今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
上 下
69 / 120

69 王宮の図書館を手伝いました

しおりを挟む
王宮の図書館がすぐ着く訳ありませんでした。しっかり王宮入り口から入り、建物の外周を歩き、中々の徒歩時間です。

「今日からお世話になります、ミランダ・イズリーと申します。本の虫干しは、素人のやり方なので、王宮のやり方を教えて頂けると助かります。よろしくお願いします」

8人いる司書さんからの自己紹介がお互い終わると、この図書館の取りまとめをしている館長に、説明を受けた。

意外に若い…
つまり、ちょっと怪しい…そして他の司書さんからすぐに引き離された。

「ここにある児童書ですか、綺麗な保管状態ですね」

私が読んでいた本とは、大違いだわ。
全部新品に見えるし、読んだ本もある。なんだか楽しい。

「こちらの台車に本を載せ、扉向こうの廊下に運び、ガラス窓のサロンが見えます、あちらに机が並んでおりますので…作業になります」

「こちらは、一人の作業ですか?」

ラナと二人では…

「いえ、後から…一名手伝いに派遣されます。よろしくお願いします」

館長に頭を下げられてしまった。
確かに人手不足という程で雇われているのでしたね、私は。
この方は、一応道理は通っていると思います。頭の中で記憶する。

「お嬢様、あまり数を載せると、万が一倒して本に傷がつくと宜しくありません。これは、王宮の物ですから」

流石ラナ!

「確かに。では、少なめにしましょう」

サロンに運ぶ。綺麗に並んだ机とサロンの窓が開いて風通しが良かった。

「緩やかな風ね。気持ちがいいわ」

冬が近づいている。カラッとした風ね。

一冊づつ開く。これは読んだことがある本だわ。懐かしい。
本を開けるとムズムズして、読みたくなる。

「お嬢様、読むのではなくて、干すのです」

ラナに注意されてしまった。

「…わかっているわ」

少し膨れる、絵や字が見えてしまうのだもの。

「ミランダ嬢」

廊下から呼ばれた。そうか、ここは王宮だから、いる方だわ。相変わらず、絵本の1ページみたいな現れ方だわ。

「アンドル王子様、このような場所でお会いするとは思いませんでした。こんにちは」

「…働いてくれてありがとう。私も今から手伝うから…」

えっ?
王子自ら、本の虫干しをするの?
手伝いが来るって、王子なの。
そんなに人手不足なの、王宮って?

ラナを見る。知らなかったらしい。大層驚いている。

そして、館長が台車に大量の本を運んで来た。ラナが、館長に呼ばれた。
私を見たので、頷いた。

流石に王子が、他国の間者ではないだろうから!



「ミランダ嬢、すまないね。学校が休日だというのに、手伝ってもらって」

うわぁ、王子の笑顔は駄目よ。
絵本じゃないわ。もうすっかり人間!
緊張するわ、別世界から来た異国人?偶像人?憧れの人?身分の高い王族だから?
…視線は外す。

「いえ、大丈夫です」

顔は見れないわ。なんか変だわ。
部屋の空気?ちょっと張り詰めている?
王子様の声?少し震えている?

「先程、侍女と話していたようだけど、本で怪我をしたとか?」

「まさか、本の虫干しで怪我なんてしません。この本を昔読んで懐かしくなって、本を捲ったら、ラナに怒られてしまったのですよ。すみません、不真面目で」

「あぁ、ミランダ嬢もこの本を読んだんだな。懐かしいな、これを読んで、お菓子の家に憧れたな」

「わかります。私だったら、どこから食べるかとか想像しました」

「参考までにミランダ嬢は、どこから食べる派かな。私は、扉から順番に食べていくと思う」

「私ですか?私は、窓が飴を想像していたので、窓ですね」

「良いね、家は潰れなそうだね」

「まぁ!そんなこと考えもしなかったです」

「ハッハハハ、確かにな、駄目と言われても足を一歩踏み出すからな」

「何故それを!私がみんなに注意されている所、まさか見られましたか?」

あれかしら?クラスメイトに注意された時の事?
あれ、何でだろう?緊張していないな。息苦しくないわ。
普通に話せる…
王子様も声、もう震えてない?
本の話だから?

