今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

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2 死にたくないですから

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背中から物凄い力を感じた。
痛いぐらいに。
でも私の足は動かなかった。

だって

『慌て逃げる友人は、暴漢に向かって行って…殺される』



ドッタッーーン

痛みが点火した…言葉も出ないほどに。

思いっきり前に倒れました。良かった点は思わず手が前に出て身体をワンクッション入れてから転べた?むしろ倒れたという所。
手首の紐切ってくれて、ありがとうダイアナさん。意外に私冷静!?

「な、何!?」

ダイアナさんの驚いた声が聞こえる。

「おい、大丈夫か!?」
暴漢に心配された?

「うわぁ、一人転んだぞ、捕えろ!」
「凄い音だ、大丈夫か?」
「死んだか?」

男達がびっくりしてるのかな?
死んでないですよ。人間って意外に丈夫ね。

ハァー、何か音が響くなぁ。手が燃えるように痛いな。足も痛い…死んでないよね?馬鹿な事したな…
こんな時攫われたお姫様を騎士様や、王子様が助けてくれるなんて絵本をいっぱい読んだな…
ハァー、私を仲間に入れてくれればいいのになぁ…

意識は彼方に飛んでいた。


バタンっ!
「おい、何やってる、お前達」

ドッドッドッド

沢山の足音が聞こえた。音が頭に直接響く。

「ああ~これが、」

『すぐにグレゴリー様とサイファ様が衛兵を連れて現れるから』

「なのね…」

たぶん、意識を失った。



目を開けると真っ白な天井。

「ここは?
生きている?」

「ああ、生きているよ」

と横から声がした。カーテンの向こう側から人影が揺れ、カーテンが開いた。

現れたのは、恰幅の良い体型と茶髪と白髪が混じった医師だった。

「痛みはどうかな?もうすぐ切れるかな?痛み止め」

言われると、両足と両手にズンとした痛みが伴ってきた。
意識すると、すぐに身体に直撃した。

「痛いですわ!」

見れば、手の平とはわからないほどの包帯がぐるぐる巻かれ、両足も同じくぐるぐるに巻かれて吊るされていた。

「ハッハッハ、気づいたね、痛み止め服用しようね」

と何故か笑われた。
いや、それより、今の私の格好は、令嬢として駄目だろう!これはとてつもなく破廉恥だわ!

ブンブンと頭を振ると、思い出したのは、ダイアナさんだった。

痛み止めを飲ませてもらい、少し頭が冷静になった。

あの方は変よ!
どうしてあの状況であんなに機嫌良く普通に話せたのでしょう?
最後、どう考えても、私をあの暴漢達に押し出すみたいに…頭に浮かんだダイアナさんの言葉が一緒で

「まるで知ってたみたい」

「ん?何か言ったかい?眼鏡外そうか?動かしても落ちなかったから、そのままにしたけど、眠るのに邪魔だろう?」

「いえ…大丈夫です」

「あぁ、イズリー伯爵家には連絡済みだけど、この状態では動かせないよ。骨は折れてなかったのが幸いだけど、痣に打ち身が酷いね、一週間くらいこちらで入院だな。その後自宅療養だね」

「ハァ、そうですか。わかりました…」

確かに物凄く痛かったし、よく死ななかったな、私。
完全に叱られますね。

『慌て逃げる友人は暴漢に向かって行って殺される』

…ダイアナさんの頭とぶつかった時に流れてきたのは、記憶?あれは何だったのかしら?
彼女は、知っていて攫われたの?

ふわぁ~欠伸が出た。でも…考えた、いのに…あぁ、覚えていること書かないと、凄い私の冒険譚になりそう、だなぁ…



目が覚めるとカーテンの向こう側から声がする。
それも、若い男の人の声よ。

自分の格好を見ると、可愛らしい綿毛布がかかっていた。寝ている間にイズリー家の使用人が来てくれたらしい。サイドテーブルに水差しにコップ、花も生けてある。

ホッとした。

「失礼しますが、目覚めましたか?ミランダ嬢…私、騎士団見習いグレゴリー・サンラットです。少しお話を聞かせて頂きたいのですが」

グレゴリー・サンラット様、だ、と!?

うわぁーーー
学校で皆様の噂に聞く人!
人気者だわ!
今、それに、私の名前を呼んでくださったわ!
どうしましょう、あぁ~
どうしましょうっ!

