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46 隣の席の友達
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「ミランダさん、またディライドさん宛の封筒を取りに来てくれるかしら」
先生から授業終わりに言われ、やはり学年が違うとお義兄様関係の封筒を持ってきては、頂けないのだなと残念に思う。
「ミランダ、行くわよ」
リリエットに言われた。
あのまま先生の後をついて行こうと思ったけども。
「リリエット、きちんとお願いするつもりだったわよ」
と苦笑してしまった。帰り支度を終え、教室に出て、二人で話しながら、渡り廊下に入る前に、後ろから、
「リリエット!」
と呼び止められた。
「まぁ、スタンルート」
リリエットが答えた。
あの方がリリエットの婚約者の。爽やか青年じゃないですか!
「リリエット、私なら大丈夫よ。この渡り廊下だけだし、前からも人が来ていないわ。それにそのまま帰るし、安心して婚約者のところに行ってね」
と言えば、微妙な顔をするリリエット。
「でも…あんなことがあったばかりじゃない…やっぱり行くわ。スタンルートに一言言ってくるわ。待っててもらえばいいのだから」
「大丈夫よ。リリエット。ほら見てよ、誰も来ていないわ、今、行ってきてしまうから、ね」
と歩き始めてリリエットに手を振った。
リリエットの視線を感じたけど、廊下の半分渡った時に、振り返るとリリエットの横に婚約者殿が立っていた。順調そうで良かった。再度手を振る。
見られているのも恥ずかしいもので、でも私の友達は別館に入るまで見ていそうだなと思える事が安心と嬉しさがある。
別館に入る時、木々の方が気になった。今日は溜息の船乗りはいないのかしら?
溜息は聞こえない…
入ろうとした時、木の裏から小さく丸い微妙に動く黒い影が見えた。
*
リリエットとスタンルートside
「リリエット、彼女がいつも話してくれるミランダ嬢なんだ。本当に綺麗な水色の髪だね。陽が当たってキラキラしているよ」
「本当に素敵よね。夜会の参加者に聞いたら、ミランダと同じ髪色の王女様がいたんですって。ミランダだって、あの野暮ったい眼鏡をやめれば、王女様みたいな美しい髪だと賞賛されると思うの。不思議なんだけど、眼鏡として認識しているのに、ミランダの顔がわからないのよ。ディライド様からミランダの眼鏡が絶対に外れないようにして欲しいと頼まれているから、余計なことは出来ないけど。きっと何か仕掛けがあるのよね。マジックアイテムという高価な物だと言っていたから。以前にその眼鏡のお陰で、無事だったと教えてくれたわ。
ミランダの素顔を見てみたいし、街におしゃれなミランダに似合う眼鏡があると思うの。街に一緒に遊びに行ってみたいわ…でも、
あの眼鏡じゃないといけないぐらい、ミランダの素顔は美しいのではないかって思うのよ。秘密よ。だからミランダから許しが出るまでは、その真偽は確認出来ないのよね」
「ディライド様か、きっと思惑があるのだろうね。すっかり、私よりもミランダ嬢に夢中だね。少し妬けるな。もっと二人の会話する時間も作って欲しいのだけどね。夏季休暇に思いっきり叱られて喜ばれて、私はリリエットの一面しか見てなかったと気づかされたし、もっと知りたいと思ったから。先日の話だけど、本当に学校卒業したら、二年間働くの?私としては、婚約期間も長いし、やっぱり早く婚姻はしたいと思うけど」
「ええ、領地で花嫁修行なんてする暇はないわ。私…なりたいものがあるの。もっと勉強を頑張りたいの。これから先、ミランダを取り巻く環境が賑やかになる気がするの、勝手な私の予想よ。ミランダがよく話す物語ではないのだけど…王子様とお姫様は、王宮の一番輝く場所でダンスを踊るのよと笑うミランダが…彼女の先を妄想してしまうの。
