今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
上 下
30 / 120

30 夜会用のドレスが届きました

しおりを挟む
イズリー家に、私の夜会用のドレスが届いた日。

「まぁ、届いたのね!!」

屋敷の中にお義母様の歓声が、聞こえてきた。

「早く、フィッティングルーム…いえ、湯浴みが先よ。当日のように準備をしましょう。あなた達もいいわね、学んだことを出し惜しみなく発揮しなさい

「「「「はい!」」」」

返事がこだましました。

「さぁ、お嬢様磨きますよ。私達の技術を全て出し切ります」

侍女達の声が溌剌している。

「やはり流行りの髪型に挑戦して良いですか?みなさん」
「ええ、いいわ、やりましょう」

流行り?
リリエットが何か言っていた気がするけど、とりあえず、

「よろしくお願いします」

と言って口は挟まない。
私は、流行りを知らないですから。お任せです。

「流行りの巻き髪は、少し年齢が、上に見えるわ。これは没ね。水色の綺麗な髪色とミランダの年相応の可愛さと美しさを損なうわ」

「はい、奥様!髪は下ろします!」

「ええ、それで!」

お義母様と侍女達だけで会話が成り立ち、私は、圧倒されただ全てに頷いた。



「お嬢様、深い青色の布生地とドレスに広がる銀の刺繍にウエストの銀色のリボンが美しさと可愛いらしさを現していて大変お似合いです。首元と胸元を繋ぐレースの繊細さが、上品すぎます。職人はとても素晴らしい仕事をしてくれましたね。どこからみてもお姫様にしか見えないです」

「本当に水色の髪も艶やかですが、やはり青紫色の瞳が輝いて宝石にしか見えません。ハァ、存在自体が神々しいです」

現在、夜会の日のメイクや髪型やアクセサリーを決める為、お義母様や侍女達が試している最中、褒められて恥ずかしくなっております。

「このマリングレー国の最新の白粉どうしますか?」

「使いなさい」

「はい、奥様」

えっ!?高価な品物!

「いや、いや、私は、挨拶したらすぐ帰る予定ですし、お義母様が、お使い下さい。それに今日はリハーサルですよね?」

「何、言っているの?夜会は貴族令嬢の戦いよ。準備を怠る者は敗者、万全を期して美しく輝いてこその勝利よ」

何かのスイッチが入ったお義母様。お義父様が言っていた娘が、屋敷にいるから張り切っているって言っていた、アレか?
一旦、みんなを落ち着かせないと。
目が、ギラギラして、こわーい。

「お義母様、スーパー眼鏡をかけますから顔の半分は眼鏡で覆い隠されますよ。白粉は、要らないです」

「もう、眼鏡しちゃったら、お化粧が崩れてしまうわ。せっかくのおめかしなのに!悔しいわ!」

お義母様が、握っていた何かを空中で叩いた。
アレは何?

「このスーパー眼鏡は、お嬢様の綺麗な瞳の色がわかりませんし、目がこちらから見えない、存在を消しているのですよ。本当に悔しいです。どれだけ凄いマジックアイテムをディライド様はご用意したのか!確かに、これを必要とするのは、美しすぎるお嬢様ぐらいですが、本当に作った職人が憎いです」

あぁ、何故かマジックアイテム職人に飛び火している…

「すいません、お義母様に皆さん。しかし、私がイズリー家にお世話になっていること、良くしてもらっていることを知られたら、マリングレー王国の民の怒りの矛先が向かいます」

「わかっているわ。旦那様にも口煩く、屋敷内でも眼鏡着用の大事さは聞かされているわ。一目見たら噂の的、外に出たらすぐに連れ去られてしまうもの。でもミランダの美しさを世の全ての人に知ってもらいたい気持ちもあるのよね。複雑だわ」

「お義母様…」

扉の向こうから、ノック音がした。

「失礼します。ディライド様がお戻りになりました」

「まあ!?なんて良いタイミングなのでしょう!せっかくだから、ディライドには見せてあげて、ね、いいでしょう?お願い」

と可愛いお願いポーズを義母からされたら、断れない。

扉のノックの音。

「失礼します…」

お義兄様の声だわ。

なんか恥ずかしすぎて、お義兄様の顔が見れず、目線が下にいく。やっぱり眼鏡が欲しい。

何も変化がない。
思わず目線を上げた。
…目が合った。

「ハァー、どうして、いやどうしようもないのだけど…。凄い綺麗だよ、女神様みたいだ。いや、例えが凡庸すぎた。光輝く精霊かな」

もう!揶揄い始めたのね!
笑顔になった。
…良かったわ。

「お義兄様!お疲れ様です」

「ハハハ、やっと帰ってこれて、あまりの綺麗な光景すぎて、惚けてしまったよ。口に出すのも惜しいとは、この事だな。どうしよう、じっとしていられない。ミランダちゃん、この場で踊ってくれませんか?」