「は、い!」

ぁ、声が裏返ってしまった。


「失礼します」

とカーテンを開けた。私には近づかない。カーテンの位置のまま、

「単刀直入に聞きます。何故あの場所に?その経由をお聞かせください」

あ!
まずいわ!

浮かれてしまったけど、私、そもそも、ダイアナさんの後を尾けて、攫われたんだわ!

「…ダイアナ嬢にも、すでに事情聴取は済んでますが、貴女と会ったのは、あの囚われた牢の中だと聞きました。攫われた場所は、教会に行く路地裏で意識がなくなったと聞きましたが、ミランダ嬢はどの場所で異変を感じましたか?」

赤毛の短髪が凛々しいわ。
話し方も簡潔ですね…

フゥー、一番は、格好いい…声が、良い!そんなことじゃない!
現実を!
あー、なんて、こと…こちらを見ているわ。

これは、こちらもダラダラ話すなよと言われてますよね…

フゥ、、煩悩を捨てなさい!

でも…嫌われるわね。

間違いないわ。

…後をつけるなんて、普通、令嬢はしないもの。ギュと握った手は、ただただ痛い。

自分の情けなさで涙が溢れる。
拭うことも出来やしないし…眼鏡…両手使えない。

「…申し訳ありません。グレゴリー様。…私は、人として最低です。…ダイアナ様の後をつけてました。私も路地裏で攫われました」

と涙ながらに正直に言った。
涙が眼鏡から溢れて両サイドから流れた。
鼻水まで垂れる…
ひたすら垂れるのは、涙に混ざった鼻水…じゃないかしら?

拭きたい!啜るしかない!

「それは何故ですか?」

こちらの惨状見えている?

手を貸してくださらないのね…

「何故?」

あぁ、顔を隠してちょうだい神様!
顎を引き下を見る。
質問は…

「…それは、…
マリアーノ様に命じられて…」

「マリアーノ嬢、ファンド侯爵家のですね、それで目的は?」

とグレゴリー様の声が一段低くなった気がした。

こちらを見ているわよね、私の顔、酷い有様ですよね…下を向いているけど。眼鏡、曇ってます、垂れる鼻水は、もう惨状な光景なはず…

いつまでも煩悩を捨てることが、出来ません。
ヒックッ、ヒックッ


怒っているわね。
それは当然よね。
だって後をつけるなんて、はしたない真似…

「目的は?」

あぁ、怖いわ!
怒ってらしゃるわ!
あぁ、ボタっと糸が引きながら垂れた…
啜りきれない鼻水。

もう考えない!
「聞いているのか?」

…でもその声がカッコイイ
違う!

「…ダイアナ様の不貞の証拠を掴んでくるようにと言われまして」

「はあ!?不貞って、ダイアナ嬢の交流関係を調査?何故そんなことを!」

「…入学後、ドリ商会のライアスさんと男爵子息のノルド様、最近…スタンルート様と仲良く昼食を取ったり、教室や廊下で話しているのが話題に上がっております」

顔が…、この痴態、地獄…
もう決してそちらを見れない!

「スタンルート…わかりました。確認します。しかし、それでも同級生の令嬢の後をつけるなど、…下世話ですね、ミランダ嬢」


「はい、申し訳ございません…でした」

「私に謝らないで下さい。謝る相手はダイアナ嬢ですよね」

ビシっと言われる。

はい。
そうです。

言葉にならなかった。泣いてばかりいる私に呆れたのだろう。
深い溜息を吐かれた。ボタボタと落ちた涙と鼻水…酷い有様だ。
待っててくれたであろう医師が、同情して、そっと柔らかい布を私の顔に当ててくれた。

…神よ…


「今日は、もう話を聞けそうもないので失礼します」

と言ってカーテンを閉めた。
随分前に話が聞ける状態ではなかったと思うよ。


『ダイアナは、友達を助けてあげようとしたのに不幸にも友達を目の前で失った可哀想なヒロインとして、お二人と近づき』

思い出した。一応、ね。

「グレゴリー様、サイファ様と共にダイアナ様には、お気をつけて!」

涙と鼻水が途切れないまま、でもタオルを当ててもらいながら、大きな声で言ったと思う。
タオルがズレたわ。

再び、カーテンが開いた。

あ!?今は、見ないで~

「理由は?」

冷たい視線だ。
見られた…鼻水…
小さな声で
「勘です」
と答えた。

あぁ、また失敗してしまったな。

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