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45 学校に行って御礼を言いました

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「おはようございます」

教室に入る最初の一歩が、緊張するのよね。休み明けは!
すぐにクラスメイトが近づいてくれて、

「ミランダ様、大丈夫ですか?言いがかりや脅しを気にしないでくださいね。あんなのが王妃様になるはずありません。アンドル王子様も呆れて、この国から追い出しますよ。王女様達もあの日から、学校を休んでいるんですよ。当然ですけど」

「来れるはずありませんよ、突然伯爵令嬢を空き教室に呼び出して、言いがかりで絡んできて忠誠を誓え、髪を切れなんて脅しですよ。そして武器を振るうなんて、他国の王女でも許されない言動です」

「「私達は、断固抗議します!」」

みなさん声を揃えてくれて…一致団結というやつね。あんなの…って言うのは不味いわよ。
忠誠?髪を切れ…言われたわね。水色髪のこと…気に入らないと言われたわ。

「みなさん、ありがとうございます。私、王女様から、何を言われたか抜け落ちてしまって、みなさんが会話を覚えてくれたおかげで事情聴取が出来たそうです」

と言えば、

「ミランダ、おはよう!」

リリエットは、教室に入るなり足早に近づいて顔色を見られた。

「大丈夫そうね、安心した。精神的にも身体的にもあの王女様から受けた傷が、怖がらせるのでは?とみんなで話していたのよ。茫然自失って感じだったから」

「改めまして本当に、みなさんのおかげで助かりました。私一人では、助けも呼べませんでしたし、黒鞭に驚いてしまって、その前に話したことも忘れてしまったので、事件後もみなさんにお手数おかけしました」

と言えば、クラスメイトが各々話し始めた。

「本当に無事で良かったわ。あの時のアンドル王子様、物凄く怖かったし」

「本当に…いつも誰にでも微笑んでいるのに、あの御姿は驚いたわ。髪も乱れてて、扉も思いっきり蹴り飛ばして、行きも帰りも私達なんて見ないというか眼中になかったわよね」

「「「怖かったわ~」」」

「事情聴取もサイファ様とグレゴリー様だったし…」

何か想像しているようで、みなさん、ほぅっと言ったり、身悶えしてたり、彼方に行かれたみたいだ。
そう言えば、その二人は我が家には、事情聴取には来なかったな。
聞かれても答えられませんから…医師に聴取されて良かったわ。

…王子様、怖かったか…

あの人は、確かに髪も言葉も乱れていたし、怒っていたし、辛そうだった。でもきっと、ご自分の婚約者候補?が、仕出かしたから…自分を責めていたのでしょうね。私も笑って…

駄目ね、私には関係なかったわ、考えないようにしないとね。



「ハァー、やっと落ち着いて食べれるわね」

と言えば、リリエットも

「本当に。でもよく思い出すとミランダって、事件に遭遇が多いわ~。ダイアナさんとの人攫い事件は、原因が私だから申し訳ないのだけど」

マリングレー国から出てもうすぐ一年…
塔にいた時は外出なんて許されなかった。外の世界は、私が知る世界より、楽しくて、面白くて、ドキドキして、怖くて、恥ずかしくて、驚いたわ。
知らないことばかりで、

「私が、藪をすぐ突いてしまうのでしょうね」

と言えば、リリエットが不思議そうな顔をしていた。

「どういうこと?」

「興味に負けて、藪、その先が見えないぐらいの雑草の場所を木の棒で、適当に突いたら、蛇が出たり虎が出たりする話。何が出るかわからないのに、首を突っ込まない方が良いってこと」

「あぁ、見て見ぬふりとかね。確かにそれはわかるわ。ダイアナさんとかマリアーノ様とか…アンドル王子様達とか見たり噂話を聞く分は楽しいけど、その先、ご一緒したいとか、関わりたいとは思わないもの」

リリエットは、凄く声を潜めて話す。だからあの件以来、マリアーノ様からリリエットは離れた。
ラナが言う危機管理能力というやつね。

「私は、だめね。マユリカ王女様の側近が教室に来た時に、断固拒否すれば良かったのに…」

「そうね、教室内に生徒も沢山いたし、あの時は、確かに私達に任せてミランダは下がっていれば、先生を呼びに行ったり…あぁもう、落ち込まないでミランダ!無事だったから良かったけど、やはり一人でとか、付いて来てとか、そんな言葉は怪しいわ。これからは、気をつけてね」

確かにそうです。
リリエットの言う通り。
イズリー家の使用人からも口々に言われています。
まさかクラスメイトにまで言われるとは。

「気をつけるわ」

「ミランダ・イズリー様、少しよろしいかしら?」

気をつけると言っている側から、もう一人の人物からの名指し。

「ご機嫌よう、マリアーノ様。本日はいかがなさいましたか?」

「あなた、アンドル王子様との仲を疑われてマユリカ王女様に注意を受けたそうね。何があったか言いなさい!」

何故、この人もいつも命令口調なんだろか…侯爵令嬢だからなの?

「マリアーノ様、そもそもマユリカ王女様は誤解をなさったのです。義兄のディライドが、アンドル王子様の命令で仕事をしていまして、その詫び品を私達家族にくださったのを誤解されたのです…」

「私もディライド様のことは存じ上げていますわ。だけどあなたがマユリカ王女様に対面することはないでしょう!私に相談すれば良いだけのこと。上位貴族のことは、上位貴族同士で解決するのが基本ですから!」

相談?
あぁ、リリエットが言っていたことみたいなものね。
マリアーノ様の心の内を読むことは出来ないけど、言いがかりをつけられているわけじゃなくて安心した。

「ご親切にありがとうございます、マリアーノ様」

と言えば、

「当然よ。婚約者候補ですから」

と言われた。ここでもか。
マユリカ王女様も言っていたわ。

「流石です。マリアーノ様」

とマリアーノ様の後ろにいた取り巻きが褒めている。この方は!スプレーの方だわ。見ると視線を逸らされた。口の中が最悪だったことを思い出しながら、黙って見つめていると、

「分かればいいのよ。私を飛びこえて、面倒をかけないでね。みなさんも困ったことがあれば、私に相談してくれてよろしくてよ」

マリアーノ様は、食堂を見渡しながら宣言して出ていった。

「マリアーノ様、きっとマユリカ王女様が婚約者候補として脱落したと思って、あんな風に言ったのでしょうね。どうなるかなんてわからないのに、ね、ミランダ」

「私は、そういう情報は知らないわ」

と言えば、リリエットは笑った。そして、

「ねぇ、ミランダ、さっきの藪を突いたらの話なんだけど、蛇や虎ばかりが出たの?」

「違うわ。最初に出たのは、隠し財宝よ。それを知った者達が、真似をして藪を突きに行ったのよ」

「そう…ミランダはとにかく注意した方がいいわ。ディライド様が戻るまで」

リリエットは、何かを考えているようだけど、それは話してくれなかった。
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