今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
上 下
17 / 120

17 アンドル・クリネット 1

しおりを挟む
アンドルside

「ディライドが逃げるとしたら、王都じゃなく港だな。上手い言い訳が出来るだろう、マリングレー王国の王族を領主代理として迎えに行ったとか。都合の良いことに、それで私にそのままティア王女を預けて、さようなら。私との話し合いに応じないつもりだろう」

と呆れと自由なあいつへの羨望を言えば、グレゴリーが、

「学校の終了日、夜会のプランや警備の手配配置、各場所への根回し、全て済んだのは、最低限の仕事をやって行った。アンドルに誠意を見せたのではないか。もっと人数を絞るべきは、理にかなっているし。ディライドの言う、侯爵令嬢以上にするは、良いと思ったよ。他国の姫達は移動があるから、早くに挨拶状を送り済み。令嬢に対して対応人数が、少ないのは分かった上の夜会なのに、何故そんなに慌てるんだアンドル。ディライドに押し付ければ、逃げることはわかっていただろう?」

私の横に立って話をされた。
背も身体も大きなグレゴリーから、慰めるような、説き伏せようとされる口調は、なんか腹が立つ。まるで弟扱いだ。
こいつにとって、話は守るべき対象者だからだろうか、ある意味同等な価値観で意見は言わない。
友達では、もうなくなってしまったのか?
もっと注意すれば良いだろう!
と何回思ったか。それももう仕方がない。

「ウランドル王国が気になる。ダイアナ嬢曰く戦争の準備をしている、なんて爆弾発言にディライドの意見が聞きたい。詳細がわからないから、御伽話の夢見の力かどうかもわからないが、今回、夢見の乙女と呼ばれる王女も招待している。これを機会に二人をぶつけたいし、その計画の意見やその後の展開の予測、相手は王女だ、外交に負担をかけるかもしれない。イズリー家に情報を流しておくのは、間違いないだろう。ダイアナ嬢とは、茶飲み相手ぐらいの感じで、私は知らない程で、会わせたいと思っている」

仕事の区切りで、慌ててイズリー領に来た理由、私の気持ちを言った。

だが、ディライドばかり自由に夏の休暇を楽しんでいるのが、ずるいと思っている事は言わない。
邪魔をしたいと思っていることも。
我ながら、子供じみているな。
それでも、他者をずるいと思ってしまう気持ちは溢れ出る。

「ダイアナ嬢とティア王女を会わせる、私の役割ですね。承知しました。今回の夜会は、私も侯爵以上には賛成でしたよ、近衞騎士をダンス相手にするとしても、流石に多くの令嬢が時間を持て余します。彼女達だって、料理が目的じゃありませんからね。ご令嬢の欲求に、少しでも答えて差し上げねば、噂は広がり、派閥の悪化や馬鹿なことを考える親が出てくるかもしれません。
…アンドル様に期待しておりますよ、その手官をよろしくお願いします。しかしアンドル様が、令嬢の輪に入って話したとしても、王女達を集団に入れる訳にはいきませんし、時間に限りがある。
中々難しい問題ですね。ディライド一人いても仕方ないのではありませんか?」

サイファに言われた。
軽やかに正論を言い、茶化しながら、本題に切り込んでくる。
私の役割…胸が痛い言葉だ。

役割か…サイファにダイアナ嬢の仕草や甘言は通じてない。でもうまい事やってくれているサイファには感謝している。
グレゴリーや私では、アレの相手は絶対に無理だ。
まず優しい言葉はかけられない。
掴まれた腕は、払い落とすだろう。
…サイファは本当に良くやってくれている。

終業日、顔を真っ赤にして笑い転げていたサイファには驚いたが。何があったか聞いたが、黙秘をしている。
ミランダ嬢の馬車辺りの時間軸だと思うが、彼女が奇想天外な事や、破廉恥な事をするとは思えないし、やっぱりやるとしたらダイアナ嬢が何かしてきた?なのか…
まぁ、聞かない方がいいな。

「ディライドには、夜会で各王国の情報収集をして欲しい。それに令嬢のダンス相手もして欲しい。高位貴族の令嬢達には、牽制が付き物だろう。緩和剤として伯爵令嬢達にいてもらう…申し訳ないとは思っているが、高位貴族令嬢達のプライドを保持させるのも必要と王妃様が譲らなかった」

女の性と言われてしまえば、口出しは出来ない。

「で、決まっているんだろう、相手」

グレゴリーは、何ともなしに言う。
これは、国王と王妃、私しか知らない、会話も無しの紙上の候補者。
はっきり言えば、国益しか考えてない婚約、婚姻。王族なんてそんなもの。私が恋だ愛だと騒げば、王族の質を疑われるだけ。
私の下には弟がいるから、十分見極められる。

ハァーーー

「何で王族に生まれたんだろう」

「「やめろよ、禁句だろう、その言葉」」

子供の頃の口癖が久しぶりに出た。割り切っている。しかし、割に合わないと思う王子なんて碌でもない職業だ。
あいつがずるい、自由が羨ましい、何度も繰り返す呪いの気持ち。

ハァーーー

「すまない、あの村まで行って顔洗って戻る!」

「俺も行くぞ」
護衛騎士の役割があるグレゴリーは、すぐ馬の準備をしたが、まだ馬は草を食べている。

「馬にも、休憩させてやれよ。私のことなら、村は見えているし、少し待っててくれ、顔を洗うだけだ。村人に騎士団の制服で驚かせなくない」

と騎乗し、村に向かった。


ピンクの髪が、まるで空から降りて来たばかりのようにそよいで動いていた。
朝日を浴びてキラキラ光り、目が離せない。

こちらを見た。

目が合った。青紫の瞳、まるで全てを覆い隠すようにその整った美貌を力強く象徴する。
引き込まれた。
初夏の花の世界に入り込んだのではないか?菫、菖蒲、桔梗…青紫の花々が頭に浮かぶ。
時間が止まった。

天から降りた女神
こんなに美しい人を見たことがない。

死んだ。目が離せない。
呼吸を忘れた。


胸が痛い。

ゴホッゴホッゴホッ

息をしなかったせいか突然の空気を吸い込むのにむせ尽くしてしまった。
これは、物理的に痛いんだ。
きっとそうだ。
…私は知らない、こんな心臓の痛みを…

馬車、そう、馬車は?

気付いた時には馬車はなかった。

「あれは、夢か。白昼夢?女神が地上に降りるわけがないピンクの髪だったし、あんな美しい人がこの世にいて噂にならない訳がない!いや、しかし空から舞い降りたから…」

顔を洗い、グレゴリー達の元に戻った。

「大丈夫か、顔が真っ赤だぞ、領主館に行って医師に見てもらおう」

どちらかに言われたかもわからない、イズリー領主館の客室で医師を呼んでもらい、何でもないと言われたのは、昼も過ぎてからの話。

ディライドは、こちらを冷たい目で見ていたのが非常に怖かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

さわじり
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

処理中です...