今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
上 下
8 / 120

8 人気者にドキドキしませんでした

しおりを挟む
別館に入り、応接室に向かう。

「職員室の並びにあるのね…」

独り言を落とし、勇気を持って扉をノックした。

「やぁ、ミランダ嬢」

こちらも見ずに、カリカリとペンの音を響かせている三人組。

こちらは応接室よね?
執務室ではないですよ、ね?と扉を確認してみた。念の為です。

「少し、お待ち下さい。何もないですが、そちらにお座り下さい」

とサイファ様が言う。はい、ありがとうございます。もちろん、仕事の邪魔は出来ないので小声で。
先程もこの声を聞いたけど…ビビっとは来ない。私の癒やし声、耳の幸せは、グレゴリー様が、映えある第一位です。
これは決定です。

おっと、また現実逃避をしてしまった。改めて室内を見ながら気づいた。

ダイアナさんがいないわ。

トントンと書類の片付けた音。

「終わったな。これで今日の分の挨拶と招待状だ」

「はい、お疲れ様です。アンドル様」

とサイファ様がアンドル王子の書類を手に取り確認していく。

「待たせましたね、ミランダ嬢。それで今日の騒ぎは、マリアーノ嬢に絡まれただけですか?何か有益な話は聞きだせましたか」

アンドル様がいつも通りの少しの笑みの絵本のままの王子顔で聞いてきた。
人間味を感じない…
ただ淡々と感情も見せずに…
その方がいい。落ち着ついて話せそうだわ。
美形に一喜一憂してはしゃぐのが、馬鹿みたいに思える。

「何故そのようなことを聞いてくるのでしょうか?」

「外交のスペシャリストのイズリー家。どんな些細な情報も見逃すはずはないと宰相に助言を頂きました。あの事件もこちらとしたら有益な情報だったのですよ」

なんと!私を情報屋にしようとしているの?申し訳ないが、私にその力はない。

「申し訳ございませんが、ダイアナ様との頭の接触以来、何も情報はないです。本日は、サイファ様の横にダイアナ様がいらしたはず、お聞きになれるのではないですか?」

「あぁ、彼女からは中々面白い話が聞けるので…」

サイファ様も加わってきた。再び、サイファ様が話し出す。

「忠告ありがとうございました、ミランダ嬢。しかし、まだ彼女は全部を私に話してくれないのです。前倒したらどうなるかわからないし~と言われて、あまり無下には出来なくて。なんでもクリネット王国に関わる大きな事件らしいので…これは内密に」

と青年にしたら可愛い仕草で人差し指を突き出し、自身の口元に当てた。

フッと息のかかった音がした。

サイファ様の御顔と存在に、一気に冷めてしまった。キャーキャー言われているのを意識してのポーズなら、この方相当な自意識過剰ね。

うちの弟のレオンの方が、断然可愛い。

「はい、サイファ様。私に話して下さって良いのですか?」

なんか王国が~とか言うなんて、そんな話は、絶対してはいけないでしょう。イズリー家にわざと聞かせているのかしら。

「まぁ、ミランダ嬢には関係ない話ですね。教えて欲しいのですが、…ディライドが帰ってくると聞きました。もう屋敷に着いたかどうか?」

王子様に話題転換されました。

「いえ、まだです」

「そうですか。必ず王宮に顔を出すように伝えて欲しい。ディライドは、いつも側近候補の話を断りばかり入れるので。是非、ミランダ嬢からも入るように言って欲しいです」

騒動どうこうじゃなくて、側近依頼を私に頼みたかっただけ、ね?

「お義兄様は、皆様もご存知の通りの人物でございます。興味あることにふらりと足が向く方なので、私からの話も聞いてくださるかわかりません」

と顔を振って見たが、相手は表情ひとつ変えず…
本当に、逆に怖っ。

「最初から邪険にされて、私達では相手にされないのですよ。マリングレー王国に留学に行ったのでしょう?こちらとしては驚いた。かの国で内乱が起きたとは聞いていない。何故かディライドは、誰にも言わずに留学した。その代わりイズリー伯爵が現在外交官を断り、弟に任せていた領地運営をしている。はっきり言えば、我が国にとって損益なのです。
突然と言いましたが、同じ時に現れたイズリー家の養女…正規の手続きですよね。
『何があって』を聞きたいが、話してくれますか?あなたのこと。
…ミランダ嬢の髪色は水色ですね。青系は、マリングレー王国で多い色です。海を挟んで隣に位置しているイズリー伯爵領では、珍しくはないかな。我が国全体では珍しいだろうし。何か関わりがあって、養子縁組をしたと勘繰るのも当然じゃないかな?」

王子様が怖い。
ジリジリ追い詰められている、ようなジワと汗が流れるのは、尋問からくるものか、美形による表情筋無しによる恐怖からなのか

「確かに…養女です。
しかし私はお義母様の家家の娘ですし…
勘繰ると言われましても…困りますね」

溜息と話を切ることに尽力を!

「そうか、きちんと手続きを踏んでいるのは、わかっています。イズリー伯爵が、落ち度に繋がるような私事を外部に示すわけがないですから。まぁ、養子縁組に邪推してすまなかった。
先程の側近の件、兄に一度伝えて欲しい。勿論こちらからも言うので、煩わしいことを頼んで申し訳ない」

追い詰められるかと思ったら、意外にあっさり私の事など興味無しをあらわしてくれた。
お義父様信用されているわ。
凄い、お義父様。

「はい、かしこまりました…関係ありませんが、あの誘拐事件は、全て解決しましたか?」

「ああ、盗賊団やそれに関わった者達を今は捕まえている」

おっ、今まで一切会話に入ってこなかったグレゴリー様が発したわ。

ほぉ~、良い声。

ありがとうございます。この話題はグレゴリー様担当なんですね、盗賊や事件だもの騎士団ですね。

この狭い応接室に学校の人気者三人…との質問(依頼)。
クラスメイトに言えば羨ましがられる案件なのに、全くドキドキしない。

使用人達と話したり、噂で聞く方がドキドキして楽しかったのは何故だろう。

「はい、では失礼します」

扉を閉めて、そっと溜息を吐いた。
わかったわ、例え美青年だとしても、私を彼らは見ていない気がしたのよ、気持ちの交流がないみたいな…
私も同じだから仕方がないけど、気づくと少し寂しいわね。

廊下を歩き始めれば、睨んでいるダイアナさんがいた。
待ち伏せ!?絶対、私を見ているのよね?
何故睨むのよ、つい先程は仲良しだの私のこと良い令嬢って言っていたのに…彼女は人気者とは逆に、私に気持ちをドンとぶつけてくるのね。それも面倒くさいのよ。

無視しても良いかしら?一方通行的な…
だって、嫌な予感がビシっバシっとするんだもの。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

さわじり
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

処理中です...