し時間を割いてやるつもりで言った。
私は一時間後には、挨拶出来るだろうと考えていたのに、結局会えたのは、翌日の夕方…

どうなっているのよ!マリングレー王国の王女を軽視しているとしか思えないわ。

「お久しぶりです、ティア王女様。相変わらず真っ白な肌が、光り輝いておりますね。一度扉の前まで来たのですが、随分とお元気なご様子で、私、友好国として安心しました」

と作り物の笑顔でこちらを見ながら、私を貶める。

「お久しぶりです、アンドル王子様。酷い言われようで悲しくなりますわ。私、昨日到着しましたのに…出迎えてもくれないなんて、友好国としてどうなんでしょうか?これが、クリネット国の王族の品位で常識なのですか?」

「本当に申し訳なく思っておりますよ、ティア王女様。ただ時期が…昨日今日と進級試験でしたので、どうしても学校が終わり次第しか挨拶出来なくて、試験勉強もありまして。ティア王女様は学校には通われていませんから、ご存知なかったかもしれませんが…」

この人形みたいな王子、私に明らかに嫌味をぶつけてきたわ、前回はこんな態度じゃなかったのに!
一体何でこんな強気な言動をするのよ…

あ、れ、か。婚約者になりたいと嘘の恋文で断った王女がまた来たって思われているって事!あぁ面倒だなというお子様王子にありそうな傲慢な態度。

なんて屈辱的なの、こんな顔だけのお子様王子に。
…でも、ここは我慢よ、忌み子を見つけ出さなくては!全てあいつのせいなんだから。

「私、その学校に行きたいのです。見学させてくれませんか、アンドル王子様」

とお願いする。頭だけは下げない、嫌味を言われ、傲慢な態度に私は許せなかった。これ以上は…

「ハァー、ティア王女様、友好国の王族のお願いを聞いてあげたいのですが、最近不審者が校門を彷徨き、女生徒に突然質問する神官もどきが数人つかまりまして、現在事情聴取中なのですが、全員マリングレー王国の者なんですよね。学校側は、不審者、外部を受け入れない体制で強化してます。既にマリングレー王国には警告文を送り謝罪を受けてますが、リウム王子より親書で教会の神官は、ティア王女様の指示と聞きましたので、数日間、事情をお聞かせ下さい」

無表情で淡々と話す。それが無性に腹立たしい。

「ハァ!?
神官が捕まったですって?知らないわ、私は、濡れ衣よ、…忌み子の仕業ね…やっぱり学校内に忌み子はいるのよ、アンドル王子様、あなた隠しているのでは?私が調査して、聖女として祈祷します」

「忌み子…何を言っているんですか?…それより神官達一人一人と向き合い、騎士団の取り調べに参加して下さい。マリングレー王国の国王陛下より許可は受けてます。王族の一人として義務を果たして下さい」

何なの、この上から目線!

「何ですって、私は第一王女で聖女なのよ!!」

「ティア王女様、落ち着いて下さい。そのような表情をなさっては王女として、聖女としてあるまじき顔です。国王陛下の許可がある以上、ここはクリネット国です、承諾して下さい」

兄様の側近が、私に耳打ちをする。

こんな屈辱ないわ。
何故思い通りにならないの…

翌日から渋々兄様の側近に連れられ、騎士団の捕縛牢に入った。

「王女殿下、マリングレー王国の神官かどうか一人一人ご確認下さい」

体躯の大きな騎士が偉そうに言う。結果服装は全て教会の神官だった。
途中神官が何人も馴れ馴れしく私の名前を嬉しそうに呼ぶ。

私に次から次と迷惑をかけておきながら、「助けろ」ですって、ふざけている。

「騎士様、確かに我が国の者みたいですね、ただ私、聖女ですが、教会長のみとしか話しませんので、神官は存じ上げないのです。こちらの国に失礼をして迷惑をかけたなら、クリネット国の法に基づき相応の処罰をして下さい」

あぁ、牢が騒がしい。
使えない奴らは、文句だけは達者なんだから。忌み子の情報は全然収集出来ないくせに。

「ティア王女様、現在マリングレー王国のこの者達の責任者として、事情聴取に参加する事が決定されております」

…兄様の側近がまた余計なことを言う。

「私は時間がないと言ったでしょう。あなたがやりなさい。この国は忌み子に乗っ取られているわ。私が見つけ出し排除しなければ、とんでもないことが起きるわよ」

と周りにいる者達を脅すが、目の前の騎士は表情一つ変えずに、牢から一人出し、

「では、王女殿下、取調べ室に向かいましょう」

と淡々と言う。

「何なの、よ、もうーー」

王女らしくない言葉が漏れる。怪訝な表情をした兄様の側近まで無視をされた。



既に入国して二週間経った。
全く外に出ることも出来ない…騎士団の事情聴取がしつこい。
みんな同じ事しか言わないのに、私の命令?だからあんたなんて知らないのよ、雑魚が…

こんな事になるなら、イズリー領の旅路に情報収集すれば良かった。
最初の神官が、ダイアナに手紙を届けに行った後、商店でイズリー家の令嬢に暴行したと商人から聞いた。
何があったか聞きたいのに…詳細が全く伝わってこない。
イズリー家の令嬢って、印象がない…

客室の扉がノックされた。
王宮の侍女が手紙を持ってきた。

「…お茶のお誘いだわ。
ディライド様、あなたにも文句を言いたかったのよね」

その紙をすぐにゴミ箱に入れた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

さわじり
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

処理中です...