「ええ~、ここはフィッティングルームで音楽もありませんし、物も散らばってるから危ないですよ」

と言うも否か、侍女達が瞬く間に片付け終えて、期待した目で見ている…

これは、やるしかないという状況、ね。

「お相手よろしくお願いします」

と言って、ドキドキする胸の音とお義兄様の綺麗な長い指と大きな手の上に乗せる。
お義兄様が手の感触を確かめるみたいに何度か私の手を握り離して、少しギュっとされ、お義兄様を見ると、凄く嬉しそうな顔して、手を包み込む。

そんな手の動作をされて、これは一体何なの~と誰かに聞きたい!視線はずっと私しか見てないし、息が苦しくなりそう…何だろう、これは。
すぐにラナを探したら、ニマニマした表情で壁に立っていた。気づくと他の侍女もお義母様まで、同じ様な笑顔で、ニマニマしている。


「では、ミランダ嬢、失礼します」

と言ってお義兄様は、片手を私の腰にもう片手を私の手と繋いだ。
一体何なの~、宝物を扱うみたいにそっと…優しくて柔らかい。
…音はいらなかった。
心臓の音が大きくて、きっとお義兄様にも聞こえているわ。

レオンとのダンスは楽しかった。
今、お義兄様とのダンスは、足が床に着いていないみたい。

ふわふわして、ドキドキして、熱が上昇して、
…目が回りそうなほどクラクラする。


「…お義兄様の匂いがする」

まさかそんな呟きを無意識に発していたらしい(ラナから後ほど聞いた話)

お義兄様のステップが乱れた。
お義兄様の手が熱くなって、顔が真っ赤になって、手を離され、ピョーンと大きく一歩後退された。

随分と距離が離れた。
スッとした寂しさを感じる。

「どうかしましたか?お義兄様」

「今、帰って、そう、そうだった、私は、風呂に入っていなかった」

お義兄様には、珍しく焦りと大きな声で、室内全員に聞こえるように言った。
そしてすぐに部屋から出て行った。

お義母様が、凄く楽しそうに笑っていた。

「あの子のあんな子供ぽい表情、久しぶりに見たわ」

と言って。
それに釣られて、侍女の皆さんも笑って、ラナに

「お嬢様は悪女です」

と言われた。私が何をしたって言うの?
私が悪いの?
ステップ間違えた?

夜、寝るまでわからなくて、結局ラナに、眠れないから教えてと頼んで教えてもらえた。

「お義兄様には、申し訳ないこと言ってしまったのね、私、臭いなんて思わなかったわ。匂いのこと言った記憶がないのだけど…
ドキドキしすぎて、他の音が聞こえなかったのよ。やっぱり言ったこと覚えてないわ。明日謝るわね」

と言えば、ラナから、

「お嬢様、もうそれは放っておいてあげた方がよろしいかと。お嬢様とディライド様もお年頃ですから、そういうのは敏感に思うもの…もしお嬢様が逆に言われたらどう思いますか?」

「えっ!?恥ずかしいわ!」

「そうでしょう。ディライド様にも事情があるのです。だから放っておくのですよ。色んな意味で、ね」

ラナが言ったので、深く頷く。
私が、そんな失礼な事を言ったなんて深く深く反省をしました。



侍女達の休憩室(読者達)

「凄いの、凄い可愛いし、美しすぎるカップルなの。誰が見ても王子様とお姫様…」
「それそれ!美男美女、もう一枚の絵画よね。素晴らしき世界」
「それで、めちゃくちゃキュンなの!」
「甘酸っぱすぎ~!」
「これで一年以上話持つわ」
「ねぇ、ねぇ、お嬢様は今日のことどんな風に日記に書くと思う?」

「「「忍びこんで速攻見たい~」」」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

紡織師アネモネは、恋する騎士の心に留まれない

当麻月菜
恋愛
人が持つ記憶や、叶えられなかった願いや祈りをそっくりそのまま他人の心に伝えることができる不思議な術を使うアネモネは、一人立ちしてまだ1年とちょっとの新米紡織師。 今回のお仕事は、とある事情でややこしい家庭で生まれ育った侯爵家当主であるアニスに、お祖父様の記憶を届けること。 けれどアニスはそれを拒み、遠路はるばるやって来たアネモネを屋敷から摘み出す始末。 途方に暮れるアネモネだけれど、ひょんなことからアニスの護衛騎士ソレールに拾われ、これまた成り行きで彼の家に居候させてもらうことに。 同じ時間を共有する二人は、ごく自然に惹かれていく。けれど互いに伝えることができない秘密を抱えているせいで、あと一歩が踏み出せなくて……。 これは新米紡織師のアネモネが、お仕事を通してちょっとだけ落ち込んだり、成長したりするお話。 あるいは期間限定の泡沫のような恋のおはなし。 ※小説家になろう様にも、重複投稿しています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

処理中です...