今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

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70 溜息の船乗りさんに会いました

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「ミランダ嬢?」

心配そうな声に気づいて、顔を見た。
何故この人は、私を真っ直ぐに見てくれるのかな?
イズリー家達以外は、一度眼鏡辺りを不躾な表情で見ているのに…

「失礼しました。私、たまに意識が別に飛んでしまって、彼方と呼んでいるんですけど…
話を戻しますけど、王子様は、楽しく過ごしていると思います。偉そうに言ってしまってごめんなさい」

頭を下げて謝ると、いいや、と言いながら、凄く優しい顔された。
微笑みなんだけど、何だろう。



ムズムズする。
今すぐこの場を走って逃げ出したいような。二人というのが気まずいのよ。
真っ直ぐに王子様を見れない。
しかし、視線を意識してしまって、どんどん頬や耳が、勝手に熱くなる。

これは、困った。この沈黙も困った。

「…みんな私みたいには、なりたくないと思っていたから、意外な言葉だな…
…ありがとう。考え方や見方で心の持ちようが変わるなんて、自分が馬鹿にしていたことを、今日、本当だと思うなんてな。随分私は、揺れている。
違う、影響を受け始めている?困ったな。こんなに君の言葉が届くなんて…
ハァーーー、やっぱり…」

突然、何を言い出されているかわからなかった。御礼を言われて、私は褒められているのかしら?
影響って何かしら?

視線を感じる。
たぶん私を呼んでいる。名前を出さないのに、息が…私を呼んでいるみたいにドキドキする。
…空気が、風が、ざわざわと身体に、何かを知らせてくるし。
また部屋の空気が変わった。
顔を上げれば、優しい顔からまた変わっていた。真剣な表情で、何かを決意したような…
足が動かないし、目は、王子様に釘付けになった。心臓がうるさい。
何故こんなに叩くの?

それなのに、

怖くない…彼は笑ってもいないのに。行く手を阻むようなのに、あの神官の時とは違う。

大丈夫、どこからか来るそんな勝手な自信…

「君に伝えたいことがあったんだ。夏休み明けから、たまに中庭で話を聞いてもらっていたんだ、君に…」


中庭で、話?突然何かしら?
心臓が勝手に叩いて叩いて、私は、唾を飲み込んだ。
ん?知らないな。
私、王子様の話は聞いたことないわよ。

「あの、たぶん私じゃないです」

「これ…」

机の上に差し出されたのは、イズリー領で購入したお土産とどんぐりと…
バザー会場でリリエット達が探していた私のオリジナル刺繍ハンカチ

ドッドッドッ

…心臓よ、負担をかけてごめん。

まさかのお土産、もちろん、アンドル王子宛のものではない。
中庭でお土産の量を減らして、友達の数を誤魔化すために置いた品達。



「まさか溜息の船乗り!?」

少し、声が大きくなった。

何故という言葉を失った。
あの時、木の後ろで隠れて見えなかった。相手を知ろうとも思わなかった。
私は、幸せで、溜息を吐いていて可哀想とか同情で、声をかけたし、話なんて大して聞いてない。

「アンドル王子様、ご安心してください。私、話の内容は覚えておりません。ただその溜息が気になったから、余計なお世話みたいな状況でして…」

ドキドキ。

「いや、責めてないよ。むしろ御礼を言いたくて…
違う、あ、木から勝手に飛び出して君の後ろ姿を見て、私だけ、正体を知って悪かった。どんぐりなんか足元に投げられて、気味悪かっただろう?突然菓子折り渡されて、王女に暴言や暴行、怖かっただろう、本当に申し訳ない。
君に沢山謝らなければいけない事が、あるのに勇気が出ないで、逃げてばかりいて…
…全部、私の責任だ。私の考えが甘いから君に迷惑をかけた…」

ドッドッドッドッ


何故?
何故?
全く関係がない
…あー!
お義兄様をご自分の側近にしたいというあの話ね!
応接室で、確かに頼まれたわ。前に!
あのお願いが実行されていないから…私にアピールをしたということね。
全然王宮に行かないものね、お義兄様。

私からお義兄様に側近になった方がいいですよ、とは言ってない。

「アンドル王子様、そんな困った顔はしないでください。大丈夫です。お義兄様には、再度、側近の話をお願いをします?本当に誰にも話しておりません。私も私の話をしましたし…」

あれ?
あの時、私、目の前の人のことを話したのではなかったかしら…

…まずいわ。物凄い恥ずかしい…
知らない人に話してスッキリしたわ~なんて言っていたけど、まさか本人に言っていたなんて。
どんな恥晒し!

あぁ、鼻水事件、再びじゃない?いや、あっちの方が酷い、まだ生きれるからーーー不敬罪がチラッと見えた。

ハァーーー

「ごめん、溜息を吐かせてしまって」

「えっ、違いますよ。これはアンドル王子様のことではなくて、その…私の…私が恥ずかしいなと。あの時、本人だと知らずに本人の話をしたわけですから。穴があったら入りたいとは、この事でし、不敬な発言の多々が」

「いや、私は凄い嬉しかったんだ。心配してもらっていると、心が温かくなったんだよ」

そうなの?
どれだけみなさん王子様に、お声をかけていないのかしら?
かけてあげなさいよ、グレゴリー様もサイファ様も。
確か悩みも友人関係だったような…仕事仲間…

「私ごときの言葉で喜んでもらえるなんて光栄です。失礼ですが、普段、(グレゴリー様達と)きちんと話せてますか?」

「えっ?いや、全然(ミランダ嬢)話せない。接点もないし、そのやはり悪目立ちするから…」

あぁ、側近とお友達の線引きは難しいわね。
だから隠れてイジイジしていたのね。本当はお友達の輪に入りたいのに…新しい友達を作るとかも難しいとかかしら。

確かに王子が参加したら、悪目立ちするわ。食堂の件でわかる。
そうか、幸せそうに、美味しそうにしていたあの時、全て物語っていたのね…
友達と話したいのね。

「確かに王子様は目立ちます、だけど、接点?を待っていたら、輪の中に入れません。私も経験があります。ある日突然、私の場合は、輪に入れました。あんなに友達作りに悩んでいたのに。奇跡みたいなこともありますが、待つのは、辛いですよね。やはり食堂は大勢の学生がいますから仲良くなるのは、難しいかもしれませんが、挨拶から輪に入るというのは、有りではないですか?後は、行事ですよ。あれはクラスの団結力が増します」

と力説すると、お腹を抱えて笑っている。
どうしたのかしら?

「また、違うこと思ってるな、ミランダ嬢…プッフフフ…イズリー伯爵も勘違いする子と言っていたな。
まずは、私と話して欲しいんだ、ミランダ嬢」

「は!?私ですか?」

話す、ってお友達?
王子とお友達?
色々、ぐるぐる回って、

「お嬢様!」

ラナがいて、私の身体を支えてくれた。いつからラナはいたんだろう?とか思って。

「干している間、お茶にしないか」

とやっぱりいい笑顔で誘われて…
手を差し出されて…
分からず、手を上に乗せた。
エスコートです。

ふわふわ、ふわふわ、ふわふわ…

「あら、私、椅子に座っているわ!?」
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