今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

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3 グレゴリー・サンラット

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グレゴリーside

真っ暗な空の下、騎士団病院を出た。
自分の足音が響く。

「グレゴリー様、サイファ様と共にダイアナ様には、お気をつけて!」

言われたぐらいで、何故、頭の中にも、心の中にも引っかかるのだろう。


サンラットの屋敷に戻った。

モヤモヤは続くままで…
夜を明かしても残る言葉。

「なんだ、グレゴリー、凄い顔しているぞ」

「兄上、顔洗ってきます」

公爵家の人間が、一令嬢の言葉で迷わされるなんて、あってはならない。
涙で絆されたか、俺は!

「どうした?朝から不機嫌だな」

まさか父上からも言われるとは。



「おい、気配が殺気だらけだぞ、どうしたグレゴリー?」

馬車の中ですぐに言われた。

「アンドル、すまない。少し考え事をしていただけだ。きちんと護衛はする」

「いや、馬車内だからいいが…昨日の捕物の件か?女生徒二名が攫われたんだよな。最近頻繁になっていた誘拐事件。一人負傷したが、犯人確保で盗賊の居城がわかったんだろう?」

「ああ、宰相殿の進言通り、隣国ウランダルと繋がっていそうだ。証拠が出ればいいな。すでに騎士団が居城には向かった」

「宰相がウランダルのオークションで人身売買が活発に行われていると警戒通り、我が国にも手を伸ばしてきたな、これで確実に証拠が上がれば、各国で情報共有して、疑わしき事態に踏み込めるな」

と目の前の王子は、感情を見せずに口角だけあげた。

「第一王子が、戦いを仕掛けるような発言するなよ」

「ハハハ、この中だけさ」

最近のアンドル王子の発言は、冷静さと過激、投げやりが含まれている。王子という事も非常に冷めた目で職業と考えている。
大変なのはわかるが、友人としてこの国の臣下として複雑だ。

馬車から降り、いつも通りアンドルの斜め後ろに立つ。

「おはようございます、アンドル王子様」

「あぁ、おはよう、マリアーノ嬢」

マリアーノ嬢を見た。相変わらず、アンドルに話しかけたそうにしているな。恒例な日常。この令嬢が、一人の令嬢を唆したくせに。アンドルは、彼女に対して歩みを止めるつもりはないってことか。

「おはようございます、グレゴリー様」

「おはようございます、マリアーノ嬢」

俺も似たような繰り返しだ。マリアーノ嬢の後ろに令嬢三名か。取り巻きはいつものメンバーだな。

いつものメンバー…

あれ?なら、ミランダ・イズリーは?

マリアーノ嬢の後ろにいたか?
…覚えがないな。強要される理由は?


「おはようございます~!グレゴリー様~、昨日は助けて下さりありがとうございました」

突然、前方に走り入って来た。思わず、アンドルの前に庇うように立つ。
令嬢として驚きの行動だ。

「…あぁ、おはよう、ダイアナ嬢…無事で何より…」
返事をしたら、後ろのアンドルが興味を持ったのか、話しかけた。

「元気がいいな、君は」

「えっ、ええ~、恐れ入ります。アンドル殿下。あっ、あの昨日友人が、不幸なことになってしまって…
彼女の分も、今日を精一杯生きなきゃって考えて、泣いてばかりいられないので、まずは挨拶を彼女の分もしっかり声を出さなきゃと思ったのです」

「うん、気持ちの良い挨拶だったよ。君の名前は?あぁ、私は、アンドル・クリネットだ」

「恐れ入ります。私は、ダイアナ・ガトルーシーです」

綺麗なカーテシーをしていた。問題はその前の行動だろう!

「ほぉ~、男爵家では中々厳しく礼儀作法を躾けられているね、言葉使いも直したら更にいいね」

「ええ、はい!お褒めいただき嬉しいです!」

と元気いっぱいという返答をしていた。そして満面な笑顔…

なんだ、これは…
気味悪い、何かわからない空気感、圧みたいなものを感じた。

いや、いや、
騎士団の剣神と言われた騎士と立ち会うみたいな最初から勝てない気になる空気感。決められた勝ち筋。

「おい、どうした?グレゴリー、行くぞ」

「失礼しました。アンドル様」

と斜め後ろに着き、歩き出した。

ミランダ嬢に言われたからなのか、何故かダイアナ嬢の言葉、会話には違和感ばかりが気になった。

そして、授業終わり廊下の端でサイファとダイアナ嬢が仲良く話していたのが見えた。

『お気をつけて』
涙声が心に響く。

「おい、サイファ、話がある!」

呼び寄せた。距離をとるべきと思った。気味悪い違和感の正体はわからないが、何故か『今日』が、関わってはいけない気がした。

「ん?」

「今日は、一緒に王城に行こう」
「ハァ?昨日の誘拐の件は騎士団で担当するんだろう?今日は執務の日じゃないし、何故行くんだよ?」

「話があるからだよ、わかったな」

と言って殿下の元に戻る。じっとこちらの様子を見ていたダイアナ嬢。
視線を振り切る。

確かに普通なら、高位貴族同士の話に男爵令嬢が入り込めるはずがないのに、当たり前のように待っていた。

誘われ待ち?

まさかな。
昨日の今日で、確かに会って事情を聞いたけど…それだけだぞ。

絶対に距離をあけよう、勘がいう。

『入学後、ドリ商会のライアスさんと男爵子息のノルド様、最近…スタンルート様と仲良く昼食を取ったり、教室や廊下で話しているのが話題に上がっております』



「今日は、朝から変だぞ。グレゴリー?」

「アンドル、サイファ、まだ調べていないがダイアナ嬢には、気をつけた方が良い…」

「はあ~!?
先程の私達の会話を見たから、ヤキモチか?好みなのか?確かに胸が大きいな、間違いなく。
でも、別に私とダイアナ嬢は、昨日助けた感謝されただけだし、仲の良い友人と攫われた恐怖と友人の不幸を見てしまって精神的に脆くなっているから慰めただけだぞ」

とサイファが言う。安心しろと私の肩を叩いた。

そう、仲の良い友人?マリアーノ嬢の命令で後をつけた同級生を?
友人の不幸?確かに両足吊り上げられて、両手までも包帯ぐるぐる巻きだけど…
死んでない。

暴漢は刃物を持っていた、あのまま転ばず、牢の入り口に向かったら、間違いなく刺されていただろう。あの大きなドタンと倒れる音で、あいつらも躊躇した声が聞こえた。

「情報によると、ダイアナ嬢は、入学後、ドリ商会のライアスと男爵子息のノルド、最近は子爵令息スタンルートと仲良く昼食を取ったり、教室や廊下で話しているらしい、その中に加わるのか、サイファ?」

「は!?加わる?大袈裟だな。何だよそれ、ハーレムじゃあるまいし、ありえないよ、人の彼女を取るつもりも誤解をさせるつもりもないよ」

とサイファは答えた。

アンドル様は足を組みかえ、何か考え始めた。

「おい、今日その情報提供者と会うのだな…私も行く。面白そうだな」
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