「いや、それは…
あ、この本知っているかい?病気のお母さんのために、知らない国に行って、万病の花を見つける話。これを読んで旅や冒険に憧れたんだ」

「わかります!私は、こっちですね。嵐に遭遇して無人島に着いた船乗りの話。ナイフ一本で木の上に家を作ったり、食料を採取したり…一人ぼっちの孤独を紛らわしたり、知恵と勇気が元気になれました」

「ミランダ嬢は、意外に活劇が好きなんだね、驚いた」

「冒険譚は好きなんですよ。特に読む種類が多かったこともありますが、ワクワクしますし、非日常や違う世界に連れて行ってくれるお話が大好きでした。物語で想像していたより、現実はもっと素敵でした。面白くて、楽しいですよね」

「非日常や違う世界は、わかるな~。ミランダ嬢は、毎日が楽しいの?」

「ええ、もちろん。アンドル王子様は、楽しくないのですか?」

「えっ、っと、正直に言うと、面倒くさいが半分を占めていて、いつも通りと、たまに楽しくて嬉しいがあるな。最近は、ドキドキする事が多いかな」

と困ったように笑った。
あれ!?普通の男子学生みたい…不思議。

「そうですか。いつも通りが楽しくなるといいですね」

「プッフフフ、面倒くさいは、そのままにするの?」

「何故笑うのですか?面倒はやっぱり面倒じゃないですか?その言葉を使った時点で嫌々なんですから。それはもう気持ちも頭も決めているんです。だからいつも通りが、楽しい方が良いと思いますね」

「いつも通りか。ミランダ嬢は、いつも通りは何をしているのか、聞いても良いかい?」

「私ですか、私は、お茶を色々試しています。薬草園の研究員の方達が出してくれたハーブティーも果実の皮を浸したお茶も風味が全く違うので、口の中が豊かに想像するんです」

「口の中が想像?意味がわからない」

「今度ハーブティーをもらって下さい。口の中で風が吹きます。レモンの皮のお茶は、苦味とさっぱりで、雨降って地固まるを現しています。変化を楽しめます。今まで、お茶は、口や喉を潤すだけだったのではないですか?少し変えるだけで、いつも通りが色づくかもしれません」

「確かに、今聞いただけでレモンの皮の苦さと酸っぱさで口の中に溢れた」

ウゲっという顔をした王子。
随分と面白い顔をする。こんな顔もするのか、王子様は、意外だわ。

うっふふふ

「薬草園で見ました。月下美人。凛として艶々した葉っぱ、茎の中に花の蕾があるように見えましたが、花は咲きましたか?」

「いや、まだだよ。生き生きとしているだろう!輝いているんだよね、美しいよね」

おぉ~熱量が…

「あの置き方、いえ、飾り方ですか、あれは月下美人だけを見てと主張しすぎですよ」

「そうかな、そんなことはないんじゃないかな。真正面に置いたけど」

やっぱり自ら置いたのね。

「何故階段みたいに作って、三段目に載せたのですか?」

「ほら、高い位置の方が光が当たるだろう。あと階段って…」

言葉に詰まったわね。

「ほら、注目を浴びるって思ったのではないかしら?」

「…すまない、その通りだ」

「わかりますよ。大事に育てているものが、可愛いし、一番主張したいのは。でも、あの区画は薬剤研究の方達も育てて、見て欲しいものが、あったかもしれないのに、月下美人だけ絶対君主になってましたよ」

「すまない…周りを考えてなかった」

ふっふふふ

「アンドル王子様も毎日楽しそうじゃないですか?大切なものを愛でて、困った顔をしたり自慢したり、楽しそうです」

「いや、そんなことは、ないと思ったのだけど。ミランダ嬢から見て、私は、楽しそう?」

また表情が変わった。
随分とコロコロと変わって、王子様だけど、…王子様じゃないのね。

昔、先生が言ってたことがわかった。
『ミランダさん、笑ってばかりの人なんていないわよ。これは絵本の世界…もっと沢山を知りなさい』

先生、私もいろんな顔をするようになりました。
いつか…お見せ出来たら…
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

処理中です...