彼女がみんなの視線を集めて踊る日が来るようなって。
その時、友人として見てみたいの。ただ隣の席の友達で終わるのではなくて…彼女の輝く瞬間を逃したくないのよ。
困った顔も喜ぶ顔も怒った顔も…
楽しみしかないの。
それに、私が力になれる事が少しでもあるなら、ミランダのために何でもしたいの。不思議よね。眼鏡で見えないのに。彼女の先に繋がっている誰か…見たいと思うのは不敬かしら、ね、スタンルート?」
「リリエット、君、物凄く楽しそうだな!結構話している内容は、下世話だとは思うけど。最近の情報集めはそんな未来を想像してなのか、希望的な思いが強いのかな?」
スタンルートもおかしそうに笑う。
「ええ、スタンルート。下世話かもしれないけど、やっぱり情報って大事だと思うの。私、この学校に入れて、あのクラスになれて良かったわ。私という吹けば飛ぶような令嬢だったのに、マリアーノ様の取り巻きなんてしなくても、場所があって迎えてくれる人達がいるのだから。あなたも文官の試験を受けるのでしょう。お互い頑張りましょうね!」
「ハァー、君が、こんなにハキハキ話すなんて想像もしなかったよ。まさか私を煽ってくるなんてな。でもリリエットの笑顔は子供の頃から変わらない、相変わらず可愛いままだ」
「…突然は困るわ」
「おや、下を向くのか。耳も赤く色づいた…ならば、これからは所構わず口説いたら、二年間働きたいという宣言は撤回してくれるかい?」
隣にいた距離を更に重なるように身体が近づいた。
「しません!狡い。ちょっと近い、スタンルート!ここは学校だから。それに私、頑張るって決めたんだから!だから二人で歩いていきたいの、もちろん結婚もしたいし、だけど未来も見たいの、駄目かな?」
「ハァーー
君こそずるいよ、リリエット。私に断れる権利はないだろう。今のは、絶対リリエットわざとだよ、な。わざと私が断れないようにしているよな。まぁ口説くと可愛い婚約者もミランダ嬢の話をニコニコ笑いながら、楽しそうに話すリリエットも全部可愛いから結局許すのだけどね。もう少し、私の割合を増やさないかと提案はしたいな」
「それは…要検討!」
「「フッハハハ」」
笑いながら、あの時ミランダが、代役をしてくれたからこそ、今があると感じていた。
どちらとも言わず、お互いの手を握る。
光が当たるその渡り廊下が、明るく続く未来のようで二人で、ミランダの後ろ姿を消えていくまで見送った。
先生から授業終わりに言われ、やはり学年が違うとお義兄様関係の封筒を持ってきては、頂けないのだなと残念に思う。
「ミランダ、行くわよ」
リリエットに言われた。
あのまま先生の後をついて行こうと思ったけども。
「リリエット、きちんとお願いするつもりだったわよ」
と苦笑してしまった。帰り支度を終え、教室に出て、二人で話しながら、渡り廊下に入る前に、後ろから、
「リリエット!」
と呼び止められた。
「まぁ、スタンルート」
リリエットが答えた。
あの方がリリエットの婚約者の。爽やか青年じゃないですか!
「リリエット、私なら大丈夫よ。この渡り廊下だけだし、前からも人が来ていないわ。それにそのまま帰るし、安心して婚約者のところに行ってね」
と言えば、微妙な顔をするリリエット。
「でも…あんなことがあったばかりじゃない…やっぱり行くわ。スタンルートに一言言ってくるわ。待っててもらえばいいのだから」
「大丈夫よ。リリエット。ほら見てよ、誰も来ていないわ、今、行ってきてしまうから、ね」
と歩き始めてリリエットに手を振った。
リリエットの視線を感じたけど、廊下の半分渡った時に、振り返るとリリエットの横に婚約者殿が立っていた。順調そうで良かった。再度手を振る。
見られているのも恥ずかしいもので、でも私の友達は別館に入るまで見ていそうだなと思える事が安心と嬉しさがある。
別館に入る時、木々の方が気になった。今日は溜息の船乗りはいないのかしら?
