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23 イズリー領の祭り 其の1

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イズリー領 祭りの日~午前中

朝食を食べていると、街の方から祭り開催の合図が聞こえた。

「お義姉様、楽しみですね、僕とダンスは踊って下さいよ」

レオンは、笑いながら言う。
可愛い~ダンス頑張ろうっと。
弟、癒しです。

「私は、初めての参加ですから、レオンには、沢山、教えてもらいたいわ。もし良かったら、案内役をお願いしたいです」

レオンに聞いてみると、すぐに返事が返ってきて、

「任せてよ、お義姉様を楽しませられるようエスコートするね」

聞きましたか?
この初々しくも幼い紳士道…そして美しい姉弟愛。
最高~、弟、最高~ハァ、私の今日の時間全てレオンと共にいれたら幸せだなぁ~。

「こら、ミランダちゃんは、遊んでばかりいられないんだぞ、レオン。街にある教会のバザーに顔を出して、婦人会に挨拶をしてもらうのと、漁港の町で過ごしたサタンクロス商店にも挨拶してもらう。その後は、私と食事して、街をぶらりと回って、最後にレオンとダンスがいいのではないか」

「兄様~酷いよ。全然僕が案内する時間がない!食事のところから合流だよ。一緒に祭りを楽しみたいよ。みんなが挨拶に行っている間に、僕も街や村の友達には挨拶するからさ、食事は一緒にして、そこから、僕のおすすめのゲームや屋台を案内するから!」

「おや、いつも友達と回りまくる屋台で、お腹いっぱいにしてしまうレオンだろう、ミランダちゃんと一緒に回るまで我慢出来るのかな?」

あぁ~尊い。
麗しい兄弟の戯れあい。
ポンポン弾む言葉の掛け合い。
どれも可愛い~
最高~。今日のやり取りもミランダ日記に絶対に書こう。
今見てる情景は、目で見て、心の思い出に残そう。

王都にいるイズリー家の使用人に、また私の冒険譚を読ませるつもりだったけど、今回は長編になる予感がするわ。
漁港の街編に、ラナの恋編、領内の祭り編、中々ね。今からみんなの反応が、楽しみだわ。



「さぁ、お嬢様出発です」

人通りが凄い。ここにこんな人がいたのかと驚くほどです。

「凄いわね」

一言言えば、ラナが真剣な顔をして、

「離れないでくださいよ、私、本当ならお嬢様と手を繋ぎたいぐらいなんですから、風に飛ばされてどこに行くかわからない綿毛みたいで、心配なんですから」

言いながら、周りにいる人にも牽制している。いくら何でも、風に飛ばされたりしないわ。
まぁ、攫われた私が言うのも、説得力はないけど、流石に路地にはもう入らないわ。注意して大通りのみを歩くわ。
私だって学びましたよ、危険場所ぐらいは。

案内された教会の入り口前には、持ち寄ったであろう寄せ集めの品々が、籠に入ったり、果実箱に並んであったり、見ているだけでワクワクして面白い。

でも一番最初にやる事は、私の刺繍を刺したハンカチや旗はどこにあるかしら、と調べることだった。
出来れば、早く売れて欲しい。なるべくみんなの目に触れるところに置きたい…

私は、ずるい子です。

ペラペラとハンカチを見ていると、

「ようこそ、イズリー様、本日はよろしくお願いします。そう言えば、先日教えてくださいました本の修理の仕方、活用させていただいております。どうしても幼年の子が乱雑に扱ってしまうので、子供達も修理を覚えると注意しようという心構えも出来たみたいです」

「はい、シスター。役立ったなら嬉しいです。本日は義母の代わりにこちらに挨拶に来ました」

「領主様は祭りの日はお忙しいですから、ミランダ様が来てくださっただけでも、みんな大変喜んでおります」

「そう言って頂けたら嬉しいです。あら~、香ばしい匂いがしてきましたね、クッキーですか?後で私も購入させてくださいね、それでは婦人会の皆様の元に参りましょう」

お義母様は、現在領地の祭りに来ている他貴族達と次から次にサロンにて挨拶をしている状態で、平民の祭りの催し物まで挨拶ができない。

お義兄様が、パールの白粉があるなんて言ったのが、原因だと思うけどな…

「皆様、こんにちは!イズリー伯爵家の娘、ミランダと申します。本日はバザーを盛り上げていきましょう!お金の管理をしっかりして、最後シスターに渡しましょう」

「お嬢様、見つけましたお嬢様の刺した刺繍のハンカチ!私、一番前に置いておきましたから!」

とラナの大きな声が教会前の広場に響いた。

こういうのは、コソコソやるものなのよ、絶対に。不正だとは思わないで欲しいな。

ご婦人達は、笑っていた。

恥ずかしい~。

「お嬢様移動しますが、馬車はもう使えません。人の混み方が尋常じゃないです」

「ええ、わかったわ。ラナに離れないようにするわ」

「本当にお願いしますよ、私がディライド様に怒られます。サタンクロス商店だって何か特売品を出していそうですし、人の波に流されないでください」

「もう、ラナったら子供じゃないのだから、何度も言わなくてもわかっているわ」

「いえ、よそ見も禁止ですよ。私だけ見て下さいね、サタンクロス商店の場所ご存知ないですよね」

「わかっているわ。ラナの後ろをついて行くから、大丈夫よ」

ラナの後ろを歩いたわ。
斜め前に雑貨屋さんが、祭りということで店頭でクッキーを売っていた。

あらら、値段は、教会の倍の値段。
これは、シスター達の方が客入りが良いわね。

「おっと、すまないなお嬢ちゃん」

男の人の肩が、私の腕に軽く当たる。
「いえ…」
と口を開くと同時に、あら、あらら、なんか押されているな。
ラナは?
あら、あらら…

えっと、ここで私の足が、踏ん張れないのだけど…
私の足が、勝手に流れに歩いている!?

どうしてーーー!?

いや、どうしよう!?
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