今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

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72 報告します

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「ラナ、あなたは、どう思いましたか?」

帰りの馬車の中、王宮の図書館は通り過ぎて、王族の居住区、プライベートルームへの潜入は刺激が強すぎました。
心臓の負担がかなり大きかったと思います。私の身体が心配です。

「お嬢様、私は、無理です。飲み込めません。今すぐ吐き出したいくらい、秘密を抱えた気がします。まさか王族の皆様のお住いに踏み入れたなんて」

ラナも相当心臓に負担が掛かったのでしょう。

「…私だって同様です。しかし、お義父様に間者の報告という点であのベテランの侍女の方は…」

「大変親切で、ロイヤルな作法もご教授して下さいました。あの場に怪しい人物はいません。むしろ、私こそ場違い」

ラナが言い切った。

そうですね、確かにしっかり身元保証のありそうな人でしたもの。
ここは、黙って目を閉じましょう。間者なんて最初から勘違い…ハァー。

短い時間かもしれませんが、逃避しましょう。
何故王族のプライベートルームに私達は、いたのでしょう?ただの友達を超えて、親しい間柄ですよ、私、信頼されているの?



屋敷に帰ってきて、お義父様の執務室へ急ぐ。

「失礼します、ミランダです」

「帰ってきたね。怒っている?」

凄く心配そうに聞く姿に、この人が行ってくれるかい?的な言い方で、私を送り出したのに、日々の仕事に情緒不安定なのではと心配になります。

「怒るというか、まさか、人手が足りないとか、本の虫干しとか、私を呼び寄せるための話だったりするのですか?
王子様に友達が欲しいと頼まれたのなら、素直にそう言って欲しかったです。
無駄に緊張しました。図書館に間者がいて、私達が探ってくるという密命なのかと変なこと考えましたから」

お義父様は驚いていた。

「間者を探そうとしたのか…随分と発想が物騒だ。そんな危険な事を頼むわけないだろう…それにしても友達か、友達になったのかい?」

王子が、友達を欲しがっているから、お義父様も誰かから頼まれたのよね?

「はい。何だか最近アンドル王子様は、グレゴリー様達を、側近という仕事仲間と、昔から知る友達関係の狭間の感情や心の問題に揺れているみたいで…
身分という隔たりも大きな壁になっているようで、友達作りが上手く出来ないようです。きっと、お互いきちんと話せば、わかりあえると思います。
確かに学校の中で溜息を吐いていた方が、まさか王子様とは思いもしませんでしたが…悩みは尽きないのでしょう。
今後は是非、お義兄様との間を取り持てるように頑張ります」

「ディライド?」

「きっと王子様は、お義兄様と友達として仲良くしたいのだと思います。以前も食堂で、お義兄様がいたから同じテーブルで食事をしたかったと記憶していますから」

「プッハハハハハハッ、王子は口下手みたいだからな。
やっぱり若いなぁ!そうだよね?みんな友達って素晴らしいよね。楽しい学校生活だよ。心配していたのが杞憂に終わって良かったよ。一回の機会で決められるような男だったら、今までも何回も機会が、あったわけだからね。友達から始めましょうって言われた?これは、またあいつと酒が進むな」

「もう、お義父様、何勝手に盛り上がっているのですか?若いとか関係ありませんよ。友達になりましょうと言うのは、本当に勇気がいることなんです。私も友達作りには苦労をしましたから、わかります。笑いごとではありません。それに私から言いましたから!友達になりましょうとね」

少し胸を張る。
ここは友達作りの先輩としてね、手を差し伸べました。
親同士だったのね。
親を通して友達作りは、この年を考えると考えものだけど、王子という立場を当てはめると仕方ないかと同情してしまう部分は、私にはある。
私も人から隔離されていたから、輪の中に入る勇気が中々出なかったもの。
気持ちは分かるわ。

「いや、仲良くなれそうかい?」

お義父様に聞かれた。
もちろん、友達になって、初日ですからわからない事はいっぱいありますが…

「はい、楽しい方ですよ。話は面白いし。人間味のある人だなと思います。初めて会った時は、あまりに絵本の中にいた王子様と一緒で、表面的に絵の人という感覚でしたから。少し頬を上げた感じのずっと同じ表情でしたよ。話をしてみたら随分と印象が変わりました」

「確かに表情、というか喜怒哀楽も見せなかったな。隙を見せなくなったのはいつからか?職業王子なんて言っていた頃からかな」

お義父様が考え始めた。

「そんなこと仰っていたのですか?国のこと領地のこと経済のこと、確かに幅広く知識があり、それを活かそうと取り組んでいる話でしたね。職業と言いますが、生き生きして話をしてましたよ。この国が好きなのでしょうね」

「…そうであるなら、臣下の一人として大変誇りに思うよ。嬉しい報告だな」

「はい、私も話を聞いていて温かく嬉しい気持ちになりました。一層、学校で、勉学に励みます。それに趣味が温室で植物を育てることらしく、月下美人なんてもう友達のように、ふふふっ、紹介してくれました」

「アンドル王子とは、良い時間を過ごしてきたんだね。面白かったなら、何よりだ。楽しみなさい、学校を、毎日を。それがみんなの願いなんだから」

あぁ、私を迎え入れてくれた優しい顔だわ。

「ありがとうございます」



その日の夜、お義兄様は、夕食に現れなかった。
ラナにどこかに行っているのか確認したら、
「お出かけにはなっているそうですが、どこに行くかは、旦那様のみにしか告げていないそうです」

「では、お義母様も心配されているでしょうね」

「それが、そうでもないようで、男の子は戦って成長するのよ、と言われたそうなんです」

「戦うなんて物騒ね。イズリー家は情報を武器にしているのに」

「…お嬢様、差し出がましいのですが、王子様との友人関係、些かお嬢様と王子様の熱量に差があったような。不敬な発言すみません」

確かに帰りもアンドル王子様は、とても嬉しそうに、

「次は、商隊を呼ぶから一緒に話を聞こう。旅の話はワクワクするな、お茶菓子も沢山用意をしよう」

と言って念入りに私の予定を聞いて計画していたわ。

「ラナ、王子様にとって友達という存在が、久しぶりで嬉しいのは仕方がないわ。私だってリリエットにお土産を買う時もお揃いの髪留めを買う時もワクワクして嬉しかったもの。気持ちはわかるわ」

何故か先輩として自慢になる話だわ。私は、王子様の一歩先をいっているわ。

「…あれはちょっと違う気が…」

ゴニョと言ったラナの声は小さくてよく聞き取れなかった。

まぁ、温かい目で見ましょうよ。
私も旅の話を聞いてみたいもの!
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