溜息は聞こえない…
入ろうとした時、木の裏から小さく丸い微妙に動く黒い影が見えた。
*
リリエットとスタンルートside
「リリエット、彼女がいつも話してくれるミランダ嬢なんだ。本当に綺麗な水色の髪だね。陽が当たってキラキラしているよ」
「本当に素敵よね。夜会の参加者に聞いたら、ミランダと同じ髪色の王女様がいたんですって。ミランダだって、あの野暮ったい眼鏡をやめれば、王女様みたいな美しい髪だと賞賛されると思うの。不思議なんだけど、眼鏡として認識しているのに、ミランダの顔がわからないのよ。ディライド様からミランダの眼鏡が絶対に外れないようにして欲しいと頼まれているから、余計なことは出来ないけど。きっと何か仕掛けがあるのよね。マジックアイテムという高価な物だと言っていたから。以前にその眼鏡のお陰で、無事だったと教えてくれたわ。
ミランダの素顔を見てみたいし、街におしゃれなミランダに似合う眼鏡があると思うの。街に一緒に遊びに行ってみたいわ…でも、
あの眼鏡じゃないといけないぐらい、ミランダの素顔は美しいのではないかって思うのよ。秘密よ。だからミランダから許しが出るまでは、その真偽は確認出来ないのよね」
「ディライド様か、きっと思惑があるのだろうね。すっかり、私よりもミランダ嬢に夢中だね。少し妬けるな。もっと二人の会話する時間も作って欲しいのだけどね。夏季休暇に思いっきり叱られて喜ばれて、私はリリエットの一面しか見てなかったと気づかされたし、もっと知りたいと思ったから。先日の話だけど、本当に学校卒業したら、二年間働くの?私としては、婚約期間も長いし、やっぱり早く婚姻はしたいと思うけど」
「ええ、領地で花嫁修行なんてする暇はないわ。私…なりたいものがあるの。もっと勉強を頑張りたいの。これから先、ミランダを取り巻く環境が賑やかになる気がするの、勝手な私の予想よ。ミランダがよく話す物語ではないのだけど…王子様とお姫様は、王宮の一番輝く場所でダンスを踊るのよと笑うミランダが…彼女の先を妄想してしまうの。
彼女がみんなの視線を集めて踊る日が来るようなって。
その時、友人として見てみたいの。ただ隣の席の友達で終わるのではなくて…彼女の輝く瞬間を逃したくないのよ。
困った顔も喜ぶ顔も怒った顔も…
楽しみしかないの。
それに、私が力になれる事が少しでもあるなら、ミランダのために何でもしたいの。不思議よね。眼鏡で見えないのに。彼女の先に繋がっている誰か…見たいと思うのは不敬かしら、ね、スタンルート?」
「リリエット、君、物凄く楽しそうだな!結構話している内容は、下世話だとは思うけど。最近の情報集めはそんな未来を想像してなのか、希望的な思いが強いのかな?」
スタンルートもおかしそうに笑う。
「ええ、スタンルート。下世話かもしれないけど、やっぱり情報って大事だと思うの。私、この学校に入れて、あのクラスになれて良かったわ。私という吹けば飛ぶような令嬢だったのに、マリアーノ様の取り巻きなんてしなくても、場所があって迎えてくれる人達がいるのだから。あなたも文官の試験を受けるのでしょう。お互い頑張りましょうね!」
「ハァー、君が、こんなにハキハキ話すなんて想像もしなかったよ。まさか私を煽ってくるなんてな。でもリリエットの笑顔は子供の頃から変わらない、相変わらず可愛いままだ」
「…突然は困るわ」
「おや、下を向くのか。耳も赤く色づいた…ならば、これからは所構わず口説いたら、二年間働きたいという宣言は撤回してくれるかい?」
隣にいた距離を更に重なるように身体が近づいた。
「しません!狡い。ちょっと近い、スタンルート!ここは学校だから。それに私、頑張るって決めたんだから!だから二人で歩いていきたいの、もちろん結婚もしたいし、だけど未来も見たいの、駄目かな?」
「ハァーー
君こそずるいよ、リリエット。私に断れる権利はないだろう。今のは、絶対リリエットわざとだよ、な。わざと私が断れないようにしているよな。まぁ口説くと可愛い婚約者もミランダ嬢の話をニコニコ笑いながら、楽しそうに話すリリエットも全部可愛いから結局許すのだけどね。もう少し、私の割合を増やさないかと提案はしたいな」
「それは…要検討!」
「「フッハハハ」」
笑いながら、あの時ミランダが、代役をしてくれたからこそ、今があると感じていた。
どちらとも言わず、お互いの手を握る。
光が当たるその渡り廊下が、明るく続く未来のようで二人で、ミランダの後ろ姿を消えていくまで見送った。
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